脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

iPS細胞でパーキンソン病の治療始まる

2018年09月04日 | これって認知症?特殊なタイプ

猛暑だか酷暑だかの8月も終わり、もう9月になりました。
一か月間全部遊びの記事だったことは、2005年のスタートから初めてのことだと思いますので、今日はちょっと真面目に取り組みたいと思います。(写真は伊豆グランパル公園グランイルミより)

ちょっと旧聞に属しますが、「京大で、iPS細胞を使ったパーキンソン病の治験が始まる」というニュースが流れました。目にされた方々は「これでパーキンソン病が治る!」と思ったのではないでしょうか。
見落とした方のためにちょっと詳しく書きましょう。
「人間のiPS細胞から作られた神経細胞を、パーキンソン病患者の脳に移植して症状改善を図る臨床試験が始まった」ということは、パーキンソン病の発病原因と大きく関係しています。
「パーキンソン病は、脳内の黒質というところにあるドパミン細胞が変性して、ドパミンが足りなくなるために起きる」ということまではわかっています。
だから、移植した細胞がドパミンを出してくれたら、根本的な治療につながるのです。

もちろん私もこの治験がうまくいって、パーキンソン病の方々が笑顔になることを願っています。この治験が成功すると「世界で最初」というような名誉も伴うのですから、ほんとに成功してほしいものです。
けれどもこの記事を読みながら、「世の中の人たちが誤解することになるなあ」と気が重くなったのも事実です。今日はその間違いを解説したいと思います。

その前にちょっとだけ、パーキンソン病のおさらいをしましょう。
パーキンソン病の症状としては
①歩く速度が遅くなる。歩幅や腕の振りも小さくなる。歩き出そうとすると足が出ない(すくみ足)こともある。とにかくなかなか動けない。
②手足のふるえ。高齢者に見られるふるえ(本態性振戦)は、何かする時に大きくなるが、パーキンソン病の場合は安静時に細かく震えるところが違う。高齢者のふるえは手の他、頭や声にも起きる。
③筋固縮。肘、手首、首などの関節部分を、検査者の手で動かしてみると、ちょうど歯車を動かしたようにカクカクとした動きを感じる。
④姿勢反応障害。ちょっとバランスを崩すとバタッと倒れてしまう。
上の上の四つがパーキンソン病の4大症状といわれるものです。
臨床的に目立つその他の症状として仮面様顔貌があります。無表情でまばたきも少なく、一点を見つめていてまるで仮面のような印象を受けます。そして私の印象としてはちょっと脂ぎっているような感じも受けました。
パーキンソン病という診断が確定すると、投薬治療が始まります。逆に言うと薬が効かないならパーキンソン病ではないといえます。最初はよく効きますが、次第に効かなくなり組み合わせを変えたり、別の薬にしたり。手術をすることもあります。
私には詳細はわかりませんが、今回の治験を受けられる方々は、皆さん最低ここまでは治療を受けられた方々のはずです。

さあ、ここからです。
「うちのおばあちゃん、パーキンソンなの」
「歩き方がね、トボトボしてるから病院に行ったらパーキンソンって言われた」
「無表情が気になって先生にかかったら、パーキンソンだって」
実は、最近は「パーキンソン」に変わって「レビー小体型認知症」といわれる割合がどんどん高くなっているような気もして、ブログに書きました。

「レビー小体型認知症」って増えてますが。


確定診断に関してはまだ「パーキンソン病」のほうがましですね。
ところが、パーキンソン症候群という言い方もあります。もともと、パーキンソン病が先に確立されて、その時に見られる症状は4大症状として先に挙げました。
その後、パーキンソン病の時に発現する症状と同じものに対して、パーキンソン症候群と言い習わしたのです。一見パーキンソン病と同じように見えるけれども、詳しく調べると別の病気かもしれないものもひっくるめてパーキンソン症候群と。薬の飲み合わせが悪い時にだって起こります。

もちろん小刻み歩行や無表情の症状はパーキンソン症候群といっても差しさわりはないのです。
一方で、小ボケの方たちは、前頭葉機能が低下していますから、その結果として小刻み歩行になるし無表情にもなります。
その状態で受診した時にドクターが「パーキンソン症候群があるね」といわれても何の不思議もありません。さらに「パーキンソン症候群」と診断はされても「パーキンソン」と口にされるドクターがいらしゃらないとも限りません。

ところが診断を受けた側は「『パーキンソン』と診断された」と妙に納得してしまう・・・
その人たちみんなが「『パーキンソン』の凄い治療法がもうすぐ確立される」と喜んではいないでしょうか?

ドクターは「パーキンソン症候群」と診断し、そう言われた側は「パーキンソン(病)」と思ってる例は、とんでもない数にのぼると思います。その大多数は前頭葉機能低下(小ボケ)の症状である可能性が大きいです。
「パーキンソン(症候群)」という診断を受けたということで、妙に納得してしまっている小ボケの患者さんや家族は、もともと積極的な脳リハビリをやりません。そのうえに「治療ができるんだから」と安心して何もしないでいると、脳機能の低下はどんどん進んでしまいます。

京大の治験が成功したとしても、その治療が効を奏する真の「パーキンソン病」の人たちは、少ししかいないことを肝に銘じましょう。前頭葉機能低下だけの小ボケ状態なのにパーキンソン(症候群)といわれた人たちは、イキイキとした生活を取り戻して、脳の活性化を図る方が大切です。

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8月の右脳訓練ータニタ食堂と丸の内界隈(後半アルツハイマー病の解説)

2018年08月27日 | これって認知症?特殊なタイプ

今回の東京行きでは、もうひとつ計画がありました。
タニタ食堂。体重計や体組成計などの健康計測機器メーカーのタニタが社員食堂のヘルシーメニューを丸の内で提供、というニュースはずいぶん前に知ったのですが、場所までは調べていませんでした。

今回映画館から美術館の道順を確認していた時に発見。ランチは丸の内タニタ食堂でと決めていました。
いくつか目に付く工夫がありました。
注文したのは日替わり定食で、野菜沢山の味噌汁、鶏胸肉のキノコあんかけ、野菜の小鉢二つの一汁三菜。

野菜を多く、また大きく切る、火を入れ過ぎないなどの工夫で、噛み応えを残し満足感を満腹感を引き出すのだそうです。
テーブルにスケールが置いてあって、「ご飯は100gを目途にしましょう」との説明があります。自分でよそうのですが、私は少し少なめでした。

もう一つは、食事に20分はかけましょうということで、20分を表示してあるタイマーが。ゆっくりよく噛むと同時に満腹感を感じる時間でもあるのですって。残念!ちょっと早過ぎた。

このような工夫は、実体験が伴うだけに効果的ですよね。
一汁三菜は、だいたいクリア。問題が一つ出来。薄味といわれる私の舌でも、やや塩分が足りないのではというくらいの薄味。つまりもっと塩分を控えなくてはいけない…それだと夫からクレームが出てきそう…
帰宅してからちょっとチェックしてみたら、全国展開していたのに、秋田店が撤退とか。薄味すぎるのかもと納得してしまいました。
日比谷ミッドタウンからタニタ食堂に移動中、丸の内シャトル発見。

このバスにも一度乗ってみたかった!
路線図で確認したら11番から乗って13番で下車なのですが、ぐるりと一回り9番で降りました。30分間車窓からの丸の内見物。新旧ビル、特にオープンのニュースを聞いていたホテルを何軒も見て、ホテルラッシュを納得しました。金融機関の多いこと。それから新聞社も集中してることが実感されました。

