脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

コロナ見舞いが到着

2020年06月28日 | 私の右脳ライフ
義理の娘(長男のお嫁さん)と話をしていたら「接触冷感生地を使ってマスクを作ってみた」というので「うわー。興味ある!一枚余分ができたら送って」と言ったら
「実はもうできあがっていて送ろうかと思ってたところ」というやり取りがありました。
それが届いたのです。マスクにしたら大きな紙袋?と思って開きました。
白い箱がまず目に飛び込みました。
長男の会社の20周年の記念品。今回は何だろうとワクワクしながら開けました。
前回10周年記念の時送られてきたコメントも興味深く読みましたので。
今回はおしゃれなメモ帳かと思いました。艶消しの黒地に青金で七宝模様。

取り出して広げると、これはご挨拶文でした。今回も記念品は香りなんですって。

ちょっと探してしまいました。左側の細長い箱。ここに記念品が入っていました。
「あきつしま」と名付けられた香水。さわやかな柑橘系の香りが多分ベースなのだと思いますが、もう少しシャープでモダンな香り。香りも言語化しにくいですね…「あきつしま」のロゴが、少し手助けしてくれているかな。
この書体は調香師の方が選ばれたそうですが、香りを作られたときのイメージに重なるものがあったに違いありません。
かなの連綿体なのに柔らかくない。あきつしまは日本の別名ですから、日本の持っている多面性を強調されたかったのかもしれません。

屏風たたみになっているメッセージは、一枚にひとつのテーマでまとめられていました。下部には英文でも表記されています。

【世界の人口】
20 世紀半ばには 30 億人未満だったが、その後アジアやアフリカを中心に急速な増加を続け、現在では70 億人を超えていると言われている。
そして今後は、次第に増加のペースは鈍化していくものの、2020 年代に 80 億人、2040 年代に90 億人、2080 年代には 100 億人に達するものと推計されている。 

【土地資源の現状】
過去50年間に、世界の作物栽培面積はわずか12%しか増えなかった。Food and Agriculture Organization of the United Nationsの統計によれば、世界の作物栽培地面積は、1961年の13.7億haが2009年には15.3億ha増加したとあるが、比率にすると過去50年間にわずか12%しか増えなかったことになる。

【農地の生産力】
過去50年間に、投入資材施用量の増加、農業の機械化と灌漑によって、世界の農業生産力は2.5〜3倍に増加してきている。人口は急増したため、世界平均で人口1人当たりの作物栽培面積は1961年の0.44 haが2009年には0.22 haに半減したが、生産力の向上によって、現在は何とか70億人の人口を支えていることになる。

【水資源の現状】
過去50年間に、食料生産の増加分のうち40%は、灌漑農地を倍増させて賄ってきたが、灌漑用水量は、帯水層、河川および湖沼から取水した農業用水総量の70%を占めるに至っている。灌漑農地面積は、2009年の301百万haが2050年には318百万haに増加すると見込まれているが、そのための取水量は2030年までに2900 k㎥超/年、2050年までに3000 k㎥超/年に増加し、現在と比べて2050年の間に10%の増加が必要になると予測されている。

【搾取と共生】
これまでは、有限の系である地球の中でいわば“搾取”を続ける営みであった。これは、産業革命以降の人類と地球の関係そのものかも知れない。しかし、いよいよ限界が目前に来ていることは明らかである。閉じた系である地球の中で持続的に“共生”できる営みを創出しなければならない。

【西洋と東洋】
大胆に言い切るならば、前者は西洋の文化、後者は東洋の文化と言えるかも知れない。そして、我が国日本は、その架け橋となることができる使命を背負った唯一の国である。東洋に属しつつも、いち早く西洋の産業革命以降の流れにのり、その便益を取り入れてきた国だからである。世界が“共生”を求めているときに、東洋と西洋の双方から叡智を抽出し、提示していく役割がある。

【日本の価値を世界に】
インスパイアは全力でその地平を切り開いていく。装粧香『あきつしま・蜻蛉島』は先導事例かくあるべしと願って企画し、多くの方々の協力の御蔭で顕在化した。基剤となるアルコールは、うち捨てられるはずであったポプラの小片を微生物に与え、そこから生成された グリーン アース エタノール。調香の鍵となる命題は『時空の和音・蜻蛉島の人』である。
母なる地球との “共生”を感じていただけたなら、望外の喜びである。
株式会社インスパイア 代表取締役社長 高槻亮輔

「インスパイアは投資会社じゃなくて、事業会社。世の中に必要な事業を作っていくんだよ」と、その昔長男から聞きました。ぶれてない。ちょっと胸が熱くなりました。
本題はマスクでした!

