脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

エゴン・シーレ展

2023年04月30日 | 前頭葉の働き
以前の記憶が今の体験を深めてくれることを実感したので、美術館に行ったことを記録しておこうと思います。
上野の東京都美術館「エゴン・シーレ展」に行きました。

珍しく友人と一緒だったので、入場を待っている間にパチリ。面白い写真が撮れました。エゴン・シーレ展のポスターの前の友人がたまたま黒い服を着ていて、ポスターのシーレとシンクロしてる。彼女の持っている携帯画面にもシーレが!

どうしても行きたかったのですが、もちろん理由があります。
2018年に友人たちとプラハ旅行をしました。
「人」が生きるということ
この記事にチェスキークルムロフ城の写真をあげていますが、ちょうど開催中のエゴンシ―レ展を見る予定で、一日かけてチェスキークルムロフを訪れたのです。会期中のはずがまだ開催されていないという、日本では考えられない顛末で見ることは叶わなかったものの、モルダウ川に沿ったかわいい町は印象的で、訪れた甲斐は充分にありました。
それにしても、エゴンシーレ展…見たかったのに見られなかった。日本で開催されるのならばこれは行かずばなるまいでしょう?

もちろんあの自画像は見ました。(撮影不可)
撮影可能のところに風景画が2枚。キャプションを読んでみると、母の故郷クルマウ(現在のチェスキークルムロフ)とありました。
チェスキークルムロフ城のような高いところから町を見下ろすと確かにこういう風に見えるはず。手前がモルダウ川ですね。

あの可愛い街並みを見下ろす場所に、シーレがいて絵筆をとっているという光景が見えるようでした。シーレにとって穏やかな時間が流れただろうというような思いも湧き上がってきました。この展覧会でこのような作品に出会うということは全く想定外のことだったので、5年前の旅のあれこれを懐かしく思い出しました。

次にこの作品に出会った時、ドキドキしました。

ちょうど、高校の同級生が読んでみるようにと勧めてくれた藤原辰史著「植物考」を読んだばかりで、植物の生命力や生命維持に必要な要因についての解説から、人と植物の関係性を今までとは全く違う目で眺めざるを得ない気持ちになっていたのです。
もしかしたら力のない弱きものととらえられている植物には、人をも繰るような秘めたる力が隠されている…

この作品の解説には「…細い枝が神経系の如く四方に伸びる。むき出しの木は孤独感を表現し、生に向かうエネルギーを象徴…風景画で自然を擬人化、人間の形と感情を刻み、人物画に匹敵する表現…」
「植物考」の読後感と重なる表現が続いています。びっくり!なんだか共時性を感じてしまいました。

どちらの作品も全く予想もしていなかった出会いだったことに感謝しつつ思いがけない満足感に満たされて上野駅へと急ぎました。




箱根早川で出会った水色型のサワガニ

認知症に関して理論的に詳しく知りたい方は、以下のブログもお読みください。





4月の右脳訓練ー京都の旅④

2023年04月29日 | 私の右脳ライフ
今回の京都旅は、同行の友人が「せっかくだから京都らしい美味しいものを食べたい」と強く希望したので、グルメ旅行にもなりました。
京都在住の友人は「ここなら!」というお店を選んでくれて、私は付き添いの役回りということでご馳走になりました。よい思い出作りができ、感謝しています。
祇園で中華料理というユニークなアイディア!
祇園白川。
桜の辰巳大明神、柳、優しい春雨の中を歩く芸妓さん、祇園らしい町屋の佇まい。今だけの都をどりの提灯も風情を添えて。

お店は白碗竹快楼

和も漢も感じられる独特のしつらえでした。
京懐石風中華料理とでも言えば、少し雰囲気が伝えられるかも分かりません。一品一品は中華の味付けを守りつつ、日本料理の引き算の味付けも感じられるものでした。

なんといってもここのメインは、フカヒレ雑炊。
絶妙の戻し方、絶妙の味付け!