乗り場は11番第一生命。一時間4本運行というお知らせだけで、バスの時刻表はないのです。

少し待っていいる間に、ここは戦後GHQが置かれたビルだと気づき、意を決して入って見ることにしました。

正面にエスカレーターが4基。下の写真は右半分。これと対称にもう2基。真ん中に特別警戒中の警察官が。実はこの建物の左側と右側にもほとんど同様の大規模入り口がありました。

エスカレーターまでの広いロビーで視線を横にすると、大きな絵画作品が展示されていました。

第一生命が現代美術VOCA展をサポートしているらしいです。

南北ギャラリーに過去のVOCA展の大作が沢山展示されていました。石造りの重厚感と高い吹き抜けの開放感が作品を引き立てているようでした。珈琲で一服し、思いがけずゆっくり第一生命ビルで遊びました。

30分のドライブそして下車後、三菱一号館美術館への道すがらまたクラッシックなビル発見。
この明治生命館は、古典主義様式の最高傑作として高く評価され、1997年(平成9年)5月に昭和期の建造物としては初めて国の重要文化財に指定されたものです。

ここでもマッカーサーが出席した会議が開かれたとか。この入口から出入りしたのでしょうか。
「第一生命保険相互会社」は右から左の横書きでしたが、ここは「明治安田生命保険相互会社」と左から右の横書きでした。
竣工が昭和9年と早いのでちょっと気になりました。戦後改修の際にこうなったのかもわかりませんが、先日縦書きと横書きについて調べたのでこんなところに目がついたのでしょう。こうやって興味がつぎつぎつながっていくのも、脳(まさに前頭葉機能)の面白いところですね。

アイアンの細工がみごとです。

見上げてびっくりしました。まるで外国みたいです。華麗な装飾が特徴のコリント様式の巨大な柱でした。

こういうエクスカーションも楽しいものです。
大学生の時、母と一緒に霞が関を通った時「あ、文部省、外務省、厚生省」「国会議事堂!」「あのレンガ造りの建物は?」と大喜びしたことを思い出しました。母子って似るんですね。
そしてもうひとつ思いました。
「父がボケちゃったから、僕もボケるでしょうか?」「母がボケちゃったから私も心配」という質問をよくされます。
遺伝性といわれるタイプ(これが本来のアルツハイマー病)は、認知症の中で1~2パーセントととても少ないのです。遺伝子異常を持って生まれますから、生活実態にかかわらず必ず発症し進行もとても速い。そしてこのタイプは若年発症という特徴もあって、ほんとうに大変な病気です。
私は数千人の認知症の方にお会いしました。その中でこのタイプ(本来のアルツハイマー病)の方は、たかだか数十人しかいらっしゃいませんでした。そして両親ともにボケてないのに、突然その人だけ発症してしまった方がほとんどでした(孤発性といいます)
家族の中に遺伝子異常が共通している家族性といえるケースはたったの2例でした。

親子でボケることももちろんありますが、生き生きとした生活をしていたのに、そして双方とも50歳代までに発病し、急速に進行してしまったのなら「遺伝性しかも家族性」。
二代にわたってボケた場合は、「高齢になって何らかの出来事をきっかけに生きる意欲をなくし、趣味も生きがいも交遊もなく運動もしないナイナイ尽くしの生活を続けていった結果、だんだんにボケていった」という共通点があるはずです。これは「遺伝子異常」によるのではなく、単にその家庭の「文化継承」と考えればいいのです。仕事一筋、趣味や友人もなく、何か起きてしまえばナイナイづくしの生活をするしかないような、よくない文化は継承しないようにしましょう(笑)

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若年性認知症の定義をはっきりさせましょう

2018年02月19日 | これって認知症?特殊なタイプ

友人から電話がありました。「急いで、NHK教育を見て!」ー2/15放送のハートネットTV  認知症にやさしいまち(3)

夫と顔を見合わせながら「多分、また側頭葉性健忘ね」と言いながらチャンネルを合わせました。大当り!
画面には、イキイキとした表情の初老の女性がリンゴをウサギ型に向いていました。手際は全く危なげなく、出来上がりもきちんとしたものです。楽しげに談笑しながら次々にリンゴをむいていきました。
Jガーデンに泊まりました。

「子ども食堂」で働いているシーンが続きます。リンゴを、誰にも指示されずにデザートのお皿にのせていきます。
子どもたちが食事を始めました。
その女性は、子供たちの背中から、そっと体を触ったりしながら、笑顔で話しかけています。
部屋をあちこちと動いている動作も機敏、話しかけ方にも無理もしつこさも感じられません。気配りをしている様子がよく伝わってきます。もちろん着ている洋服もごくごく普通。作業しやすく清潔な感じ。
「どこが?この人認知症なの?」「何が変なのかわからない?」を、テレビを視聴していた人は全員が思ったはずです。
この窓の向こうに大島。そして朝日が上がります。

でも次のシーンで、またびっくりすることになります。
世話をしているスタッフの発言「よかったね。手をかけたリンゴ、やっぱり評判がいいですよ」
その女性「えッ…リンゴが評判って、わからない…すみません、私パッパラパーで」と言いながら、表情は明るさを保ち、内心は動揺しているかもわかりませんが、笑顔で応対しています。
(この「内心は動揺してるかもわかりませんが」というところに注目してください。
大人が社会生活をこなしていくときに、内心の動揺をそのままに出してしまうことは、よほどの大きなショックを受けた場合か、
相手がそれが許されるほど親しい場合だけのはずです。つまり多くの場合その場にあった反応にチェンジして対応します。「この苦笑いっぽい反応」に、私は、まさに大人としてのその人の前頭葉の働きを感じました)

視聴者は今まで見てきた女性の、全く別の面を見せつけられて唖然。
「今まで見てきた人と同じとは思えない」
「若年性認知症って怖いなあ」
「あ~これがボケなんだ…」
そして、ちょっと思うでしょう。
「自分が、直前にむいたリンゴのことを忘れるかなあ?」そこで「いくら何でも、それはない!」と思えたらびっくりしただけで終わります。
「直前のリンゴは忘れないかもしれないけど、私だって最近あれこれ忘れることと言ったら、いつも怖くなるほどだから…もしかしたら…私もいつかというか近々、若年性認知症って診断されるかも」と思った人にとったら、この番組を見た後では不安が渦巻いてしまうことになりますね。
掃除の行き届いたベッドルーム

放送は、その女性の夫へのインタビュー場面に変わります。
「子ども食堂に行くようになって、明るくなったし会話が弾む」
「最初に受診した時、お医者さんは『5年もたつと動けなくなる』って言ったけど」
「生きがいを見つけて、脳も体も活性化したんだろう。イキイキしている」
(退職後、自信をなくし家にこもっていれば、脳の老化は早まります。その部分が元に戻っていったことを、夫は見逃していませんでした)
この女性は、訪問看護ステーション(多分、そうだったと思います。私の記憶があいまいです(笑))で働いている最中に仕事に支障をきたし、受診の結果上記のように「若年性認知症」と言われ、結局は退職したのですが、このインタビューの最中にも退職の経緯は「わからない、私パッパラパーだから」と笑ってその場を過ごそうとしました。
夫によると予想通り
「訪問の約束をしても、全く忘れてしまって、すっぽかしてしまって…それが何度も繰り返されるものだから」と新しい記憶が入っていかなかった事実が述べられました。何度もここで説明した通り、これは側頭葉性健忘であって認知症ではありません!

