脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

東日本大震災―高齢者を認知症から守る(2)

2011年03月20日 | 正常から認知症への移り変わり

上のグラフの星マーク「人生の大きな出来ごと。生活の大きな変化」の説明です。
重要なことは、そのことが起きたらだれでも老化が加速するのではないということです。そのことが起きて、その変化に適応できず、閉じこもったり何もしなくなったりしたら、いいかえるとそのことをきっかけにして三頭建の馬車が止まってしまったら老化が加速していくということなのです。その状況変化が御者の意欲をなくし、指令を出すことをやめてしまうときが認知症への第一歩なのです。

仕事一筋の人の定年退職。
息子に代を譲ったおじいさん。
嫁が来て、しゃもじを渡したおばあさん。
孫が手離れた祖父母。などなど
繰り返しますが、「そのことが起きたら」ではありません。
「その後の生活が新しく描けなくて何もしない状態になったら」前頭葉は出番を失って老化を加速していくのです。
 
「高齢者が、病気やケガで安静にしていたら、ボケてしまう」ということは世間の常識です。
「20代の若者が長期安静にしたらボケるでしょうか?」
講演でこの質問をすると皆さんは笑って
「そんなことはない」と言われます。
このことは皆さんが脳の老化曲線を承知しているということではないでしょうか。
入院した高齢者が全部ボケるわけではありません。
ボケる人は、安静にして 何もしない!
ボケない人は、リハビリに励んだり、回復するにつれて人の世話をしたり、手芸などの趣味を楽しんだりしています。

このきっかけの説明をよく理解していただきたいと思います。
「寂しさ」の下の左下の図から反時計回りです。
左下。
脳は「使ってナンボ」という正直者です。
三世代同居をしていても、孫は勉強、塾と忙しく、子どもは仕事に追われている。その結果、起きる時間も別なら食事も別。当然会話もない。一人でテレビで時間を過ごすしかない。
このような生活は、脳から見れば「ひとり暮らし」以外の何物でもありません。
楽しみや刺激の少ない生活は、前頭葉の力を発揮する場がありませんから老化を早めます。
右下。
家庭内に種々のトラブルが発生し、「何もしてやれない」とか「この先どうなることか」とか「世間さまに顔向けできない」などという状況になった時、
「お手上げ」と前頭葉が判断してしまうと、頭の中はそのことで覆われて、将来の展望も楽しみも何もキャッチすることができなくなります。
子どもの離婚騒動、サラ金、リストラ。孫の病気、非行、不登校などの心配事が相当しますが、今回の大惨事こそこの状態の最たるものといえるのではないでしょうか。
最後に右上。
「別れ」を意味しています。
これは親しい人との死別を筆頭に、友人や孫との生き別れもあります。ペットとの別れもありますし、趣味のサークルに参加できなくなるというような別れもあります。
身体の不調も「別れ」と位置付けてもいいかもしれません。
環境の急激な変化そのものも、前の環境を失ったと考えればやはり「別れ」でしょう。

「あの人がいれば、あれもできるし、これもしたい。でもあの人がいないから・・・」
「元気なら、もっと見えれば、もっと聞こえたら、何でもできるけど、思ったようにできないから、あれもできない。これもできない」
「この環境でなければ、できることがあるのに」
そう思ってしまうことは私たちには十分に理解できます。
でも、この先には
「あれもしたくない。これもしたくない」という意欲低下が待っています。

意欲は前頭葉の働きですが、前頭葉がその力を発揮する必要条件とでもいえるもので、意欲なくしては、司令塔としての前頭葉機能(状況の判断、決断、指令)は発揮できません。そうすると三頭建の馬車も止まってしまうのです。

その別れを乗り超えられずに、閉じ込もり、目標も楽しみも何も見つからない生活が続く時、馬車は留まったまま、御者も馬も動くことなく時間だけが流れていく・・・脳は老化をどんどん加速していきます。
最も危ない状況です。
今、テレビの画面で拝見する高齢者の皆さんの胸中を思う時、まさにこの喪失感のただなかにいらっしゃるだろうと思うのです。
最初は、状況の理解そのものもあまりにも受け入れ難く、現実のものとしてとらえられなかった可能性すらあります。
でも、落ち着いてくれば来るほど、そして高齢であればなおさら、事の重大さや失ったものの大きさに打ちひしがれてしまうでしょう。将来に対する展望が描けないことを責める気持ちはありません。多分私だって・・・
でも。とあえて言わせていただきます。
こんなに過酷な運命に翻弄されたのに、その先にまたボケという悲しい状況を迎えさせるわけにはいきません。
どうにか、それぞれの皆さんの馬車が再び動き始めることができるように、心を配っていかなければいけないと思うのです。
どのようにして、馬車を動かすことができるのか?その3としてまとめます。