こんな可愛いデザート。ピーナッツ餡を詰めたピーナッツお菓子と杏仁豆腐。


宿泊した東急ハーベスト鷹ヶ峰のメインダイニング オルティーボではイタリアンディナーをいただきました。

シェフの絵画的センスが感じられるお料理でした。もちろん目でも楽しみ舌でも楽しみました。

デザートのチョイスは二派に分かれました。ちょっと味見をさせてもらったら、うーん私のチョイスにちょっと後悔が感じられてしまったかな?それもまた笑いを誘って、女子旅は楽しいものです。


京都迎賓館参観の後のランチは「美味しい松花堂弁当がいいんじゃない?」と上賀茂の割烹「乃し」に連れて行ってもらいました。京都府立植物園を横目で見ながら、まだまだ十分きれいな鴨川の枝垂れ桜に声を上げているうちに到着。まさに隠れ家。

季節感あふれるしつらえ。
庭に目をやると、八重の枝垂れ桜が、たぶん今日満開ではないかという風情で大きな花房を風に揺らしています。花も大きく、色も濃淡混じって、派手やかな桜です。野口雨情の家にも植えられているので雨情桜という名前を持っていると説明してくださいました。
目の前で包丁捌きを見せてくださいます。
さてお料理。すっきりとした蒔絵が施されているお弁当の一角が、空いたまま供されます。ちょっと期待感が膨らみます。案の定すぐに揚げたての天ぷらが!

お椀がまた見事でした。お出汁はもちろんのこと、椀種の一つ一つに板前さんの技量が込められているのです。器も素敵でした。
ご飯は今年初めての筍ご飯。もちろん洗練された技が光ってました。

デザートはイチゴのムース。ふきのとう餡の小さなお団子を乗せるところが板前さんの面目躍如。


最後、京都駅で時間待ちをする間、宝泉でお茶をしました。
さすが京都!注文した生菓子、銘「さくら」が、春の京の旅の掉尾を飾ってくれました。

S子さん。あれもこれも楽しかったですね。そして美味しいものもご一緒できて…ごちそうさまでした。



花菱草と覚えましたが、カリフォルニアポピーともいうそうです。

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4月の右脳訓練ー京都の旅③

2023年04月27日 | 私の右脳ライフ
3泊4日の京都の旅。いろいろなところでハッとさせられることがありました。目と心にとまった小さなシーンが、後になって思い出の中核を作ってくれることもありますね。
2枚組にして記録しておこうと思います。
祇園で夕食をいただきました。いかにも祇園という界隈を少し歩いてみた時のスナップ。
左の表札には
「弓馬術礼法 小笠原流京都連絡所」
「The Common One Bar Kyoto」
「CLASSIC TEA & COCKTAILS 何生庵
とあり、検索してみたら抹茶を使っているお店らしいです。

上賀茂の割烹乃しでランチをいただきました。お店の奥庭に咲く八重枝垂桜が見事だったこと!
野口雨情ゆかりの雨情桜という名前でした。

晴明神社へ。境内で目立つ「厄除桃」記紀や桃太郎伝説に見られるように、桃は魔除け厄除の果物です。
宿泊した鷹ヶ峰のホテルは、しょうざんリゾートの中にありました。豊臣秀吉が築いた御土居がありました。京都を取り囲むように短期間で築いたものです。

京都文化博物館には、江戸時代末期の京の町屋の表構えを復元した「ろうじ店舗」がありました。文化庁の看板が目に飛び込んできましたよ。

「京都文化博物館(ぶんぱく)」から「京都府総合福祉センター(ハートピア京都)」まで。烏丸御池から丸太町までの短い街歩きで見つけたもの。
普通のしもた屋の玄関先に小さな神社が祀られていました。
「こども未来館」前の竹間公園の銅像。

京都御苑「下立売御門」そばの、樹齢400年といわれる清水谷家の椋の木とその新芽。
o
一緒に旅を楽しんだ友人たちの心に残ったシーンは、また別のものだったと思います。それはその人その人が持っている前頭葉には大きな差がありますから、当然のことなのです。
心が動かされるものやことに対して向けられる、この喜びや関心は、これからもきっと持ち続けられると思います。





