脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

「正常高齢者の認知症予防こそ大切」と「なごみの部屋」から

2023年12月01日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践
「なごみの部屋」の実践についてはこのブログでも何度も報告してきました。
(カテゴリー「米沢市『なごみの部屋』の実践」にまとめてあります)
「なごみの部屋」の我妻さんとは、遠いのでなかなか会うことが叶わず、時々電話でお話をするのです。今日はその記録ですが、本来茶飲み話のようなものですから、少々の誤解や間違いがある可能性は十分にありますから、ご容赦ください。

「ちょっと話を聞いてもらっていいですか?」
「もちろん!どうぞ」
「Y市の介護予防事業の認定に漏れたんです。
たしかに、たくさんの事業所が名乗りを上げていたことはわかるんですけど。『なごみの部屋』の実践を承知してくれているはずなんですが。そこが残念というか、なぜ?というか…なんです
我妻さんの複雑な思いが、これだけのやりとりで私にはよく身に染みてきますが、ちょっと解説を。

初発記事は2005年11月。もう一度読んでみて我妻さんの思いがぶれていないことを確認でき、そしてその信念に驚きました。18年も前に我妻さんは、私にこう言われたんです。
「本当に正常な高齢者に対する『ボケ予防』をやりたい。それは本人の希望だろうし、国の財政を考えてもどうしても必要なこと」
そういう思いをもって、エイジングライフ研究所の二段階方式を導入されました。エイジングライフ研究所は「ボケ予防」は収入に結びつかないので市町村のやることだと思っていました。経営的に見れば、人件費を始め持ち出しに決まっています。
けれども、我妻さんには信念があるのです。この話のすぐ後からできることを着々を積み上げてこられた途中報告が2008年の次の記事です。

「なごみの部屋」予防活動で事業拡大

印象的な言葉を取り出してみます。
「介護保険発足時に、老健から退所を迫られた方々のためのデイサービスつきアパートを始めました。ディサービスの希望が多くデイを増やし、訪問看護の要望にも応え、要介護の方のお世話をしていくうちに、エイジングライフ研究所二段階方式に出会い、認知症は生き方の問題だということが納得できました。認知症のかたがたには相応の生活歴があるものです。
2005年から「かくしゃくの会」の活動が始まり今に至っています。
そして今年から機能訓練事業所も開設しました。
今思うことは、正常な方々を如何に落とさずに人生を全うしていただけるかということです。イメージ的にはディつきのケアハウスです。
その結果、介護保険外で実践している事業分野は以下の通り。

かくしゃくの会:正常者に対する脳と体の健康教室
なごみーる:障害者自立支援法に基づく就労継続支援B型事業所兼自立訓練事業所(洋菓子店)
フィットネスルーム:中高年向けのフィットネスケア

いよいよ本題です。
2005年から始まって2008年に継続していた「かくしゃくの会」は、なんとそれから15年後の現在も「スマイルの会」と名前こそ変わったものの継続中!
現状の介護保険制度下では、要支援の人はデイに行けるし、それ以上に重症度が重くなると種々のサービスが受けられるけれども、自立の人はどこにも行けないということをご存じですか?

「なごみの部屋」には「ボランティアでもいいから通えるところを作ってほしい」という脳機能が正常な高齢者の切実な声が途切れることなく届くそうです。つまり介護保険対象外のその人たちは、元気ですが楽しみのない単調な生活を送るしかない現状を「これではボケてしまう。これでは良くない」と思っているのです。経験もしたことがない趣味のサークルに参加するのは、ちょっとハードルが高いのですね。(以下の写真はニューヨークランプミュージアム)


「介護保険は自立支援を目指していると聞いたけど…」と思った人もいるかも知れませんが、厚生労働省の考え方は「自立支援介護とは、介護を必要としている高齢者がその方らしく生活できるように、介護サービス事業所が支援を行うこと」 なのです。
アミロイドベータやタウ蛋白や脳の萎縮に、認知症の原因を求めていたら、認知症予防はなく「飲んだら治る薬ってあるのだろうか」と疑問に思いながらも頼るしかない。
一方で「ボランティアでもいいから出かける場所が欲しい」と願う元気な(正確に言えば、脳機能が正常な)高齢者が感じている、生活者の実感はどこから来るのでしょうか?
世の中の人たちは「ああいうタイプの人ってボケやすい。ボケない人はこういうタイプ」と口にします。具体的には「第二の人生に入って、何とはいえないけど生きがいを持ってイキイキ生きている人はボケない。趣味も生きがいも交遊もなく運動もしないような人はボケる」と言い換えられます。

補足すると、エイジングライフ研究所は認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症についてこう説明します。「脳機能にも正常老化はあること。使わなければその老化が早まった結果(廃用性機能低下)発症してくる。当然徐々に進行していく特徴がある。つまり認知症は脳の使い方に問題がある生活習慣病である」。
それならば、より若い脳機能が正常であるときから、脳の老化が加速しないような生活を心がけるべきでしょう。若ければ若いほど「認知症予防」は効果的です。年齢が若くなくても、脳機能をよく使う生活、このブログで繰り返し話している前頭葉機能の出番がある生活を続けることが「認知症予防」。
「ボランティアでもいいから出かける場所が欲しい」このように訴えることができる高齢者は、認知症予防の本質をついているということなのですね。
我妻さんは18年も前から「脳が元気な方を元気なままに。元気な方に対する働きかけの方が、実践できる内容も豊かなら、効果も大きい」と実践を続けて、この信念は間違いなく確信になっていると思います。

今回外れた理由をいくつか解説してくれました。
・介護予防の中には運動が入らないといけない。
・認知症の講話が必要。
・カリキュラムの料理・お菓子・パン作りは問題。ゲームの方が望ましい。

この選で認められると、月1度6か月で11万円支給がある。つまり1回教室を開くと約17,000円の支給。
この金額的なことよりも「なごみの部屋」がずっとやってきた認知症予防の真髄(認知症になってしまってから改善を図るよりも、正常者への働きかけこそが有効。スマイルの会や独自の認知症カフェの取り組みから明らか)を理解してもらえないという思いが、悔しい、悲しい、残念、なぜ?などの思いを引き起こしたのだと思います。

「『スマイルの会』は補助がなくてもやると決めたんです。格別文句はありません。『かくしゃくの会』だって始まりは持ち出しだったのだし。コロナのせいでここ2~3年通常通りにはやれていなかったのですが、細々でもやってきた延長です。すご〜くうまくやって、ほんとに大切な良いモデル!って言われたい気持ちもあるんですけど(笑)」
「実は先週一回目をやりました。なごみ庵(洋菓子店ナゴミールの後に、和菓子店なごみ庵も開店営業中)から菓子職人さんに来てもらって上生菓子を作ったんですよ。白あんと黒あんと用意して、色粉は赤・黄・青でその色だけでなく、紫・橙・緑を作ったりするところから歓声が上がって皆さんとっても楽しまれました。ありきたりのゲームじゃあない、こんなことを喜ぶ人たちに、こんな場所を提供したいという思いは的中でした。単なる茶巾絞りかと思ったのですが、さすが職人さん。写真を見てください!

