脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

世の中みんなわかってない!

2006年05月28日 | これって認知症?特殊なタイプ

「世の中みんなわかってない!」なんてちょっと過激な発言でごめんなさい。

最近、家にいることが多くて、テレビを見聞きするチャンスも増えています。世の中挙げて「認知症」「認知症予防」「認知症の人の心」「認知症にならないための・・・」
まったく、10年前にエイジングライフ研究所が旗揚げしたときの風当たりの強さはいずこへ?

P1000016 一応、我が家のイングリッシュガーデンと私が名づけています。
このジギタリスは、毎年咲いてくれて5年目。種が飛んで増えるんですよ。でも、今年は淡いピンクが消えてしまいました。

テレビの困った点は、特殊な痴呆に重きを置きすぎる点です。
側頭葉性健忘はボケではありません。記憶の入力過程に問題があるので新しい記憶はだめですが、前頭葉が生き生きしていることが特徴です。表情は豊かで、会話もウイットに富み文字通り「ボケていないみたい」です。

若年性アルツハイマー病という病名で、まだ50代の人を紹介するというパタンも多いのです。その場合は側頭葉性健忘か非常にまれなタイプの変性疾患、失語症のときもあります。
アルツハイマー病は遺伝子異常によるほんとうの変性疾患です。ところが進行が早くて番組作りに向きませんから(本人のコメントが取れなくなる。あまりにも、悲惨でカメラを向けがたい)特殊な変性疾患の方を、よくも見つけてきたものと思いたくなるくらい取り上げます。

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P1000027 保健師さんたちならば、「これは普通のボケじゃない」と直感的にわかります。
表情豊かで、話し方もキビキビしていて、感情の交流が十分に可能・・
そんなボケがありますか?
このタイプの方たちは、ゴルフの飛ばし屋だったりバトミントンや卓球の名手だったり。手芸は上手。音楽も好き。小さな子供やペットや花も大好き。おしゃれにも気を配ります。もうひとつ。家族から好かれ大事にされています!
こんなボケがありますか?
脳機能検査をして御覧なさい。受ける印象と成績は天地ほども差があります。その成績の悪さに愕然とするはずです。

これがアルツハイマー病亜型感性残存タイプ。愛すべき実に珍しいタイプのボケです。アルツハイマー病と比べ、緩やかではありますが進行性ですから、だんだんできなくなることが増えてきてはいきますが。

脳卒中も事故もしていないのにどうしても言葉が出てこない。けれども、そのことに対して、実にその人らしく戸惑い、恥じらい、困惑していることがよくわかる。生活の自立には何の問題もなく、感情の交流は見事というようなボケはありますか?
このように緩やかに失語症が始まっていくタイプもあります。ジグソウパズル500ピースに挑戦。音楽は相変わらず楽しむ・・・緩徐進行性失語です。

こういう方たちは、前頭葉機能は低下していきますが、さらに非常にまれなケースとして前頭葉機能がかなり健全な状態で残りながら、右脳や左脳の機能がアンバランスに低下していくというタイプがあります。前頭葉が、「こんなことがなぜできないのか?!」慨嘆するという風情です。ちなみに今日のテレビにはこのタイプではないかと思われる方が出演されていました。

もう一度いいますが、ほんとにほんとに珍しいタイプの方たちなのです。

P1000003 初めて、デンドロビュウムがこんなに咲きました。花茎の立て方がわかりませんでした。
友人にメールで送ったら「セッコクみたいね」と返信メール。
多分、ほめてくれたのでしょう。

一方で、ボケの90%を占めるアルツハイマー型痴呆(普通のボケ)のしかも重度痴呆を介護した家族の話を聞くと、「お父さんやお母さんがその人でなくなった。考えられないことをしでかす。徘徊、不潔行為、騒ぐetc」

こういうテレビを見て、稀なタイプの皆さんの話を聞いて、普通のタイプの重度痴呆を介護した人たちの話を聞くとボケって何なのかがわからなくなって、多くの人たちの不安が募ることになるのです。

認知症の大部分は、高齢者が何かの生活上の変化をきっかけにして、その人がその人らしく生きられなくなって(つまり、前頭葉の出番が減って)前頭葉機能が本来持っている老化のスピードをさらに上げてしまうところから始まるものです。緩やかに進んで次第に大ボケに近づいていくのです。

正しいボケの理解のためには、脳機能検査ありきですが、負けず劣らず生活歴聴取も重要なポイントだとお分かりになりましたか?
テレビには「ボケ予防に最重要なのは生活のあり方=前頭葉を中心にした脳の使い方」という視点があまりにもありません。特殊症例中心の番組作りだけでは、ちょっとじゃなく大幅に残念です。

アルツハイマー型以外のタイプの詳細に関しては「個別事例判定マニュアルC」を読んでください。


埃でなくて誇りを!ゆうかり工房の紹介

2006年05月14日 | 認知症からの回復

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我が家で一番派手なグラナダ。

_022 丁字草。
一碧湖畔に自生している野草で、たおやかに咲きます。

ところで「ホコリをかぶるものではなくて、誇りをもてるもの」に挑戦させてあげましょう。

何の話かというと、認知症予防教室のカリキュラムの中で「作品作り」に取り組むことがありますが、そのときのテーマのことなのです。
エイジングライフ研究所が主張している「認知症予防教室の対象者はかくしゃく・正常・小ボケまで」です。
脳機能がビビッドであればあるほど、芸術性を評価します。