「物忘れがあるから認知症」というけれど

ここをクリックしてみてください。側頭葉性健忘について具体例を中心に15回解説してあります。
脳の機能から見ると、認知症と側頭葉性健忘とは簡単に区別がつきます。前頭葉機能が正常なら側頭葉性健忘。今日の記事で青色で書いた部分が、前頭葉が正常に機能している証拠です。
そしてこの部分こそ、普通のアルツハイマー型認知症を介護した家族からみたときに「これが認知症⁉。うちのおばあちゃんと全然違う」点なのです。
温室 だいたい年中ブーゲンビレアが咲いてます

慌てて電話をくれた友人が、番組終了後また電話をくれました。
「NHKなのに!今日の人と普通のボケの人と一緒にしないでほしいのよ。ボケってあんなものじゃあない!」彼女はたまたま3人の認知症になった家族の介護をした経験があります。
「あれっ。齢のせいかなぁ、変だなあ。でも立派なことも言うし‥と右や左に揺れながら不安に思ってるうちにおかしなことが増えていくのよね。
どう考えても『これはボケなんだ』と思い、誰に言っても『ボケちゃったねえ』といわれるところまでは何年もかかったけど。
最初に気づいた頃って、表情がなくなって、ボーとして居眠りしてるのよね。キビキビしてないの。自分じゃあ何もやらないし。それじゃあいけないと思って家事やら頼むと変なの。全然できないという訳ではないけど、今日みたいにシャキシャキできないし、ひとつずつ指示を出さないと頓珍漢なことにすぐなってしまう。それなのに何か言うとちゃんとした言葉で立派な返答とか嫌味な返答とか返ってくるわけ。今日の人とは全然違う」
そうです。今日の人は認知症でありません。前頭葉がちゃんと働いているのに新しい記憶が入っていかない側頭葉性健忘の人なのです。
20万年前に噴火した払火山溶岩流

地方に行って高齢者の方々とお話しすると、NHKは信頼されているなあとよく思います。
「NHKで言っていたけど」と質問されることもあります。NHKは専門のお医者さんや研究者の皆さんの意見をもとに、少なくとも監修はしてもらって、番組を作っているはずですから、本当に責任があるのは専門家の皆さんでしょう。
でも、よく世の中を見てみると、「普通の認知症(アルツハイマー型認知症)」が圧倒的にたくさんで、なおかつごく軽いものから誰からも認められる重度のものまで様々な状態の方たちがいることがわかるはずです。言い換えると、今重い状態の人に対して、過去にさかのぼって症状を聞いていくと、軽い状態から徐々に症状が進んでいったことがわかります。
「普通の認知症(アルツハイマー型認知症)」ではなかなか番組が作りにくい。特に重度ともなると映像化することすらためらわれます。それに比べると、側頭葉性健忘の方たちは顔を出してくれるし(表情もイキイキしています)、自分の意見も自分の言葉で的確に表現してくれるし、さまざまなことがやれるし確かに「絵に」なりやすいですね。
でも。
NHK、がんばってください。善男善女を不安に陥れるようなことはもうやめましょう。公共広告機構も同じですけど。

若年性認知症の定義を調べて、ビックリポン!一番最後に触れています。




 

 

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続 慢性硬膜下血腫にご注意

2017年11月17日 | これって認知症?特殊なタイプ

「慢性硬膜下血腫」のエピソードをまとめなくっちゃあと思いながらようやくまとめたのですが、今日またその友人から別件で電話がありました。
駿河平の銀杏並木

用事が済んだら「その後、いかがですか?」になりますよね。と言っても、本当に確認の気持ちだけで特別心配したわけではありません。
なぜかというと、慢性硬膜下血腫は、タイミングを逸さず手術を受けることさえできたら、何の後遺症も残さないのはごくごく普通のことですから。彼女のご主人は「あれ?これはおかしい!」とすぐに受診したので、心配はしていなかったのです。もちろん、経過は順調、というか元通り!

電話の声は続きます。
「それがね。今度は、昨日私が頭を打っちゃって。車のトランクを開けていたところにガンってぶつけて」
私「まあ!ご主人の時のように出血はあったの」
「出血はなかったんだけど、痛くて、痛くて…」
私「手足がうまく動かないとか、言葉が変とか、見え方が変とかはなかったんでしょ?それだったら脳はやられてないということよ。脳は痛みは感じないものだから、その痛みは頭皮の問題だから。よかったわね。じゃあ、カレンダーに印をつけて、3か月くらい先までは、頭を打った日を記録しておくのよ」と。
これで一件落着と私は思っていました。

ご主人が、典型的な慢性硬膜下血腫の経過を見せてくれて、そして何の問題も残していないのだから心配しなくてもいいと納得できていると思ったのです。が、続いた言葉に絶句。
「お父さんみたいになったらいやだから、一生懸命冷やしたのよ」
私「慢性硬膜下血腫になるかならないかは、時間がたってみてわかることなの。頭を打った時に血腫ができるかどうか決まってて、ただし症状が出るのに時間がかかり、症状が出ないと血腫ができたかどうかわからない、という説明でわかるかなあ。
冷やしたら、血腫ができないわけじゃなくて…」と言いながら「そうか!頭を打った時にできる『たんこぶ』の処置をしてる…頭蓋骨の外の問題(頭皮)と、中の問題(脳)がまぜこぜになっている」ことに気づきました。

前回ブログの説明でもちょっと言葉足らずのところがありますから、もう一度まとめておきます。
病気にしろ事故にしろ、脳の実質が壊れたら、必ず何かの障害が起きてきます。場所によってできなくなることがかなりはっきりしています。(後遺症)
慢性硬膜下血腫は頭を打ってから起きる症状なので、頭部打撲に少し絞ってまとめましょう。

頭を強く打った→その衝撃で外部への出血がなくても脳の実質に大きなダメージをこうむった。頭蓋骨骨折を起こした時には鼻や耳からの出血がある場合もある。→意識障害や嘔吐やけいれんなど生命の危機的状況。このように損傷が大きい時は脳挫滅、軽微な場合は脳挫傷と使いわける。

頭を強く打った→脳震盪を起こし短時間意識がなくなる場合もあるがその後、何の後遺症も起さない。この場合は脳の実質には損傷はなかったと考えればいい。
かけがえのない脳を守るために、脳膜や脳脊髄液や頭蓋骨や頭皮や毛髪で、脳は幾重にも大切に守られている。

ただ、強く打ったために頭皮に内出血は起きることはよくある。頭蓋骨があるために外にぽこんと膨れ上がる(たんこぶ)また頭皮はとても厚いし毛髪もあるので出血しているように見えにくい。
体だと内出血しても内部に出血できるのでコブにはならないし、出血したところが色づく。からだの骨は保持や運動するために筋肉に覆われているが、頭蓋骨は動かす目的はなくて脳を守るためだけにあるから筋肉は不要。筋肉がないためにコブになる。同じ頭部でも顔面の額から下の方は、表情を作るための筋肉が細やかな働きを果たすために発達しているから、コブはできないし内出血の色も外から確認できる。