当日参加費として1000円いただきましたが、上生菓子6個お土産。職人さんが用意してくれた味噌饅頭でお茶をして。『すごく良かった!次回が楽しみ』と口々に言われていました。脳の元気がなくなっている人たちでは、こういうことはできません。あくまでもその人のできることを楽しんでもらうことしかできないのですから」
聞きなれない人には、たとえ重度の認知症でもできるだけ同じような働きかけはしてあげるべきではないのか!という思いがわくのではないでしょうか?
2005年11月の我妻さんの言葉です。
「設立当時のいろいろな事情から『楽しく安全に過ごしてもらう』ことをテーマにしてメニューなし、いやがることはしない、楽しいことだけにしていくディサービスがありました。数年たつうちに低下傾向がはっきりしてきたこともエイジングライフ研究所二段階方式導入のきっかけのひとつだったんですが、脳機能テストを通して客観的に見ることができ、今では、『予防や改善』を目的にメニューを組んでスタッフが積極的に引っ張るディサービスを全箇所でやっています」 
あくまでも、客観的な脳機能をまず理解して、それに応じたメニューを作らなければ絵に描いた餅。レベルに合わせてあげることこそ、その人を大切にしてあげることになるのです。

お話を聞きながらこんなことを思っていました。
「この企画を実現するために、講師にかかる費用(今回は自社内の人材だから可能だった)、スタッフの費用、会場使用料、周知のための費用…一体いくら持ち出さないといけないのでしょうか。
国がこういう取り組みを認知症予防と位置付けて予算配分してくれたら、その対費用効果は計り知れないものになります。
介護保険でいえば介護度5の人に支払われる支給限度額は1ヶ月約36万2千円(個人負担はその1〜2割。特に高額所得者は3割)。その他の費用も当然あるので結局1年間でいえば、給付金と個人負担金と合わせると一人が必要とする金額は500万円から600万円と言われています。その合計が2021年で13兆円。文字通り天文学的数字。0をつけるとるとこうなります。
13,000,000,000,000円です…

いま重度の人だって、その人らしく普通に生活していた時があります。その時に脳の健康維持のための施策があって、誰でもそこに行って楽しい時間を過ごすことが生活の一部になるような、そういう社会が必要です。
そのためにかかる費用はいくらでしょうか?
我妻さんが孤軍奮闘するためには、普通の事業所なら無視できないようなお金が必要ですが、国レベルで考えてください。

一人の人が介護度1にならなければ、介護支給限度額は約17万円/月ですから、年間でいえば約200万円が自由に使えます。たったお一人、要介護1になることを1年先送りにしただけで捻出できる200万円。
200万円のうちの個人負担額を除いても、今回の給付額1.7万円なら約100ヶ所に支給できます。我妻さんのスマイルの会のような教室を運営するのにどのくらいかかるのでしょうね?10倍かかっても10ヶ所の教室で、正常者への予防の働きかけは可能ということになります。
脳が元気な人たちが集まれば、参加者が役割分担できるからお世話役はほとんどいりません。指導者も先生の一番弟子のような立場の方にお安く指導して貰えば良いと思います。その方の生きがいになって、国全体の介護負担を少なくする活動ですから。
会場は公民館や小学校の空き教室など。
そうそう、受益者負担で材料費は徴収すれば良いと思います。
すぐにも実現できそうとワクワクしてきます。
「認知症予防は正常者から」です。
卵が先か鶏が先か考えるよりもはるかに簡単な事実でしょう。


でも、世の中の権威ある人たちは、認知症が脳の生活習慣病という認識がありません…そのギャップをどう埋めるかが大問題として横たわっています。

スマイルの会の様子をご紹介します。私も参加したくなりました。














米沢市「なごみの部屋」から納得の報告ー認知症予防は正常者から!

2023年02月05日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践
米沢市「なごみの部屋」の我妻社長さんと電話でお話ししました。
大雪見舞いから、コロナ禍の様子(職員の罹患でスタッフのやりくりが大変だった!デイサービスの参加者が半数になった!)など積もる話を楽しんでいました。
私が「三密回避は認知症の温床みたいなものだけど。特にまじめで『コロナが怖いのでお上の言われる通り、趣味やデイなど外出は控えて、人とは会わないようにして、家にこもっている』という人たちは脳の老化が進むでしょう?実感としてどうですか?」と尋ねました。
我妻さんは、やさしい控えめな話し方をする方です。その時も同じように話し始められました。
「『認知症カフェ』のこと覚えてくださってますか?カフェにいらっしゃらる方がこんなことを言われるのです。あ。カフェもお達しがあって開催できないときがあったんですよ。
『カフェは楽しみだったのに行けないとなると、何かボランティアでもいいから出ていくところはないかなあ』
『自費でもいいからデイサービスには行けないですか?』といわれました。
元気な方はすごいです」終わりのころは少しだけ強い口ぶりが感じられました。

「ちょっと待って。我妻さん、それってすごいことだと思う!
エイジングライフ研究所が言ってるように、認知症を発症するかどうかはやはり、脳の使い方。生き方でしょう?これだけ状況が悪くなっても、脳をイキイキと使い続けて、それが習慣になっている人は、認知症を予防する生き方に軌道修正することができるということでしょう?
一方で、生活が単調になっていってもそれをそのまま受け入れる人たちは、確かに脳の老化が加速されていく。
どんどん増えていくと国民を恐れさせている認知症への、具体的な対処法そのものじゃないですか!
脳機能が正常な時に、脳機能を持たせる生活方法を身につけてもらう。それは前頭葉を駆使して自分らしくイキイキと楽しく生き続けることなんですから。
なんだかすごいことを聞いてしまった」

「なごみの部屋」の運営する認知症カフェは、少し肌合いが違います。
2016年12月ともうかなり前のことですが、「なごみの部屋」の研究発表会に招かれたことがあります。その時の認知症カフェからの発表を転記しておきます。

まず「なごみの部屋」の紹介(介護保険外も運営していることに注目)


米沢市「なごみの部屋」の実践報告4-認知症カフェ(なごみCafe)
「なごみの部屋」研究会の報告が続きます。ここで使っている画像も、発表の前に私が目を通したパワーポイント原稿からのものです。(パソコンからだとパワーポイントから読み込んだ画像がきちんと見えますが、iPadからだと見えないものが混じります。訂正できないのです。ごめんなさい)
最後の発表は認知症カフェ「なごみCafe」の活動報告です。


「認知症カフェ」という言葉は、最近になって目や耳にしますが、そもそも何なのでしょうか?