びっくりするほど、きちんとしていてかっちりとしたできあがり。裏地もついているし、フィルターも入れられるようになってます。涼しげな木綿生地で、その生地とデザインがぴったりマッチしています。接触冷感生地かどうかはなんだかよくわからずじまいでしたが、このマスクとっても気に入りました。一つは夫が使いたいとのことで、喜んで上げましたよ。
それにしても、何といいセンス。それに手際がきれいです。お礼の電話の時、もう一つうれしい情報が。『あきつしま』は彼女の筆なんですって!すごい!
今も飾ってある古希祝のプレゼントも紹介します。和紙で作る川崎ローズの飾り物。親指大と人差し指大のバラたちが70輪!大変な手間がかかることは知っていました。あとで聞いたのですが、半年近くもかけてつくってくれたのですって。

この時もちょっと面白いことが起きました。その時のブログ記事より抜粋。
「古希おめでとうございます」というメッセージに
「えっ!どうしましょう。今年69歳になるんだけども。せっかくの好意に対して、どう言ったらいいだろうか」とちょっと悩み、「来年はメッセージだけでいいので、送り返してと言わないで」とメールしました。
電話がかかってきて「お祝いですから『数え』で」と。安心して、電話の向こうとこちらで大笑い。まったく「負うた子に教えられ」です。

コロナと梅雨でちょっと気分が下がりがちのところに、ありがたいプレゼントでした。



パッションフルーツを栽培中

2020年06月20日 | 私の右脳ライフ
事の始まりは2018年7月。近所の年若い友人が「パッションフルーツの実が付きました」と一枝持ってきてくれたのです。
生け花のようなつもりで飾っていたら、細い根を発見!
そこで鉢に植えて、後は自然の成長力に任せて置いたら、なんと去年夏からほとんど冬近くになるまで、10個近くの実がなりました。濃い紫色になりしわしわになってポトリと落ちると食べごろ。
その収穫の時を終えて今春。鉢は直径50センチはある大き目なものですが、その中でジャングル状態になっていました。
ちょうど遊びに来てくれた、贈り主の友人が、「枝の整理をしてください。大きく切り詰めることはありませんが、とにかく整理整頓」と教えてくれました。
勢いのないツルを整理するだけで、みるみる元気になっていくのを見るのは気持ちの良いものです。
「花が咲いたら、受粉してやらないとうまく実になりません」と友人が。
そんなことも知らないで自然に任せるだけだったのに、「実ってくれてありがとう」と心の中で感謝の言葉をつぶやきました。
クダモノトケイソウの花は、大体真上から撮られることが多いです。ほんとに時計のような印象的な花ですから。
めしべは、三本あります。先端がハート形になっています。上の写真は開いたばかりの花で、まだその三本がくっついています。
基部にある放射状の5個のものがおしべです。この状態ではまだ花粉が粉状にはなっていません。
咲き始めは9時くらい。少し経つと、だいたい120度の間隔をあけてめしべの先端は開いてきます。おしべとの距離は近づいては来るのです。そしてその頃にはおしべは花粉でおおわれています。
めしべもこのように開くにつれて下向きにはなるのですが、なぜだか、おしべは下向きのままですから花粉はそのままではとてもめしべに付くことはできません。
自然のままだときっと虫が受粉させるのでしょうけれど、効率は良くなさそうです。確かに人の手で受粉させてやらないと、もったいないことになりますね。
そして一日花で6時ごろには閉じてしまいます。
横からみると、面白い構造がわかりますね。
私がおしべを切り取って、花粉を塗りつけたので、めしべの先端に花粉がついています。子房がちょっと膨らんで何となく元気がいい感じなので、この花の受粉は成功しているようです。
受粉がうまくいくと、閉じられた花びらの先からめしべの先端が出た状態になっています(右の花弁が閉じた花)。

その日の夕方には子房のふくらみがはっきりわかります。花びらをちょっと無理に開いてみました。

すぐにこの姿に。めしべが見えます。

ほんの二日ほどでさらに大きくなります。この実はめしべが二つみえますね。

手で受粉させても、うまくいかないこともあって、その時はすぐに落ちてしまいます。受粉が成功すると、みるみる大きくなりますが、「熟れるまでが長いので、追肥が必要です」これまた初めて聞くことば。
去年は全く何も知らず、そのために手もかけず、ただたまたま熟れた実を発見しては喜んでいただけでしたが、今年は違います!
毎日眺めて、受粉の成否を確かめ一喜一憂。実を数えてニンマリ。

