脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

米沢市「なごみの部屋」からびっくり報告

2018年06月25日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

 

山形県米沢市にある「なごみの部屋」は下のように多様な取り組みをしている施設です。

2年前に伺ったとき、職員の方々から四つの活動報告をしていただきました。脳機能のレベルに応じて、それぞれ適切な対応を行った場合の脳機能の変化を見ると「より脳機能がいい人たちが、より改善している」という、実に当たり前の結論が導き出されました。
詳しいことは、ブログ米沢市「なごみの部屋」の実践報告1-4にまとめましたからご一読ください。特に上表の「介護保険外」の方々を対象にした「お達者サロン」のすばらしさは、会場の皆さんから何度も声が上がりました。
米沢市「なごみの部屋」の実践報告1ー認知症予防教室(お達者サロン)

「近況報告ですが…」とお電話を頂きました。
「『お達者クラブ』のことです。参加者の皆さんとスタッフと話し合いを持ったんですね。最近どうもマンネリ化しているというか、どうしてもスタッフが用意してそれを実践してという傾向が強くなったみたいで。もう10年以上も続いていて、皆さん高齢になったこともありますし」
確か、若くても70代後半、89歳の方もいらっしゃいました。話を聞きながら「一企業が採算度外視でやってきた事業だから、そろそろ息切れしてきたのかなぁ」と思っていました。
ウイーン大学の菩提樹

ところが電話の声は予想外の展開を見せます。
「『子ども食堂って、最近よく聞くけど、ああいうことをやって、少しは世の中のために立ちたい』という意見が出てきたんです」
「ちょっと待って!それって利用者さんからなの?スタッフじゃなくて!」
「そうなんです。『世の中に何かしてあげたい。子ども食堂ならできるかもしれないし、子どもたちのためになるなら、うれしいし』って言われるんです」
サラサドウダン(こんなに赤いのは初見)
「生きがいって、誰かのためになっているって思えるほどすばらしいものはないんじゃない?そこに至らないから、趣味や遊びで楽しみましょうって、私は言ってる気がするけど…」
「そうですよね。それでちょっと調べてみたら、子ども食堂に行ってる人たちは経済的に恵まれていないという風評があるみたいなんです。
それで、全く条件なしにしてだれでも受け入れることにして、材料費ということでおひとり300円頂くことにしました。(私の確認不足ですが多分大人も受け入れるのだと思います)行政の決まりから外れて『なごみの部屋』風にやっていくつもりです。
食事の前におばあちゃんたちが、右脳訓練の成果をちょっと発表したり、子どもたちと昔の遊びで盛り上がったり。とにかく世代を超えたおしゃべりもすてきでしょう?食事だけでなくその時間も大切にしたいんです」
「高齢者は、子どもからエネルギーをもらうし、子どもたちは昔の遊びや生活を聞くだけでなく、忙しいお母さんの対応と違った対応をしてくれるおばあちゃんにびっくりするでしょう。楽しいことをよくもまあ思いついたこと!
『なごみの部屋』はネーミングが楽しいから、今回も一ひねりしてね」
「はい。みんなに言っておきますね。来月からなんです。最初は誰でも好きなカレーを作るそうです」
アッツ桜

高齢者への施策として、また地域づくりとして魅力的な取り組みですね。ただしこの方たちは脳機能が「かくしゃく」としていらっしゃることを忘れてはいけません。
あくまでも、脳機能に沿った取り組みなのです。

 


2018小布施便り「ぴんころ地蔵さん」

2018年06月21日 | 各地の認知症予防活動

恒例の小布施に行ってきました。栗が丘地区の「脳のリフレッシュ教室(認知症予防教室)」の立ち上げのための講演でしたが感動的な出来事があったので報告します。
小布施町で最初に「脳のリフレッシュ教室」が始まったのは山王島地区です。もう15年くらい前になります。その山王島地区に「ぴんころ地蔵さん」が建立されたと聞いたのは、去年のこと。
設立に至る詳しい話は小布施町認知症予防教室交流会の後半にまとめてあります。

お社もあるのですよ。400年前のものと言われる古い馬頭観音様と一緒に祀られています…かわいい看板もあります。畑の一画に、みんなを見守るように六地蔵さまも。今年の2月には赤い毛糸の帽子でしたが、夏が近づいてきたからでしょうか、紅白帽の赤をかぶせてあげていました。かわいい!

このぴんころ地蔵様建立の夢を実現させたのは、地区の長老岩井さん(88歳)で、「山王島脳のリフレッシュ教室」の立ち上げの時の会長さんです。去年の講演会の時にパチリと撮った岩井さんご夫妻です。
岩井さんは水墨画の素晴らしい腕前の持ち主でもあります。教室とは別に、ちょうど課外活動のように地区の方たちに水墨画を教えてくださっているのです。
その生徒のけさ子さんから、短冊を頂きました。「まだまだ下手だけど」と差し出されるお顔は、ちょっと紅潮して魅力的でしたよ。家の岩井さんの短冊と並べて飾りました。師弟競作ですね。
山王島の修子さんからも短冊をいただきましたから、仲良しさんで。

どちらのぴんころ地蔵さんも、こんなにかわいいお顔です。まったく十人十色とはよく言ったもので、そのお人柄が現れるのですね。

「裏にもちゃんと書くように、岩井先生が言われました」とけさ子さん。そうですね。大切なことかもしれません。

「どこかのぴんころ地蔵さんにお参りに行く」というのとは全く違う世界が、小布施町山王島地区には広がっています。私たちエイジングライフ研究所はこのような「生き方」を、小布施町の皆さんにしていただきたいと思って、小布施町の認知症予防活動を支えてきたつもりです。
本当にうれしく思いました。
「七草の会」のメンバーも支えあって、明るく生きてくださってますよね。栗ケ丘にも来てくださいました。一番前でたくさんの笑顔を見せてくださいましたね。ありがとうございます。これからも頑張ってくださいよ。

ハイポーズ!おすまししてるようですが目が笑ってます。

今日もおしゃれでした。いい笑顔!