東日本大震災ー高齢者を認知症から守る(3)

2011年03月20日 | エイジングライフ研究所から

私たちの三頭建の馬車の仕組みは 仕事勉強の左脳、身体を動かす運動脳、そして趣味や遊びの右脳の三種類の仕事に特化された馬たちと、それを上手に操る御者役の前頭葉から成り立っています。
いつの時でも、三頭の馬が働いて馬車が動いている時には前頭葉は全体を見守っています。
それ以前に、動き始める時もまず前頭葉が状況を判断して一鞭をふるうところから始まるのです。
このことはとても大切なことですから、よく覚えておいてください。

「馬車が動き始める時と動いている時には、御者は必ず働いている」
「何かをやろうと思う時と、やり始める時と、やっている時には前頭葉は必ず動いている」と言い換えられます。
脳の老化が加速されるのは、前頭葉が出番をなくして、何もしなくなるところから始まります。まず置かれている状況を判断しなくなる。意欲がなくなる。周りに関心が持てなくなる。
前頭葉がその状態になると、馬車を動かす三頭の馬たちはいくら元気であってもその力を発揮できない状態(小ボケ)が続き、次第に三頭の馬自体も力を落としていきます(中ボケ)。
最終段階が御者も馬も倒れてしまった状態(大ボケ)と考えるとわかりやすいかと思います。
Sikumi_3 
エイジングライフ研究所は、脳の老化が早まった場合には「脳のリハビリ」ということで、脳の元気を取り戻す指導をします。その柱は二つあります。
 ①一日一時間の散歩を。
 ②右脳を使って楽しむ時間を。
散歩
「ボケ予防のために歩いています」という方は多いですが、理由として
「歩いたら、歩く刺激が脳に行くでしょ?」と思っていることがほとんどのようです。もちろん外に出て歩けば、自然に触れ、景色や花を楽しみ、風や日差しを感じたりして五感を通じてその刺激が脳に入ることは間違いありません。
でもこれは本末転倒の考えです。
「歩く」時には、脳の運動領域が身体に対して命令を出し続けなくては歩けないのです。脳卒中で脳の運動領域に損傷を受けた人は歩けません。
一時間歩いていると脳の運動領域は一時間働いています。もちろん前頭葉もです!自覚がなくても歩くことは、間違いなく広範囲の運動領域が働くことですから、皆さんが考えるよりも脳を使うという効果がありますが。

「歩く」時には、運動領域の多くの部分が活性化されます。でも足腰に痛みのある方は、椅子に座って上半身だけの運動でもいいのです。
効果的なのは「体を動かすことで、脳を動かすことになる。そうすればボケない」という自覚です。自覚を持てば持つほど御者はその行程を大切に思って、意識的に状況の変化をキャッチしようとするとは思いませんか?
誰かに言われた結果であっても、体を動かしている時には脳が働いているのです。でも、自分で、というのは御者である前頭葉が目的をはっきり持って、「こんな時だからこそ、体のためだけではなくて、脳を動かしてボケないようにしよう」と考えると、自分の体調や周りの様子にも気を配りながら運動を始め、そして続けることになりますね。その時前頭葉が目覚めています。
そこまで考えられないのが現状でしょう。だれかが音頭をとって、避難所の高齢の方たちの運動を促す時間が実現できたらいいのです。そうしておくと、習慣化することにもつながりますし、自宅に帰られても、あるいは仮設住宅に移られても、ボケ予防としての運動の大切さを訴えやすくなります。
右脳
 
その1で説明したように、右脳でよく遊び、左脳でよく学ぶのです。
仕事や勉強は「やらねばならない」もので、趣味や遊びは「楽しくてもっとやりたい」ものですね。
形、色、音楽など右脳を使う場面からは、もっとやりたいというレベルの意欲がわいてきます。
元気をなくしている脳にとっては、右脳刺激の方が適切な理由です。
避難所のテレビ報道で、中学生の合唱に涙する方々を見ました。こういう時だからこそ、より強く胸に訴えてくるのでしょう・・・
そういうことはできても、左表にあげたような一般的な右脳刺激は皆さんのお気持ちを思うととても無理だとわかっています。
 