パッションフルーツを育てながら、知識の大切さを学んだ気がします。
知識があることで、見えなかったものがよく見え、必要な手助けもしてやることができます。
不思議な花と思っていたパッションフルーツの花も見方がわかった気がします。
下の写真は、以前私が写したパッションフラワー(トケイソウ)です。これもパッションフルーツだとばかり思っていました。

現在我が家で育てているパッションフルーツ(クダモノトケイソウ)とまったく違います。ようやくその差が納得できました。
花弁の色も形状も材質感も全く違います。何よりおしべが基部よりも高く、ぐっと下がっているめしべととても近い、交配はスムーズにいきそうです。ただしパッションフラワーの実は、毒性があるものまであるそうですから、注意が必要です。

認知症も、同じです。
しっかりした視点を持つことで、それぞれの違いや状態を理解しやすくなります。その視点は「症状で見るのではなく、その症状を生んでいる脳機能を理解すること」なのです。




脳卒中後遺症ー脳は場所で働きが違う

2020年06月12日 | エイジングライフ研究所から
友人からメールがきました。
その友人の友人のことが書かれていました。
「(彼女は)数年前に脳卒中にかかって相当リハビリしましたが、方向音痴とか感情のコントロールが上手くできないとか、悩みがあるんですって」
ヤマボウシ

私も短く返信しました。ほかにも言い足したいことはありましたが、そのためにはいくつかの質問が必須になるので控えました。
「その方が右利きの方だと言う前提で、病気は右脳に起こったのですよね」
たったこれだけの返信に対して
「さすが絹子さん。そうです。頭蓋骨の右前頭部に穴を開けて手術した様です。指さしてましたから 」
まあまあ、褒められてしまった!
キンシバイ

脳は、病気やケガが起きてしまったときに、それまで黙々と働いていてくれたことを、それができなくなってしまうという形で初めて私たちに伝えます。
考えたら脳は、文句を言わないどころか、私たちを困らせてしまうような自己主張もしません。大切な自らの責務を淡々とこなし続けてくれる、頼もしいというか、いじらしいかけがえのないものなのです。
先の短いメールから、脳卒中で障害された場所をどうして特定できたかを整理してみましょう。
その前に脳の機能を考えるときには、どうしても三頭建馬車の図が必要になってきます。

場所を確認するとこうなります。これだと、左脳と右脳と前頭葉の働きが並列的に見えますね。実は前頭葉の働きは上図の方が正確で、左脳や右脳の働きとは次元が異なることには注意が必要です。

それでは、左脳の働きを列挙しましょう。

次は右脳です。

それでは推理の筋道を話さなかったことまで含めて解説します。
数年前の脳卒中
ということは現在の後遺症は確定的で、これ以上の改善はほとんど期待できないのです。患者さんや家族はリハビリをすれば、病前のように回復すると考えているのですが、実際はそんなに簡単なものではありません。どこにどれだけの障害を負ってしまったかということが、予後を決める大きな要因です。
発病後の短い期間(3か月といわれることが多い)、いわゆる神経可塑性が働いて、障害を負ったところが元の働きを取り戻すこともありますが、多くの場合は障害された部分の機能回復はないまま、周りがその働きを代償するという方法で回復していきます。脳に障害を負った時のリハビリは、早いほど効果的で私の印象では最初の半年が一番の勝負どころだと思います。
もちろん、長い間リハビリを続けることで回復することもありますが、あくまでもそれは病気直後に比べたら微々たるもので、リハビリの目的は機能を低下させないためと考えた方がいいと思います。
脳細胞が再生するというようなニュースがセンセーショナルに報道され、変な期待が生まれてしまうのですが、脳の実質が壊れることは、生半可なことではありません。
サラサウツギ(もう少しピンクがかっていました)

