脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

Margaret Thatcher

2008年09月30日 | 正常から認知症への移り変わり

「マーガレット、次は何と読むの?」と思った保健師さんも多いかと思います。
カタカナで書くと「マーガレット サッチャー」
「鉄の女」と呼ばれたイギリスの元首相です。
箱根大涌谷Photo
実の娘が出版した回想録の中で、そのサッチャーさんの認知症が進んでいることを赤裸々に語って、様々なマスコミ上で物議をかもしているそうです。
私も「アエラ」で読みました。

ちょっと記事を引用しましょう。
(『ガラス張りの金魚鉢での日々』より)

「昔は、母に同じことを2度言うことはなかった。1度話すだけで、その驚異的な記憶力で母親は何でも覚えた。でも、少しずつ、母は同じ質問をくり返しするようになった。しかも、何度も質問していることに気づかない」

「最初に気づいたのは、8年前、フォークランド紛争とボスニア紛争を混同したとき」

2003年、父(サッチャー元首相の夫)が亡くなった際には
「パパのことは悲惨だった。ママは認知症だから、パパの死んだことを忘れるし、私は悲しいニュースを何度も繰り返し伝えなければならない」 

                                                箱根芦ノ湖海賊船                                                                                                                                1_3

エイジングライフ研究所の二段階方式を自分のものにできていれば、
①脳機能としてみたら、現在の状況はどのレベルか

②前頭葉を使わない「生きがいなく・趣味なく・交友もない・うえに運動もしない」生活は何をきっかけに始まったか、どのくらい継続しているのか

この①と②を探りながら整理して、読み進んでいかなくてはいけません。

ネットで調べたサッチャー元首相の生活歴です。1925年生まれ→82か83歳

1979年 英国史上最初の女性首相になる

1990年 首相退陣→これで生活が変わっていればここから老化が加速されます。そうするともう1 8年もの昔になりますから、現在は大ボケもいいところということになります。
今春の外出時の写真がありましたから、1990年の首相退陣が直接的な引き金になったのではありません。(現在の状態がよすぎます)

1992年 男爵位をいただく。そこで貴族院議員となる。→貴族院議員の実態がわからないのではっきりはしませんが、きっかけとしては弱いでしょう。
その仕事がよほど嫌いならきっかけになりえますが。
又は有名無実で実質的には何もしていないときもきっかけになりえます。
ただし、きっかけと考えたら16年前になりますから、現状がよすぎます。首相退陣と同様きっかけとしては考えにくいことになります。

1995年 ガーター勲章をいただく。
最高位の勲章ですから、普通は脳機能を押し下げることにはならないはずです。
箱根ガラスの美術館1_4

というように症状を事件のように書いてあっても、その症状を引き起こす脳機能を見るという観点がまったくないためになかなかきっかけがわかりません。

「いつ何があって、脳全体を使う生活がなくなったのか」このような見方が驚くほどありません。

サッチャー元首相の場合は
2001年 脳卒中のOP
2002年 軽い発作が続き、Dr.より人前で話すことをやめるようアドバイスがあり、その後は公の場での発言を控えるようになった。
との記述があって、血管性認知症と説明されていましたが、むしろその病気をきっかけに生活が大きく変わったことが推理できますね。
もちろん脳卒中はどこの部位に起き、どんな後遺症が残されたかということは、情報としては不可欠ですが、調べた範囲ではどこからも見つかりませんでした。                              箱根のカエルKaeru

2003年の夫の死を忘れてしまうということは、ちょっと早すぎますから、脳卒中の後遺症が絡んでいるかもわかりません。

8年前のフォークランド紛争とボスニア紛争を混同したエピソードは、この卒中の前になりますので説明がしにくいのですが、混同の具合やそのときの体調や周りの状況など情報が足りないので何ともいえません。
脳卒中の前に何らかのきっかけがあって、老化が加速されていたということも考えられます。

いずれにしても脳卒中から6年。隠遁生活に入ってしまえば大ボケになるには十分の期間です。隠しおおせない症状が出てきてもおかしくありません。

生活上困ることを上げたてるだけでなく、脳機能と生活を不可分のものとしてみるように習慣付けてくださいね。


真ん中から食べる

2008年09月16日 | 前頭葉の働き

Photo 手製の焼きブタを、レタスの上に並べた一品です。
真ん中の一切れが、なくなっているのがお分かりでしょう。

一番最初に箸を付けた人が真ん中から食べたということですね。
皆さんなら、どこから箸を付けますか?