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4月の右脳訓練―京都の旅②

2023年04月25日 | 私の右脳ライフ
ビッグイベントは京都迎賓館参観でした。書き忘れましたが、賓客の歓迎だけに使うのももったいないということで参観できるほか、さらには使用目的などのチェック後、使用許可が下りれば一般でも使えるという説明がありました。何の予定もありませんが一応知識として。
 利用日数 3日間(設営、本番、撤去 各1日)
 利用時間 午前10時~午後6時
 利用料金 約1,700万円

晴天の鷹ヶ峯

霧雨にけむる鷹ヶ峰

4月第一週に京都への旅を企画して、ハイシーズンなのでホテルがとれません。ようやく取れたホテルが、洛北(京都市北西)にある鷹ヶ峯というところで、私は行ったことがありません。知らないところに行くので興味津々でした。ホテルに入ると正面にこどもが書いたような山容を見せた山が嫌がおうにも目に入ります。
この山が鷹ヶ峯。ちょうど名残の桜、霧島つつじでしょうか紫色の群れもちらほら。一服の絵のような風情を見せていました。
今回は尋ねることができませんでしたが光悦寺も近く江戸時代にはここ一帯はアートビレッジだったようです。

このホテルは、高低差のある場所に二つの建物が建っていて、その連絡のためにケーブルカーが設置されています。なんだか遠足みたいです。窓の外はまさに春の遠足。花桃と菜の花のきれいなこと。

もう一つ情報が。花札に「山の上に満月」という斬新なデザインの正式名称「芒に月」通称「坊主」といわれる札があります。そうなのです。この鷹ヶ峯がモデル。
山は真っ黒に刷り上げられていて、なぜ芒というのか調べてみたら、芒が細い線なのでつぶされてしまって一面黒になったのだとか。
鷹ヶ峯の隣にある山は鷲ヶ峰というのです。全然知らなかったこんなミニ情報も現地で聞けばうれしいものですね。

京都の旅は、京都駅からスタートしました。
去年11月の誕生日記念旅行で京都駅で乗り換えた時に、京都劇場を発見。駅隣りというか駅中くらい隣接していました。
Happy Birthday to me!
これなら歩きにくい妹さんでも大丈夫だろうと、上演中の劇団四季「ノートルダムの鐘」のチケットをゲット。

撮影不可ですから、劇団四季のHPを貼っておきます。
これが大変良かったのです。終演後、アンコールは何度も繰り返され、客席からはスタンディングオベーション。
物語性も深く俳優さんたちの力量も素晴らしく、予想を超える感動でした。

京都文化博物館にも行ってみました。
会場入り口の紫式部像

前から関心があったところですがようやく訪問実現。京都の成り立ちをサラリとビデオで学んだあとで、開催中の特別展として「原派、ここに在り」を見ることにしました。
原派は有職故実の正確な描写を家業とした画家の流れ。まったく知らない世界でしたが、その正確な細かい描写には驚かされました。大行列の記録画で衣装の文様、官位による衣装の決まり事まで精密に描き分けてあったのにはビックリでした。目的は写真を写すように正確に記録することですから、自然描写も細密でした。描かれた様子と現在の様子を重ねてみられる工夫もしてあり興味深く見せていただきました。撮影不可…
休憩室。




友人が長く勤め、現在はボランティアをしている京都府立総合社会福祉会館。全国有数の老人大学を持っているのですって!

帰る日の午後、友人ごひいきの北大路に面したカフェギャラリーでゆったりと大人のお茶時間を楽しみました。

さりげなく出してくださったのがシンプルなマイセンのカップ

おしゃれというか、細かいところまでオーナーの心配りができているお店で、心地よく長居をさせていただきました。

バスで二つ三つ先に目的の大徳寺がありました。

拝観時間は過ぎていますから、かえって境内を楽しむ気持ちになって、それはそれでよい時間を過ごすことができました。

この道を歩いている時一陣の風が吹き抜けました。思わず友人と同時に「松籟」と呟き顔を見合わせて、同じ言葉が浮かんだことに感動してしまいました。
大徳寺に行きたかったのは、私が住んでいる伊東市に、大徳寺聚光院伊東別院があるので、一度は聚光院(利休居士のお墓があるお寺です)にお参りしたかったのですが、時間が間に合いませんでしたから、これは再訪しなくては!と誓いました。