だから、この方に身体マヒがあったら、それはその状態のままで受け入れなくてはいけません。そのマヒの状態でどのように生活を組み立てていくか考えるべきです。
方向音痴
世の中には方向音痴といわれる人は多いです。この方はわざわざ病後の後遺症として挙げていますから、普通の方向音痴とは違うと考えた方がいいでしょう。
方向音痴というのは、結局は自分の位置と目的地とそれを結ぶ道からできあがる形というか図形がうまく成立しない問題です。つまりアナログ情報の処理ですから右脳の機能がうまく働いてないということですね。
特に右脳後遺症のうちの「左半側無視」というものが起きていると、左側の空間認識が欠けますから、家の中でも思い通りのところに行けないというようなことが起きてきます。
感情のコントロールができない
右脳障害に「感情失禁」というものがあります。「感情失禁」をチェックすると「些細なことで泣いたり笑ったりする」というような解説が多いのですが、右脳障害に付属する感情失禁の特徴としては、「些細なことで泣くまたは泣き崩れる」ということが主だと思います。喜びすぎたり、過度に楽しがったりはほとんど経験にありません。
右脳障害だけだと、「コントロールができなくなった」と実感しているのがちょっと気になります。右脳障害から生じた「感情失禁」は本人が自覚している印象はあまりないのです。
ここはやはり前頭葉機能にも影響が出ていると考える方がいいかと思いました。
そうすると、発病後数年たっているということは、この時の脳卒中の後遺症とは別に、廃用性の機能低下が起きていてもおかしくはない。その時は「抑制」という前頭葉機能がうまく働かないことがあってもおかしくはありません。つまり小ボケのレベル。
年齢や、発病後の生活もよく聞く必要があります。
原種アリストロメリア

脳卒中の後遺症を理解するための道筋を書いておきましょう。
体のマヒがあるかどうかは、必ず聞かなくてはいけませんし、脳卒中と聞くと皆さんはすぐにマヒの有無を気にすると思います。左右どちら側か、上肢か下肢かも確認します。上肢か下肢を確認するのは、上肢だと中大脳動脈、下肢だと後大脳動脈が養っている箇所に病気が起こったことを知ることができるからです。
マヒは一番わかりやすい後遺症です。
左脳の後遺症である「失語症」は、話せないタイプはわかってもらいやすいのですが、言われていることが理解しにくいタイプは見落とされがちです。実は非常に大雑把にいってしまうと、中大脳動脈が養っている場所が障害を受けた場合は話せないタイプ、後大脳動脈の場合は理解困難なタイプになります(興味ある人はカテゴリーの「左脳の働き・失語症」を読んでみてください)。

右脳だけが障害された場合は、何しろ言葉に障害がないということで後遺症なしと思われ、場合によっては後遺症なしと診断されることすらあります。ところが生活上では多くの困難が出来しますから、退院後の家族は困り果ててしまいます。本当に多彩な、思いもつかないような後遺症が起きてしまうのです。
『妻を帽子とまちがえた男』オリバーサックスがベストセラーになったのはいつだったでしょうか。この本を読んだときに、「そうそう、こういう人がい」と興奮したのを思い出しました。妻と帽子を間違えるのは相貌失認ということです。
右脳が壊れるということ―相貌失認続けて4記事書いています。
地図が読めない女?
そのつもりで患者さんを見て、訴えに耳を傾けていれば後遺症がわかり、後遺症を理解することは同時に右脳機能を知ることでもあります。興味ある人はカテゴリーの「右脳の働き」を読んでみてください。

いまだブラックボックスにとどまっているのが前頭葉の機能障害。脳の働きについての記事を読んでみても、前頭葉機能に触れていることはほとんどありません。
エイジングライフ研究所は前頭葉機能こそ、その人の脳機能の中で最重要でその人らしさの源ということを主張し続けてきました。
三頭建馬車の御者!
認知症早期発見のカギ!
前頭葉機能についても、ぜひカテゴリー「前頭葉の働き」を読んでください。

高速道路のICを通過してしまった

2020年06月05日 | 前頭葉の働き
goo blog編集部から2019年6月3日初掲載「高速道路のICを通過してしまった」という記事のお知らせがきました。
ちょうど前頭葉機能について続けて書きましたから、こういう事件から前頭葉機能について考えてみるのも一興かと思って再掲します。

ちょっと珍しい写真をあげてみます。

東名高速道路御殿場インターチェンジ出口なのですが、ちょっとカメラ位置が珍しくないですか?
磐田市での用事を済ませて、新東名高速道路上り線を使って、順調に帰路についていました。車窓左側に大きな富士山が見えてきたら、そろそろいつも休息する駿河湾沼津サービスエリアに到着です。