厚労省のホームページから調べてみました。
「認知症カフェ」で検索すると「認知症高齢者の現状(平成22年)」が出てきました。その1ページにありました。
「 認知症カフェとは、認知症の本人、その家族、専門職、地域住民な ど誰もが参加でき、和やかに集うカフェ。
○1~2回/月程度の頻度で開催(2時間程度/回)
○通所介護施設や公民館の空き時間を活用
○活動内容は、特別なプログラムは用意されていなく、利用者が主 体的に活動。
○効果 ・認知症の人 → 自ら活動し、楽しめる場所 ・家族 → わかり合える人と出会う場所 ・専門職 → 人としてふれあえる場所(認知症の人の体調 の把握が可能) ・地域住民 → つながりの再構築の場所(住民同士としての 交流の場や、認知症に対する理解を深める」

認知症カフェ実施状況
平成25年度より始まった施策で、、平成26年度は「41都道府県280市町村にて、655カフェが運営されている。設置主体としては、地域包括支援センター、介護サービス施設・事業所が多く見られた」ということがわかりました。
平成28年度予算案の概要
54ページのものですが7ページ「第3の矢 『安心につながる社会保障』(介護離職ゼロ)」の「働く環境改善・家族支援」の中にありました。
「認知症カフェの設置や、ボランティアによる認知症の人の居宅訪問などを推進」予算は57億円。


今回、先行した三つの発表を見ると明らかなように、「認知症」と言っても重症度が考慮されないと目的もそこでの活動も全く違うものになってきます。ボケてしまって重度にまで至った場合は、なかなか「カフェでくつろぐ」状態は難しい。とすると介護している家族のための場のほうが近いかもしれません。もちろんそれも必要です。
もう一つは、よく誤解されている「側頭葉性健忘(このブログのカテゴリーの中からお読みください)」の人たちが楽しめる場ということもあるでしょうね。
早期認知症かどうかの相談もできるという目的もあるのですが、本当の早期発見はエイジングライフ研究所が提言している二段階方式を使わなければちょっと無理です。 
というような情報を踏まえたうえで、聞いてください。

なごみの部屋から「今度、認知症カフェを始めました。もちろん、『お達者サロン』のように元気な方を中心に、本当の予防や改善のお手伝いをしたいのです。何か助言は?」という質問がありました。
「他とは違う、カフェをやるのですね」
一線を画している!

「お達者サロン」は「生き生きとした脳を維持し、改善まで図る」を目的にしていますから、脳機能検査は必須ということが参加者の皆さんに納得されています。
「認知症カフェ」では検査をすることはちょっと難しい。
折衷案として「立方体透視図模写」をしてもらうことにしました。「立方体透視図を見ながら描く」というこの検査は、実は前頭葉なしでは不可能な「平面に描かれた図形を立体視する」「ふた方向に見える図形を一つの方向に抑制する」機能のチェックに使われるものです。
そのことによって「脳機能」に目を向けてもらえるだろうということが一番の目的、その検査を継続することで改善の様子も探れるかもしれないし、改善しないときの働きかけの工夫にもつながるかもしれないという二番目の目的ももって、受付時に描いてもらうことにしたのです。
今回の発表はそのまとめです。
最初に描けなかった方が描けるようになった具体例数例を抽出して、日付を入れてスライドで表示しました。
 
次の回で描ける人、数か月後になって描けるようになった人など、目に見えるまとめ方ですから参加者の方々も、びっくりしていました。

描けない本人がびっくりすることもしばしばです。

形が整ってくる人もいます。

もともと「認知症カフェ」でこのような検討をすることは想定外のこと。
ただ、なごみの部屋が開設する「なごみCafe」だったら、「脳機能を生き生きさせて、認知症にさせない、本当の意味で軽い認知症を改善させる」ためという目的意識があって当然でしょう。そのために一番無理なく抵抗も感じにくい前頭葉検査としての「立方体透視図模写」を実施したという経緯です。単なる報告にとどまった点はありますが、「なごみCafe」でこういうことが起きているということは納得してもらえたようでした。
発表者が特に強調し、会場からも声が上がったのがこのケースでした。高齢でも脳機能は改善するのです。
 

米沢市「なごみの部屋」からの実践報1-認知症予防教室(お達者サロン)
 
 
こんな実践もありました。
 

米沢市「なごみの部屋」からびっくり報告

2018年06月25日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

 

山形県米沢市にある「なごみの部屋」は下のように多様な取り組みをしている施設です。

2年前に伺ったとき、職員の方々から四つの活動報告をしていただきました。脳機能のレベルに応じて、それぞれ適切な対応を行った場合の脳機能の変化を見ると「より脳機能がいい人たちが、より改善している」という、実に当たり前の結論が導き出されました。
詳しいことは、ブログ米沢市「なごみの部屋」の実践報告1-4にまとめましたからご一読ください。特に上表の「介護保険外」の方々を対象にした「お達者サロン」のすばらしさは、会場の皆さんから何度も声が上がりました。
米沢市「なごみの部屋」の実践報告1ー認知症予防教室(お達者サロン)

「近況報告ですが…」とお電話を頂きました。
「『お達者クラブ』のことです。参加者の皆さんとスタッフと話し合いを持ったんですね。最近どうもマンネリ化しているというか、どうしてもスタッフが用意してそれを実践してという傾向が強くなったみたいで。もう10年以上も続いていて、皆さん高齢になったこともありますし」
確か、若くても70代後半、89歳の方もいらっしゃいました。話を聞きながら「一企業が採算度外視でやってきた事業だから、そろそろ息切れしてきたのかなぁ」と思っていました。
ウイーン大学の菩提樹