すぐ隣に大徳寺庫裡がありました。正確にいえば「大徳寺の隣に聚光院がある」でしょうね。
この道標に沿って小堀遠州ゆかりの弧篷庵まで歩きました。

弧篷庵は少し離れたところにありました。

閉門後なのに掃除が行き届いていて、気持ちが正されるようでした。

大徳寺境内を出ると今宮神社。数年前に京都の友人が「あぶり餅を食べよう」と連れて行ってくれました。その時はお餅だけを食べてすぐ帰ったので、大徳寺とこんなにも近いなんて思っても見ませんでした。先達が違えば旅も違ってきます。

右を向けば、比叡山が。

短い時間でしたが、洛北大徳寺…伺ってよかったです。もちろんまた行くことを心の中に刻み込みました。

そして市バスに乗って京都駅まで。
普段使うところとまったく違うところに着きましたが、なんとなく方向がわかって特別のトラブルにはなりませんでした。現地踏査の体験と駅構内図でゲットする情報は、月とスッポン。種々の情報はあるに越したことはありませんが、それはあくまでも単なる知識。自分の体験をベースにした情報は消えがたく、生活の知恵になってくれます。


隣のイキシア。

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4月の右脳訓練ー京都の旅①

2023年04月24日 | 私の右脳ライフ
京都の友人から「遊びにいらっしゃいよ!どうせなら桜のころに」と誘われて、4月第1週に訪問予定を立てたのは、去年の年末。
私は旅の計画を練るのが大好きです。
私が旅を企画すると、けっこう綿密にタイムテーブルを作り、さまざまな事前チェックもして旅をスタートさせますが、誰かと出会いがあれば、それが最優先になってしまうという特徴があります。旅は計画段階から始まっているので、どんな計画変更があったところで別の楽しみを体験できたと思えるタイプなので、いつも心満ち足りた旅になるのです。
京都迎賓館夕映の間のしつらえ
14代今泉今右衛門(人間国宝) 

ところでこの話を聞いた、友人姉妹が同行することになりました。妹さんが歩行器を必要としているので、初めてハンディキャップのある人のことを考慮して、旅の計画を立てることになりました。
ChatGPTにも質問したりして、ある程度の計画が見えてきました。でも一番頼りになったのは、もちろん京都の友人のアドバイス。どれだけ便利な世の中になったとしても、一番信頼できる情報は「顔が見える知っている人」からの、生のものですね。
こんなにお任せで計画が立っていったことはなかったと思います。
「京都迎賓館はどう?ガイドツアーの予約しておきましょうか?」
「参観ができるの?行きたい!」車椅子にも対応しているということで、メインイベントに。
同上
「京都迎賓館は日本の歴史、文化を象徴する都市・京都で、海外からの賓客を心をこめてお迎えし、日本への理解と友好を深めていただく施設として平成17年に建設されました」
「建物や調度品には、数寄屋大工、左官、作庭、截金(きりかね)、西陣織や蒔絵(まきえ)、漆など、数多くの京都を代表する伝統技能において匠の技を用いています」HPより。
最高レベルの作品が揃っていることは聞いていましたが、携わられた人間国宝の方々の訃報をガイドさんが教えてくださいました。もう20年も前に京都迎賓館を建築するという発想と決断を下したみなさんに感謝の気持ちがわいてきました。
京都迎賓館
このHPには、写真と詳細な説明があるので興味ある方は是非ご覧ください。
HPの写真の方がずっといいのですが、旅の記念ということでここにもまとめておきます。