男性にも登場していただきましよう。北部地区の北沢さん。去年の交流会の時に砂漠のロイヤルファミリーで王子さまになったんですよね。だから蝶ネクタイ。

北沢さんは、替え歌づくりの名手です。青い山脈の替え歌1番~5番は名作でした(記事の最後に紹介しています)今回久しぶりに新しい歌をいただきました。広報小布施のテーマ曲が変わったことが、創作意欲を刺激したらしいですね。

こういう生き方ができる人たち。他にも何人もお顔が浮かびます。
そして同時にこのように、みんなで楽しく生きていくという認知症予防の王道を知らない方もいらっしゃるし、知っていたのに息切れてきた方もいらっしゃるでしょう。でも下の表は何を表しているのでしょうか?
小布施町が続けてきた15年近い地道な認知症予防活動の成果ではないかと、私は思っています。
小布施の要介護認定率は国平均に比して80%程度で推移してきましたが、今年は72%です。
(平成30年は3月まで。数値は%)
小布施町としてもこの数字の検証をするそうです。楽しみです。


「人」が生きるということ

2018年06月08日 | 前頭葉の働き

新刊書の宣伝が目に留まりました。

今はやりのデユアルタスク。二つの作業を同時に行うこと。
こうすることで脳が混乱する。その混乱を収めるために前頭葉機能(ワーキングメモリーの表現が多いようです)の出番となって、脳がイキイキする。だから認知症予防となる。ということが最近喧伝されています。
「料理しながら、歌を歌う」とか「洗濯物を干しながらしりとりをする」とか、よくテレビでも取り上げられています。
前頭葉は脳の司令塔ですから、このようなデユアルタスクを行う時には確かに交通整理のために活性化してくることは、間違ってないと思います。


閑話休題。
先月末、友人たちと中欧の旅を楽しんできました。
チェコ フルボカ―城

プラハ城

チェスキークルムロフ城

ウィーン ホーフブルク宮殿

帰国後、いつもは辛口の夫が「何だか若くなって帰ってきたような。よほど楽しかったんだろうね」といいました。
そうです。とっても楽しかった!
ヨーロッパのあのなだらかな丘陵、よくよく眺めると林が目に付いたり山が迫ってきたリ表情豊かに風景が迫ってきます。
複雑な歴史に触れたり、文化の違いを再認識させられる建物や調度。おいしく珍しい食べ物、そして人との出会い。
上にあげた認知症予防の本にかかれていることは一つもしませんでしたが、私の前頭葉はしっかりと刺激され活性化されて帰国したのです。(結果、ちょっと若くなった?)
帰国後の伊豆高原大室山

「人」が生きるとはどういうことでしょう。
日々の生活の中で、楽しみを見つけ幸せを感じる。苦しみに出会う時には背を屈め、それでも前を向こうと努力する。
その一つ一つの行動や決断は、前頭葉なくしてはあり得ません。
旅でたくさんの刺激を受けたと書きましたが、アンテナさえ立てておけば日常生活の中にもたくさんの刺激が溢れています。「アンテナを立てる」ということを言い換えれば「意欲的に生きる」ということです。
前頭葉機能も老化を避けることはできませんが、何らかの生活の変化をきっかけにして「生きがいも趣味も交遊もなく、運動もしない」ナイナイ尽くしの生活を続けていると老化が加速されてきます。小ボケ・中ボケという経過の先にいわゆる世間が考えるアルツハイマー型認知症があるのですが、その時最初に起きることは「意欲低下」です。
伊豆高原 Jガーデンのプロテア

「意欲がない」状態になったら、つまりこれが小ボケですが、たとえ見たこともないような外国の風物に出会っても感動がわいてきません。そうなれば、仕方がないから上掲の本のように運動機能を加味したデユアルタスクを、あたかも訓練のようにやることになりますよ。
専門家の皆さんは、元気な高齢者(脳機能が正常な高齢者)がどういうものなのか、あまりわかっていらっしゃらないと思うのです。
その人が「このために生きている」という生き甲斐を感じたり、楽しくイキイキとした生活を実感するときこそ、前頭葉が活性化されているのです。
自分なりに充実した日々を送り続けることこそが、アルツハイマー型認知症の予防になるということに対して、もっと自信を持ってほしいと思います。
最近FB友達になったばかりの日野美歌さんが紹介された今日の記事に心打たれました。いかわあきこさんのお母さんの生き方、「人」の前頭葉はなんてすばらしいのでしょうか。一旦は逆境と感じた状況でも、見直し、思い直し幸せを見つけることができるのですね。デユアル(二つ)どころではない深く複雑な感情を見事に昇華されていると思いました。

30歳で画才開花!ダウン症の画家・いかわあきこに起きた「奇跡」

友だちになったばかりの友人から、自分があいまいに考えていることに、まさにピッタリの記事が送られてくる「共時性」に驚きました・・・本当は「感動した」という方がピッタリでした。
こういう感情の動きは、まさに前頭葉の機能です。上掲のデユアルとその働き方のレベルの差に気づいてください。日常生活の中に前頭葉を鍛えたり活性化させたりする要素はたくさんありますねえ。老化の加速が始まっていなければ、です。



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