脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症の専門医の方々、失語症に気を付けて下さい。

2018年03月22日 | 左脳の働き・失語症

保健師さんからの質問です。
「時の見当識もちょっと採点しにくいし、なんだか本人や家族の訴えとドクターの診断に違和感があります」
エイジングライフ研究所の二段階方式では、脳機能と生活実態と直近の生活歴に整合性がない場合(それぞれが意味することが一致しない場合)には、生活指導の対象としている「脳の老化が加速された、ごく普通のアルツハイマー型認知症」と考えずに、専門医受診ということが鉄則です。

もちろん、脳機能は正しく測定できている、生活実態は正しく把握できているということが前提ですよ。
脳機能に比べて、生活実態がよすぎる場合はまず失語症を疑います。大雑把な説明ですが、外国で生活している状態を想像してみてください。言葉に関しての意思疎通は難しいですが、生活そのものはほとんど問題なくこなせると思いませんか?
脳機能の検査は主に言葉を使って行いますから、言葉能力に問題があれば、結果は悪くでることになります。でも生活には問題がない。

ついでに説明しておくと、脳機能がいいにもかかわらず、生活上に様々な問題が勃発するときには精神的な問題を考慮することになります。
例えば、脳機能が少ししか落ちていないのに、妄想のような思い込みが強くて周囲を振り回すような場合です。

さて相談事例です。
脳機能検査から問題が発生しています。検査実施日平成30年2月21日です。
「今日の日付は?」という質問に他する答えが「平成28年2月20日」。普通に脳機能の老化が加速されている場合には、2月と答えられる時には、平成何年かは正答できるものなのですが…
「季節は?」には「春」
この場所はむしろ寒いエリアですから、2月中は「冬」でしょう。
このような時には「わからない」のではなく「言えない」可能性を思いつかないといけませんね。
他の下位項目の低下順には特に問題はない。と言いたいところですが
「文を書く」の課題に対して「おすわりしてテスト中」文になっていないこと以前に、60歳の男性が書く文章でしょうか?
保健師さんたちは、よりよく採点してしまう傾向がありますが、脳機能検査の目的はむしろ「できないところを明確にする」ところにあることを忘れてはいけません。
この方の検査結果です。

MMSの得点や時の見当識の得点からは、あたかも中ボケレベルの低下のようですが、上図を見て、あまりにも整った図形に注目してほしいと思います。特に立方体透視図のみごとなことに。右脳の構成能力に問題はないことを伝えてくれています。
「時の見当識」「文を書く」のできなさと実に対比的でしょう。
つまりこの方には、「適切な言葉が出てこない」という言葉の問題があると結論付けられます。

生活実態はどうだったでしょうか。
妻の申告だと、30項目問診票で小ボケレベルに4個丸がついています。これは生活実態は前頭葉機能がやや低下しているということを意味し、MMSに反映される能力にはまだ低下が見られないと、妻は思っているのです。
つまり、脳機能に対し生活実態がよすぎるケース。
もう少し具体的に聞き取ってありました。
・毎日散歩している
・毎日ゴミ出しをしている
・家のこまごましたことは、むしろ好きなことなので続けている
・料理好きでおいしい料理が作れる
・庭・植木の手入れ、池の掃除などは率先してやる
60歳の男性ですよ!どう見ても生活にトラブルが出始める中ボケではないですね。

MMSの下位項目低下順に、老化が加速された時とずれがある。そして脳機能検査≠生活実態(生活実態の方が良好)。この条件から、言葉の障害があるという結論が示唆されるのです。
生活歴を聞く以前にこのようなケースは専門医受診です。
実はこのケースは、既に受診していました。
「妻が気にした本人の物忘れ」を主訴に平成27年受診したかかりつけ医は「軽度認知症」と診断し投薬が始まったそうです。この時57歳です!
次に、平成29年12月の受診した専門医はMRI、CT検査して「脳萎縮がある」という指摘と「車の運転はやめた方がいい」と言われたとのことでした。
どこにも失語症の診断がない!
保健師さんたちは、お医者さんではありませんから診断や病名を言うことはできません・・・
もう一度、専門のドクターに
「言葉の問題あり=流ちょうに話せているがキーワードが出ない」
「脳機能検査の模写を見ると、左脳右脳の機能差が示唆される」
「生活実態と脳機能が一致しない」というように左脳の問題(失語症?)とアピールすることだけしかできません。ちょっと悔しい。