玄関。扉は樹齢700年の杉の一枚板

玄関を入った正面には、賓客に歓迎の意を表す生花がいけられるそうです。

いわばロビー。聚楽の間
竹籠は故早川尚古斎(人間国宝)作。飾り台はさまざまな伝統工芸技術に彩られています。
椅子の布地は西陣織。

壁面を飾る絵画は季節感に合わせたもの。

釘隠し。人と人との結びつきを意味する千代結び
夕映の間。会議や待合に使用。

比叡月映

愛宕夕照
綴織の技法を使って織った織物。爪を使って人の力で織ります。

蒔絵と螺鈿の飾り台。北村昭斎(人間国宝)作

藤の間 藤の花言葉「歓迎」を生かした晩餐会会場。壁面装飾は綴織作品「麗花」

花は39種類描かれているそうです。

故江里佐代子(人間国宝)戴金(キリカネ)作品。舞台と広間を隔てています。
「響流光韻(こうるこういん)」

几帳「羅」の生地に京繍、組紐が使われていましたが素敵…



桐の間 和の晩餐室。「五三の桐」は皇室の裏紋だったものが、現在では日本国政府の紋章となっていると説明されました。
テーブルは全長12mの一枚板に漆黒の漆塗り。

掘りごたつ式で座椅子が並んでいます。漆塗の座椅子の背に「五三の桐」
この「五三の桐」はすベて模様が違うとか。

もちろん座椅子の生地は西陣織で紋様は桐。

釘隠しも桐
欄間に戴金作品。「日月」座敷側と手前舞台側と表情が違う工夫が場されていました。

京都迎賓館は、大きな池を囲むように建てられています。
夕映の間からの庭。

池に中央にある東西家屋をつなぐ廊橋からの景色。名残のしだれ桜。

錦鯉が悠々と泳いでいます。
屋根がかかっている廊橋の天井部分。遊び心が溢れている。

船遊び用の和船。ブータン国王ご夫妻が興じられたとか。

日本文化の真髄に触れたような気がしました。
見惚れてしまうようなみごとな技術に感嘆することと同時に、底流に流れる日本人として持っている共通のテーマにも大きく心が揺さぶられました。
それは一言で言うならば、自然との一体感、人も自然の一部である感覚かなと思いました。
私たちを暮らさせてくれる四季の移ろいが、やさしく魅力的であるからこそ、私たちは自然と対峙するという姿勢を持たずにいられる…自然に包み込まれているような気持の先には感謝の気持ちが芽生えてきます。その心情が日本人を特徴付けているのかもしれません。
そこをベースに非常時に、穏やかであるとか自分勝手な行動は慎むとかよく日本人の特質と言われるような国民性が育まれたのかなと、そんなことまで思いが及んだ京都迎賓館参観でした。



近所のパン屋さん「まねきねこ」の小麦工場さらに進化していました。

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小ボケの人への励まし

2023年04月20日 | 二段階方式って?
パソコンの整理をしていたら、ずいぶん以前に書いた手紙が出てきました。
珍しく講演前に皆さんにかなひろいテストを実施してあげたのです。ふつうは、個別に検査して生活実態や生活歴を聞くことも必ず行うのですが。その時は「前頭葉機能」があるということを理解してもらうために、実施したのです。
講演後私のところに「まったく意味が書けませんでした」と真剣な顔で相談に見えた方がいました。後の予定が立て込んでいたために、説明ができず、お手紙を出したのです。
アルツハイマー型認知症は、脳の使い方が悪いために老化が加速されてしまう(廃用性機能低下を起こす)、いわば生活習慣病ともいえるものです。
足腰は老化しますが、安静にしたりして使い方が足りないとその老化は驚くほど速く進みます。それと同じなのです。
伊東市の藤の名所 林泉寺(4/20)