強く打った時に、内出血ではなく、頭皮が切れる場合もある。そのときは頭皮には多くの血管があるので出血量が多くなりがちで驚くことになるが、脳内出血とは全く意味が違うので心配することはない。いわゆる「傷の手当て」をすればよい。

私は医者ではありませんので、以上に書き記したことは仕事上や生活してきた中で理解し、蓄積したことです。今日の青空のようにすっきりと理解できますように。



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慢性硬膜下血腫にご注意

2017年11月13日 | これって認知症?特殊なタイプ

久し振りに友人から電話がありました。8月に入ったころだったでしょうか。
写真は「城ヶ崎海岸Jガーデン、秋。」
Jガーデンのオーナーの石井さんはシダの収集家として有名ですが、珍しいネストリーブス

 
「変わりなくお元気?」と問いかけるのと「実はね…」という言葉とどちらが早かったのでしょうか。
ご主人(76歳)が納屋の二階から落ちてしまった!というのです。
絶句してしまった私に「すぐ病院に行ったけど、おかげさまで大したことはなくてそのまま帰っていいことになったのよ。骨も折れてなかったし不幸中の幸いだったと思ってる」と安心の言葉が続きました。
「頭は打ってないの?」と尋ねると「それが打っちゃって、すごく出血があったの。びっくりしたぁ。でも、脳外科の先生がCTだか撮ってみてくださって何ともないですよって」
ネストリーブスの二種類の葉

私「頭の外に出血した時は、頭蓋骨が大丈夫だったら頭皮からの出血ということでしょ?血はたくさん出るけど大丈夫なのよ。」
専門医にかかって「大丈夫」と診断されたのだから、これ以上言う必要はないかなあと思いながら、やっぱり言ってしまいました。
私「頭を打った時には、カレンダーに、打った日と、3か月くらい先に事故のことを書いておかなくっちゃあダメよ」

「慢性硬膜下血腫」の説明をしておいた方がいいのじゃないかと思ったのです。
頭を打って、そのときはCTをとっても異常はないのに、1~3か月くらい後にいろいろな症状が出てくる場合があります。何しろ電話ですからどこまで伝えられるかと思いながら説明しました。ここに再掲してみましょう。
私「脳は大切なものだからとっても守られてます。柔らかい軟脳膜がピタリとカバーしてくれて、その外側に、よく聞くでしょ?クモ膜下出血。そのクモ膜っていう血液がたっぷり含まれた膜がカバーします。さらにその外側に硬脳膜があるの。そして全体は脳脊髄液という液体におおわれていて、その外側に頭蓋骨。そして頭皮。そして毛髪ね。
だから、頭を打ってコブができても、そのコブは頭蓋骨に守られている脳とは無関係。頭皮の問題ね。
さっき言ったように、頭蓋骨に骨折がなくて頭の外にたくさん出血しても、やっぱり頭皮の問題だってわかるでしょ」

「ただね。こんなことも考えなくてはいけないの。お弁当箱に水を入れてお豆腐を運んでる時に落としちゃったとするでしょ。お弁当箱は何ともないのに、中のお豆腐が崩れることもあるでしょ。
脳が水に浮かんでるから、激しい衝撃で頭を打ったらもちろんその部分は頭蓋骨にぶつかって壊れちゃうけど、その揺り戻しで、ちょうど逆の場所もやられることもあります。そんな時には、左の前頭葉を打ったのに右脳の後ろ側の症状が出たりするのね。
今言ったことはとっても怖がらせたかもしれないけど、CTを撮れば見えるから見落とすことはないと思えばいいのよ」

「いよいよ慢性硬膜下血腫の説明です。
頭を打ったその時は、脳には何の損傷もなく、だからCTをとっても『何ともありません。きれいです』と言われるのだけど、しばらくたった後で『おかしなこと』が起きてくることがあります。
頭を打った衝撃で静脈が傷ついて、徐々に出血していって硬膜の内側、これを硬膜下って言いますけど、ここに血腫を作るの。その血種が大きくなっていくと、硬い頭蓋骨は押せないから、柔らかい脳を押さえることになるでしょ。押さえられた部分の脳はうまく機能できないから症状が出るというメカニズムなの(正確にはちょっと違う点もありますが一般的にはこの理解でいいでしょう)。
どこに血種ができるかによって出てくる症状は全く違うことになるのね。
うまく歩けない。手に力が入らない。ボーとしている。何を言ってるかわからない。変なことをする(確かに右脳障害は『変なことをする』としか言いようがないけれど)。またはできていたことができなくなる…こうして症状を説明するとボケたみたいでしょう。この慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症は手術で治る認知症として、マスコミでセンセーショナルに取り上げられることが多いから、気を付けていてね。
(関心がある方はこちらもお読みください)

正常圧水頭症の診断には「急激な変化」が必須条件

高齢者やアルコールをたくさん飲む人は脳の萎縮が進んでいることが多いから、頭を打ってから時間がたってから症状が出ることが多い。だって脳がピチピチ状態で頭蓋内に収まっていたら、血腫ができたらすぐ圧迫が始まるでしょ。とはいえ血腫のできるスピードの差もあるでしょうし、だから1か月から3か月くらいの期間を見るのよね。

だから10月くらいまでは気を付けていてね。変なことが起きたら、すぐ脳外科に行くのよ。冬になるころまで大丈夫なら、もう忘れていてもいいけど」
当然ですが、「どんなことが起きるのか」と心配そうな返事がありました。
「ウーン。どこに血腫ができるかわからないからどんな症状か言えないけど、絶対わかるから。それとあれあれという間にどんどん症状が出てくるから見落とすことはないから」と励ましにもならないような励ましをして電話は終わりました。
トックリヤシ

10月末に電話がありました。
「ありがとう!この前、慢性硬膜下血腫の話してくれてて!」
私「えっ!血腫ができちゃったの!」
「でも、もう手術も終わって退院もして普通に元気にしてるから心配しないで!」
私「慢性硬膜下血腫は、タイミングを外さないで先生のところに行けたら、脳外科では一番簡単なオペって言われてるくらいだから、そして後遺症なんか残さないから心配はしないけど…万一のためにと思って言ったんだけどねえ、まさかね!」
ふたりの間では「!」の連続みたいな会話が続きました。
リュウゼツラン

私「ところで、どんな症状だったの?すぐわかったでしょ。病院に行かなくっちゃあいけないって」
「ほんとに、言われたとおりだったの。
なんか『左手がおかしい』って言い始めたの。
スーパーに行って買ったものを袋詰めにする時、いつもきちんと入れて『上手だなあ』と感心するんだけど何だかメチャクチャで、私が代わったくらい。それから、自転車に乗ってるのを見たら左へ左へ寄って行ってしまって落ちそうになるし、車に乗ったら『変だなあ。シートベルトがかけられん』というの。
だからすぐに病院に行ったらそのまま入院だった。
考えたら、けがをした時に先生から『何かあったらすぐ来なさい』って言われてたけど、この前の説明で慢性硬膜下血腫のことがよくよくわかってたから、あまりビックリもしないで病院に行けたし、手術と言われてもショックじゃなかったのね」

このブログを読んでくださってる方は、まさに右脳の症状が出ていることがわかるでしょう。
私「CT見せていただいたの?血腫ができていたのは右耳のちょっと上のあたりだったんだけど」
「え!なんでわかるの。ここが右耳なんですけどと説明があったの。その上だった!」
説明が重なる部分もありますが、脳の左側に慢性硬膜下血腫が起きた場合にはこんな症状が。左右でまったく違うことに感動しますね。

