玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

私が父です

2006年01月04日 | 捨て猫の独り言
 彼が初めてこの家に来たのは去年の8月だった。なんのこだわりもなく笑顔でそこにいた。昔からの知り合いであるかのように。肌の色も言葉の違いもあまり気にならない。その自然ななりゆきが今でも不思議である。娘が茶の間につれてきて親に紹介する初めての青年である。母親の長旅の前にもう一度来た。そのとき 「泉さんと結婚させてください」 と言った。娘は同じことを何度も彼に言わせて面白がっていた。二人は本気だったようだ。母親の長旅の間に二人だけで法的な手続きをすませた。

 たとえば私は他者に対してかくあるべきと固執することがある。悪い癖でとくに身内ならば度を超すことがある。この青年にはそれがないようだ。温厚で他者に寛容だ。さらに彼の楽天的で自信過剰なところは国民性とでもいうべきか。娘は日本人の謙譲の精神を教えるといきまいている。

 将来映画の仕事をすることが彼の夢らしい。映画が好きで詳しい。3人で家のテレビで初めて映画を見た。学校の図書室から借りてきたビデオだ。19世紀末の西部史に名高い二人組の強盗ブッチとサンダンスの逃避行を哀愁とユーモアをこめて描いた 「明日に向かって撃て」 (1969年アメリカ)である。原題は二人の名前を並べただけのものだ。邦題のなんと詩的なことか。1970年は米軍の北爆開始やよど号事件があった。アウトローが主人公でハッピーエンドでないところが時代の空気に合っていたようだ。ポールニューマンがロバートレッドフォードのガールフレンドのキャサリンロスと自転車の曲乗りをする場面がある。ヒット曲 「雨に濡れても」 を3人で口ずさんでいた。娘はアメリカは食事には淡白だが映画の国だと言う。

 

コメント
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