脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

同居の嫁の観察力

2011年11月30日 | 二段階方式って?

エイジングライフ研究所の二段階方式を使って、認知症の有無や重症度を見ていくときには
   1.脳機能検査
   2.生活実態(30項目問診票)
   3.最近の生活歴聴取 の三本柱を用いることは何度もお話ししてきました。

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二段階方式を実施するとき、初心者の方々は
1.脳機能検査にエネルギーを掛けてしまって、
2.生活実態(30項目問診票)や
3.最近の生活歴聴取がおろそかになりがちですが、検査を受けている人を理解するためには1も2も3も同じように大切な情報ということを忘れないでください。

二段階方式では、この三つの情報の意味することが共通するかどうかをチェックしなくてはいけないのです。


(1.脳機能検査が小ボケなら2.生活実態も小ボケ3.生活歴も小ボケ相当の時だけ、普通の認知症という考え方になります)

今日は2.生活実態の話です。
小ボケレベルだと本人が自覚しています。軽いほど、はっきりと申告してくれます。
30項目問診票の1~10の小ボケ相当の生活実態のほとんどに丸をつけてくれて、それは気の毒になるくらいです。

つけくわえですが、「10.相手の意見を聞かない」の項目だけは、原則本人は丸をつけません。
もし本人が小ボケレベルであって、「10.相手の意見を聞かない」の項目を自覚しているといった場合は、ほんとうにもともと人の意見に耳を傾けない難しい人柄の場合が多いようです。2011_1113_143700p1000007

小ボケでも、だんだん進んで中ボケに近くなると、自覚があいまいになってきて、30項目問診票の丸の数は少なくなっていくものです。

中ボケになると自覚がなくなりますから、家族や施設の職員など周りの人の評価が大切になります。

小ボケは本人評価、中ボケ以下は家族(他者)評価が原則ですが、どのレベルであっても、家族がその人をどのように見ているかを申告してもらうことで、その家族の関係が垣間見えてくることがよくあります。

もちろん1.脳機能検査の結果を基礎において、解釈していくことになりますよ。

実務研修会で「家族はどのくらい正確に、認知症の人の症状をとらえているでしょうか?」と尋ねてみます。
「妻が夫を見る時」→「正確」   (原則的にはその通り)
           →「より軽く」 (いわゆるいい家で妻が防衛的な時)
           →「正確」   (一番多いケース) 
           →「より重く」 (妻が夫を嫌っている時)

「夫が妻。息子が親」→「軽く」 (原則的にはその通り。例外は、夫や息子が責任持って面倒をみている場合で、この場合は正確に申告する)                   

「嫁した娘が親を見る時」→「軽く」 (原則的にはその通り。月に一度以上の頻度で泊りがけで世話をしている場合には正確に申告する)

「同居の息子の嫁」→「より重く」 (実務研修会では、みなさん笑いながらほとんどこのように答えますが、実態は正確なことがほとんどです)

以上話したことは、原則論ですよ。
脳機能に対して家族評価が悪すぎる時があります。そのような時は、認知症の方、本人 に問題があることが多いのです。
夫婦関係が破綻していたとか、子どもに対する愛情が不足していたとか、嫁入りした時からずーと泣かされ続けてきたとか訴えられることが多いのです。2011_1112_145300p1000005 2011_1112_145300p1000004 

 

興味深いケースがありましたから紹介します。

85歳男性。
1.脳機能検査は正常。
2.生活実態も正常(7のみ丸)
3.生活歴が問題でした。

「農業が生きがいだったが、2年前くらいから認知症の妻の状態が悪くなって、田んぼをやめ畑をやめ、今は自家用野菜を作るだけになってしまった。
気力、体力ともに落ちてしまった。
ただし、趣味はナンプレや漢字ゲーム。読書も続けている」

脳機能検査の結果が正常だったことと、担当保健師さんは趣味も楽しんでいるということから問題なしと考えたのですが、もともと民生委員もやったりして、地域では人格者で通っている方でした。その人が「気力、体力ともに落ちてしまった」と言っているのです。

ボケはじめは物忘れではなくて、意欲低下です。
30項目問診票は正常範囲の申告でしたが、脳機能低下が加速される時、一番最初に自覚される意欲低下を申告していることに注意してあげましょう。