でも、どんな厳しい状況の時だって右脳は使えます。それは感情を行き来させるという状況を作ることです。
人とのコミュニケーションを図る時、私たちはまず「言葉を使って」と思います。
でも言葉だけでは人とのコミュニケーションは成立しません。
自販機の「ありがとうございました」はコミュニケーションでしょうか?
言葉の内容以上に、相手の表情、身振り、声の調子、高低、強弱・・・
そのような情報をもとに私たちはより深く相手の心情を知ることができますし、自分の気持ちも伝えることができます。
言葉以外のすべての情報は、右脳と前頭葉の連係プレイの下でやり取りされます。この時間は、脳の機能としては高次元で、とても脳はイキイキと活動しています。
言葉を発することなく、手を握り合っても、抱き合ってもわかりあえるのが私たちです。テレビ報道で、涙で言葉にならない方を見ながら私たちも涙を流しました。ともすればあふれそうになる涙をこらえながら言葉少なに語る人にも、涙しました。言葉の奥に隠されたその方の心情を私たちは感じることができます。
悲しい時間ですが、私たちの馬車はそんな時しっかりと進んでいるのですよ。
一人でポツンと過ごすことのできない避難所だからこそ、悲しみを訴え、気持ちを労りあい、共に涙を流していいと思います。
そして次の段階が来た時には、皆で声を掛け合い、必ず前を見て自分の馬車を自分らしく動かそうと思っていただきたいと思います。
今後、高齢者が住むことになる仮設住宅や施設も用意されていくことでしょうが、人は体があって生きていればいいというものではありません。その人らしく生き抜いていっていただくためには、その人の覚悟が要ります。

本当に前を向くことが難しい状況だと承知の上で、ボケないためになお前を見て生きていっていただきたいと切に願います。
亡くなられた方々のご冥福を祈りながら、残された方々に笑顔が浮かぶ日が来ることを信じて、今回のブログは書かせていただきました。

東日本大震災₋高齢者を認知症から守る(1)

2011年03月20日 | エイジングライフ研究所から
私は、3月10日から、岩手県に行っていました。
11日の地震発生時には、岩手県藤沢町(一関市と宮城県気仙沼市の中間)で講演をしていました。
震度7と後から聞きましたが、地盤のせいか建物のせいかしゃがみこむこともなく、実際、壁にかかっている表彰額も一枚も落ちることはありませんでした。
こんな大災害とも思わず、ただ交通遮断になりましたから、そのまま一関市の小野寺保健師さんのお宅で生活をさせていただきました。ラジオの情報は聞いていたのですが、16日夜になって初めてテレビを見て、その惨状に声もなく涙が流れるばかりでした。(その後、奥州市の知人の暖かいお心づかいで、18日に花巻空港から帰宅することができました)
この避難生活に関しても報告したいことや感謝したいことは山のようにありますが、今日は、エイジングライフ研究所の原点に立ち返って認知症の発症やその予防について話したいと思います。
認知症の発症という観点からみると、今避難所にいる高齢者の方だけでなく、ご自宅にいらっしゃる方でも、大変危ない状況だと考えざるをえません。
エイジングライフ研究所は、脳機能という物差しを持って認知症を見ていきます。
通常は、症状(どんなことを言うか。どんなことをするか)から認知症を考えるのです。セルフケアに支障を起こす、徘徊、夜中に騒ぐ、粗暴行為、異食など余程困ったことをしでかさないと認知症と思われていません。
普通の高齢者が、昨日までまったく正常で、ある日突然このような状態になるでしょうか?認知症は徐々に進行するものなのです。
Sikumi
まずは脳の機能を説明しましょう。 
右脳、左脳については皆さんもよくわかっていらっしゃるでしょう。
簡単に言うと左脳は「言えばわかる」脳です。
右脳は「言葉ではうまく言えないけど、でもわかっている」時活動しています。
昔の人は「よく遊び、よく学べ」と言いましたが、遊ぶ時に効率よく働くのが右脳。学ぶ時に効率がいいのが左脳といってもいいでしょう。
わかりにくいのが前頭葉のはたらきです。
脳全体の司令塔の役割を担っています。前頭葉がその状況判断で右脳、左脳を上手にその人らしく使いながら生きていくのです。
「よく遊び、よく学べ」が右脳、左脳の説明なら、「十人十色」が前頭葉の説明に相当します。
Photo_3
生きていくということは、自分らしく三頭建馬車を動かし続けるということです。
その時、それぞれの馬の元気さも大切ですが、その馬を上手に使いこなすことができる御者(前頭葉)の働きがなくては、馬車は上手に走ることができません。
前頭葉機能は広範囲にわたりますが、その中の注意集中分配力は、18歳でピークを迎え20歳代はそれを維持し、その後は加齢とともに直線的に低下していきます。年齢とともに能力低下を起こしても、それは必然であって認知症ではありません。
老化が加速していくときに、認知症への道に入ったということなのです。
Photo 

