脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

「人」が生きるということ

2018年06月08日 | 前頭葉の働き

新刊書の宣伝が目に留まりました。

今はやりのデユアルタスク。二つの作業を同時に行うこと。
こうすることで脳が混乱する。その混乱を収めるために前頭葉機能(ワーキングメモリーの表現が多いようです)の出番となって、脳がイキイキする。だから認知症予防となる。ということが最近喧伝されています。
「料理しながら、歌を歌う」とか「洗濯物を干しながらしりとりをする」とか、よくテレビでも取り上げられています。
前頭葉は脳の司令塔ですから、このようなデユアルタスクを行う時には確かに交通整理のために活性化してくることは、間違ってないと思います。


閑話休題。
先月末、友人たちと中欧の旅を楽しんできました。
チェコ フルボカ―城

プラハ城

チェスキークルムロフ城

ウィーン ホーフブルク宮殿

帰国後、いつもは辛口の夫が「何だか若くなって帰ってきたような。よほど楽しかったんだろうね」といいました。
そうです。とっても楽しかった!
ヨーロッパのあのなだらかな丘陵、よくよく眺めると林が目に付いたり山が迫ってきたリ表情豊かに風景が迫ってきます。
複雑な歴史に触れたり、文化の違いを再認識させられる建物や調度。おいしく珍しい食べ物、そして人との出会い。
上にあげた認知症予防の本にかかれていることは一つもしませんでしたが、私の前頭葉はしっかりと刺激され活性化されて帰国したのです。(結果、ちょっと若くなった?)
帰国後の伊豆高原大室山

「人」が生きるとはどういうことでしょう。
日々の生活の中で、楽しみを見つけ幸せを感じる。苦しみに出会う時には背を屈め、それでも前を向こうと努力する。
その一つ一つの行動や決断は、前頭葉なくしてはあり得ません。
旅でたくさんの刺激を受けたと書きましたが、アンテナさえ立てておけば日常生活の中にもたくさんの刺激が溢れています。「アンテナを立てる」ということを言い換えれば「意欲的に生きる」ということです。
前頭葉機能も老化を避けることはできませんが、何らかの生活の変化をきっかけにして「生きがいも趣味も交遊もなく、運動もしない」ナイナイ尽くしの生活を続けていると老化が加速されてきます。小ボケ・中ボケという経過の先にいわゆる世間が考えるアルツハイマー型認知症があるのですが、その時最初に起きることは「意欲低下」です。
伊豆高原 Jガーデンのプロテア

「意欲がない」状態になったら、つまりこれが小ボケですが、たとえ見たこともないような外国の風物に出会っても感動がわいてきません。そうなれば、仕方がないから上掲の本のように運動機能を加味したデユアルタスクを、あたかも訓練のようにやることになりますよ。
専門家の皆さんは、元気な高齢者(脳機能が正常な高齢者)がどういうものなのか、あまりわかっていらっしゃらないと思うのです。
その人が「このために生きている」という生き甲斐を感じたり、楽しくイキイキとした生活を実感するときこそ、前頭葉が活性化されているのです。
自分なりに充実した日々を送り続けることこそが、アルツハイマー型認知症の予防になるということに対して、もっと自信を持ってほしいと思います。
最近FB友達になったばかりの日野美歌さんが紹介された今日の記事に心打たれました。いかわあきこさんのお母さんの生き方、「人」の前頭葉はなんてすばらしいのでしょうか。一旦は逆境と感じた状況でも、見直し、思い直し幸せを見つけることができるのですね。デユアル(二つ)どころではない深く複雑な感情を見事に昇華されていると思いました。

30歳で画才開花!ダウン症の画家・いかわあきこに起きた「奇跡」

友だちになったばかりの友人から、自分があいまいに考えていることに、まさにピッタリの記事が送られてくる「共時性」に驚きました・・・本当は「感動した」という方がピッタリでした。
こういう感情の動きは、まさに前頭葉の機能です。上掲のデユアルとその働き方のレベルの差に気づいてください。日常生活の中に前頭葉を鍛えたり活性化させたりする要素はたくさんありますねえ。老化の加速が始まっていなければ、です。




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