慢性硬膜下血腫で初笑い

バオバブの実

この話には続編があります。長電話になったことを白状しなくてはいけませんが。
「お父さんの幼なじみがおんなじ慢性硬膜下血腫でオペしたのよ」
私「頭を打ってからどのくらい?」
「それが、いつかは分からなかったんですって。ただ慢性硬膜下血腫の症状があってオペしたみたいの」
私「どんな症状だったの?」
「靴を履いたまま、寝ちゃったり、ボタンがかけられなかったりで洋服がうまく着られない…それも急にそうなったんだって」
私「やはり、右側ね。頭を打ったのがいつか分からないって、もしかしたらお酒をたくさん飲むんじゃないの?この前言ったみたいにアルコールが過ぎる人は脳の萎縮が進んでいて血腫が大きくなって初めて症状が出るから、頭を打ってずいぶん経ってから症状が出ることが多いのよ。しょっちゅう酔っぱらっているのかも。だからどこかで頭を打ったに違いないということで皆が納得したんでしょう。オペがうまくいっても、後の家族関係は難しいかも」
なぜこんな話になったかというとこの友人とはいつも認知症の話をしている間柄だからです。これも彼女とのおしゃべりでした。よかったら。

「親をみたことがない男って所詮こんなものよ」と看護師さんが。



 

 

 



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正常圧水頭症の診断には「急激な変化」が必須条件

2017年01月07日 | これって認知症?特殊なタイプ

この記事は2011年8月「劇的回復!と喜びすぎないで。正常圧水頭症」としてアップしたものです。(レイアウトのずれが直せません)
昨夜フェイスブックを読んでいたら、お母さんが正常圧水頭症からある程度回復した方の投稿がありました。関連していますので再投稿します。

N県T市のK池保健師さんから電話があったのは、夏の直前だったでしょうか。検査は6月16日実施でした。
「急激な変化なんです。娘さんもおかしいっていってます。MMSも変と言えば変だし・・・得点と30項目も合わないようだし・・・とにかく、変なんです」
2011_0824_103400p1000246
言いかえれば、いつも強調している

   A:脳機能検査
   B:生活実態
   C:生活歴

この三つの関係が
「Aもおかしいし、Bとも合わないみたいだし、とにかく急激な変化だって家族が言ってるんです!」

私の回答

「MMSの低下順がおかしいというけれど、たまたま間違ったんじゃなくて実力としても本当にできないのですか?その確認はしてありますか?」
私たちはAの低下順がおかしい時は、まず「検査上の不備があったのではないか」と考えます。再確認やその他の方法を駆使してもなおその項目が本当に能力的にできないのかどうか、確認しなくてはいけません。

→テストの再確認
「30項目と一致しないみたいというけれど、家族関係はチェックしてありますか?ご本人が難しくて関係性が悪いことだってありますね。そうするとより悪い結果になるんですよ」
生活実態とのずれがある時には、「本当に正しく申告されている」ことを確認しなくてはいけません。

→生活実態の再確認
「急に変になったと言うけれど、本当に急なんですか?K池さんがその人をよく知っていて、ほんとに直前まで普通に元気にしていらっしゃったことを知ってるんですか?」
とくに家族は「今までは大したことはなかったのですが、急に変になりました」といういい方をよくします。迷子や不潔行為などちょっとした大ボケに相当する事件が出来した時に、その前にはそれほどのことが起きてなかったという意味で、「急にこんなことになってしまって」というのです。

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→生活歴の再確認                                   
私たちが高齢者の方から相談を受ける時には、

   A:脳機能検査
   B:生活実態
   C:生活歴

この三つの意味するところがA=B=Cになるというつもりで事を運ばなくてはいけません。
当てはまる確率は95%くらいだと考えていいでしょう。                                                                                       

とにかくA=B=Cになるはずという姿勢が必要です。そのことを私は強調しました。ですから、K池さんの大きな疑問に対して水を差すような言い方を続けたのです。それでもK池さんは「やっぱり、変なんです」と強調します。そこで説明を促してみました。
ツバキの実
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K池さんの話です。

「家庭訪問しました。
まず、A脳機能検査ですが、前頭葉は全滅で、これはいいですよね。
MMSは15点。時の見当識は1点でした。でもカレンダーを見て答えようとしたりA4版白紙には6月って書けたり、実力がわかりませんでした。もっとおかしいと思うのは想起が1点。しかもヒントを出すと直ちに満点になるんです」

「様子を見ると、うまく歩けないみたいだし、失禁がひどいんです(これは後から聞きましたが、部屋中にパンツが干してある状態だったとか)。ボーとしてるし、春ごろお会いした人と同一人物とは思えませんでした」

「近所に住んでよく行き来のある娘さんとご主人から30項目をつけてもらいましたが、二人で話し合いながら付けてくださった結果は、1から18まですべて当てはまる。さらに25(食事をしたことをすぐに忘れる)27(家庭生活に会場が必要)30(大小便を失敗)に丸が付きます。30はわざわざ小を丸で囲んで小便だけの失敗であることを訴えていました。生活実態とかけ離れてはいないと思います」
「ほんとに急激な変化で娘さんは『何が起こったんだろう?』と泣いていました」
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「Aの低下順がおかしい。一応A≒Bとは言えるけど、良く検討すると、この点数では失禁は早すぎます。そのうえ、それを説明できるCがない。そうすると二段階方式では、次に何をすることになってますか?」と私が促すと

「受診です」

「そうですね。もう一度ご家族に確認して急激な変化というのが本当に確実になったら、脳外科の受診を勧めてあげてください」

翌々日に脳外科を受診して「正常圧水頭症」との診断が下ったという報告がありました。さっそく入院、少しして髄液を抜くことになったそうです。

先日いただいたK池さんのメールです。
「さて、○○さんですが、今は、以前の生活に戻りつつ、夫も本人も笑顔が見られております。
7月7日 髄液を抜きました。主治医からすぐに効果はでないと言われたということでしたが、『帰りには、なんとなく足の上がりが良くなったように思った』と夫が言われていました。
デイの送りだしに行っているヘルパーさんからも日が過ぎるごと歩行・物忘れが改善されてきたと報告を頂きました。
7月21日、約一カ月ぶりに 訪問して驚きました。杖なく歩け、庭の草取りもしていました。顔の表情明るく、物忘れも感じないようになり感情コントロールもしっかり出来ていました。味付けも前に戻りました。失禁も少なくなりました。本人からも夫からも『脳外科に行って良かった。良い人達と出会えたことを感謝している』と喜ばれました。
現在、転倒防止からリハビリを取り入れたデイを利用しています。
先生には、感謝しております。
髄液を抜いた後、どんどん症状が消えていったので、私もびっくりしています。良い、勉強をさせて頂きました」


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最近マスコミでも、手術で治る認知症ということで、今回のような正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫が、センセーショナルに取り上げられていますが、知っておかなくてはいけないことが二つあります。

まず最初に知らなくてはいけないことは、その頻度は非常に低いことです。
考えても見てください。このT市で、もうすでに数百人の脳の健康チェックが行われていますが初めてのケースですよ!

もう一つ心しておかなければいけないのは、このように簡単に劇的に改善すると、「どうにかして、うちのおばあちゃんも劇的に改善させたい」と思ってしまう家族が出てくることです。

認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症(脳の老化が加速されたもの)は、地道な脳リハビリしか改善の道はありませんからね。
それはそれとして、今回のケースは本当に良かったですね。
AもBもCも同じように大切な情報であることがわかっていただけたでしょうか?