「お元気にお過ごしですか?桜も、そろそろ見納めですね…
 さて、先日の前頭葉機能検査の結果をお話しします。
皆さんにお返しする結果でいえば、
「にこにこレベル:年齢相応のお元気な脳です。友達つきあいや、散歩や運動など変化のある楽しい生活に挑戦されると脳はさらにイキイキしてきますよ。さあ、新しい楽しみごとは何でしょう?」ということになりました。
つまり合格ライン。
〇〇さんのことを知らないままのいわゆるブラインド分析はしないので、本来ならば、集団でやった検査結果からはここまでしか言えませんが、
講演後お話しましたので、もう少し解説を試みてみようと思います。
私の結論は、〇〇さんの前頭葉機能は元来持っていらっしゃる能力よりも少し力を落としていると思います。
あの時に「がんばりすぎたのではないでしょうか?」とお話ししましたね。
〇〇さんから受ける印象は、まじめで芯のあるご自分をきちんとお持ちの方のようでした。そのような方が初めて受検されると、がんばりすぎてスピードを上げて「あ・い・う・え・お」に〇をつけることに集中しすぎることがあるのです。その結果内容がおろそかになってしまう…このようなケースを想定しました。結果は、少し違います。
 受検中は、むしろスピードを落として慎重に対応されています。(まじめさが表れています)
〇〇さんから受けた印象をもとに考えると、この慎重さであるなら当然内容把握にも能力を振り向けることは、必ずできるはずです。それが難しかったということは、〇〇さんが本来持っている前頭葉機能がフルに発揮できなかったということを意味しています。
〇〇さんは講演後しばらく待ってでも「ご自分が感じた、なぜできなかったか?」という違和感を解消されたかったですよね?〇〇さんは自他ともに認めるような、人の上に立つようなお仕事をなさってきたからではないでしょうか。
 つまり、〇〇さんは間違いなく意味は読み取れる方なのです。

先日講演でお話ししましたね。
人は誰でも、何らかの出来事が降りかかってきたとき、そのことが自分の生きる力を削いでしまうようなことであれば、例えどんなに立派な方であっても前頭葉は老化を加速し、本来の力は発揮できなくなります。
 〇〇さん
ここ1~2年前、大きな出来ごと、生きる力を抑え込んでしまうような出来事があったはずです。今、そのことに負けてしまおうとしていますよ。
 講演では、それを退職とか病気やケガ、トラブルの発生などといいましたが、何であっても〇〇さんがそのことに大きなショックを受けて、それまでのような生活ができなくなるようなことが起きたのです。
いや、言いなおしましょう。生活はできているでしょうが、生活に立ち向かう気持ちが、そのことが起きる前といまでは違ってしまっているのです。
ここまで書くと、〇〇さんはきっと膝を打って「確かに思い当たることがある!」といわれると思います。
 多分そのことは、消し去ることはできないはずです。でも、負けないでください。
私の講演が企画され、その講演を聞きに来られた。いつもはしないテストが実施され、そして〇〇さんがテスト結果に違和感を覚えた…ここで引き戻るためにチャンスが与えられたと思ってください。なんというタイミング、すごいご縁だと思います
元気を取り戻す工夫をしましょう。
まず歩くこと、体を使うこと。なにかの運動をなさってますか?新しいことを始めるのも悪くない。思いつかないならもちろん散歩でいいのです。一つ目的を持って歩くといいでしょう。花を見る。興味ある展覧会やギャラリーに顔を出すこともあっていいです。カレンダーにでも歩数を書いて、親しいお友達に報告すると、さぼれません。
いま親しいお友達といいましたが、脳が一番活性化するのは人と楽しく会話している時です。この前私がしたのは一方的な講義で、あれは会話ではありません。会話の時には自分も相手も、ことばに注意を払い、同時に表情や声の調子にも心を配らないといけないでしょう。前頭葉の注意分配能力がないととても対応できませんので、いい活性化訓練になります。
植物がお好きといわれてましたね。せっかくなので、写真を撮ってもいいし、鉛筆でも水彩でももちろん油絵でも、描いてみるのはどうですか?
最近は写真アルバムを作ることは簡単になってますから、作ってみませんか?作るだけでなく、お友達にあげて感想を聞くこともいいですね。
私たちはもうプロになる必要はありません。今までプロとしてきちんと第一の人生を生きてきたのですから、これからはいかに楽しめるかにかかっています。
 今は絵の話をしましたが、音楽でも全く同じです。どちらも右脳。
具体的な趣味の内容は私の小冊子を参考に、探してください。やったことがなくとも3か月は続けてみて、それでも合わないと思ったらどうぞやめていいんです。ただし次に挑戦することを決めてからです。
もう一つお話しさせてください。
さしあたり、講演でお話ししたように「楽しい変化のある暮らし」を目指せばいいのです。「今日も楽しく生きていてよかった」という生活が実現できた時、それで満足できるならそれで何の問題もありません。
ただ「楽しむだけでいいのだろうか?」という気持ちが少しでも湧き上がってきたら、人との交流それも人のためになることを探してみていただきたいと思います。その中で得られる喜びを、至高のものと思うタイプの前頭葉がありますので。
いつかお目にかかれることがあるのかどうか。お会いすることは難しくても、お元気を取り戻してくだされば私はうれしいです。
これを機会にイキイキとして楽しい生活にチェンジしてください。3か月がんばると、前頭葉が元気になったと実感できますよ。
書き始めたら、書かずにいられなくなって長いお手紙になりました。私の真意が伝わりますようにと、願いながら終わりにします。
どうぞお元気に!体も脳も!高槻 絹子」