2011_1113_144100p1000010 生活実態をもう少し詳しく聞いていくと
「妻は数年前からおかしくなってきた(中ボケから大ボケ)。ディlサービスは嫌がるので行かせていない。
畑に行くとついてきたがる(中ボケ)。畑仕事は手伝っているつもりでも邪魔になることが多い(中ボケ)。
半日くらいは一人で留守番ができるが(中ボケ)、用意してある食事を温めたり片づけたりはできない(中ボケ)。
息子夫婦と同居しているが、息子が失業中で嫁が働きに行っているため、自分が面倒をみている」という状態がわかってきました。

青字は、申告された症状から妻の脳機能レベルを想定したものです。だいたい中ボケレベルではないかと言えます。
「夫婦二人暮らしで、片方が小ボケの間はもう片方は正常で生活できるが、中ボケになったら、もう一方は小ボケになっていく」ということも知っておかなくてはいけません。
放っておけないので、自分の活動が制約されるということと、将来がとても不安になるからです2011_1113_144100p1000009

このように脳機能検査ができないときには、2.30項目問診票を使って評価してもらいます。
もちろん正確に観察ができていて、正直に申告してもらわないと使えないですが。

夫が妻を観察した結果は1~10に6個丸が付き、11~20はすべて、21~30に2個丸が付きました。中ボケ下限ということになります。

同居の長男の嫁は、1~10には一つも丸が付きません。11~20に2個、21~301個。
この丸の付け方はおかしいですね?
1~10に4個以上丸がついて初めて、11以下に丸が付き始めるものですから。

この嫁は姑をみてない!いや、見る必要がないといった方が実態なのでしょう。
嫁に妻の介護を任せている夫や、妻に親の介護を任せている息子が、認知症になった人の実態を知らないまま生活しているのと、全く同じことが起きています。

夫や嫁という家族としての立場ではなく、その人とどのくらい深くかかわりを持っているか、どのくらい向き合っているかが、認知症になった人を観察申告するベースなのだと改めてわかりました。
    


講演会in開田高原

2011年11月19日 | 各地の認知症予防活動

この講演会に関して、一番に報告しなくてはいけないことは、講演に先立って予防教室の方々による発表が行われたことです。
10月に入って、木曽町のY保健師さんとの打ち合わせの中で、私がふと思いついて「教室の方々に発表していただいたらいいんじゃないの?」と言ったことが始まりでした。電話の向こうで一周固まった感じがしましたが(笑)

Y保健師さんにとっても予想外のことだったわけですから、それを持ち掛けられて教室の皆さんもびっくりされたと思います。
最初の話をかけた時に「意外や意外。案外、乗ってくれるものなのよ。認知症の予防教室というのは積極的な楽しい生活の大切さをを教えるものだから」と説明しておきましたが、「地域性もあるし…」とどうなるか楽しみにしていました。

会場入りすると、おしゃれなむらさきグループが!胸にはブローチまで付いています。後で聞いたのですが、皆さんで図って風呂敷で衣装を作り、ブローチをつけることも全員一致で決められたそうです。2011_1101_132800p1000203 2011_1101_132900p1000204                                              

保健補導員会長挨拶(素晴らしかった!)2011_1101_133100p1000205        このリーダーさんの挨拶も!2011_1101_134000p1000207

合唱「青い山脈」 重唱「もみじ」 輪唱「かっこう」2011_1101_133800p1000206

最後の輪唱は会場を巻き込んでの大合唱になりました。
先日の塩竈市でも書きましたが、本当の認知症予防のためには、皆さんの生き方や人生観が変わっていくことが必要だと思うのです。
演じられるものの優劣よりも、どのくらい楽しみ、またその楽しんでいる力がどのくらい観客の方にも浸透するかというようなことを、私はいつも感じながら拝見しています。
左の男性群は、自立した生活をしながら、楽しみごとにもあれこれと意欲的、積極的に参加していらっしゃるとのこと。さすがですね。