 

 
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若年性認知症の定義を調べて、ビックリポン!

2016年03月06日 | これって認知症?特殊なタイプ

10日ほど前の新聞記事にはびっくりさせられました。

「若年性認知症は18~64歳に発症した認知性疾患(脳血管性認知症、アルツハイマー病、頭部外傷後遺症など)の総称。厚生労働省の推計(2009年)で全国に約3万8千人いる。~」(日経新聞2016.2.23)
情報は原本にあたらなければと思い、厚労省のHPに入って見ました。
2009年の報道発表資料の中に、全くその通りの記述がありました。

原因疾患として、高齢者の認知症の原因と同じものが並んでいます。頭部外傷後遺症までも入っています。その他が17%も!
つまり、「若年性」と分類するときの基準は「年齢」だけなのですね!
テレビをはじめとするマスコミが、私たちの分類でいえば「認知症」でもない人たちを「若年性アルツハイマー型認知症」とか「若年性認知症」とかの病名で紹介して、またその番組が高視聴率を上げていることに大きな疑問や、ほとんど怒りまでも感じていたのですが、納得できました。
認知症の定義がこんなになってしまっていたとは…全く自分の不勉強を反省するばかりです。

一般的に言えば「年齢が若いから若年性ということ」は至極当然のことのように思われることでしょう。
でも、この分類法にははっきりと異議を唱えたいと思います。

まず「認知症」というものの定義をはっきりさせなくてはいけません。
「いったん完成された脳機能が、何らかの理由で全般的に障害され、社会生活や家庭生活に支障をきたした状態」という文言が一番よく使われているものだと思います。
世界保健機構のICD-10、アメリカ精神医学会のDSM-Ⅲ-RやⅣ-TRはともに記憶障害を必須としながら、前者は「日常生活動作の障害」を、後者は「社会的又は職業的機能の著しい障害」を必要条件としているなど差異が見られます。
今回調べてもう一つ大切なことがわかりました。
それは「記憶障害のみを呈する例や記銘力や他の認知機能低下を呈している例であっても社会生活や日常生活に支障がない症例は認知症と診断しない」と書かれてあったことです。(2010年日本神経学会の認知症の定義を参考にしました)
結局、どういう状態なら認知症と言っていいか判然としませんね。

特に後段の「記憶障害のみを~」に関しては、記憶障害があれば日常生活にも社会生活にも支障があるに違いないでしょう。どの程度の障害かが説明されていません。

このブログで何度も指摘してきましたが、前頭葉機能が正常に働きながら、記憶障害(新しい記憶が入っていかない)を持つ人たちがいます。
カテゴリー「側頭葉性健忘」に何例も紹介してきました。脳機能への言及がないので断言はできませんが、この方々のことを想定しているのではないかと思われます。

テレビに出てくる「若年性認知症」の方々の、表情の豊かなこと、正しく自己主張ができること、何よりも状況判断がいいことは、前頭葉機能が正常に機能している証拠なのです。
しかし、この方々には確かに「記憶障害がある」。だから短絡的に「認知症」とくくられてしまっています。
もちろん、家庭生活にも社会生活にも支障はあるに違いありませんが、高齢者に見られる「ふつうの」アルツハイマー型認知症とは全く異なる生活実態が簡単に想像できますね。

遺伝子異常による、若年発症、進行がとても速く、改善の手立てがない狭義の「アルツハイマー病(アルツハイマー博士が初めて症例報告したタイプ)」を「若年性認知症」と分類すべきだと思います。

これも定義にかかわることですが、認知症は当初「脳機能全般の機能低下」がその要件でした。
DSM-Ⅳは記憶障害のほかに「失語」「失行」「失認」又は「実行機能」の障害のうち一つがその要件となりました。前者三つと「実行機能」とでは機能レベルに雲泥の差があります。
「実行機能」は前頭葉の働きですから、そこに注目したら早期発見もできるし、側頭葉性健忘の方を「認知症」と言い間違えることもなくなるのです。

私は脳外科で脳に損傷を受けた方の脳機能を沢山測定してきました。そしてもう一つ、継続的に見た方も多くいます。トータルでは3000例はくだらないでしょう。
脳の損傷は、脳卒中でも起きるし怪我でも起きます。
損傷を受けたところが回復しなければ(多くは回復しません)それは「後遺症」という状態を引き起こします。手足のマヒがもっとも理解しやすい状態でしょう。
損傷の場所により、様々な後遺症があります。
左脳損傷のために、右半身マヒを起こし失語症になっても、なおその人らしく生活をし続けた方々がいます。
ごく軽くすみ、社会復帰までも可能かと思ったのに、実にチャランポラン。そのくせ厳しい言葉がところかまわず飛び出して、家族からも見放されてしまうタイプの右脳障害の方もいました。そのことそのものが「後遺症」だと告げるのは覚悟のいることでした。

脳卒中を起こしても、その後の生活ぶり如何で、ボケていく人もいますし、後遺症を抱えながらもイキイキを生きていく方もいました。
そしてそのカギは「前頭葉」がどのように機能して、どのようにその生活を組み立てていくかにかかっていることがわかりました。
つまり、脳卒中の既往があるから「脳血管性認知症」ということそのものにも、私は異議があります。

その大切な「前頭葉機能」も、脳損傷の方から教えていただきました。
血行再建後、WAIS(知能検査)でのIQが130くらいもあるのに管理職が務まらないと再受診された方。
事故で前頭葉がつぶされた人が、IQには何の問題がなくとも状況判断が全くできなくなり一人で社会生活はできなくなった例。
くも膜下出血の方で、手足のマヒも失語も失行も何の後遺症もないと喜んだのもつかの間、全く何もしないと会社から解雇宣告を受けた人
こういう方たちから一般的に言われるIQとは独立した「前頭葉機能」に気づかされました。

高齢者が、何かのきっかけからイキイキとした生活を失ってナイナイ尽くしの生活に入ると前頭葉機能の老化が加速されていくのです。それが認知症の始まり。
このように脳機能から認知症を理解することが、世の中に広まってくれることを願っています。
2011年1月に「認知症の病名」 と「認知症の病名(続)」としてこのブログに、現在一般的に使われてる認知症の病名に対する疑問を書いてあります。
「若年性アルツハイマー型認知症?」では、まさに若年性認知症と診断するときの問題点を書きました。
この時の講師S野さんに、思いがけないところでお会いしました。ときどきテレビや本の中で紹介されることは承知していましたが、新幹線車中のポスターです。約5年ぶりにじっくり拝見しましたよ。
S野さんも奥さまもちっとも老けていらっしゃらない。S野さんも奥さまも、むしろ若々しくなったような気もしました。

講演やマスコミ出演など、まさに、記憶障害はあってもイキイキとした生活を続けていらっしゃるからでしょう!手足のマヒがあれば必ずボケるわけではないし、失語があればボケるわけでもありません。
記憶障害だって同じことです。
障害を持てば、当然困難は伴います。けれども負けずにイキイキとした生活を使い続けることで、前頭葉をはじめとする脳機能の老化のスピードを速めないでいられるのです。つまり、「記憶障害があっても認知症にはならない。」
S野さん。そのことを見せてくださってありがとうございます。