「状況によって違う」という声が聞こえてきそうですから状況をもう少し説明しましょう。
長男R輔が、会社の若者を3人連れて遊びに帰って来ました。
R輔が上司、一回りも年下の3人というシチュエーションです。
それに私達2人が加わって、総勢6人の食卓です。焼きブタのお皿は、同じのを2皿用意していました。

一番最初に、真ん中の焼きブタに手を出したのが夫。
そこですかさず、私が「そこから食べるの!?」とちょっと批判的な声を出すと
夫「いちばんおいしいところから食べるに決まってる」
私「そういえば、スイカを切ると必ず真ん中を食べるわね」
夫「食べてごらんよ。ぜんぜん味が違うから」
私『大体スイカを切り分けながら、私が端の始末をしてるもん。皆が真ん中を食べたら端っこはどうなるの』と心の中で思いました。

もしも、R輔が最初に真ん中の焼きブタに箸を伸ばしていたら、私はどう感じたでしょうか?

父親よりも先に一番よいところに手を伸ばしたことを非難したでしょうか?
したかもしれないし、むしろしなかったかもしれません。
その場の雰囲気が答えを決めるはずです。
バーべキュー用肉の下ごしらえ(脂身をきれいにそぎ落としたところ)byR輔Photo_3
R輔にとって、自宅での食事という意識が強く働いていて、しかも同席しているお客さんは会社の年若い部下で、さらに別皿が用意されていて父親の分はそこに真ん中がある。という咄嗟の判断のもとに、「お母さんの手作り焼きブタ、おいしそう!」とでも言いながら、真ん中に箸を伸ばしたとしたら、「行儀悪い」とたしなめもせず、結構ベストチョイスだと感じたかもわかりません。
少なくとも作った私の立場では、食べることを楽しみにしてくれていると思ってうれしいですね。

こう考えると、食事のマナーも必ずこうすべきだと一概には言えず、その場の状況というものが大きく作用するものだということがわかります。                            

若者を交えて、大皿盛りの料理のどこから箸を付けるかで話が盛り上がりました。
「一般的な習慣としては、やっぱり端のほうからがマナーだと思う」というのが若者達の結論で、確かにこの年齢で、家庭外の席でメインゲストになるということはあまりないでしょうから、なんと常識的なお客人かと感動しました。

アジのたたきPhoto_5 

そういう話をしていたら、丁度獲れたてのアジをいただきましたのであわててたたきにして、一皿に盛ったところです。

これを6人で取り分けていただいたのですが、一巡したときに半分近くも残っていました。
小ボケの人はおいしそうとか好物ということになると、後先考えずに一人で食べるというようなことをします。

やっぱりここにいる人全員が前頭葉を駆使して「配慮できるんだ」と再び納得。

2008年5月22日「部屋で鶏でも飼わなくっちゃあ」のところも参考に読んでみてください。 

サラダ3種by
Photo_2R輔

最近マニュアル人間という言葉を聞きますが、ある程度まではマニュアル化できても、すべては無理。
ほんとにいろいろな状況に応じるということを、知識として教え込むことは至難の業です。

前頭葉は、知識で育つのではなくて、自分が体験し、どう評価したりされたりしたか、そして自分はどう感じたかということから育って行くことを私達は知らなくてはいけません。

スイカの件で夫の言葉に多少の疑問を感じた私でしたが
『もし私がメインゲストだとしたら、スイカの端を食べるのはかえって失礼なので、真ん中の隣ぐらいをいただくことになるなあ』とも思い至り、でも
『とてもスイカ好きの人と食べていたら、やっぱり譲るだろう』
『やっぱり状況が決めるんだ。だから前頭葉が体験を積まないと適切な判断はできない!目上の人との同席もメインゲストの体験も必要なのだ』