寒くなったことでしょう。皆さま風邪にご注意ください。そして滑ったりしないでくださいね。

言い忘れていました。役場の方でしたが、どなたかが「この会場にこれだけ人が入ったのは、見たことがない」とおっしゃったのが聞こえました。今年2月の木曽町日義地区での講演会でも同じ言葉が聞かれたのです。本当に「認知症予防」は興味を持たれているテーマなのです。
保健師さんたち。住民の希望にこたえてあげましょう。

開田高原からも記念写真が、すぐに届きました。ありがとうございました。


秋の右脳刺激の旅その3

2011年11月19日 | 私の右脳ライフ

2011_1108_130400p1000219実は続けて、友人たちと飛騨の紅葉狩りの旅も楽しみました。 
私たちにとって、何度目の高山だったでしょうか。飛騨国分寺には今回初めて訪れました。

「昼食は飛騨牛を食べたい!」という声が圧倒的で、ガイドブックもいろいろ検討してみましたが、なかなか決めきれません。たまたま立ち寄った店の方に、
「飛騨牛のお昼を食べたいのですが・・・」と尋ねたら、この飛騨国分寺の前のお店を紹介してくださったのです。

「それで?」と聞いてくださいますか?
おいしくて、値段もリーズナブルで大満足。
さらに加えて、飛騨国分寺そのものも見ごたえがありました。菊花展開催中と書いてありましたが、それどころか素晴らしいイチョウの木にめぐり合いました。2011_1108_130600p1000222 2011_1108_130800p1000223                            

高山の町歩きもしましたとも!観光客がいっぱいでしたけど。2011_1108_145300p1000224 2011_1108_150600p1000227              

平湯温泉に泊まって翌日は快晴だったので新穂高ロープウエイに挑戦。これは全く予定外の行程。「臨機応変」というのも前頭葉です。
白山連峰2011_1109_100200p1000233 (左10時方向)                 笠が岳2011_1109_100100p1000230 (正面12時方向)                         

槍ヶ岳2011_1109_100200p1000234 (右2時方向)                   奥から槍ヶ岳ー西穂高ー夫2011_1109_100700p1000238 (右3時方向)            

2011_1109_102700p1000244 同行の友人が、若いころ(たぶん40年以上前?)西穂高に登ったことがあるというので、登山口まで行きました。

その時のことを実に懐かしそうに話してくれました。
大げさなようですが、時空を一気に飛び越えるようなこのような体験は年をとってからでないと味わえないものですね。
名所、旧跡、風物、食べ物などのほかの旅の楽しみが、私たちの年齢になるとあることを実感しました。


秋の右脳刺激の旅その2ー旅立ちは前頭葉が決める

2011年11月19日 | 前頭葉の働き

木曽の開田高原はきれいでしたよ。何しろ携帯で撮った写真ですからあしからず。
きれいな景色や心揺さぶられる音楽などに出会った時、左脳は右脳には敵いません。感動が深いほど「言葉ではうまく言えないくらい」とか「何と言ったらいいのか、わからない」などと言いますよね。

初めて現れた御嶽山(左下)2011_1101_094400p1000191_2 2011_1101_100000p1000199_2                            

秋の御嶽山は、是非一度訪ねていただきたいと思います。晴天に!

現職で働いている人は「時間がなくて・・・」
またある人は「膝が痛いので・・・」「ドクターストップが・・・」
もちろん「手元不如意で、残念ながら」という人もいるでしょう。

確かに旅に出るには「時間」と「健康」と「いくばくかのお金」が必要です。
ではその三条件が揃ったら、人は旅に出かけるでしょうか?
出掛ける人もいれば、出掛けない人もいる。というのが正しい答えでしょう。
自分が、自分を旅に誘うかどうかを決める一番のキィーは「意欲」があるかどうかです。2011_1101_094900p1000195
「意欲」は、言うまでもなく前頭葉機能です。
一般的な「意欲」の有無もあるし、旅に対する「意欲」に限れば、それまでの経験とかおかれている環境とかに左右される面もあると思います。

けれども、「意欲」さえあれば、さまざまな悪条件に対しては「工夫や知恵」(これまた前頭葉)で対処していくことができますから、生活に変化をつけたり、豊かにしていくためには「意欲」が不可欠だといえるでしょう。