そのとき、旧態已然たる折り紙・割り箸細工・何かの廃物利用・とても飾りにはできそうもない飾り物、または実用一辺倒では、教室の魅力は薄れてしまいます。

教室で行われる製作の時間には「今日の教室でこれを作ったんだよ!」と家族に自慢できるものに、取り組ませてあげたいと思います。
目新しく、おしゃれで、自分なりの工夫の詰まった、作品を見ていると微笑がこぼれてくるようなそんな作品作りの体験こそ、右脳ベースの前頭葉の活性化につながるのです。

http://www.hpmix.com/home/yuukari/

一度このサイトに入って御覧ください。
このゆうかり工房は私のうちの近くにあります。お知り合いになって、「ぜひとも、元気な高齢者のために、簡単でできばえがよくて、上品で、斬新で、個性が強調できるもの開発をしていただきたい」とお願いをしました。ゆうかり工房のスタジオや先行した自治体の教室などを舞台にして、一作品について、半年から1年2年とかけて開発、改良していったものが、

下のほうの「手作りキット」の中にあります。
(もちろん他を見るのも、みなさんの右脳刺激になりますよ。)

素材も粘土・原毛・フェルト・皮など多彩ですし、よく見ると「簡単でできばえがよくて、上品で、斬新で、個性が強調できるもの」になるように多くの工夫がなされていることがわかるはずです。
どうしても男性向きのものがなく、苦労した挙句に気づいたのが素材の工夫でした。牛皮を用いたのですが、ある教室で男性の方が
「紙を切るのは子供。布を切るのは女。皮を切るのは男の仕事」と、つぶやいたのを私は聞きました。
もちろん、デザインも男性でも抵抗がないように工夫してあります。
これは「レザーモザイク」の例です。

個性は「形や色彩」の選択のときに発揮されます。「正しい」のではなく「好き」だから「色や形」を決めていくのです。それって、右脳が主体的に働くことなのです。

高齢者にとって「計算ドリル」に取り組む時間と、このような「作品作り」に取り組む時間と、どちらが楽しく生き生きできるでしょうか?
どちらの時間のほうが、「あっという間に時間がたった」と実感できるでしょうか?

教室に関わり合うスタッフも、自分が作るときに夢中になって、出来上がると自慢したくなるような「作品作り」を目指してください。
「ゆうかり工房」にこだわることはありません。ただ、この精神を理解することが大切です。

_045 数年前の「母の日」に息子たちからプレゼントされたミニバラが今年もきれいに咲いています。ミニバラはいつまでたってもミニなのですね。


ガーゼを引っ剥がして(生活歴を聞く)

2006年05月08日 | 二段階方式って?

_001 ジャーマンアイリスです。どういう訳かこの二種類だけになってしまいました

_002_1

数種類あったのですが。黄と白が見当たりません。

先ほど、電話で保健師さんにケースの指導をしました。研修後、初めての検査と生活指導でした。
検査はヒントを上手に出したりしてスムーズに実施されていました。マニュアルで確かめていくと、MMSの下位項目のできなくなる順にもすぐ「納得!」の感触が返ってきます。

ケース指導をするときにいつも気がつくのですが、
みなさんが二段階方式を実施する時、感じるのは
 脳機能検査、ちょっと大変、やればさほどでもないんだ。
 30項目問診票、まあ、丸をつけてもらうだけだから。
 生活歴聴取、何をどう聞くのか?聞いたら悪いし・・・

こういう気持ちでしょう。
つまり上から順に難しく感じているんではないでしょうか

検査に関しては「年配の方に検査するのも、悪いしぃ~」でも
「まあこれはマニュアル通りにやれば、客観資料だしぃ~」
と一応気分的にはクリア。

生活実態は、丸がつかないと
「ほっと安心、よかったなんともないんだ」と思うでしょ?
それは間違い!小ボケは自覚が必須なのです。
脳機能検査結果が小ボケならば、自覚がなければ
「何故???」がスタートすべき。
「だってぇ、脳が悪いって言わせるなんてぇ・・・悪くてぇ」
小ボケって、もともと正常域であった脳機能が異常域になってるんですよ。そのことに気づいて「何か変。どうなってるの私は」と自問しているのが小ボケなんです。
聞き方を工夫して(マニュアルBの第二章を参考)、必ず丸をつけてもらうようにしましょう 。
慣れるとこれも、できるようになります。

さて最後の難関。生活歴
「検査のときに、何かしゃべりたそうだったんです。でも、なんか悪いかなあと思って突っ込みませんでした」
「家族のことを話すときに暗くなるんです。きっとその辺りに何かあると思ったんですけど、気の毒で聞けませんでした」

そのときに私が言った言葉が
「生活指導するためには、必ずターニングポイントははっきりさせなくっちゃダメ!傷の消毒をするときに、ガーゼを引っ剥がして消毒するでしょ?(最近ははがさない傷の治し方もあるそうですが)痛いですよねってはがさずに消毒しますか!」だったんです。
その保健師さんは「そうかぁ。今の例はよくわかります。面白い言い方ですね」とほめてくれました。

うれしくなって報告します。お花も付録で追加。

_004 ちょっと変わったクリスマスローズ。_011
普通のマーガッレト。


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