 
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「上手」と「下手」を超えたもの

2018年01月17日 | 左脳の働き・失語症


何の能力でもいいのですが、上手な人と下手な人がいますよね。
運動能力がわかりやすかと思います。普通に走っても早い子と遅い子がいる。もちろんうまく指導してやると、それぞれに結果がよくなることは確かですが、どう見ても早めの子と遅めの子がいる事実は残るでしょう。どの子でもすばらしい指導者や環境を整えたら、例えばオリンピック出場ができるかというと…それはあくまでも遺伝的素因が関与しているだろうとみんな思っています。
音楽の世界でもしかり。創造的な世界でもしかり。

上の図は、右によるほどその分野の能力にたけているということを表しています。
左によるほど、下手or苦手(というか、できない)ということです。
そして、だいたいの人たちはちょっと上手なレベルから、ちょっと下手なレベルまでの幅の中にいます。そこを外れて「それにしてもすばらしい!」とか「並じゃないよね」といわれる人達がちょっといて、そのさらに上をいく、天才といわれるほんの一握りの人たちがいる。
西伊豆新名所 馬ロック(1月10日)

今は、右の方向で話しましたが、当然左の方向でも同じです。こちらはほんの一握りの人たちのことを「天才」とは言いませんけどね。
(実はこの図は、小ボケ(前頭葉機能がうまく働かなくなった状態)になった時に、性格が先鋭化したり問題行動が目立つ人たちの解説のために使っているものです)
伊豆市東府や(1月10日)

さて、エイジングライフ研究所の二段階方式では脳機能を決められた手技で測定して数値化します。テストの方法も採点基準もキチンと決められているのです。
テスト時間は20分以内を目標にするという短さですから、ほんの少しだけ採点基準が甘いところも設けています。
例えば「文を書く」という課題があります。失語症の本格的なテストだと厳密に採点するところを、偏や旁の誤りは-1/2点。一字以内の誤りはノーカウント。送り仮名や濁点などの誤りもノーカウント。かな・漢字交じりでも問題はないなどとしてあります。
ほとんどペンを持つことがない高齢者が検査対象にいらっしゃることも考慮してあります。つまり最初にあげた図の左に寄っている人たちもいることを前提にしてあるのです。

「べんきょうしてます」→「ベンきョます」2字の間違いです。
どんなに贔屓目に見る判定基準であっても、これは不合格ですよ。「下手」なのではなく「書けない」ことをわかってあげるべきです。
「平成」→「干セう」になってますね。
この人は「書くのが下手」なのではなく「書けない」のです。そこを見つけてあげるために検査をしているのです。

テストをする側に、「この人はできない」ということをなるべく認めたくないという気持ちがあります。「できてほしい」とか「できて当たり前」と思うものだから「なんだかちょっと変だけど、まあ、とにかく一応書いてあるし。字を書かない生活かもしれないし」とできない事実から目をそらしてしまうのでしょうね。
「下手」ということを通り超えている、はずれのはずれということに気づいてください。

半年後。
4月のテストの時に「」をきちんと書けていることにも注意してください。今回は最初と次の2画は縦つながりではなく横つながりです。すると「」と書くつもりより「」と書きたかったのかもしれませんね。3画目は下からですから「」の可能性が高くなりますけども。
どっちかはわかりません。書かれた直後に読み上げてもらってもよかったかもしれません。
「町のテスト[ツorシ]トる」これが「町のテストスシトる」ならば「ス」を「ヲ」の一字の間違いととらえると(失語症検査ではこれははっきりまちがいにカウントしますが)この文は書けていることになります。
「町のテススツトる」これだと2字の間違いがあって文にもなっていませんから、文は書けないことになります。
それ以上に、日付を見ると「書く」ことそのものにとても困難があることがわかります。書きたかった日付は「平成29年12月1日」だったのです。とにかく書けないことに困り果てている状態がこの結果からわからないといけません。
点数化する時には、客観的に正確に評価しなくてはいけませんが、「目の前に示される情報のすべてはその人の脳が働いた結果である」ということを、謙虚に時には感動しながら受け取りましょう。

ケアマネさんからの情報として
「うまく書けないので、書く内容はご本人が考えて、実際に書くのは奥さん。という状態がずーと前から続いていた」そうです。
確かに書くことそのものが苦手な人はいます。でも書かなくてはいけない状態になったら、下手でも苦手でも書くのが社会人としての生き方です。
この方は社会人として、人並みに生活してこられなかったのでしょうか?そんなはずはありません。
書くことがとても苦手で書けないのだとしたら、それだけで普通の社会生活は無理だということになるのですよ。
病気かケガか。この方の人生のどこかで、「書く」という脳機能にダメージが起きたに違いないのです。とこの検査結果は訴えています。

12/7に「0点と1点の間」というブログをあげました。
二段階方式を使いこなすには、やはり経験も積んで、その人を理解できるツールだと自信を持たなくてはね。
がんばってください!