『子供の誕生日のケーキカットも結構意味があるかも』
舟盛り料理Funamoriryouri

『子供に舟盛りのお刺身の食べ方を教えるにしても、言葉で知識としてマナーを教えるより、食べさせてマナーを教えるほうが簡単』

『韓国は儒教精神が色濃く残っているので、同席者に敬意を払う順を即座に判断すると聞くけどそれも体験がなければ、知識だけでは無理だろうなあ』
とか、一切れの焼きブタから前頭葉が日々の暮らしの中で常に「私が私らしく生きていくための司令塔」として働いているということを、またまた納得しました。

前頭葉は子供のときから様々な体験を積んでいきながら、その人の「十人十色」といわれる色を付けていくということの理解に、このエピソードを役立ててください。
ところで、二段階方式の検査をするときに、A4版の用紙の使い方を細かく見るように注意しますね。マニュアルA73P)
どのような人生を送ってきて、どのような前頭葉を培ってきたのかを垣間見ることになるからです。


脳梗塞か脳卒中

2008年09月11日 | 右脳の働き

お隣から花オクラ(トロロアオイ)をいただきました。
むか~し、一度だけ生で食べたことがありますが、レシピは「湯通しをして三杯酢」と教えていただきましたから、そのとおりにして食べました。

そっとざるに並べたところP1000001              花びらだけを並べましたP1000004

アップにしましたP1000002 P1000003

お湯をかけたところP1000006                      すぐに氷水にとりましたP1000005

軽く絞っていただきま~すP1000007

味は、なんと表現したらいいのでしょうか・・・
かすかな様子を表す「かそけき」という古語がありますが、そんな感じ。

色も、甘みも、粘り気も、香りも、花の根元の噛み応えある食感も、全部「かそけき」風情なのです。

なんとなし秋風が立つ今の雰囲気にぴったり。
まさに、今いただくものだと思いました。
なかなか食べ物の味を表現することは難しいですね。
TVのグルメ番組で「ウーン」とうなって見せるタレントさんの気持ちがわからないでもありません。

TVといえば、昨夜寝る前にTVから不思議な表現が聞こえてきました。(日本テレビ、NEWS ZERO)
「北朝鮮の金正日総書記が、脳梗塞か脳卒中で倒れた模様・・・」

脳卒中(この厚生省のサイトの説明はわかりやすいのでお勧め。目を通して復習しておいてください)には、以下の4種類があります。

①脳出血(昔は脳溢血といいました)
②脳梗塞(昔は脳軟化症といいました)
③くも膜下出血
④一過性脳虚血発作

つまり脳梗塞は脳卒中に含まれる概念なので、上のNEWS ZEROの表現はとてもおかしいということなのです。
今朝の日経新聞を読むと、さすがにこんな誤りはしていませんでしたが、丁寧に新聞を読んで理解する習慣がついている人ならばともかく、一般的にはTVで声高に話しかけられると、そんなものだと思ってしまう人はたくさんいると思います。

ボケに関していえば、変性疾患(遺伝子以上によるアルツハイマー病、マニュアルC30P。緩徐進行性失語、マニュアルC104P))や失語症(マニュアルC91P)や側頭葉性健忘症(マニュアルC110P)をひっくるめて若年性痴呆と紹介していることはよくあります。

「物忘れはボケの始まり」とか
「一部忘れる物忘れは問題ないが、出来事すべてを忘れる物忘れは危険」など、高齢者なら皆ドキッとするようなことを言ったりもします。

花オクラの味の説明よりも明確なのですから、TVを始めマスコミはボケの説明は正しくしてほしいと願います。

最新ニュースをチェックしたら、韓国メディアが「金総書記は脳手術を受け左半身マヒか。言葉や意思疎通に問題はなく~」とありました。
私にとっては、金総書記はもともと理解しがたい人物なのに、左半身マヒ(右脳障害)ですよ!
マスコミが、正しく金総書記の言葉を伝えたとしても、内容が理解しがたいということが起きるかもわかりません。(右脳障害の項参照