ところが電話の声は予想外の展開を見せます。
「『子ども食堂って、最近よく聞くけど、ああいうことをやって、少しは世の中のために立ちたい』という意見が出てきたんです」
「ちょっと待って!それって利用者さんからなの?スタッフじゃなくて!」
「そうなんです。『世の中に何かしてあげたい。子ども食堂ならできるかもしれないし、子どもたちのためになるなら、うれしいし』って言われるんです」
サラサドウダン(こんなに赤いのは初見)
「生きがいって、誰かのためになっているって思えるほどすばらしいものはないんじゃない?そこに至らないから、趣味や遊びで楽しみましょうって、私は言ってる気がするけど…」
「そうですよね。それでちょっと調べてみたら、子ども食堂に行ってる人たちは経済的に恵まれていないという風評があるみたいなんです。
それで、全く条件なしにしてだれでも受け入れることにして、材料費ということでおひとり300円頂くことにしました。(私の確認不足ですが多分大人も受け入れるのだと思います)行政の決まりから外れて『なごみの部屋』風にやっていくつもりです。
食事の前におばあちゃんたちが、右脳訓練の成果をちょっと発表したり、子どもたちと昔の遊びで盛り上がったり。とにかく世代を超えたおしゃべりもすてきでしょう?食事だけでなくその時間も大切にしたいんです」
「高齢者は、子どもからエネルギーをもらうし、子どもたちは昔の遊びや生活を聞くだけでなく、忙しいお母さんの対応と違った対応をしてくれるおばあちゃんにびっくりするでしょう。楽しいことをよくもまあ思いついたこと!
『なごみの部屋』はネーミングが楽しいから、今回も一ひねりしてね」
「はい。みんなに言っておきますね。来月からなんです。最初は誰でも好きなカレーを作るそうです」
アッツ桜

高齢者への施策として、また地域づくりとして魅力的な取り組みですね。ただしこの方たちは脳機能が「かくしゃく」としていらっしゃることを忘れてはいけません。
あくまでも、脳機能に沿った取り組みなのです。

 


米沢市「なごみの部屋」の実践報告4-認知症カフェ(なごみCafe)

2016年12月10日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

「なごみの部屋」研究会の報告が続きます。ここで使っている画像も、発表の前に私が目を通したパワーポイント原稿からのものです。(パソコンからだとパワーポイントから読み込んだ画像がきちんと見えますが、iPadからだと見えないものが混じります。訂正できないのです。ごめんなさい)
最後の発表は認知症カフェ「なごみCafe」の活動報告です。


「認知症カフェ」という言葉は、最近になって目や耳にしますが、そもそも何なのでしょうか?

厚労省のホームページから調べてみました。
「認知症カフェ」で検索すると「認知症高齢者の現状(平成22年)」が出てきました。その1ページにありました。

「 認知症カフェとは、認知症の本人、その家族、専門職、地域住民な ど誰もが参加でき、和やかに集うカフェ。
○1~2回/月程度の頻度で開催(2時間程度/回)
○通所介護施設や公民館の空き時間を活用
○活動内容は、特別なプログラムは用意されていなく、利用者が主 体的に活動。
○効果 ・認知症の人 → 自ら活動し、楽しめる場所 ・家族 → わかり合える人と出会う場所 ・専門職 → 人としてふれあえる場所(認知症の人の体調 の把握が可能) ・地域住民 → つながりの再構築の場所(住民同士としての 交流の場や、認知症に対する理解を深める」
道路のタイル。米沢の味。Apple

認知症カフェ実施状況
平成25年度より始まった施策で、、平成26年度は「41都道府県280市町村にて、655カフェが運営されている。設置主体としては、地域包括支援センター、介護サービス施設・事業所が多く見られた」ということがわかりました。

平成28年度予算案の概要
54ページのものですが7ページ「第3の矢 『安心につながる社会保障』(介護離職ゼロ)」の「働く環境改善・家族支援」の中にありました。
「認知症カフェの設置や、ボランティアによる認知症の人の居宅訪問などを推進」予算は57億円。
道路のタイル。米沢の味。Beef

今回、先行した三つの発表を見ると明らかなように、「認知症」と言っても重症度が考慮されないと目的もそこでの活動も全く違うものになってきます。ボケてしまって重度にまで至った場合は、なかなか「カフェでくつろぐ」状態は難しい。とすると介護している家族のための場のほうが近いかもしれません。もちろんそれも必要です。

もう一つは、よく誤解されている「側頭葉性健忘(このブログのカテゴリーの中からお読みください)」の人たちが楽しめる場ということもあるでしょうね。
早期認知症かどうかの相談もできるという目的もあるのですが、本当の早期発見はエイジングライフ研究所が提言している二段階方式を使わなければちょっと無理です。
道路のタイル。米沢の味。Carp
 

というような情報を踏まえたうえで、聞いてください。
なごみの部屋から「今度、認知症カフェを始めました。もちろん、『お達者サロン』のように元気な方を中心に、本当の予防や改善のお手伝いをしたいのです。何か助言は?」という質問がありました。
「他とは違う、カフェをやるのですね」
一線を画している!

「お達者サロン」は「生き生きとした脳を維持し、改善まで図る」を目的にしていますから、脳機能検査は必須ということが参加者の皆さんに納得されています。

「認知症カフェ」では検査をすることはちょっと難しい。
折衷案として「立方体透視図模写」をしてもらうことにしました。「立方体透視図を見ながら描く」というこの検査は、実は前頭葉なしでは不可能な「平面に描かれた図形を立体視する」「ふた方向に見える図形を一つの方向に抑制する」機能のチェックに使われるものです。

そのことによって「脳機能」に目を向けてもらえるだろうということが一番の目的、その検査を継続することで改善の様子も探れるかもしれないし、改善しないときの働きかけの工夫にもつながるかもしれないという二番目の目的ももって、受付時に描いてもらうことにしたのです。
今回の発表はそのまとめです。
最初に描けなかった方が描けるようになった具体例数例を抽出して、日付を入れてスライドで表示しました。
 