老化が加速されていくときには、まず前頭葉の老化が加速され、その後脳の後半領域の機能低下も順々に起きてきます。
そのレベルによって、認知症は三段階にわけることができます。回復が極めて困難な大ボケに至るまでには、最初のきっかけから6年以上もかかります。

  小ボケ:家庭生活は問題ないが社会生活がこなせない。
       世話役ができない。趣味をやめてしまう。無表情。
       「指示待ち人」
  中ボケ:家庭生活に支障が出てくる。
       話していることを聞けば、変わりないが
       やることは幼稚園児のようになる。
       「言い訳のうまい幼稚園児}
  大ボケ:セルフケアにも問題が出てくる。
       通常はここからをボケと思っている。
       「脳の寝たきり」
       「」
内は家族による、生活状態の一言表現。
以下、きっかけの説明はその2へ

上のグラフの星マーク「人生の大きな出来ごと。生活の大きな変化」の説明です。
重要なことは、そのことが起きたらだれでも老化が加速するのではないということです。そのことが起きて、その変化に適応できず、閉じこもったり何もしなくなったりしたら、いいかえるとそのことをきっかけにして三頭建の馬車が止まってしまったら老化が加速していくということなのです。その状況変化が御者の意欲をなくし、指令を出すことをやめてしまうときが認知症への第一歩なのです。

仕事一筋の人の定年退職。
息子に代を譲ったおじいさん。
嫁が来て、しゃもじを渡したおばあさん。
孫が手離れた祖父母。などなど
繰り返しますが、「そのことが起きたら」ではありません。
「その後の生活が新しく描けなくて何もしない状態になったら」前頭葉は出番を失って老化を加速していくのです。
 
「高齢者が、病気やケガで安静にしていたら、ボケてしまう」ということは世間の常識です。
「20代の若者が長期安静にしたらボケるでしょうか?」
講演でこの質問をすると皆さんは笑って
「そんなことはない」と言われます。
このことは皆さんが脳の老化曲線を承知しているということではないでしょうか。
入院した高齢者が全部ボケるわけではありません。
ボケる人は、安静にして 何もしない!
ボケない人は、リハビリに励んだり、回復するにつれて人の世話をしたり、手芸などの趣味を楽しんだりしています。

このきっかけの説明をよく理解していただきたいと思います。
「寂しさ」の下の左下の図から反時計回りです。
左下。
脳は「使ってナンボ」という正直者です。
三世代同居をしていても、孫は勉強、塾と忙しく、子どもは仕事に追われている。その結果、起きる時間も別なら食事も別。当然会話もない。一人でテレビで時間を過ごすしかない。
このような生活は、脳から見れば「ひとり暮らし」以外の何物でもありません。
楽しみや刺激の少ない生活は、前頭葉の力を発揮する場がありませんから老化を早めます。
右下。
家庭内に種々のトラブルが発生し、「何もしてやれない」とか「この先どうなることか」とか「世間さまに顔向けできない」などという状況になった時、
「お手上げ」と前頭葉が判断してしまうと、頭の中はそのことで覆われて、将来の展望も楽しみも何もキャッチすることができなくなります。
子どもの離婚騒動、サラ金、リストラ。孫の病気、非行、不登校などの心配事が相当しますが、今回の大惨事こそこの状態の最たるものといえるのではないでしょうか。
最後に右上。
「別れ」を意味しています。
これは親しい人との死別を筆頭に、友人や孫との生き別れもあります。ペットとの別れもありますし、趣味のサークルに参加できなくなるというような別れもあります。
身体の不調も「別れ」と位置付けてもいいかもしれません。
環境の急激な変化そのものも、前の環境を失ったと考えればやはり「別れ」でしょう。