このように、脳が老化を始めたときには必ず自覚があります。
「何か変。いつもの私とは違うみたい。こんなはずはない」
全部前頭葉の機能低下を自覚している言葉です。
それなのに気づかないふりをして「大丈夫!歳を取ったら誰でもあります」というような慰めでなく、そのときにきちんと指摘してあげることは、その人の尊厳を大切にしていることだと思います。
だからこそ、脳機能検査という客観的な指標は大切です。

何年たっても、原理原則は不変だということを感じたので掲載してみました。




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ChatGPTの力を試して、考えた。

2023年04月11日 | エイジングライフ研究所から
先日、ChatGPTの誤答をどうにか修正してあげたかったのですが、不首尾に終わった顛末は
ChatGPTを教えてみた😆に書きました。
今朝もChatGPTを開発したオープンAI社のCEOが初めての海外訪問国として日本を選び、岸田首相とも会談したというニュースが流れ、そのことに対するいくつかの意見を聞きました。
大学でも使用を制限したり、そもそもChatGPTで論文を書いたら厳しい処分で対応するなど発表していますね。
(写真は4/11のニューヨークランプミュージアム)

今日は、ChatGPTのお手並み拝見という試みに挑戦。私が知っていることでないと回答内容が正しいかどうかジャッジできないので、知っているテーマを投げかけてみます。


さらっと眺めたら、合格点をあげられますよね。
私たちエイジングライフ研究所は「脳機能から認知症を理解する。その結果、認知症は脳の使い方が足りない(廃用性機能低下)ために起きてくるもので、いわば生活習慣病である。その意味で予防も、早期に対応すれば改善も可能である」という考えのもと、市町村に認知症予防活動の指導を重ねてきた結果、この独自の主張を確信することとなりました。

問題は、世間一般というか世の権威は認知症をそのように捉えていないことです。
アミロイドβとかタウタンパクとか脳の萎縮に原因を求めています。最近は生活習慣に言及する方達も散見されますが、あくまでも基本は上記の3種類。

生の認知症、それも重度に至るはるか以前、正常から脳機能と生活実態に注目したら、世の中の認知症の多くは「高齢者がなんらかのきっかけから、生きがい趣味交遊なく運動もしないナイナイ尽くしの単調な、楽しみのない生活を続けるうちに、だんだんに社会活動そしてその後家庭活動に困難をきたしてくる」タイプであることがわかるのです。
それをアルツハイマー型認知症と名づけています。

一方で、とても若く生活は普通に続けているにも関わらず、認知症の症状が発現し、しかもそのスピードが考えられないほど早く、1〜2年という短期間に全面介助が必要なレベルになってしまうタイプの認知症が、ごくごく少数あります。
これこそが、ドイツのアルツハイマー博士が見つけ若年発症の特殊な認知症として名付けた「アルツハイマー病」なのです。
特徴は、まず筆頭にくるのが、若年発症(私が関わった方は34歳でした)、次に老人班(アミロイドβの沈着)さらに神経原繊維変化(タウ蛋白が原因)そして脳の萎縮が見られるというものでした。
ちなみに、その頃、高齢者のボケは「老年痴呆」と呼ばれていました。