ビューおんたけからの朝の御嶽山    伊豆シャボテン公園のシャボテンたちが2011_1102_081800p1000210_2   2011_1102_093600p1000212_2

「認知症予防を言うならば子どもの教育から始まります」と言うと皆さんはびっくりされますが、どのような脳を作りあげるかということですから、大人になってジタバタしたって始まらないという厳しい側面もあります。

右脳は開発可能な臨界期があるといわれています。例えば、絶対音感は幼児でないとつきません。
前頭葉も、その人らしさは20代には完成していると思います・・・

開田高原は谷も魅力的でした2011_1102_095600p10002142011_1102_095700p1000215                          

 


秋の右脳刺激の旅その1(食事に関して正常から認知症へ)

2011年11月18日 | 正常から認知症への移り変わり

10月から11月にかけて、あちらこちらへ行きました。
東北からの帰途、東京で一泊、そのまま木曽町(最寄駅は中央西線木曽福島)へ行ったのですが、新宿発の特急「スーパーあずさ」が中央西線分岐の塩尻に停車しなかったために、その手前の上諏訪で下車。前から狙っていた北澤美術館を訪ねることにしました。

諏訪湖は穏やかな秋日和。思いがけない紅葉を堪能しました。
丁度昼食の時間でしたから、以前行ったときにはなかったおしゃれなくらすわでランチをして、たった一人の大人の休日倶楽部でした。

くらすわ2011_1031_133600p1000186 2011_1031_132800p1000185                 

2011_1031_134000p1000187レストランからの眺め 2011_1031_132700p1000183            湖畔遊歩道のかりん        

北澤美術館では、学芸員の方が丁寧に説明をしてくださってこちらでも満腹!ま、右脳がですけど。

木曽福島駅前の旅館つたやさんは二度目。
朝食をいただくところからの眺めです。木曽川を挟んで対岸の山々はもうすぐ紅葉の見ごろを迎えるという風情でした。
朝食も見てください。丁寧なお料理をいただきました。2011_1101_080500p1000189 2011_1101_080800p1000190            

ここで閑話休題。料理と認知症のお話しを。
お料理をいただくときに正常な大人であれば
   
   1.当然、味がわかる。
   2.食材への配慮を感じることができる(珍しいとか高価とか)
   3.料理のわざ
   4.食材や食器や盛り付けに込められた季節感

なども味わっていると思いませんか?

小ボケになると、味はわかりますが、2~4は「それがどうしたの」の世界に入ってしまいます。
中ボケになると、味がはっきりわからなくなってきますから、家族から「おばあちゃんの作る料理は、塩辛くて食べられない」とクレームが出てきます。
大ボケは、皆さんがご存じの食べ物でないものを口にする段階です。

木曽町の講演は、去年は日義地区でしたが、今回は開田地区。
開田高原はあの有名な木曽駒の産地。2011_1102_094800p1000213_3  2011_1101_094900p1000196_2

木曽駒牧場に行ったら何と一頭立ての馬車がありました!御者がいないと動きそうもありません2011_1101_095100p1000197_2

開田地区での講演会の様子は次々回に。


「ボケないように、手仕事をしている」

2011年11月12日 | かくしゃくヒント

よく聞くことばですね。
「ボケないように、手仕事をしている(又はさせている)」

認知症にとって一番の大敵は、何もしないこと。居眠りをすること。
何かしているという意味では、ちょっとはましですが、本当の認知症予防という観点からは「何を目的にして」というところが大切なのです。

「認知症予防」も「目的」のように思われるでしょうが、
  「一工夫して自分らしいものを製作したい!」とか
  「孫のお祝いに間に合わせたい」とか
  「これを差し上げて喜んで使ってもらえば」とか
  「みんなで楽しみたい」とか
  「作品展をしたい」とか
  「収入になって~をしたい」とかなどの目的に比べると、例の三頭建て馬車の御者の働き方が全く違うことに気づいてください。

今、私たちの仲間で小さなボランティア活動に取り組んでいます。
気仙沼の友人宅へ、仮設住宅に住んでいる人のために防寒になるものなどを送っているのです。2009_0131_122500p1000002
もともとは、岩手県田野畑村で「認知症予防教室」のメンバーが、大震災後3カ月ほどたったら自主的に集まりを再開し、しばらく経ったら「手芸もしたいね」という言葉が聞かれるようになったのに、針一本ないと聞いたところから始まった活動でした。
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20110816