 


 

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脳梗塞になりたくないなら

2016年01月05日 | これって認知症?特殊なタイプ

友人が去年12月に脳卒中発作を起こしてしまったのです。
でも、とても軽いものだったらしく「ちょっとしびれはあるけれど車の運転もできるし、今は普通の生活に戻ってます」と連絡がありましたので一安心しました。

脳卒中の発作を起こした人は、「また起きるのでは…」と不安に駆られるものです。
脳卒中を分類してみましょう。
1.脳出血
2.脳梗塞 ①ラクナ梗塞(ごく小さい血管に起きて、無症候性脳梗塞ともいわれる) ②アテローム血栓性脳梗塞(太い血管壁の動脈硬化が進んでおきる) ③脳塞栓(心臓の病気のためにできた血栓が飛んで血流を途絶えさせる)
3.くも膜下出血

脳出血は、血管が破れて出血するものですが、激しい運動をした直後に起きることが多いです。
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂によるものが大部分を占めます。
脳梗塞は静かにしているときに起きることが多いので、特に脳梗塞を起こした人の方が不安になるようです。(③の脳塞栓は急激に起き重症のことが多い)
再度の脳卒中を防ぐために、いろいろと気を付けるようになるのも十分に納得できますね。

 

 

 

 

 




最初に血圧のコントロールをする。食生活に注意する。飲酒や喫煙を抑制する。血の流れをサラサラにする薬を飲む。だいたいこういうことが指導されるはずです。ただもう一つ気を付けるべきことがあります。
血の流れが悪い時、例は悪いのですが、わかりやすくどぶ浚いに例えるとします。どぶの流れをよくするためには
1.どぶ掃除をする(血管壁に付いたドロドロをとる内膜剥離術、最近は新しい術法も出てきてます)同時にどぶが増えないように注意する(生活習慣病予防)
2.ドロドロの水を流さない(ワーファリンのような薬を服薬。食生活に気を付ける)
3.どぶに傾きを付ける

3番目の「どぶに傾きを付ける」これはかなり効果的ですね。ほとんど縦になっていれば、少し内径が狭くなっていても、少々ドロドロした水でも流れますから。
ところが、血管に傾きは付けられない。
実は、脳を使うということはそこに血液が集まることと同義です。血液がこないと脳は機能できないのです。脳をよく使うことは血液の流れを促すことになりますから、そうすれば、傾きを付けたのと同じ状態になります。
つまり、1・2を実現しても、3の条件がなければ「血の巡り」はよくならない、ということに目を向けてください。

脳を使うということが、改善や予防のためには必要条件なのです。
脳を使うということは、右脳(アナログ情報の処理)・左脳(デジタル情報の処理)・運動脳(体を動かす)という三種類の異なった能力を持つ三頭立ての馬車を走らせることです。
うまく走らせるカギは御者にあります。御者役をやるのが前頭葉(状況判断し行動を決定する脳の司令塔)。
その前頭葉の出番を増やして、楽しくやる、継続する、自分が評価できることをやる、イキイキとした変化のある楽しい生活を意識してすることが「脳を使う」ことなのです。

既往がある人にとっても、ない人にとっても、この「脳を使う」ことは同じように脳梗塞の予防には効果的です。
既往があると「また再発するのではないか」と心配し、再発予防のためには病後の生活をどうすべきかとドキドキ、クヨクヨしますが、本当は脳卒中は突然起きることが多い以上、未発症の私たちも全くおんなじ条件なのです。
1~3を守ることで、「多分」大丈夫だろうというだけのことです。
それなら機嫌よく、楽しく生活していった方が、絶対いいと思いませんか?
認知症予防と同じ結論になるのが面白いですね。認知症予防は脳の健康を維持することですから当然ですけど。

付録です。
一過性虚血発作というのがあります。
これは血の流れが途絶えたり、極端に少なくなったりして、短い間脳卒中の発作を起こすことです。数秒という短い時もあるし、数時間、数日間みたいに長い間のこともありますが、過ぎてしまえば、元通り。過ぎてしまわなければ脳梗塞です。(1日以内に元通りになると一過性脳虚血発作TIA。1日以上3週間未満で元に戻ればRIND。どの首相だったでしょうか、脳卒中で倒れたときの最初の診断はRINDでした)この時はすぐに脳外科に行かなくてはいけません。脳梗塞に移行する可能性が大きいか、予防のための手立てが必要かのチェックができます。もしも脳梗塞に移行するとしたら、ごく早期に治療を始めることもできるからです。
血栓溶解剤を使った治療になることが多いのですが、ただ発症後4.5時間というタイムリミットがあります。

「テレビが壊れた!-TIA(一過性脳虚血発作)」
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/e/dc7888b6e0716644aa08294128f80e96
このお正月、ブログの整理をしたのでちょうどいい記事を見つけましたから貼り付けます。

 

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「アリスのままで」から認知症を考える

2015年08月18日 | これって認知症?特殊なタイプ

7月5日に「映画『アリスのままで』ー若年性アルツハイマー病?」としてブログを書きました。
主演のジュリアン・ムーアの演技は素晴らしいものでしたが、若年性アルツハイマー病をどのようにとらえているかがどうも気になりました。脳機能のレベルと生活実態にギャップがあったからですが。

もともと認知症になった人からの告白とか闘う、というような表現がされている場合のほとんどが、実は認知症ではなく、側頭葉性健忘なのです。
若年性が加味されると、失語症のこともあります。
アルツハイマー病の本人が書いた本「私は誰になっていくの?」で世界中に大きなインパクトを与えた、オーストラリアのクリスティーン・ボーデンさんも、最初は側頭葉性健忘からスタートしたと思います。
ご本人には会っていませんが、彼女の本を読む限り記憶力の障害がスタートだったと思われます。
1995年46歳で若年性アルツハイマー病と診断されました。それから17年後の2012年沖縄での講演の様子がユーチューブにありました。「認知症の当事者クリスティーンさんが講演」で検索してみてください。最初の表情から「これが認知症???」とびっくりされると思いますよ。

本当は認知症の定義から始めなくてはいけないのでしょう。
さしあたってよく引かれる定義「いったん完成された脳機能が全般的に障害され、社会生活や家庭生活に支障を起こす状態」をベースに考えます。
「全般的に障害され」というところから脳卒中の後遺症そのものが認知症ではないということがすぐにわかりますね。
脳卒中は片側に起きるものですから、後遺症は右側か左側の脳に生じます。
その後遺症に負けて、何もしない生活を続けていると健康だった側の脳機能も損なわれていきます。そうすると全般的に障害されますから認知症ということになります。(脳卒中のせいではない!ですからこれは脳血管性認知症とは言えません)
脳血管性認知症は、一昔前には全認知症の70%と言われたたのですが最近はどんどんその占める割合が減っていってます。それでも50%~15%までの数値を目にします。
エイジングライフ研究所では、5%未満と考えています。脳卒中の後遺症そのものが認知症になる珍しいケースや脳卒中を左右脳に繰り返し起こした場合などを考慮してもそのくらいなのです。

認知症の珍しいタイプとして、脳内に水がたまる(正常圧水頭症)や血腫ができる(慢性硬膜下血腫)ことが原因で認知症の症状が出てくる場合があります。この特徴はとにかく急激に起きることです。脳外科で正しい処置をすれば劇的に回復可能です。
最近マスコミでよく取り上げられていますが、問題はその占める割合です。ほんの数%!