 

 

 

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続 慢性硬膜下血腫で初笑いー右足が上がらない

2015年01月11日 | 左脳の働き・失語症

前記事「慢性硬膜下血腫で初笑い」の付録です。
「朝起きたら右足が上がらなかった。なんだか変だった」とT葉さんが言ったことを報告しましたね。

私は続けて質問しました。
「言葉はしゃべれるのに、なんだかわかりにくいということはなかったかしら?
聞こえているけれど、何を言いたいのかわかりにくい。
英語は聞こえていても、意味は分からないでしょ?あんな感じというか・・・」

間髪入れずに
「ああ、そういえば。
ボクはとにかく面倒。とにかくやる気がでない。とばかり思っていたけど、言われてみるとそうだったかも。『妻の言葉がわからない』なんて思ってもいないので、『面倒なので聞いてない』ことにしたのかもしれないな~」

「もちろん今は大丈夫でしょ?」
「ああ。まったく元通り!」
「元に戻ったのは、手術台の上で、でしょ」のやり取りがありました。

見てきたようなことを言っていますね。
かといって、私に透視能力があるわけではありません!

脳機能というのはおもしろくて、症状によく耳を傾けると、脳のどの場所に問題があるか見えてきます。
CTやMRIが普及する前の脳外科では(見ることができないので)、どこに病変があるかは、とにかく患者さんの訴えることや家族による経過報告をよく聞いたそうです。
今は詳細な画像診断ができるので、かえって症状を真剣に聞く姿勢が減ってきていると聞いたことがあります。

(ハワイの州鳥 ネネ)


「左脳と右半身が関連している」ということと「左脳と言葉が関連している」はみなさんがよく知っています。(右欄カテゴリーの中の「左脳の働き 失語症」を見てください)
上半身を動かす場所やそこを養う血管と、下半身を動かす場所やそこを養う血管は違います。
「言葉」とひとくくりに言いますが「書いたり、話したりする」のは脳から外へ向かう動きですから「運動性」といいますし、「聞いたり、読んだりする」のは外から脳へ入ってくる情報ですから「感覚性」といいます。

非常にシンプルに言ってしまうと、右上半身に障害が起きたときには同時に「話せない」というように脳から出ていく情報処理にも障害があることが多いのです。
右下半身に障害が起きたときには、「聞き取りにくい」というような脳に入ってくる情報処理の障害が伴うことが多いのです。



脳が、それぞれの場所で違う働きを持っているということは、興味深いことですね。
脳卒中を起こした人に対するときには、こういう簡単なことでも、一応知っておいた方が対応が楽ですよ。

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感覚性失語症の体験ーアナと雪の女王から

2014年06月09日 | 左脳の働き・失語症
 Let It Go(アナと雪の女王から)  

「ことばは左脳」。これは皆さんも原則として知っていることでしょう。
それでは「ことば」はどういう働きをするか、ちょっと考えてみてください。
もちろん、「ことば」には「考える」という大切な働きもありますが、今日はちょっと置いておくことにします。普通に外に現れる働きです。
    口を使って「話す」 
    手を使って「書く」 
    耳を使って「聞く」 
    目を使って「読む」

P1000007 

もう一度、「ことば」の働きを眺めてみてください。
これらの働きがスムーズにいかなくなるのが失語症です。

ここで大切なことを確認しておきましょう。口や手や耳や目の機能に問題が起きて「ことば」が使えなくなることを失語症というのではありません。そしてもうひとつ、実際の失語症はもっと渾然としているものですが、今回は簡単にわかりやすくして考えます。

口を怪我してうまく動かせないから話せない。のではなく以前と同じように口は動くのだけど、ことばを話そうとすると話せない。
(右脳の導きで、歌は歌えるという人は多くいます)

手のけがや筋肉や筋に故障が起きてうまく動かせないから書けない。のではないのです。
(話がややこしくなりますので、飛ばしてくださってもかまいません。
失語症の多くは左脳の障害によっておこります。左脳が障害されると、右手にマヒが残ることがあります。そうすると、運動が障害されて当然書きにくくなりますが、ここでいいたいのは、たまたま怪我をして書けなくなった状態を失語症というのではないということです。)