ですから当初は手芸材料の提供を、友人やそのまた知り合いに呼び掛けて協力を願っていたのですが、たまたま気仙沼には親しい友人がいて、彼女が仮設住宅の方々や、必要とされている方々(実は自宅が半壊状態の方は、支援物資はこないうえに、生活用品はなくなっている状態なのです)に配ってくださるというので、防寒具を中心に送り始めました。

友人の友人(S谷さん)から連絡が来ました。
「母が急に亡くなったので、家の整理をしなくてはいけません。送れそうなものを送ってもいいでしょうか?」
気仙沼の友人からは
「何でも、きっと役に立つという人がいると思いますので・・・」という返事がきました。P1000002                                      

その後日談です。
気仙沼の友人がちょっと興奮気味に、昨日電話をくれました。
「今日、震災でご主人と家を亡くされた70代後半の方に、必要なものを見ていただいていたの。S谷さんが送ってくださった荷物の中に、実は手芸に使えそうな布があったのだけど、それを見つけたらとても喜ばれて『頂いてもいいですか?』と言われるので、もちろんどうぞとお話ししました」
「吊るし雛を作るのにぴったりの生地なんですって。『これだけあれば、仮設住宅の人たちにも声をかけて一緒に作れる』と言われた時には、顔が輝いていたのよ」
「あなた(高槻)が、手芸もいいのだけどと言っていた意味がよくわかりました。テーマがあると集まれるのね」
「来春かもっと先になるかもしれないけど、作品展をしましょうねって約束しました」
「割烹着も皆さんに配るんですって。ユニフォームになるみたい。思いがけない形で喜ばれるのねえ」と友人も笑って話してくれました。

認知症予防と言いながらも、一人で、決まりきったものづくりのために暇つぶしのように針を動かしている状態と、みんなで「ああでもない、こうでもない」と言いながら針を進めるのとでは、三頭建て馬車の御者である前頭葉の働き方は全く違うのです。2009_1101_085800p1000177                   

きっと、
「ここは、一工夫がいるのよ」
「その配色が素敵ね」
「この次は私もそれを作りたい」などの意欲的な言葉が飛び交うことと思います。

前頭葉が目覚めると、生活全般がイキイキと意欲的になっていきます。
この方お一人のためだけでなく、仮設住宅全体の、おばあさんたちの脳活性化につながる道が見えてきました。
仮設住宅には、高齢者で一人暮らしの方もいらっしゃるし、2世代同居でも若い人たちは仕事に出てしまうので、昼間は一人という高齢者はたくさんいらっしゃるそうです。

S谷さんのおかげで、小さな輪ができそうです。それを見てまた波紋のように、小さな、楽しいものづくりグループができてくれることを期待したいと思います。
まだ一度もお会いしたこともないS谷さん、ありがとうございました。


元気な塩竈人と・・・・仮設住宅での認知症予防を!

2011年11月05日 | エイジングライフ研究所から

交流会、保健師さんたちとの勉強会が終わり、駅へ送っていただくことになりました。
「もしよかったら、仮設住宅の見学がしたいのですが。遠いところでしょうか?」
「すぐそこにあります」E794bbe5838f001                                    

この写真の階段下に玄関があって、そのまま建物を横切ったところから外に出ると広い駐車場。その一角に仮設住宅がありました。
体育館で楽しく体操やダンスを見学していた時には、この体育館の出口を出たところに仮設住宅があるとは、思いもしませんでした。

22所帯分。
6戸続きの平屋建てが4棟。2011_1026_162600p10001262011_1026_163400p1000129

夕方のせいか、人の気配はほとんどなくて通りかがった民生委員さんに尋ねるとここは場所もいいので働きに行っている方も多いとか。平均年齢は若めなのかもわかりません。
ただ、この生活感のなさはどこから来るのかと不思議にも感じ、高齢者には望ましくない環境だと思いました。           