ゆっくりお茶をして「さあ、もう少しね」と声をかけて出発しました。私たちが高速道路を下りるのは、次の長泉沼津ICなのです。もう何度この道を使ったことでしょうか・・・
私は「もう着いたも同然」と安心して、携帯をチェックしていました。ふと気づくと、まだ高速道路上。
「あれっ。沼津過ぎちゃったんじゃない?」そうなのです。長泉沼津インターはもう後方。ナビ上には次は御殿場インターの表示が・・・OMG!
運転していた夫は「御殿場で下りて、御殿場から乗って帰る」と言い張ります。この状況に対する、それが夫の前頭葉の決断です。
私は、何か他の方法はないかとグ-グルマップでググります。そしてどう考えても東名を使うのが一番近道だという結論に到達。そこで私の前頭葉は「ほかにもこのような失敗をする人もいるかもしれない。料金所で事情を話して相談してみよう」と決めました。
唐突ですが磐田の友人宅のセッコク。山で自生しているセッコクをご自分で着生させたもの。

料金所に着きました。気乗りしない夫にお願いして、一番左に停車してもらいます。
係員のいる出口は一番右!
幸い、夜で交通量が少なかったので、前頭葉を駆使してよ~く確認しては1レーンずつ右へ移動。係りの方に事情を説明すると即理解してくださって、「危ないですから、この料金所をまたぐ高架橋を通って車に帰ってください。自分は先に車に行っておきますから」
そうなのです。その高架橋の上から撮った写真が1枚目の写真です。料金所のブースの上にこんなものがあるなんて今まで一度も気付きませんでした。
前頭葉ってふしぎな働きをします。料金所ブースの上の連絡橋は常にある。けれどもそちらに興味か関心をむけなくては「ない」。たとえ視覚野に情報が到達していても「見えはしない」。昔の人が「心、ここにあらず」と言いましたが、このときの「心」はまさに前頭葉の注意集中力や注意分配力があってこそ発揮される機能です。
 「写真を撮ってる場合じゃない。急がないと悪いなあ」と私の前頭葉は判断したのですが「こんなチャンスはそうないはずだし、やっぱり証拠写真を」と慌てて撮りました。階段途中からも1枚だけ(笑)

ことの顛末は、ご安心ください。
料金所を横切って、御殿場インター入り口から高速道路に乗る道の途中に出られたのです。丁寧に説明をしてくださり、もちろん誘導もしてくださって。
「左に行ったら東京ですからね、右に行くのですよ」
「3キロくらい行ったら、新東名の分岐があるので必ずそちらに行くのですよ。そうしないと出られません」
ありがとうございました。おかげさまで長泉沼津⇔御殿場の夜のドライブを楽しみました、それも往復無料で!
ちょっとドジなドライバーの雄姿も。

人には得手不得手があるものですね。
夫は運転技術には問題がないのですが、方向音痴のせいか標識を見るのが苦手です。
実はこのような失敗は過去にも何度かありました。
ナビがなかった頃は、「下りるのは次のインターよ」そういうと、私はその後の道のチェックをし始めます。そしてふと気づくと・・・
「オレは運転してるんだから、助手席に座ってる人がちゃんと見なくっちゃあ」といわれては「一人で運転してる人はだれが見るの?」と心で言うか、小さな声で言うかして、いつも次のICで下りていました。
今回チャレンジして、新しい情報を一つゲットして、私の前頭葉はとっても喜びました!

前頭葉機能低下?ー「忘れる」のではなく

2020年06月03日 | 前頭葉の働き
「検索」するつもりで、パソコンの前に座る。ちょっと「コロナどうなってるかしら」とニュースをクリック。または、未読メールをチェック。
そうこうしているうちに、「そうだ!検索、検索」と思い出したのに「あれ?何を検索するのだったか・・・」という話を前記事に書きました。
(今日の写真は5/28バガテル公園)

そうしたら中学校時代の同級生からコメントがありました。
「検索する時にノートが立ち上がる迄に何を検索するか、忘れてしまいます。メモをとるかスマホに話しかけるようにしています、老人ボケですね」
実は、この同級生はいつかこのブログの「かくしゃくヒント」に登場してもらいたいと思っているような生活ぶりなのです。楽しみごとも、友人との交流も、ボランティアも実にバランスがいいのです。そうそうポタリングも趣味で、しまなみ海道走破するくらい。
つまり、「老人ボケですね」に対しては、安心して「違います」といっていいのです。もっと言えば、検索を忘れることに対して「メモを取るかスマホに話しかけるか」ということを判断してるのですから、前頭葉はよく働いています。
が、私もコメントを返しました。
「微妙なところです(笑)自分で許せるかどうかという点がカギだと思います」

何故、わざわざこんな返事を書いたか理由はあります。せっかく前頭葉機能に関して低下を実感しているのなら、そのことを重視することの意味を、考えてもらいたかったからです。