次の回で描ける人、数か月後になって描けるようになった人など、目に見えるまとめ方ですから参加者の方々も、びっくりしていました。

描けない本人がびっくりすることもしばしばです。

形が整ってくる人もいます。

もともと「認知症カフェ」でこのような検討をすることは想定外のこと。
ただ、なごみの部屋が開設する「なごみCafe」だったら、「脳機能を生き生きさせて、認知症にさせない、本当の意味で軽い認知症を改善させる」ためという目的意識があって当然でしょう。そのために一番無理なく抵抗も感じにくい前頭葉検査としての「立方体透視図模写」を実施したという経緯です。単なる報告にとどまった点はありますが、「なごみCafe」でこういうことが起きているということは納得してもらえたようでした。
発表者が特に強調し、会場からも声が上がったのがこのケースでした。高齢でも脳機能は改善するのです。
 



 


 


 


米沢市「なごみの部屋」の実践報告3-認知症対応型通所介護事業所「ぷちハウスなごみ」

2016年12月10日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

「なごみの部屋」研究会の報告が続きます。ここで使っている画像も、発表の前に私が目を通したパワーポイント原稿からのものです。(パソコンからだとパワーポイントから読み込んだ画像がきちんと見えますが、iPadからだと見えないものが混じります。訂正できないのです。ごめんなさい)
3番目の発表は「認知症対応型通所介護事業所」からの発表でした。
 
この「認知症対応型通所介護事業所」を利用する人たちの脳機能レベルの内訳です。中ボケレベル(MMS23~15)の方が28%、大ボケレベル(MMS14以下)の方が50%、MMS測定不可が22%・・・
MMS測定不可ということは、単語や短い文章の復唱もできないし、物の名前も言えません。もちろん時や所の見当識は皆目わからない状態です。

「デイサービスセンターコスモス」の方々の脳機能レベルと比べると、「ぷちハウスなごみ」の28%の人たちが中ボケレベルなのでその層だけが多少は重なるかもしれません。今回発表したケースでいえば、MMS23点以下の2名は、失語症のためにMMSテスト点数の低下があったわけですから、生活レベルでいえば中ボケではありません。つまり「ディサービスセンターコスモス」利用者の方々と 被ることがない程、「ぷちハウスなごみ」を利用する人たちは脳機能の低下が進んでしまっているということです。

発表者のS木さんは、穏やかに噛んで含めるような説明をしてくれましたが、日々担当者はどんなに大変かと、気が遠くなる思いでした。

この下のスライドからは、大変さと苦悩までも伝わってきます。

働きかけのレベルが、「デイサービスセンターコスモス」とは全く違いますね。もちろん「お達者サロン」とは比べるべくもありません。それでも多少の改善はありそうです。脳機能がよくなったというよりは、本能により近いところで安全が認識された程度だと思います。どれほどの努力が注ぎ込まれたか考えるだけでも、もったいない!もっと早くから対応していれば…と歯噛みする思いに駆られます。
 
改善の傾向はあるのですが。半端じゃないほどの努力が注がれても、この程度しか改善できません。この努力をもっと前の段階で使うべきでしょう。
これだけ重度になっても、MMSをやる意味はあります。「残っている機能は何か」を知ることができるからです。

ここに掲げられた目標はその通、り正しいです。でも、MMSが測定できなくなってなお「その人らしさ」はあるのでしょうか?
もう一つの問題は介護者のストレスをどのように解消するかということも避けては通れないでしょうし、
 
厳しく解説を加えましたが、介護されている方たちの苦労を思うと胸が詰まります。さいごにS木さんが「先の発表のように、はっきりとした改善の報告ができたらと思います。努力はこれからも継続していきますが、すっきりと改善することは難しいと思います」と言われたとき、不覚にも涙が出そうでした。
認知症は前へ前へと、人生をさかのぼっていけば、必ず正常に社会人として生活していた時代があるのです。「お達者サロン」の皆さんのようにその時から予防しなくては。万一脳機能の低下が加速されても(行きつくところは大ボケです)、早めに見つけて生活改善すれば、脳機能は元気を取り戻すことが可能です。


米沢市「なごみの部屋」の実践報告1ー認知症予防教室(お達者サロン)

2016年12月09日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

(パソコンからだとパワーポイントから読み込んだ画像がきちんと見えますが、iPadからだと見えないものが混じります。訂正できませんのでごめんなさい)
「なごみの部屋」の紹介をしなくてはいけません。このブログでも何回か取り上げていますが、紹介するのが難しい・・・
「なごみの部屋」のHPから作ってみました。こんなことをやっています。

一番珍しいのが、介護保険外ではないでしょうか?
ここには二つ含まれます。
1.なごみフィットネスルーム
一人ひとりの生きがいや、自己実現のための取り組みを支援し、活動的で生きがいのある生活や人生を送る事が出来るようお手伝いいたします。」月~金の午前中。月額3500円。これはよそにもあるでしょう。
2.お達者サロン
『脳リハビリ』による『認知症』予防・改善プログラムで、いつまでも元気に暮らせるようにお手伝いさせて頂きます。」毎週土曜日。月額500円と実費。これは施設としてやっているところはないのではないでしょうか?

介護保険外ということですから、利用者からの収入は自費ということもあって少額です。なごみの部屋はそれ以外の収入はありませんから、実はこの事業は常に赤字です。
それでももう10年以上にわたって継続しています。
「認知症は予防しなくてはいけない。そのためにはより早い段階、脳機能が正常な状態の時から予防活動をすれば、効率的であり必ず効果につながる」というエイジングライフ研究所の提言が、我妻社長の「認知症も早い段階から手を入れたら、良くすることも、予防することもできるはず。国の財政を考えても不可欠」という思いと一致した、あの2005年から始まります。
通所介護施設「なごみの部屋」のボケ予防活動(ご一読ください。思いがぶれていないことがよくわかります)

今回一般市民の方への講演とは別に、「なごみの部屋」の従業員の皆さんへの講演ということで、ちょっと話し合いをしました。私が全部話すよりも、従事されている担当の方から発表してもらったほうがいいのではないかという結論になりました。
介護保険外のかくしゃくとされている方から、MMS測定不可という最重度の方たちまでの4発表でした。
トップバッターが、このお達者サロン の報告です。パワーポイントを使ってグラフなども示しますから、正式な発表になりました。
 
あくまでも、脳機能が正常な方が対象です。今回検討した中では2名だけ小ボケの方がいました。

活動プログラムに関しても、参加者からの的確な要望が出てきます。最終土曜日は「お楽しみ」ということになりました。

お楽しみの内容は、時宜に合った外出や映画鑑賞、お花見などということで、これはスタッフ側のお楽しみでもあったことでしょう。

最初から「脳機能を維持向上させるための教室なので脳機能検査は不可欠です」と徹底していますから、二段階方式を実施します。

評価はエイジングライフ研究所の基準に基づいて行われます。

継続して評価し続けているテスト結果のグラフは、参加した人たちにとってわかりやすかったようです。「MMSは24点以上、かなひろいテストは赤線以上が正常範囲」と説明するだけです。
79歳で、かなひろいテストがだいたい40点くらいというのは、脳機能は40代くらいの元気さを保っていることになります。もちろんMMSは満点を維持。以下に続くこのように前頭葉機能がいい人たちが、プログラムのアイディアを出し、教えあいなどを自然に起こしてくるのです。

この方の脳機能もお元気そのもの。

82歳で、かなひろいテスト成績が向上しています。素晴らしい!