2011_1026_162600p1000125

入口にあった案内版です。

真ん中のお知らせは
「健康相談会・ふれあい喫茶」についてです。「血圧測定します。健康相談受け付けます。おいしいお茶があります」

ここに「脳機能チェック」が入ったらいいのに・・・・
生活が大きく変わって、イキイキと自分らしく脳を使わない状態が半年続くと、前頭葉機能が低下し始めます。
もちろん、本人も「意欲も出ないし、どうも前とは違う」と自覚している時期なのです。
この時期ならば、生活改善さえうまくいけば元気を取り戻すことはごく簡単です。

ただ、仮設住宅に入っていらっしゃる高齢者は、間違いなく家がなくなっているわけです。そのほかにもご家族や多くのものも同時になくしてしまわれている・・・
希望を持って将来を見ながら、趣味や交友などイキイキとした楽しい生活に変換していくことが、脳のリハビリですが、状況を考えるととても難しいことだと言わざるをえません。

でも、「この試練の上に、さらにボケさせるのか!それだけはどうにか食い止めてあげようという思い」を持って、生活指導はしなくてはいけないと思います。
一番の近道は、体を動かすこと。そして交友の機会を持つこと。 2011_1026_162700p1000127

3棟の一番手前に談話室がありました。(上の右側の写真、花の鉢植えがあるところ)
この4.5畳二間続きの場所をうまく利用することはできないでしょうか?

管理人さんがいなくとも自主的に集える場所にすることは無理でしょうか?

先ほど体育館一杯に元気なエネルギーをはじけさせた、あの元気な高齢者が、できることはないのでしょうか?そのことは金澤先生がおっしゃったように、ボランティアをする高齢者のためになることなのですけれど。2011_1026_163300p1000128

民生委員の小幡さん。
お知らせがあると戸別訪問をされていました。このような方のお力も借りて、もう少し積極的に働き掛ける工夫をぜひやっていただきたいと思います。

仮設住宅によっては自主的に自治会がたちあがったところもあるそうですが、やはりこのような組織があるのとないのとでは、働きかけ方に要するエネルギーが全く違うということを、他町でも聞きました。

「ベストでなくてもいい」 これは私が生活指導するときにいつも言う言葉です。
その条件の中で、できる範囲でいいから、高齢者の方々に言葉や体操やものづくりなどで働きかけてあげてほしいと思いました。


12年目の「脳げんき教室』との再会ー元気な塩竈人

2011年11月05日 | 各地の認知症予防活動

塩竈市のK田保健師さんからお知らせが来ました。「ダンベルサークル・元気教室交流会で元気になろう !」という催しがあるのです。

「脳げんき教室!、懐かしい」
丁度、一関市や気仙沼市に伺う時でしたから、お邪魔することにしました。
当時一緒に勉強した保健師さんたちが、なんとまあ定年を迎えられていたり、結婚されていたり・・・

12年の歳月を感じさせられました。2011_1026_081000p1000103

朝早く家を出て、東北新幹線「はやぶさ」に、乗ってみたかったから乗って行きました。私はこうやってちょっとでも旅を楽しみます。

塩竈市へは、講演や勉強会など何度も行ったものです。
仙台からの電車の車窓から、震災の爪痕はいかがかと、一生懸命街の様子を伺いましたが、見える範囲はごく普通の日常的な町並みが続いているだけでした。
会場に向かうタクシーの運転手さんにお見舞いを言ったら、震災時の体験を話し始めてくださって、会場についても話が止まりません。7か月の時が過ぎたので、話せるようになったのでしょうし、話すことで少しはショックを越える御手伝いができれば幸いなことと耳を傾けました。一見平穏な街の様子と「あの時」のギャップの大きさに改めて気づかされました。

さて会場は大盛況。
お隣、多賀城市民サークル「多賀モリ会」の皆さんの「多賀城元気モリモリ体操」の挨拶が始まっていました。2011_1026_113600p1000114

写真右の星さんが「運動機能低下に運動を積極的にすることで立ち向かうのと同じように、介護予防にも取り組みます」という趣旨のご挨拶で正しいアプローチだなと感心していたら、このサークルは、二段階方式をお教えしたT野保健師さんがたちあげたとか。
平成19年より95名で開始して、現在15班で自主活動になっていると聞きました。

