玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

湯治の宿

2005年08月02日 | 捨て猫の独り言
車は隼人町で10号線を左折して天降川(あもりがわ)沿いを北に向かい、鹿児島に古くからある湯治場を目指す。日当山(ひなたやま)、妙見、安楽、塩浸(しおひたし)のうち妙見にある湯治の宿である妙見館に投宿した。30年ほど前は町衆と、お百姓で年間を通して賑わったらしい。もちろん炊事場がある。名古屋からきて自炊しながら二ヶ月近くも滞在しているというお婆さんがいた。他にこの宿を拠点に指宿、桜島へのドライブをしているという福岡からの熟年夫婦などいたがお客はそれほど多くない。私はといえば、ともに80歳を過ぎた両親と3人で2泊3日の温泉ざんまいである。わざわざ自炊を選んだ。その方が退屈しない。

あもり川の川もを眺めながらヒノキ風呂に入る。とくに夜景は素敵だ。打たせ湯のあるもうひとつの風呂もあり、どちらもお湯が絶え間なく放出されていてもったいないと思うことしきりである。1泊1500円(部屋代のみ)冷暖房費300円、布団500円、テレビ1台300円など格安である。電話番号0995-77-2211だ。

この流域はあの坂本竜馬とお竜さんが訪れ、それは日本で初めての新婚旅行と言われている。宿から1500メートルのところに犬飼の滝がある。竜馬もこの滝を絶賛したと伝わる。高さ36メートル、幅16メートルという。滝に100メートルほど近づいた場所で滝を見上げた。水量が少なく岩と岩の狭い隙間からかすかに青空が見えて、滝はそこから2メートルの幅でゆったりと流れ落ちていた。そのときよからぬ連想がおきて一人慌てていたのがおかしい。峡谷の道には鹿児島アララギ会同人の歌が木の杭に書かれていくつか紹介されている。その中から一つだけとりあげてみたい。「轟きて流れ落ちくる犬飼の滝壺に浮く泡限りなし」滝への途中には奈良時代に道鏡によってこの大隈の地に追放された和気清麻呂が入浴したと言う和気湯がある。畳1枚ほどの小さな風呂の真ん中を岩でしきった露天風呂だ。岩床の岩の隙間からしゃぼん玉のようなお湯が湧き出ている。油膜のように見えるのはナトリウムだそうだ。通りの真ん中にあるのたが、たった一人で入浴してみた。

妙見の上流にドライブした。その昔薩摩藩が運営していた塩浸から、竜馬が姉の乙女に送った手紙には 「げにこの世の外かと思われるほどの珍しきところなり。ここに10日ほどとどまり遊び谷川の流れにて魚を釣り、ピストルをもちて鳥をうちなどまことおもしろかりし」 とある。帰路に日当山の小学校とその隣の中学校に立ち寄った。

コメント (2)
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