もっと少ない認知症のタイプを書きましょう。アルツハイマー病です。
私は浜松医療センター時代に数千人の認知症患者さんに会いましたが、真の意味の「アルツハイマー病」の方には数十人しかお会いしていません。
真の意味というのは、はっきりと遺伝子異常があること(国立精神神経センターの田平先生に遺伝子検索を依頼)、現役でありながら若年で発症すること、経過が考えられないほど早いことの条件がそろっていることです。
これこそが、ドイツのアルツハイマー博士がとても珍しい症例として報告した「アルツハイマー病」そのものです。
この病気の場合に「若年性」とつけること自体がおかしいですよね。必ず若年発症なのですから。
「孤発性」と言ってその当事者の方だけに遺伝子異常があることがほとんどでした。次代のことはまだわからないということです。
「家族性」は珍しくて、私が知っている例は、34歳で発症したたった1人だけです!
父、叔父叔母、いとこに認知症が、しかも年若い状態で起きてしまっていました。現役のまま認知症を発症し、予後は非常に悪く、父、叔父はすでに死亡。家族性アルツハイマー病はそのころ日本で十数家系しかないとされていました。予防も回復の方法もないこの病、これほど稀ということが神様の計らいかと心から思いました。
ついでに「ボケは遺伝しますか?」とよく聞かれますが、この家族性アルツハイマー病の極端な少なさがその答えです。
ただし一言付け加えておきますが、親の生活習慣を踏襲すると、子もボケるということは十分に考えられます。「趣味なく交友もなく生きがいもない、そのうえ運動もしない、仕事一筋の人生」を最上のものと思って生きるには、退職後の第二の人生が長すぎますよね。

実は、認知症のほとんどは、高齢者が、何かのきっかけで、「趣味なく、交友なく、生きがいもない。運動もしない」いわゆるナイナイ尽くしの生活に入って、それが継続していくときに、次第に社会生活や家庭生活に支障を起こしていくタイプなのです。90%以上!
まさに生き方の問題、生活習慣病。
だからこそ、予防もできるし回復も望めるというのがエイジングライフ研究所の主張です。
その人たちの脳は、アルツハイマー博士が症例報告した「アルツハイマー病」の特徴、老人斑、神経原線維変化、脳の萎縮があるから、「アルツハイマー型老年痴呆(今は認知症ですが)」と名付けられました。
アメリカではひとくくりにしてアルツハイマー病というようになりました。ただアメリカでは早発型、晩発型と区別しています。晩発型が「アルツハイマー型認知症」ということになります。

もう一度まとめなおします。
「アルツハイマー病」は遺伝子異常があって、現役のまま若年発症、進行が速い。非常に稀。
「アルツハイマー型認知症」は、高齢者が脳を使わない生活を続けるうちに次第に生活に支障が起きてくる。進行は極めて緩やか。認知症の大部分を占める。
このようにきちんと病名を使い分けてくれたら、わかりやすいのですが。

さて「アリスのままで」に戻ります。
映画のキャッチコピーが「若年性アルツハイマーを発症したアリスが、最後まで闘う姿を描く」というものでしたから、そこからちょっと違和感を覚えました。「(若年性)アルツハイマー病」の患者さんは闘うよりも早く病気が進行してしまうから、闘えないのです。そのくらい激しい怖いものです。
だから、7月5日のブログの最後にも「若年性アルツハイマー型認知症?」として以前書いたページを貼っておきましたし、7月19日にも、ちょうど飛び込んできたケースの紹介をしました。「記憶障害ははっきりあるのですが…これを認知症といいますか?」   
この2例とも、認知症ではなく側頭葉性健忘です。この病気は新しい記憶だけが入っていかないにもかかわらず、最高次機能としての前頭葉機能は保持されているという特徴があります。
直前のことも覚えていられないのに、前頭葉が機能するために、表情をはじめ印象が生き生きとしている、行動もテキパしている、気づかいやユーモアが感じられる、もともとおしゃれだった人は変わらずおしゃれ、趣味などの作品が素晴らしいレベルで制作できるなど「これが認知症?」とだれもが不思議な印象を受ける人たちです。
クリスティーン・ボーデンさんがまさにこのタイプですね。

とにかく「原作本を読んでみなくては」と思ってようやく入手できました。
結論を言います。
アリスは側頭葉性健忘ではなく「(若年性)アルツハイマー病」でした。最初のほうで遺伝子異常が見つかったことがはっきり書かれていました。
もう一つの情報がありました、これはドキュメンタリーではなく、あくまでも小説でした。(以下続きます)

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映画「アリスのままで」ー若年性アルツハイマー病?

2015年07月05日 | これって認知症?特殊なタイプ

上京しました。いつものように「用事の前に一つの楽しみプラス」を実行しました。
今回は「アリスのままに」を見ることにしました。
(写真は伊豆高原Jガーデンの今を楽しんでください)
・主演したジュリアン・ムーアがアカデミー賞・ゴールデン・グローブ賞・英国アカデミー賞というそうそうたる映画賞、世界三大映画祭のカンヌ・ベルリン・ヴェネチア映画祭の「主演女優賞」を総なめにしたということが、私の気を引きました。

・映画のテーマが「若年性アルツハイマーを発症したアリスが、最後まで闘う姿を描く」というものならば、職業上見ておくべき、というのがもう一つの理由でした。
映画としては、さすがに素晴らしい出来映えでした。
特に、ジュリアン・ムーアの容貌の移り変わりは、単に「齢を取った」という外見の変化というのではなく、「容貌は内面から変化していく」ということを改めて思わせてくれるほどのものでした。
考えたら至極当然のことです。
顔の美醜に関係なく、幸せならば幸せな表情から、悲しい時ならばその悲しみの表情から、その人を理解し共感できます。
大人になれば「顔で笑って心で泣く」こともあります。
その表情は心の底から湧き上がってくるものですね。
「心の底」と書きましたが、「心」は「脳の働き」と言い換えることが可能でしょう。

その「脳の働き」を、容貌にも体の動きにも表現できていると思いました。未経験にもかかわらず!それが演技力といえば演技力ですが。

私は、実務研修会で脳機能検査の「できない」例を実際にやって見せるときがありますが、簡単な項目の失敗例はもちろん簡単に、とてもそれらしくやって見せられます。
ところが最高次機能である前頭葉の真似は難しい。そのなかでもレベルが高くなるほど、「できなさ」を表現することができない・・・

簡単なことというのは、計算ができないとか、読めないとか、書けないとか、言われたことを理解できないとか、思い出せないとか、
ほら、いくらでも真似できるでしょう。
「このまま私が私でなくなっていくという恐怖」は、前頭葉がこの状況をどうとらえているかということです。脳(前頭葉)の中でどのようなことが起きているか、そこを体感しないと演技につながらないと思うのです。
とてもその真似はできません。それどころかそのような時の前頭葉の働きを想像することもできません。
ジュリアン・ムーアに大きな拍手を!素晴らしかったです。


「すべての記憶を失う若年性アルツハイマー病と宣告されたら、あなたはどうしますかー?」
もともと、このキャッチコピーを見たときから、疑惑が胸をよぎっていました。
以下、次回に続きます。

よかったら、この以前書いたこのページに目を通してください。
「若年性アルツハイマー型認知症?」
(前半、解説ページに飛べないところがありますが無視してくださって構いません)

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