80歳でも、前頭葉機能向上中。かなひろいテスト成績立派です。

いったん下がりましたが、あとは見事。

検査の間隔があいてしまいました。もちろん正常だったのですが、約2年で改善していますね。

このケースは4回目までは小ボケだったのです。その後急速に改善。何が奏効したのでしょうか?
 
でももう一人の小ボケの方は、ちょっと残念。高齢ということもあるでしょうね。それでもこの状態ならば、家庭生活にはほとんど支障はありません。

まだまだデータはありましたが、結論。

考察。気分がよくなります!

発表されたY木さん、気持ちよさそうでしたね。
そしてこうしてまとめて見たら、どんなに内容の濃い教室だったかよくわかったことでしょう。努力のし甲斐が、そのまま参加された方々の脳機能に反映されていることがわかりますね。
会場からも、感嘆の声が上がっていました。

 

 


脳機能検査ができるケアマネさん

2013年07月25日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

山形県米沢市の「なごみの部屋」に行きました。
「なごみの部屋」のことは何度かブログにも載せていますから、右欄カテゴリーから「施設での実践」をクリックしてみてください。

P1000535 M浦さんはケアマネージャーをしています。
今回とても興味深いことを言われました。

「二段階方式のテストをやると便利です!
私は一番にまず脳機能検査をやらせていただくことにしています。
その後で、ご本人からもご家族からもいろいろ伺うのです。
このやり方にしてからは、これ以外はちょっと考えられません・・・」

その通りです。
なぜなら、中ボケレベルになっても話だけを聞いているとほとんどおかしくないとよく言われます。

よほど月並みなやり取り、例えば「暑いですね」「寒いですね」「ご苦労様です」というようなやり取りでは、実に流暢に話すことができます。
でもほんとは変なのですよ。
的が外れていたり、言ってる内容は正しくてもこの場ではそういうことは普通は言わないでしょうというようなことを言ったりしているのですが、聞く側が
「ほんとに言いたいのは、きっとこういうことだろう」とか
「またぁ。言わずもがなのことを言ってしまってる」などと、親切に解釈してあげていることが多いのです。P1000532    なごみの部屋では障碍者支援のためのお菓子製造もおこなっています。皆さんのおやつに使用+販売                       

家族の方からの訴えや症状の説明にしても、これは本当に家族関係を反映しています。

脳機能低下のために、種々の困った症状が起きてしまっていても、家族にとっては普通に話している(と思っている)だけに、そのことが理解できません。
「生返事はするくせに、いうことを一つも聞いてくれない」とか
「嫌味や嫌がらせじゃないか」とかはよく訴えられることです。

長い年月、基本的な関係がうまくいってない時には、家族がより悪く訴えたくなるのも理解できます。

P1000534その人の脳機能さえわかっていれば、日常生活がどのように行われていくかを知ることができます。
行動は脳機能のアウトプットですから。

その行動をどのように捉えるかというところから、家族関係は自ずから理解されます。

関係が悪ければ、より強く問題行動と訴えられがちです。
関係が良好であれば、様々な困った行動の訴え方にゆとりが感じられます。

キィーは脳機能(のレベル、特徴)なのですから、
「一番に脳機能検査をします」ということはとっても効率よくその人や家族関係を理解できる近道です。

M浦さんから聞いた話を一つ紹介しましょう。
二段階方式では脳機能検査をした後で、30項目問診票(小ボケ・中ボケ・大ボケでよく出現する行動が10ずつ列挙されています)に記入してもらいます。

2010_0720_142300p10000062010_0720_142400p1000008

 

 

 

 

 

 

検査の結果は、前頭葉機能ははっきりとした低下があって、脳の後半領域の機能を検査するMMSは合格。
これを小ボケというのです。

小ボケの人は、自分の脳の動き方が前とは違うということを自覚していますから、30項目問診票の小ボケ相当の行動を、自分からあてはまるとチェックしていきます。
P1000017
このはなしには続きがあります。
「3以上の仕事がテキパキ片付かない」に丸を付けながら
「これってね、例えばね、お浸し作るために鍋に水を入れてガスにかけるでしょ。それから
お風呂の蛇口をひねってから、洗濯物を取り込みに行って・・・

洗濯物を取り込む前にちょっと草が目についたらやっぱり抜くでしょ!そんなふうにどこかで別のことをし始めたら、事件が起こってしまうんです。

鍋を空焚きしたり、お風呂があふれたり、洗濯物を取り込み忘れたり」

まさに前頭葉の注意集中力や注意分配力が、極端に利かなくなっている小ボケの状態を見事に説明できています!

このレベルだと、話もおかしくないし脳機能検査をしないと全く正常にしか見えません。でも脳機能の老化の加速は始まっていますから、生活改善指導は必須です。
こういうケースに出会うと、脳機能検査をしてあげてよかったと思えるでしょ?M浦さん!

 


米沢市「なごみの部屋」の「かくしゃくの会」代表!