ステージ上で「多賀モリ会」の面々が、活動的な「365歩のマーチ」に乗った体操と、「川の流れのように」が流れる穏やかな体操を繰り広げます。
「会場の皆さんもご一緒に」の呼び掛けにこたえている様子です。2011_1026_110900p1000113 2011_1026_110900p1000112         

500人くらいはいらっしゃったと思います。皆さんが一斉に体操を始められるのを見て、12年前から始まった「脳げんき教室」の一つの成果だと思いました。

脳機能検査を取り入れた教室の運営が、さまざまな要因で困難になっていると聞いていました。当初の形でそのままに続いている教室は、あまりないのかもわかりませんが、精神が息づいていると思いました。
私の目の前のグループは皆さん黒で統一された服装で胸元には手作りのひまわりブローチというおしゃれさ。カメラを向けた方は89歳 2011_1026_114500p1000117

「『梅の宮高砂クラブ』は、最初に手掛けた教室!いまだに続いているのです!」とK田保健師さんが教えてくださいました。

「まあまあ」とひとしきり盛り上がり、記念写真も撮っていただきました。帰宅したら、私よりも早くその写真が届いていました。リーダーの宮本さん(前列右)が封筒までご用意くださったそうです。Img_0001

ひと月3回の午前中だけの教室ですが、目的が「心身の健康づくり」と明確なところがいいですね。「脳の健康のため」ともっとはっきり打ち出した方がいいかもわかりません。
楽しげな雰囲気が伝わってきました。

脳機能検査があると、この12年間で、脳機能は改善していることがもっとはっきり分かるのに・・・ちょっと残念でした。
長期間追跡した脳機能テスト(小布施町と豊科町)

最後は「創作リズムダンベル」会場をAとBの2グループに分けてダイナミックなダンスを見せていただきました。右半分と左半分が違うダンスをしていることに注目!
誰でも感動すると思います。それほど見事でした。

でも私はもう一つ感慨深いものがありました。
これだけ広い会場で、とにかく集まった高齢者全員が誰もためらいもなくダンスに参加するということ、そのものにです。
そういう生き方が身に付いている、ということではないでしょうか?
これが、12年も前から塩竈市が取り組んできた「認知症予防活動」の一つの成果ではないかと思うのです。事業の名前はいろいろに変っても、「体と脳の健康づくり」を念頭に置いて、市民の皆さんに接してこられたということでしょう。これからもがんばってくださいね。2011_1026_120100p1000121

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指導の金澤先生。びっくりするくらいの若々しさに理由をお尋ねしたら
「この体操と出会ったからだと思います」
そこで私
「もしも、1人で毎日体操をしている場合、とこのように多くの方に教えてあげる場合と同じですか?」
金澤先生、笑いながら
「そうですね。一人でないところが一番効果的だったのかもわかりません」

繰り返しますが、これだけ多くの高齢者が、一斉に体操ができるということそのものに、そのような生き方ができるということそのものに、私は感動しました。
保健師さんたちの保健指導あってのたまものだと思いました。


緑の真珠ー気仙沼大島の希望

2011年11月04日 | 前頭葉の働き

10月26日から、宮城県と岩手県に行ってきました。

今日は気仙沼便りです。気仙沼湾にある気仙沼大島の様子を報告します。

写真真ん中の低地に左右から津波が。島が二分されました。   道も消えました。2011_1030_095600p1000159 2011_1030_102300p1000164

気仙沼市には17年来の友人がいます。
私が3月11日の大震災の日に、岩手県藤沢町(現、一関市)にいたことは、以前お話ししましたが、実はその時その友人ご夫妻と一緒でした。

「何かしたい」と思う気持ちはあっても、最初は連絡の方法がありませんでした。連絡ができるようになっても「何をしてほしいのか」が分からず、尋ねてみても「何と言っても・・・ラーメンやレトルトカレーはあるし缶詰もあるし・・・そうだ、ドレッシングがないかな・・・」みたいなやり取りだったのです。
何かお互いの気持ちが空回りしているようでした。

そのうち、避難所から仮設住宅への入居が終わったころでしたが
「仮設住宅が、これから先きっと寒いと思う」ということで、セーターやマフラー、毛布や湯たんぽなどの要請がありました。多くの友人たちにも声をかけてたくさん協力をしてもらいました。(ありがとうございました)