「あの人がいれば、あれもできるし、これもしたい。でもあの人がいないから・・・」
「元気なら、もっと見えれば、もっと聞こえたら、何でもできるけど、思ったようにできないから、あれもできない。これもできない」
「この環境でなければ、できることがあるのに」
そう思ってしまうことは私たちには十分に理解できます。
でも、この先には
「あれもしたくない。これもしたくない」という意欲低下が待っています。

意欲は前頭葉の働きですが、前頭葉がその力を発揮する必要条件とでもいえるもので、意欲なくしては、司令塔としての前頭葉機能(状況の判断、決断、指令)は発揮できません。そうすると三頭建の馬車も止まってしまうのです。

その別れを乗り超えられずに、閉じ込もり、目標も楽しみも何も見つからない生活が続く時、馬車は留まったまま、御者も馬も動くことなく時間だけが流れていく・・・脳は老化をどんどん加速していきます。
最も危ない状況です。
今、テレビの画面で拝見する高齢者の皆さんの胸中を思う時、まさにこの喪失感のただなかにいらっしゃるだろうと思うのです。
最初は、状況の理解そのものもあまりにも受け入れ難く、現実のものとしてとらえられなかった可能性すらあります。
でも、落ち着いてくれば来るほど、そして高齢であればなおさら、事の重大さや失ったものの大きさに打ちひしがれてしまうでしょう。将来に対する展望が描けないことを責める気持ちはありません。多分私だって・・・
でも。とあえて言わせていただきます。
こんなに過酷な運命に翻弄されたのに、その先にまたボケという悲しい状況を迎えさせるわけにはいきません。
どうにか、それぞれの皆さんの馬車が再び動き始めることができるように、心を配っていかなければいけないと思うのです。
どのようにして、馬車を動かすことができるのか?その3としてまとめます。


小布施町脳のリフレシュ教室交流会その2

2011年03月08日 | 各地の認知症予防活動

小布施「脳のリフレッシュ教室交流会」の続報です。

都住地区
自主活動がちょっと停滞していたそうですね。再開おめでとうございます。
交流会に参加されると「がんばろう!」という気持ちになるでしょ?続けて頑張ってくださいね。
コミュニティの職員の方の熱意が伝わります。合唱曲「信濃の国」に会場の皆さんが唱和しましたね。選曲の勝利です。赤いバンダナも映えていました。2011_0225_142100p1000033 2011_0225_142500p1000031

東部地区
手話の合唱曲「見上げてごらん夜の星を」と体操「いい湯だな」
東部地区はボランティアさんたちが中心になっている教室ですね。やってあげすぎないように、教室生の方々ができることは何でもやってもらってください。楽しそうでした!これはとても大切なことです。「手話をしながら歌う」のは難しいのによく揃っていて感心しました。赤襷に鈴が付いているのもよかったです。
手がよく伸びています。                 大浴場で気持ちよく入浴中?2011_0225_143100p1000029           2011_0225_143000p1000030
  

中町地区
今年のニューフェイス。老蓮青年部が主体になるという形での教室スタートは初めてのはずです。何をしたらいいのか?とちょとばかり不安だったかもしれませんが、遊び心いっぱいでしたよ。オケの前奏!何々と思ったら、素敵な男声のアカペラ。皆さんの衣装もその自由さがいい!!来年が楽しみです。2011_0225_143900p1000027 2011_0225_144400p1000026        

東町・上町地区
若かりし頃の保育園。何てかわいい、何てやさしい発表テーマでしょう。
東町・上町は立派な演目が多かったように思います。それはそれでとてもいいのです。演じている方も、見ている方もいい気分になりますからね。一方で今年のようにユーモア一杯、やってる人達から笑みがこぼれるようなのもすてき!手作り楽器、パート演奏も。練習をたくさんされたでしょう 。   
ウサギのダンス2011_0225_144900p1000023                     山田の案山子2011_0225_145100p1000021                      

山王島地区
老人会の長寿会が中心になって継続して、もう9年・・・
出席率がいいこと、皆さんが教室を楽しみにして集まっていらっしゃることも聞きました。「荒城の月」「黒田節」を男性あいさつ、女性あいさつで始めましたね。なんて民主的そして三味線伴奏は珍しいですね。ハモニカ伴奏の「ふるさと」は山王島教室のテーマソング。何時も胸が熱くなります。皆さんお元気で!2011_0225_145800p10000172011_0225_145700p1000018                                            
 