講演会の時に、会場に向かって問いかけるときがあります。
「わざわざ2階へ行って、何をしに来たか忘れてしまうことはありませんか?」
「冷蔵庫の前に立って『あれ?何を取ろうとしたのかしら』と思うことは?」
「ヤカンをかけて、一つ用事をする。例えば洗濯物を取り込みに庭に出る。すると草が目についてちょっとだけと取り始めると…そう空焚きになってしまうのですね」
「町へ出かけて、『三つ用事を片付けよう』と思っていたのに、一つは忘れてしまうようなことは?」
「忘れちゃあいけないと思ってメモを書いたのに、そのメモを忘れてしまう…」このくらい続けざまに言うと、会場は笑いに包まれます。

認知症予防講演会ですから、会場はある程度高齢の方が中心です。
皆さん、思い当たるから笑いがこぼれる。そこで解説を始めます。
「このような時『忘れて』といいませんか?『用事を忘れてしまって』『ヤカンをかけていたのを忘れて』。たしかに『忘れて』といいますが、実はこれは『記憶』の問題ではないのです。前頭葉の問題です」

前頭葉を「三頭建馬車の御者」というのは、とても良い例えだと思います。自分らしく生きていくことができるのは、まさに自分の前頭葉が絶え間なく情報をキャッチし、状況を判断し、行動を決定してくれるおかげなのですから。「脳の司令塔」とも表現します。
前頭葉機能をあげてみましょうか。
洞察、推理、決断、修正、発想、計画性、自発性、想像力、創造力、創意工夫、好奇心、感動、抑制・・・その人らしさを表す源です。
これらの前頭葉が機能するときに、一番大切な働きが注意集中力と注意分配力です。(正確にいうとさらにその前提には意欲が必要です)
前にあげた失敗の数々は、「記憶していない」のではなく「必要なことに、注意力を集中、また持続をさせられていない」のです。
なぜか?「注意力を分配できないから」。

ヤカンをかけていることと、洗濯物を取り込むことと、草を抜くこと、という三つのミッションを同時に注意力を分配しながら遂行してゆく、その力が足りない。一つに取り掛かるとその他への注意力、気配りが消えてしまうのです。
この注意集中・分配力は、20歳代をピークにした一峰性のカーブを持っています。
つまり、年齢とともに注意集中・分配力は低下していく!
ショックを受けた方がいるかもしれませんが、「どこかをピークに年齢とともに低下していく」ということは、私たちが生きていくときの宿命ともいえるのではないでしょうか?体力しかり、骨、筋肉しかり、内臓機能も免疫力も全部、加齢と主に低下していくものですね。見た目も年齢に相応した変化があります。

その能力低下は悲しむべきものではなく、当たり前のものとして受け入れなくてはいけないのですが、「年齢相応の低下」ということに注意を払っておく必要があります。
前頭葉が右脳、左脳、運動の脳に対して、自分らしくなおかつ楽しく生きるように指令を出し続ける状態での能力低下は、何の問題もありません。問題にすべきは、前頭葉の使い方が足りないときです。いいかえれば、自分が自分らしく生きているという実感に欠けるとき(それを決定するのも前頭葉の役割です)前頭葉は老化を加速し始めます。

脳の老化が加速し始めるときに、一番最初に明らかになるのが注意集中・分配力の低下です。
その時に起きる「事件」を列挙してきました。
「だんだん加齢とともに事件が増えてきてるけど、まあこんなものだろう」と思えるとき、つまり事件といっても大したことがなく、頻度も特別急増というのでもないときは、自分の中でも笑い話(正確には苦笑話)で処理できているはずです。
前ブログで書いたように、たった一草の間違いでも自分でびっくりするのなら、これは黄信号をとらえた方がいい。
検索テーマを忘れてしまうのも、同様ですね。私の場合はこちらは苦笑話に近いと感じてます。年齢相応ではないかと思ってるのですが、ちょっと多すぎかとやや気になってるというのが正直なところでしょうか。

認知症には3段階あります。小ボケ(社会生活だけトラブルあり)、中ボケ(言訳のうまい幼稚園児)、大ボケ(セルフケアもできない)
最初は前頭葉機能だけが老化を速めて不合格になった状態。エイジングライフ研究所では小ボケといっています。家庭生活には問題なく社会生活に支障が起きてくる段階です。ここで気づけばいくらでも回復させることができるのですがこの段階についてわかっている方々はほとんどいないのです。
まさに歳のせいなのか、老化の加速が起きているのかは、ごく初期ならば本人が自覚できます。少し経つと脳機能検査をして初めて、ここまで前頭葉機能が低下してしまっているのか…とびっくりすることになります。本当にお話だけ聞いていると全く問題はないようなのですよ。