人は一人では生きていないことを、私もしっかり感じながらの荷造りでした。

「気仙沼大島中学校の文化祭で発表するために、PTAのお母さんたちにフラダンスを教えているの」という連絡を友人からいただいたことがきっかけで、今回の大島訪問が実現しました。
2011_1030_113700p1000171_2 少し早めに会場の大島中学校体育館に行きました。

生徒たちの劇が演じられていました。
まあ何年ぶりでしょう。中学生の演ずる劇を見るのは。
「ビーチボーイズとかぐや姫」
ももたろうとおじいさんおばあさん、もちろんイヌとキジとサル役も。友人、三蔵法師に孫悟空・沙悟浄・猪八戒、さらにはハリーポッターまでも。途中からの観劇でしたが、ちょっと不良のももたろうが見事に更生するというお話しで、中学生の「自分だけで生きるのではない。みんな仲良く尊重し合って生きよう」という素直な心情が無理なく伝わってきました。
カーテンコールで一言ずつの感想が述べられましたが、これがまた素朴に思いを言葉に表わしていて、「震災体験を糧にこの子たちはきっと強く生きていくことだろう」と胸に迫ってきました。
PTAのフラダンス2011_1030_114200p1000172

レイは大島中学校卒業生でホノルル在住の方が送ってくださったものとのアナウンスが流れると会場がどよめきました。
「ハワイからも応援してくれている!」

二曲目の「エクスイートポイナオレ」は、レイに愛する人を象徴させている歌だそうですが、お母さんたちの踊りにはその祈りが感じられる素晴らしいものでした。
クリックして歌を聞いてみてください。

感動は続きました。
合唱2011_1030_115400p1000173 2011_1030_115500p1000174                                              

一生懸命数を数えました。多分80人。全校生徒です。(一名入院中だそうです)
「全員出席してくれました。こどもたちはすごいことをやってのけました。いやーほんとにすごい」と真ん中で写真を撮っていた校長先生がおっしゃいました。ちょっと涙が見えたような気がしました。

素直に大きく口をあけて、指揮者を見つめて一つの歌にしていました。
一緒に観ていた大阪から大島を訪れていた元中学校の先生が
「みんながまっすぐで、私の教師時代では考えられません。みんな同じ方向を向いている」といわれました。

震災の被害は想像を絶するものがありましたが、この中学生たちを見せてもらったことで、きっとこの子たちは本当の意味で人間らしく生きていってくれるだろうと思いました。そこに大島の将来があると思います。

「自分が何を見、何を感じ、なすべきことを決断する。そして実行の後に自分でその行動に評価を与える」この繰り返しで、自分らしさの源である前頭葉は育っていきます。
あまりにも過酷すぎるものを見せられはしましたが、それさえ糧にしていける大島中学校の生徒さんたちだと信じることができました。

美術の展示2011_1030_133400p1000175
一人一人の作品が個性的で、バラエティに富んだ授業が彷彿とされる展示でした。このような教育を受けると例の三頭建の馬車の馬も御者も大きくなりますよね!美術の先生ありがとうございます。

震災の時、体育館に約800人の方が避難されたそうですが、寒い中、生徒さんたちがそれは親身にお世話をしたそうです。
「あまり指示されずに考えながらやっていました」これも校長先生のお話です。
今回の文化祭に際しても仮設住宅に「いらっしゃってください」と自主的にビラ配りに行ったそうです。
「自分で判断して、自分らしく行動する」ことは前頭葉の中核的な働きですが、中学生くらいだと、得てして「わかってるもん」のレベルでとどまることが多いのではないでしょうか?

やらなくてはいけない。しかも力を合わせて。
この体験が大島中学校の生徒さんたちのこれからの生きる力になりますように。
私は涙を流しながら、でも希望を感じていました。

大島の惨状は私の写真ではとてもお伝えできませんが・・・2011_1030_135700p1000177 2011_1030_094800p1000157

気仙沼湾の火災が飛び火。懸命の消火活動で愛宕神社は守られました。手前の木は全焼。                   2011_1030_101500p1000160_2 2011_1030_103900p1000169_2


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