耳が聞こえなくなったから聞こえない。目が見えなくなったから読めない。ではないのです。

聴力に何の障害もないのに、つまり聞こえているのに「何と言われているかわからない」
視力に何の障害もない、つまり見えているのに「何が書かれているかわからない」

P1000006

口や手や目や耳を使うということは、当然のことながらそこを動かす役割を担っている「脳」も使うということです。
そして、その働きをもとにして「ことば」の理解に進むのです。

口や手や目や耳を統括している脳の領域だけが壊されると、口や手や目や耳の働きは障害を起こしますが、「ことば」には問題がないのです。
領域により「話しにくい、書きにくい、見にくい、書きにくい」から「話せない、書けない、見えない、聞こえない」まで障害はいろいろ起きてきますが、障害されていることと別の方法をとることで、ことばの大切な役割であるコニュミケーションには問題が起きてないことがわかります。「話せないなら書いてもらう」「聞こえなら書いてあげる(その逆)」などです。

それとは逆に「ことば」を管理している領域だけが障害されると、「口や手」は動かせるのに、「話せない、そして書けない」いう状況が生まれてきます。
「耳も目」もきちんと機能しているのに、「聞き取れない、そして読み取れない」状況に陥ってしまうのです。

「話す」と「書く」という働きは、脳から指令が出て動きが外へ向かって行くということですね。

主にこの方向が障害された失語症を「運動性失語症」と言います。
滑らかに話せませんから、本人も苦しそうですし、周りの人が見すごすこともありません。
こちらの言っていること(「聞く」)は障害されていませんから、「はい(うなずく)・いいえ(首を横に振る)」でこたえられる質問にすると意思疎通を図ることができます。
「おなかがすいていますか?」「うなずく」
→空腹了解!
「ご飯とパンどちらにしますか?ご飯?」「首を振る」
→パンOK!

いっぽう、「聞く」と「読む」という働きは、刺激が外から脳の中に入っていくということです。
こちらが障害された場合を「感覚性失語症」と言います。同じ左脳障害でも先の「運動性失語症」をきたす場所(ブローカ野)とは別の、もう少し後ろの場所(ウエルニッケ野)が障害されたときにおこります。

滑らかにすらすら話しますが、何が言いたいのかわからない・・・。
持って回った言い方が目立ったり、重度の方の場合だと、発音といいイントネーションといい日本語なのですが、復唱や書き取ることすらできません。(ジャルゴンといいます)
そしてもう一つの大きな障害が隠されています。それが「聞こえているのに、意味が分からない」

P1000004

感覚性失語症の方の聞こえ方を「外国語を聞くように、音としては大体聞こえているんだけど何と言ってるかわからない状態」とよく説明します。

お待たせしました。いよいよ本題です。
先日ようやく「アナと雪の女王」を見に行きました。 
帰宅して話題の「Let It Go」をユーチューブ検索 。面白いサイトを発見。

各国の美女たちがそれぞれの25種類のことばで「Let It Go」を歌い継いでいます。
英語から始まりフランス語・ドイツ語・オランダ語・中国語・スエーデン語と続きます。
そこまでは、「たしかに『Let It Go』あの歌が聞こえる」
そして7番目に松たか子さんが歌い始めたら、感動的に意味が分かります。

英語からスエーデン語までと、日本語の次のスペイン語から終わりまで、全くなんといってるのか意味も何も分かりません。聞こえているのに、です!
これがもし日本語の会話でおきたとしたら…
まさに感覚性失語症の体験です!

Let It Go - Multi--language "Behind The Mic" version (from "Frozen")

クリックしてユーチューブを見てください。

P1000003

英語やフランス語やドイツ語が分かる人は最初から意味が分かるのは言うまでもありません。
そんな人でも、その人がわからない中国語やタイ語やマレーシア語やタガログ語の歌が聞こえてきたら、意味は分からず「Let It Go」という歌だということだけはわかるでしょう。

ユーチューブのこのサイトが挿入できたら、こんなにたくさん書かなくても「感覚性失語症の体験をしてください」でよかったのですが、どうしても挿入できずたくさん書いてしまいました(汗)


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「何でも書いておけば大丈夫なんです」

2012年11月29日 | 左脳の働き・失語症
先日出会った方の話です。
家族も、ディサービスのスタッフも、みんながみんな「認知症」と思っていたのです。
妻の発言
「とにかくわからせるのが大変なんです。分かってしまえば、やることはそんなにおかしくないのですけど」
私「と、いうと?」
妻「例えば…ゴミを捨てて来てと頼むでしょ。
それがなかなかわからないんです。
トンチンカンなこといったり、知らない振りをしたり。
全くイライラさせられっぱなし!
そのくせ、いったんわかってゴミを捨てに行くと、そのあたりの掃除までキチンとやって来てくれるんです。」
私「他には?」
妻「もう一年も通っているディサービスの名前も覚えられないのに、帰った時に私がいなくても、紙に書いておくと何でもやってくれます。
鍵をあけて、お米をとぐとか、洗濯物を取り込むとか」

身近に認知症の方をお世話した人なら、「これはちょっと違う」と思うはずです。
認知症の人は「いうことはちゃんとしてるのに、やることが変」
ちょうど、逆!

