脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

小ボケの人への励まし

2023年04月20日 | 二段階方式って?
パソコンの整理をしていたら、ずいぶん以前に書いた手紙が出てきました。
珍しく講演前に皆さんにかなひろいテストを実施してあげたのです。ふつうは、個別に検査して生活実態や生活歴を聞くことも必ず行うのですが。その時は「前頭葉機能」があるということを理解してもらうために、実施したのです。
講演後私のところに「まったく意味が書けませんでした」と真剣な顔で相談に見えた方がいました。後の予定が立て込んでいたために、説明ができず、お手紙を出したのです。
アルツハイマー型認知症は、脳の使い方が悪いために老化が加速されてしまう(廃用性機能低下を起こす)、いわば生活習慣病ともいえるものです。
足腰は老化しますが、安静にしたりして使い方が足りないとその老化は驚くほど速く進みます。それと同じなのです。
伊東市の藤の名所 林泉寺(4/20)

「お元気にお過ごしですか?桜も、そろそろ見納めですね…
 さて、先日の前頭葉機能検査の結果をお話しします。
皆さんにお返しする結果でいえば、
「にこにこレベル:年齢相応のお元気な脳です。友達つきあいや、散歩や運動など変化のある楽しい生活に挑戦されると脳はさらにイキイキしてきますよ。さあ、新しい楽しみごとは何でしょう?」ということになりました。
つまり合格ライン。
〇〇さんのことを知らないままのいわゆるブラインド分析はしないので、本来ならば、集団でやった検査結果からはここまでしか言えませんが、
講演後お話しましたので、もう少し解説を試みてみようと思います。
私の結論は、〇〇さんの前頭葉機能は元来持っていらっしゃる能力よりも少し力を落としていると思います。
あの時に「がんばりすぎたのではないでしょうか?」とお話ししましたね。
〇〇さんから受ける印象は、まじめで芯のあるご自分をきちんとお持ちの方のようでした。そのような方が初めて受検されると、がんばりすぎてスピードを上げて「あ・い・う・え・お」に〇をつけることに集中しすぎることがあるのです。その結果内容がおろそかになってしまう…このようなケースを想定しました。結果は、少し違います。
 受検中は、むしろスピードを落として慎重に対応されています。(まじめさが表れています)
〇〇さんから受けた印象をもとに考えると、この慎重さであるなら当然内容把握にも能力を振り向けることは、必ずできるはずです。それが難しかったということは、〇〇さんが本来持っている前頭葉機能がフルに発揮できなかったということを意味しています。
〇〇さんは講演後しばらく待ってでも「ご自分が感じた、なぜできなかったか?」という違和感を解消されたかったですよね?〇〇さんは自他ともに認めるような、人の上に立つようなお仕事をなさってきたからではないでしょうか。
 つまり、〇〇さんは間違いなく意味は読み取れる方なのです。

先日講演でお話ししましたね。
人は誰でも、何らかの出来事が降りかかってきたとき、そのことが自分の生きる力を削いでしまうようなことであれば、例えどんなに立派な方であっても前頭葉は老化を加速し、本来の力は発揮できなくなります。
 〇〇さん
ここ1~2年前、大きな出来ごと、生きる力を抑え込んでしまうような出来事があったはずです。今、そのことに負けてしまおうとしていますよ。
 講演では、それを退職とか病気やケガ、トラブルの発生などといいましたが、何であっても〇〇さんがそのことに大きなショックを受けて、それまでのような生活ができなくなるようなことが起きたのです。
いや、言いなおしましょう。生活はできているでしょうが、生活に立ち向かう気持ちが、そのことが起きる前といまでは違ってしまっているのです。
ここまで書くと、〇〇さんはきっと膝を打って「確かに思い当たることがある!」といわれると思います。
 多分そのことは、消し去ることはできないはずです。でも、負けないでください。
私の講演が企画され、その講演を聞きに来られた。いつもはしないテストが実施され、そして〇〇さんがテスト結果に違和感を覚えた…ここで引き戻るためにチャンスが与えられたと思ってください。なんというタイミング、すごいご縁だと思います
元気を取り戻す工夫をしましょう。
まず歩くこと、体を使うこと。なにかの運動をなさってますか?新しいことを始めるのも悪くない。思いつかないならもちろん散歩でいいのです。一つ目的を持って歩くといいでしょう。花を見る。興味ある展覧会やギャラリーに顔を出すこともあっていいです。カレンダーにでも歩数を書いて、親しいお友達に報告すると、さぼれません。
いま親しいお友達といいましたが、脳が一番活性化するのは人と楽しく会話している時です。この前私がしたのは一方的な講義で、あれは会話ではありません。会話の時には自分も相手も、ことばに注意を払い、同時に表情や声の調子にも心を配らないといけないでしょう。前頭葉の注意分配能力がないととても対応できませんので、いい活性化訓練になります。
植物がお好きといわれてましたね。せっかくなので、写真を撮ってもいいし、鉛筆でも水彩でももちろん油絵でも、描いてみるのはどうですか?
最近は写真アルバムを作ることは簡単になってますから、作ってみませんか?作るだけでなく、お友達にあげて感想を聞くこともいいですね。
私たちはもうプロになる必要はありません。今までプロとしてきちんと第一の人生を生きてきたのですから、これからはいかに楽しめるかにかかっています。
 今は絵の話をしましたが、音楽でも全く同じです。どちらも右脳。
具体的な趣味の内容は私の小冊子を参考に、探してください。やったことがなくとも3か月は続けてみて、それでも合わないと思ったらどうぞやめていいんです。ただし次に挑戦することを決めてからです。
もう一つお話しさせてください。
さしあたり、講演でお話ししたように「楽しい変化のある暮らし」を目指せばいいのです。「今日も楽しく生きていてよかった」という生活が実現できた時、それで満足できるならそれで何の問題もありません。
ただ「楽しむだけでいいのだろうか?」という気持ちが少しでも湧き上がってきたら、人との交流それも人のためになることを探してみていただきたいと思います。その中で得られる喜びを、至高のものと思うタイプの前頭葉がありますので。
いつかお目にかかれることがあるのかどうか。お会いすることは難しくても、お元気を取り戻してくだされば私はうれしいです。
これを機会にイキイキとして楽しい生活にチェンジしてください。3か月がんばると、前頭葉が元気になったと実感できますよ。
書き始めたら、書かずにいられなくなって長いお手紙になりました。私の真意が伝わりますようにと、願いながら終わりにします。
どうぞお元気に!体も脳も!高槻 絹子」

このように、脳が老化を始めたときには必ず自覚があります。
「何か変。いつもの私とは違うみたい。こんなはずはない」
全部前頭葉の機能低下を自覚している言葉です。
それなのに気づかないふりをして「大丈夫!歳を取ったら誰でもあります」というような慰めでなく、そのときにきちんと指摘してあげることは、その人の尊厳を大切にしていることだと思います。
だからこそ、脳機能検査という客観的な指標は大切です。

何年たっても、原理原則は不変だということを感じたので掲載してみました。




認知症に関して理論的に詳しく知りたい方は、以下のブログもお読みください。


ブログ村

http://health.blogmura.com/bokeboshi/ranking_out.html