「かくしゃくヒント」候補生の同級生に、「微妙なところです」とわざわざ書いたのは、前頭葉機能がちょっとしたことで(例えば今回のStay Home、ケガや体調不良が続くとか、心配事が起きてしまうとか)、今までとは刺激の質量ともに変わってしまうと、前頭葉が、正常老化の道ではなくて老化を加速させる道の方を向いてしまうことを知ってほしかったからです。
そしてその最初は必ず自覚があります。
もしも将来、またこのように前頭葉機能の低下が起きた自覚があったら、そのまま、ボケの道に進むというのではなく、逆にそのような自覚があったときにはもう一度生活を見直して、自分の前頭葉が満足できるものを見つけなおす作業にかかってください。

庭仕事も、毎月欠かさないお墓参りも続けているし、今日も自動車に自転車をのせて遠出してのポタリングを楽しんだようですね。やっぱりさすが「かくしゃくヒント」の候補生です。
検索がわからなくなるのは、単なる歳のせいに違いないと思います。同級生の私にも起きているし、友人たちに聞けばきっとみんな笑いながらうなずくでしょう。
とにかくコロナが落ち着いて、少しでも早く皆さんと楽しい時間を共有できる元の生活に戻れますように。

もうひとつ届いたコメントも紹介しましょう。
「ステイホームで前頭葉機能低下、思い当たることが!実家行きキャンセルのため、えきねっと予約切符を解約しなくてはいけないのにそのままに。けっきょく購入のはめに。こんなこと今までしたことないのに!いま自分にカツを入れました」
まさに前頭葉、注意集中・分配力の低下です。まだ若いので、「認知症」は頭にないからこそ、余計素直に事件を前頭葉の機能低下と理解できたのでしょう。
この友人は、30年位前に「通販生活」の特集記事取材で来られたM坂さん。その後フリーライター。宝飾への興味関心が深まりベルギーにダイアモンド鑑定を学ぶため留学までした、パワフルで魅力的な友人です。
書くお仕事ですから、図書館で調べものをすることはどうしても必要ですよね。ようやく開館した江戸東京博物館図書館でのできごとを今日のフェイスブックにあげていました。
「来ていたキッチンカーで海老トマトクリームパスタのランチを。値段700円に725円を出しておにいさんに困惑される。ん?消費税3%で計算してる自分にビックリ!」

私の推理。700円の7から3を思い浮かべてしまったのではないかなあ。税金がなければ1000円だと300円おつり。ほら3が出てくるでしょう。本来なら、7から3を思い出す前に「テイクアウトだから8%。プラス56円」と苦もなく暗算していたはずです。
きっと、見つかった本を早く読みたかったか、もう少し本を探したかったか、帰りの用事を思っていたか、とにかく注意力は、お弁当の売買ではないところに大部分が振り分けられてしまっていたということです。
それを「上の空」って言いますね。前頭葉がうまく働いていない状態のことです。

今日のブログでお話したかったことをまとめておきます。
1.前頭葉機能、特に注意集中・分配力は年齢とともに能力が低下する性質がある(正常老化)
2.生きがいも趣味もなく、交遊も運動もしない生活。自分らしくイキイキと前頭葉を使わない生活を続けると、老化が加速されてしまう。
3.老化が加速され始めるときは自覚がある。
4.状況に応じた工夫をして、できるだけ従前の生活、または新しい楽しみごとを見つける生活に変えることで改善は容易である。

今日お話した認知症はアルツハイマー型認知症といって60歳を超えた高齢者の問題です。







Stay Homeで前頭葉機能低下?