H20年第二期実務研修会終了

2008年09月09日 | 二段階方式実務研修会

第二期実務研修会が終了しました。
第1回は1995年2月、あの神戸大震災の直後に開催しました。西日本からの参加予定の方が交通遮断のため参加できないというようなこともあったのです。それから今回まで実務研修会の開催は50回くらいになると思います。
箱根ガラスの森美術館(誓いの鐘)Photo
実務研修会の雰囲気って毎回違うんですねえ。
それは、エイジングライフ研究所が参加される方に合わせようと努力していることの表れではないかと自画自賛させてください。

ボケの本態は何か
脳機能からボケを見る

脳機能ということになれば、前頭葉の理解は不可欠ですし、脳機能テストのやり方も学んでもらわなくてはいけません。
エイジングライフ研究所の二段階方式の手技は、テストはあくまでも生活指導の入り口、生活指導のための有用な情報という捉えかたですから、テスト結果の解釈も重要です。
そして、生活歴を聞き取って、究極の目的である生活指導!
そんなこんなで、毎回研修会の内容はもともと盛りだくさんなのです。

一方で、参加される方の理解も姿勢もモチベーションも様々ですから、毎回毎回実務研修会の雰囲気が違うのは当たり前です。

脳の働きに興味を持つ方、生活歴や生活指導、テストの実施法や解釈etc

安曇野市Tさん・MさんPhoto_11                   愛西市Tさん・安曇野市MさんPhoto_12

安曇野市は4名の参加でした。1日目の夜には豊科町の取り組みの話なども出て、私にとっては活動の原点に立ち戻るような思いがしました。
愛西市のTさんは、どんどん面白くなっていきましたよね。講師冥利に尽きます。

私の右脳と前頭葉を駆使しながら、皆さんの反応を確かめます。そして細かく軌道修正をしながら実務研修会を進めて行きますから、毎回違うということになるのです。
細かい修正がたびたび起こりますから、用意しておいたのに言いわすれると言う事も起こります(これは私の前頭葉の注意分配能力の機能低下)。
牧之原市Uさん横手市のSさんPhoto_2 碧南市Oさん

横手市のSさんへ。
Sさんの頭の中に、帰ってからの計画がいろいろに沸き立っているようにお見受けしましたよ。せっかく教室の具体的カリキュラムを聞きたいといわれたのに・・・ごめんなさい忘れました。
パワーポイントで奥州市の事例は紹介しましたが、Bマニュアル250ページから解説がありますので目を通してください。

エイジングライフ研究所が推奨する「ボケ予防教室」は地域のかくしゃく高齢者までもがその対象ですから、創作などは普通のディサービスで行われるものよりも、ちょっとおしゃれな自慢できるようなものを提供すべきです。
ゲームは、岩月脳活性化ゲーム。創作はゆうかり工房のそれぞれのHPを参考にしてみてください。
もちろん、Sさんの地区の人材の発掘や育成も大切ですよ。
木曽町Mさん            Photo_6 牧之原Photo_7           岩見沢市YさんPhoto_8

このノウハウを木曽町でどう生かせるか?Mさんのパワーに期待してます!
牧之原市Mさん「時間が短かった。もっと勉強したかった」の感想をありがとう、がんばってください。
岩見沢市Yさんは、皆が認めたやさしいテスターでした。そのペースは大切です。
松江市Aさん・Photo_10 1_2

二段階方式のノウハウはもちろん仕事上で使ってほしいのですが、「脳の使い方」を「生き方の問題」と考えると、自分や家族にも生かせることがわかるでしょう。
実践の中から、力を付けていけますから、恐れずに進んでください。

岩見沢市HさんPhoto_13

去年、北海道下川町に行くときに、「押しかけましょうか?」と尋ねたら「喜んで!」といわれたのです。
これが活動しているところの返事です。そのときのことは下のブログに書きました。

岩見沢市では相談日が定期的にあって、小ボケ中心の相談がなされているとの発言にびっくりしている保健師さんがいましたね。これからもがんばってください。

北海道便りー岩見沢市http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20071024

何しろ写真を撮ることも忘れていて、二日目の4:50ごろにあわてて撮った写真です。参加者全員の紹介はできませんでした。ごめんなさい。


ブログ村

http://health.blogmura.com/bokeboshi/ranking_out.html