その老年痴呆の方の脳をたまたま(普通はほとんど解剖することはありません)解剖してみたら、アルツハイマー病の特徴と同じ特徴が発見されました。
そこで「老年痴呆」を「アルツハイマー型老年痴呆」と呼ぶこととなりました。
続けて、アメリカではアルツハイマー病という診断名になり、早発型晩発型とわけたのです。
日本に入ってきて、そのすべてがごちゃごちゃになってしまったということは、ここまでの説明でわかっていただけたでしょうか?一番困るのは遺伝子異常で起き避けることのできないアルツハイマー病と、ごくふつうに見られるアルツハイマー型認知症を混同してしまっていることです。この二者は全く違う発症の機序を持っている、名前が似ているだけの全く違う病気です。経過も違います。

世間の考えを大転換させるとき、従来信奉されてきた意見と正反対の小さな声であることだってあるはずです。
でも、今日はそれを教えるよりも、「今の研究成果というか主流の考えをよくまとめたね」と労ってあげたくなりました。
同時にここにもChatGPTを利用するときの注意点が隠されていることが実感されました。
判断するときには、できるだけ多くの正しい情報が必要です。体験でしか身につく情報はない時代が延々と続き、ついでそれを書物で、最近ではネット検索で求めていたのですよね。ネット検索の場合は玉石混交ということは常に指摘されていましたが。
ここでもう一つ考えてみると、その情報の正誤を見極めるのは、自分の前頭葉。
前頭葉機能を作り上げていくためには、自分が実際にやってみることが必須なのだということを、よく考えるべきです。
教えられたことを受け取るのは左脳だけでもできること。知ってることと、前頭葉が関わってそれを自分の武器にできることには大きな違いがあります。
自分が実際に動く、納得するという体験が大切です。
判断という前頭葉機能の発揮場面の他にも、従来の検索だと、それでもどの部分を使うか、順番はどう構成するか、など自分の前頭葉が関与するところが出てきますが、ChatGPTのように出来上がってしまっている文章に接すると、そのままに受け入れてしまうことは十分に考えられます。
体験に裏付けられた「前頭葉機能(自分そのもの)」が大切だということになりますね。






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ChatGPTに誤りを教えてみた😆

2023年04月05日 | 前頭葉の働き
友人が「ChatGPTにも関心を持つように」とマスコミ報道に先駆けて関心を向けさせてくれたのは、まだ2月のことでした。

それから一月ほど経って、ライン友達から「ラインでChatGPTが使える」と連絡があり、なにごとにもミーハー精神で早速使える状態にしました。が、聞きたいことがない。
ガイドに読書感想文とあったので『星の王子さま』の感想文を書いてもらったら、なかなか深く哲学的なことまで書いてあってびっくりしました。
そこで『坊ちゃん』の感想文を要求してみた顛末です。3月15日にスタートしました。3日間にわたって、やりとりしたのです。
最初の回答です。

なんということ!大間違い。友人に話したら「教えてあげないといけないみたいよ」ということなので、指摘しました。

教え方がわからないので、チャットAI君も困ったかもしれません。
それにしてもさすが文章生成が売り物だけあって、言葉遣いは上等ですね。敬語もバッチリ。
でも、内容が間違っている。それも言葉遣いと同じレベルの完璧さで。

めげない私。
チャットAI君、理解悪過ぎじゃあないですか?

どうしても真意が伝わらないので、私はお手上げ。
だいぶ時間をかけたやりとりでしたが「知っていること」だったので、チャットAI君がどんなに丁寧な表現を駆使しようとも、次々に反論できましたが(そして諦めましたが)知らないことを尋ねたとしたら、これは大変なことになってしまいます

さくらの里。紅枝垂さくら
最初の回答を全面的に信頼してしまうに決まってます。
チャットAI君はなんでも知ってるけど、その内容の深いところや、私たちが感じるその情報の価値のようなものには、とんと関心がない。
前頭葉があるかないか?
今回のような単なる知識がベースになるものならば、使い方に習熟できれば便利なものかもわかりません。チャットAI君ももっともっと知識を増やして間違いを回避する必要はあるでしょうけど。
ただ、体験や知識を積んでも「その人」がどう感じどう評価するかという学習は、結局のところできないのではないでしょうか?
「自分」が「自分の人生」を生きることは代行はないと思います。

さくらの里 鬱金桜
使う側が承知していけば棲み分けはできるのではないかなあというのが、感想でした。




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ブログ村

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