2011年07月14日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

 

前回に続けて、認知症予防教室生の優秀ぶりを報告します。長く続けるほど、脳機能の改善がみられる!という具体例です。考えたらすごいことですね。老化は、誰にしても角度の違いこそあれ直線的なのに・・・

山形県米沢市の「なごみの部屋」主催の、一般市民を対象にした講演会に行ってきました。

「なごみの部屋」はこのブログでもたびたび取り上げていますが、直近のブログに目を通してください。
米沢市「なごみの部屋」再訪ー「高専賃ではないのです」
中でも注目していただきたいのが「かくしゃくの会」

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「この際、『かくしゃくの会』も6年目くらいになりますよね。ちょっとまとめて見ませんか」と声かけをしてみました。「なごみの部屋」のスタッフの皆さんの勉強会資料にするつもりでした。A    

頂いた私もうれしかったですが、「かくしゃくの会」に携わったスタッフの皆さん方もうれしかったはずです。
「93%が効果あり」の結論なのですから。

「確かに皆さん元気だなと思っていましたけど」
「はっきりお元気になられたねと話してる方もいるんです」
「だいたい、会自体が楽しいんですよね」

口々に自分の中で確信されていることが言葉になって出てきます。

テストを実施しようとすると、嫌がる方はいます。でもこうやって全体的な評価をするためにテストをするのではありません。
エイジングライフ研究所が考え指導しているテストはあくまでも個別生活指導のためなのです。複数回実施すれば、比較をして個別に適切な指導(改善中の方にはその調子!と評価し、維持の方にはもう一工夫を一緒に考え、低下の方には生活の中の低下要因を探る)をしてあげるべきものです。データをとるためにテストするわけではなく、テストはあくまでも受けた方々のためであり、有益なものとして有効に使う覚悟で実施すべきです。

その蓄積で、その教室や事業の成果を客観的に評価することもできると考えてください。

Photo_2豊科町、小布施町そして「なごみの部屋」と最近続いてまとめを見ることができました。認知症予防教室では、その取り組みが長いほど、歳をとっていくにもかかわらず改善群が増えていくことがはっきりしています。

左は豊科町の結果です。

全体的な傾向としては、ほとんど同じことが、わかりますね。こういう結果からも「ボケるか、ボケないでかくしゃくでいられるかは生き方の問題」ということにもっと自信を持っていいのです。

このような資料もできました。同じ方のテスト結果です。                               23

 

 

 

 

 

専門的に検討しなくても6年前に比べるとはっきりと改善していることがわかりますね。
さて、講演会当日に「かくしゃくの会」参加者の方々もいらっしゃっていました。
上記テスト結果のご本人。見るかからにかくしゃくとなさっていてしかも最高齢の斎さんに、インタビューをしました。

「趣味のビーズ工作は作ることもだけど、『なごみの部屋』や友人にあげて飾ってもらうのがうれしい」(会場にたくさんの作品がありました)
「小脳梗塞をしたけれども、『かくしゃくの会』があったおかげで、参加したくて頑張った」
「今日もおしゃれをしてるけど、もっとしてくればよかった(笑)」
「『かくしゃくの会』は楽しいですよ~」

事前の打ち合わせなしで満点の応答ぶり!

実は「なごみの部屋」は、とうとう自前2011_0514_172700p1000338の立派な施設を持つようになりました。2011_0514_173000p1000340

レベルに分けたデイサービスがあり、居住部分も充実したものでした。入所の皆さんにも二段階方式の脳機能テストを実施していますから、どのくらいの生活ができるか的確に理解されています。
丁度であった入所者の方です。
「お元気なのですよ!体は車いすですが、脳が!そうすると、ご自分で車いすも上手に運転されるし、お部屋も見てください。楽しんでいらっしゃいます」2011_0514_172200p1000337 2011_0514_172100p1000336 

 

 

 

 

 

このように脳機能を理解しながら対応していくことは、入所されている方のメリットだけでなく、スタッフの側にも仕事のやりやすさや、納得につながっていくからこそ、民間でありながら「なごみの部屋」が二段階方式を導入している意味なのでしょう。

さんにお手紙をさし上げました。前半ですが。

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89歳の方に、ボランティア活動を勧めることができる喜び。いいですねえ。

 

 

 


米沢市「なごみの部屋」再訪ー「高専賃ではないのです」

2010年11月22日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

11月初めに「なごみの部屋」をお尋ねしました。介護保険対応の在宅介護サービスを行っている会社です。脳機能テストの見方など一緒に勉強してきました。

ところで高専賃という言葉を知っていますか?
最近この言葉が注目されてきています。来年になるともっと皆さんの耳目に触れることが多くなるでしょう。
修善寺虹の郷菊花展2010_1106_151400p1000285_2 

正確に言うと、高齢者専用賃貸住宅のことで、以下の条件を満たしていれば介護保険の対象施設になれるというものです。
私は、最初にこの言葉に出会ったときに「米沢市なごみの部屋が始めたのはいつだったかしら?あの発想に世の中が追いついてきた」と思いました。
そのくらい最初に
なごみの部屋の我妻社長さんから理念を聞いた時には、すごいと思うと同時に膝を打つ思いもしました。2010_1106_152800p10002962010_1106_153600p1000305_2  

その我妻さんから伺った話です。
「病院から退院をせかされているお年寄りがいました。いったん入院してしまったら、家族が受け入れられないというお年寄りも、部屋を孫が占領して帰る部屋すらなくなってしまうお年寄りもいるのです。
どうにかしなくては!と思ったのです。
一方で、大学生対象の下宿をやっていたのですが、学生がマンションを好むようになって空き部屋が多くなって困っている大家さんがいました。
そこに高齢者をお願いしたらどうだろうと思いついたのです。
各部屋も高齢者向きに手を入れてもらって、食堂を兼ねたデイルームも作ってもらいました。その他、必要な点は大家さんに要求し、住居が完成。

お年寄りは大家さんと契約します。そしてなごみの部屋が大家さんから管理委託を受けて、高齢者の食事・風呂・掃除・通院などのお世話は行い、家賃はきちんと責任を持って大家さんに支払うというやり方です。原則デイサービスを併設して、脳リハビリにも組み込んでいます」
(ここにエイジングライフ研究所との接点がありました。どのような状態なのか。状態がいいのか、改善されているのか否か、客観的な見方が必要ということです)2010_1106_152900p1000299_2

行き場所がなく困っていた高齢者、家賃収入が途絶えていた大家さん、そして、お年寄りをどうにかしてあげたかった我妻さん。三者三様の満足に至れるなんて、すごい!と我妻さんの知恵に感動しました。

私にとってはこれこそが高専賃。
我妻さんに「初めて伺ったのはいつだったでしょうか。もう5年くらい前にもなりますか?世の中が追いついてきましたね」といったら
「いいえ、なごみの部屋がやってるのは高齢者専用の提携アパートです。高専賃の条件は居室が8畳。その広さがないのです」

高専賃。世の中は新しく高専賃用の建物を建てて動かしていくのでしょう。(この辺は無知ですので、あくまで類推ですが)
何故、我妻さんのようなあちらとこちらを生かしあうというような発想がないのでしょうか?