今回はいつくかの心に残るつぶやきを聞きました。
「自分の健康は自分で守る」
「ズクを出しましょう」(がんばるとか根性を出すとかの意味)
「自分の脳は自分で使う。そして笑いと感謝でね」
「ボケずに生きる術を学んだ」
「教室はただ楽しい」
「小さなほめ言葉は人を救う」

小布施の皆さん、どうぞお元気で!心から脳と体のご健康を祈ります。


小布施町脳のリフレシュ教室交流会その1

2011年03月07日 | 各地の認知症予防活動

今年も楽しい脳のリフレッシュ教室交流会でした。会場入り口の看板も春めいていて素敵でした。2011_0225_122900p1000072

前日にはスタッフ二名だけで会場の準備をしていて、通りがかりの人から「業者にやらせないなんて!経費削減だね」と声がかかっていました。
スタッフの方の気持ちは聞きませんでしたが、多分
「業者任せにしたくない。がんばっている皆さんのためにできることはしてあげたい」といったところではなかったかと思うのですが、私は、その一言を
「交流会の費用もですが、それより何より参加されている皆さんの脳が若々しくなったことを評価してもらいたい(前回ブログ参照してください)。どれほどの介護費用の削減につながったのか、考えても見てください!」という思いで聞いていました。

さて、交流会ですが、 皆さんが、「去年よりもよりいいものを!」と一工夫も二工夫もなさっているのがよくわかりました。
それだけ頑張っていらっしゃるにもかかわらず、同時に、肩の力が抜けているというか、結構楽しんでいらっしゃる方が多くなったようにも感じました。
恒例北部地区の干支のレザーモザイク。見事に各人各様2011_0225_123000p10000692011_0225_123000p1000070。もう7作品できたのですね

今年は東部地区の押し絵の作品も登場2011_0225_125100p1000066

一回目の交流会の時には、在宅介護支援センターのスタッフの皆さんがうれし涙を流しながら、ステージわきに控えていたのが思い出されます。実はあのとき、私も胸いっぱいになったのです。そうやって楽しもうとしていることそのものが感動的でした。
8年たった山王島地区や7年の北部地区の皆さんの脳イキイキ度チェックの結果が、素晴らしいこと(前回ブログ)を承知していましたから、この「脳のリフレッシュ教室」や「交流会」の体験を通じて、小布施の皆さんの生活ぶりが自然に変化してきてくれていることを期待しながら交流会に臨んだのです。

「がんばって楽しむ」から「自然に楽しむ」
そのような生活を、高齢者の方々が身につけてくださることが、はっきりとした認知症予防になることを実感していただきたいといつも願っています。

大島地区
司会の林所長のコメント「前列と後列は別の踊りだったかな?でも、私の世界に浸っているところが素敵でした」
この写真からわかることは少なくとも前列は炭坑節(笑)保健福祉委員の方も楽しそうでしたね!2011_0225_133400p1000064_22011_0225_133500p1000062_2それでいいんです。      

 

飯田地区
干支にちなんだウサギの歌の合唱でしたが、赤い法被で登場、♪因幡の白ウサギ♪のところで皆さん白ウサギに早変わり。こういう工夫をするのが前頭葉。
自治会役員さんも参加してますね。自然に皆さんに目と気を配る人もいて、こういうように、できることは遠慮しないでやっていくことが大切です。
2011_0225_134200p10000612011_0225_134300p1000059_2                                    


北部地区
寸劇「ある日のリフレッシュ教室」
内容は交流会の出し物の検討会。懐かしい数え唄からお手玉実演、さらには一人づつのセリフまで。そのセリフが棒読みのところがなぜだか魅力的でした。「お手玉は保健センターから借りずに手作りにしよう!整いましたのでこれでいくことにしましょう」で幕。パチパチ(と私からの拍手)2011_0225_134700p1000058 2011_0225_134800p1000057

林・中扇地区
平成19年の鮮烈のデビュー。今年もまた楽しい衣装と一ひねりしたことわざ発表そして東京ブギウギ、アップテンポなダンスと盛り上げてくれました。最後には思いがけない飴玉プレゼントまで。飴が一つずつ折り紙に入っているところが、さすが脳のリフレッシュ教室生。右脳使ってます。
しかしH間嬢、役者やのぅ               会場大喜び2011_0225_140900p1000045 2011_0225_141500p1000040

若々しいダンス!               バスケットの中には思いがけないプレゼントが2011_0225_141600p10000382011_0225_142000p1000034


長期間追跡した脳機能テスト(小布施町と豊科町)

2011年03月07日 | 二段階方式って?