2020年06月01日 | 前頭葉の働き
3月下旬から、原則的に家にいる生活が続いています。
家にいることは決して嫌いではありません。今回はそれにしても時間がたっぷりありますから、いろいろやってみました。
アマゾンプライム!Fire Stickを使って研修会用のスクリーンでホームシアター開設。映画も何本も見ましたし、普段だとまず見ることはない今話題の「鬼滅の刃」も楽しんでいます。苦手なシーンもたくさんありますが主人公の炭次郎のやさしさが沁みて、次の展開が気になってしまうのです。
野イチゴの自生地を教えていただいて、念願の野イチゴ摘み。
むしゃむしゃ食べましたが、もちろんジャムも。
ジャムを使ってゼリーも作りました。
おやつもイロイロ作ってしまいました。ナッツをのせたパイ。
魚も作って。
このサバは7匹で350円だったと思います。もちろんシメサバ。そぼろにしたり、南蛮漬けにしたり、味噌煮も作りました。
畑づくりも。トマト。
バジル。バジル屋さんができそう!実はタイミングが遅く、苗の種類が少なかったのです。
でも探しまわって、カボチャ2本、ナス2本、ピーマン1本、トウガラシ3本追加できました。
一昨年、挿木で育てたパッションフルーツ。鉢がジャングル状態でしたからツルを整理してやったら、すぐに元気を取り戻しました。
花も。
多肉植物にも、少々手を加えてやりました。
ヘビイチゴエキス。虫刺されの秘薬と教えてもらって去年から作ってます。
息子たちから言われている、Zoomを使いこなせるようにという課題はなかなか相手に恵まれず使いこなせるところまではいっていませんが、ライブチャットは何度か体験しました。

昨日今日と二日かけて、ドクダミエキスも作りましたよ。花が咲きだした時がベストタイミングということですから、大体毎年5月末の仕事です。
根が深く、抜くのが大変です。山のように生えてますからすぐに収穫量はなかなかのものになります。きれいに洗って束にして半日干します。このくらいの束が10個以上もできたでしょうか。
花と葉をちぎって、瓶に入れホワイトリカーを注ぎ込んで、一か月くらい経ったら濾して完成となります。
楽しそうだと思われますか?
実際、楽しみながらやったことばかり(の一部)を報告しました。
ところが、事件が勃発。
ドクダミの中に一本違う植物が混じっていました!私はちょっとショックを受けました。
「そんなことなんて小さな失敗じゃないか」と思うでしょうね。
この失敗はなぜ起きたのか。
ドクダミを洗うという一見単純な作業を、脳機能からみてみましょう。
土を落として傷のあるなしをチェックして、干すために大体の長さをそろえて並べていく。前頭葉の中核的機能である注意集中力と分配力なしにはとてもできない仕事です。
何歳くらいからできるだろうかと考えてみるとわかりやすいかもしれません。
幼稚園児では無理です。小学生でも高学年になったらできる作業だと思いますが、何時間かかかることを思うと少し無理があるかもしれません。
この注意集中力や分配力は、20歳代にピークを迎える一峰性のカーブを持っています。
だから年齢を加えるとともに能力低下を感じることは、ごくごく普通のこと。
誰しも「歳をとって頭が悪くなったなあ…」と苦笑交じりに言うものです。下のグラフの縦軸「脳力」のカーブが注意集中分配力の移り変わりを表しています。

私の一草の間違いが、単なる失敗かどうか。
「まあ歳を取ったから仕方ないわ」と笑えることかもしれません。
「それにしても、こんな失敗をするなんて。どうしちゃったのかしら」と気になるかどうか。
抜いた時に紛れ込むことはあったかもしれません。でも一本ずつ洗ったのですよ。その時に気づかなかったのが不思議。
今まで何年間か作ってきたのに、一度もこのような失敗はなかったなあと忸怩たる思い。
そこでもうひとつ、面白い失敗の自覚があることに気づきました。
家にいるので、パソコンで検索することが極端に増えました。ちょっと気になるとすぐに検索。ところがパソコンの前に座って、ちょうど出ている画面に見入ってしまったり、「先にニュースやメールをチェックして」とそちらを優先すると、肝心の「検索」がどこかへ行ってしまって「アレ、何を検索するつもりだったのか?」と一瞬考え込むことが確かに増えてます。
こんな不思議な色のユリを、若い友人が持ってきてくれました。

結論です。
この2か月のStay Homeの生活は、私の前頭葉にとって、刺激の質や量としてやや足りなかったということだと思います。ストレスなく生活を楽しんでいたようでも、前頭葉が本当にやりたいことを満たしてやってなかった・・・それで老化が加速してしまった(もちろん、ほんの少しです!)のではないかと、結論付けました。
前頭葉は評価する機能も担ってますから、他者の評価が良であっても自分の評価が良でない限り、満足はできないものなのです。逆に言えば、自分が自分らしく満足して生き続けることが、老化を加速させない必要条件ということにもなります。
自粛が解除されましたから、もう少し友人との交流を増やさなくてはいけないのではないかと思ってます。私は料理したら、誰かに食べてもらいたい。挿木で植物が増えたら、誰かに差し上げたい、そんなタイプだと改めて思いました。
(続けて書きます)

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