なごみの部屋のパンフレットからImg_0001_3

事業活動は、ニーズに合わせて拡大していきました。
家にいるお年寄りにもサービスがいるし、病気の人には訪問看護が、介護保険のケアプランもなどなど。施設はなるべくお金をかけないように工夫の限りを尽くしています。

Photo

我妻さんが魅力的なのはさらにその次です。
「高齢者を見ていると、お世話を充実させるだけでなく、もっと元気にしてあげたいと思えてなりません。ご本人やご家族だけでなく国のためでもありますね。そのためには・・・」
そこで私
「元気な人に対して、前頭葉や右脳を使う場面を用意してあげるともっと元気になります」
そこから始まった「かくしゃくの会」

Img_0002

「脳と体の健康教室」というのですから、当然脳機能チェックは実施しています。
今回そのデータも見てきましたが、改善が明らかでした。担当者の方たちが鼻高々という印象も当然でしょう。

「仕事をしていると、障害者の方へのサービスもどうしてもいるのです。
いろいろな好条件が重なって、お菓子を作ることにしました。最初はなごみの部屋で使うおやつができればいいと思って始めたのです。(こういう発想も大切です!)
今は和菓子のなごみ庵にはお茶会用菓子の注文が来るようになりました。洋菓子なごみーるのプリンは先日東京で行われた障害者の事業所が作るコンペで好評で東京から注文が来ることになりました」

Photo_2

必要なものを、工夫や知恵を出し合って実現させていく姿勢には、いつも学ばせてもらっています。

今回は皆さんと勉強しました。2010_1104_181300p1000261左端我妻さん

たくさんの脳機能テストの結果がありました。ここまで実績があると脳機能が生活実態と生活歴を表すということが確かに実感できるでしょう。

個別のケース検討は、解釈がちょっと複雑だったり、質問が的確で、テストが使えるようになってきていることがよくわかりました。
そういえば、9月の実務研修会には二度目の受講をなさった方もいましたね。二段階方式は使える、そしてもっと使いこなしたいということなのでしょう。
脳機能からその人を理解するという姿勢がなごみの部屋に根付いてくれましたね。これからもがんばってください!


「なごみの部屋」予防活動で事業拡大

2008年11月27日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

米沢市の居宅介護支援事業所「なごみの部屋」に行ってきました。
我妻社長P1000051_2
2005年11月に伺ってから、3年ぶり。そのときのことをブログに書いていますので、上の「なごみの部屋」をクリックすると読んでいただけます。「なごみの部屋」がどういう理念の下に発足したのかなど、ぜひ読んでください。Kaigo

 

 

 

 

別れのときの言葉です。
「介護保険発足時に、老健から退所を迫られた方々のためのデイサービスつきアパートを始めました。ディサービスの希望が多くデイを増やし、訪問看護の要望にも応え、要介護の方のお世話をしていくうちに、エイジングライフ研究所二段階方式に出会い、認知症は生き方の問題だということが納得できました。認知症のかたがたには相応の生活歴があるものです。
2005年から「かくしゃくの会」の活動が始まり今に至っています。
そして今年から機能訓練事業所も開設しました。
今思うことは、正常な方々を如何に落とさずに人生を全うしていただけるかということです。イメージ的にはディつきのケアハウスです」

そこで私「参加を強制するようなディが必要ですね。従来のケアハウスは自主性を尊重しているうちに自主性をなくしてしまうようなことになりましたから」

印象的な言葉を紹介します。
「設立当時のいろいろな事情から『楽しく安全に過ごしてもらう』ことをテーマにしてメニューなし、いやがることはしない、楽しいことだけにしていくディサービスがありました。数年たつうちに低下傾向がはっきりしてきたこともエイジングライフ研究所二段階方式導入のきっかけのひとつだったんですが、脳機能テストを通して客観的に見ることができ、今では、『予防や改善』を目的にメニューを組んでスタッフが積極的に引っ張るディサービスを全箇所でやっています」

「なごみの部屋」では 介護保険外の事業がこれだけになりました。
Kakusyaku Fitness

 

 

 

Nagomiru
かくしゃくの会:脳と体の健康教室
なごみーる:障害者自立支援法に基づく就労継続支援B型事業所件自立訓練事業所
フィットネスルーム:中高年向けのフィットネスケア

機能訓練事業所の仕事内容はお菓子つくりとクリーニングです。それは「なごみの部屋」での需要が確実だからだと伺って、こういう視点が市町村の事業にも入ってくるといいのにと感じましたよ。
なごみーるで、プリンやクッキー作りを主体に始めた後に、たまたま和菓子製造もできる職人さんと施設が事業に加わることになったそうです。ひとつがうまくいくと続くものですね。
ここできたお菓子ももちろん「なごみの部屋」でも使うのですが一般に販売することになっています。
なごみーるP1000054 (リハビリルームに注目)                     なごみ庵P1000057 (祈 商売繁盛)

 

 

 

 

 

 

「かくしゃくの会」参加者の脳機能テストは継続的に実施されていました。
担当の方と一緒に、数名分結果を検討しましたが、感動的でした。
基本的には改善主体。
低下群には体調・家族内での問題発生など納得できる生活上の変化がありました。そこを乗り越えて教室に参加しているとまた改善してくるのです。
このことは十日町市松代での勉強会におけるO保さんのいわれたことと同じです。
70代80代の方が改善していってることがわかるとうれしいものですね。
なかなかまとめる時間はないでしょうが、でも、がんばってください。
今月開店したばかりの「なごみ庵」P1000053_2 
もうひとつ。
実務研修会に参加されたS木さんのケースも検討しました。
事故で失語症という診断の53歳の男性でしたが、当日拝見したときに、「右脳の損傷もある」ということと「脳が回復できる期間は短いので、後遺症を認めてうえで積極的にかかわってあげるべきでしょう」とコメントした記憶がありました。

そのときMMS13点でした。今回23点。字も模写(立方体模写まで可)も別人のようでしたが、何より生活実態が別人のように生き生きしていらっしゃるそうです。ベッドから降りたらセンサー感知させるという状態から、独力で行きたいところへ行ける状態にまでなったそうです。
前頭葉機能は今ひとつですが、少なくとも家庭生活は問題ないところまで回復できました。
生活実態と脳機能がパラレルであるということを納得している皆さんにお会いできたことは、「なごみの部屋」の活動が大きく発展されていることとともに大きな喜びでした。

 

 

 

 

 

 

 

 


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