毎年恒例の小布施町「脳リフレッシュ教室交流会」へ行ってきました。
直前に小布施町のI保健師さんから活動のまとめが届きましたから、目を通してみました。
素晴らしい結果ですから、お知らせします。
小布施町では「ボケのない町」を目指して、「脳のリフレッシュ教室」という名称で「ボケ予防教室」を平成 14年から開始しました。各行政区に一つづつという目標を立てて、最初に始めた地区が山王島 (左グラフ)翌年開始したのが北部(右グラフ)でした。その古参地区の結果です。
教室開始時に脳いきいき度チェックを実施してありますので、その結果と、直近の脳いきいき度チェックの結果を比較したものです。

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感動的ではないですか!
7年も8年もたっているのに、脳機能は改善している人が8割もいる!
維持するだけでも十分喜ばしいことといえるのに。

実際に小布施町に伺って、顔なじみの皆さんにお会いするたびに
「表情もいいし、お変わりなくお元気だなあ」とは感じていました。
でも、実際にこのようなデータを見せていただけると、単なる「感想」がゆるぎない「確信」に替わります。このことが、「認知症予防教室には脳機能テストが必須」ということにつながるのです。

高齢者が、何かやる時、何かというのは趣味でもボランティアでも散歩でも家事でも何でもいいのですが、「究極のところ、ボケ予防!」と思っていることがほとんどです。そう思いながら「こんなことでホントにボケは予防できるのだろうか?」という疑問からも逃れられない・・・
その時にこのようなデータで「あなたの脳の働きは、こういう状態です。8年前より若々しくなっています。ついてはどのような生活をされましたか?脳をいきいきと使うその生活が、この若さを生み出しているのですよ。これからもその生活を続けていくように頑張りましょうね」と言われたら、自信を持って毎日が送れると思いませんか。

小布施町での去年一年間の全教室の平均です。Photo

改善群が減って、維持群が増えています。
このことはどのように解釈すればいいのでしょうか?
一番簡単な解釈は
「教室に参加したことで、生き方や生活ぶりが大きく変化して、その結果脳の使い方が大きく代わり前頭葉が活発に動くようになった。その人たちは当然改善群となる。
1年間だけでは、生活のやり方が大きく変わり得ない人がいる。その人たちが維持群となる。
教室には参加しても、よりシビアな生活上の変化や心配事が勃発して、その条件に負けてしまって、脳を生き生きと使わない生活が続けば脳機能は低下してしまい、低下群になる」さてこれでいいのでしょうか?

続けて、長野県豊科町のデータをお見せしましょう。たまたまこのデータも相前後して手元に届きました。
豊科町は「脳の健康教室(ボケ予防教室)」を平成9年から開始しました。日本でも、最初期に始まった教室です。各行政区に一つづつを合言葉に保健センターががんばりました。半年指導しては自主活動で継続するというシステムです。
平成17年に合併、安曇野市となりました。その合併の直前に活動のまとめということで、教室開始時と終了時に脳機能テストが実施できた人313人のデータです。(3年から8年間の経過観察群。グラフのラベルは間違い)Photo_2                                         

対象人数が、小布施町に比べて約10倍です。
改善群の割合が減って、やや維持群が多いですが、低下群は小布施町に比べて半分しかいません。
3年間しか教室を実施していないところも混じっていますから、このデータは小布施町から導き出された、
「1年間より長期間教室を行ったところの方が脳機能がよくなる」という結論と見事に一致しています。
さらに喜ばしいことに、次のようなまとめも見せてくれています。Photo_5 Photo_6                         

 

 

 

 

 

 
見にくいグラフですが、横軸が教室の継続期間です。
長期間になるほど、改善群の割合が多くなり(左グラフの青い部分、グレイの部分が維持、黄色の部分が低下)、長期間になるほど脳機能そのものの成績が上昇する(右グラフ、白が開始時で赤が終了時の成績)

この情報は高齢社会日本にとって素晴らしい情報でしょう!
認知症の問題は生き方の問題です。
高齢者がイキイキと楽しく生きる道に進むように、保健師さんたちは自信を持って生活指導をしてください。                                                


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