こういうタイプの失語症があることも知っておかないといけませんね。

1・滑らかに話す。
2・が、なにがいいたいかが、こちらに理解できない。
(だから、トンチンカンなことをいう)
3・聞こえているのに、内容がわからない。
(あたかも、英語を聞いているかのような状態なのです)
4・自分が言いたい、その言葉がいえない。
(だから、ディサービスの名前が答えられない)
5・この人のように、聞き取りが悪いのに、読み取り良好という場合もある。

家族は、さすがに症状を理解していましたね。
それが失語症とは知りませんでしたが。

タブレットからです。写真が入れられませんでした(^。^;)


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失語があるかないか?

2010年07月31日 | 左脳の働き・失語症

たまたま続けておもしろい相談がありましたので、今日は保健師さんの勉強です。

今日の花はハスの花。T口さんが春先に植え付けてくださいました2010_0714_064500p1000428 

ケース1
保健師さん「なんだか変なんですけど・・・。普通ではないと思うのです」

私「普通でないって?」

保健師さん「MMSの低下順が老化が加速している時と違います。言葉の問題にしても入力障害も出力障害もあるし。涙が出て途中で話せなくなってしまって」

ケース2 2010_0714_064300p1000425_2
保健師さん「認知症だけでなく失語症もありそうなのですが」

私「どういうタイプの言葉の障害かしら?」

保健師さん「勝手にしゃべってる感じがしました。何か一つの単語が入るとそれだけでしゃべってしまうというか。
ずーと話し続けるんですが、突然ふと我に返った時みたいに黙ってしまったり。
検査中でも、勝手に話すので制止しながらやりました」

保健師さんは入力障害を考えたみたいですね。

2010_0714_064500p1000429 認知症を理解するには、A「その方の、脳の機能がどういう状態になっているのか知る」ことがすべてのベースになります。

そしてその次、B「その脳機能でどのような生活を行っているのかを確認する」ことが続きます。

さらに大きなカギとしてC「ここ、数年の生活ぶり。それまでの生活を大きくかけ離れた生活を余儀なくされるような生活上の変化がなかったかどうかを聞きとる」という、もっとも保健師さんたちに期待される段階が必須になります。

このケース1・2についても同様のアプローチで考えてみました。

ケース1のA4版白紙Img

「簡単な検査をしております」といいながら書かれたものは「かうたなけうさおしています」

立方体模写が可能な点も注意が必要です。

MMSにも特徴的なことがいくつかありました。
時の見当識は5点なのですが、所の見当識で、どうしても郡の名が出てこない。
記銘は1回目「みかん、県名、わからない」2回目「みかん、わからない、わからない」とともに1/3点。3回目には3/3点になったのですが、テスト途中で「ダメダメそんなの」「わからない」と辛そうに訴えながら止めそうになったとのこと。
それなのに、想起は2/3点!

この脳機能からは、単純な老化の加速が起きたのではないということがわかりますね。
保健師さんは「言葉が出にくい様子がある。話が途中でふっと途切れ、話を変える様子がある」と言葉の出力障害を強く疑いながら、記銘ができなかったために「入力障害が主体」と考え、そうすると「この検査中の反応が説明できない」と悩んでいたみたいです。

失語症に関してはマニュアルC95Pにまとめてありますが、あくまでも典型的な場合の説明ですから、このケース1のように、入力障害と出力障害が一緒に起きることもよくあります。保健師さんの観察通り、出力障害が主体だと思います。(だから涙が出る。入力障害の場合はあまり泣いたりしません)

「生きがい対応型ディ、さわやかカラオケを進める。失語症が疑われるため家族に確認して専門医に受診」という保健師さんの結論は正しい展開です。2010_0715_075100p1000436

ただ、エイジングライフ研究所二段階方式では、A脳機能だけの解釈で終わることはありません。

B生活実態を見てみましょう。
本人が小ボケレベルだと自覚しています。(MMSは失語のために20点ですが、時の見当識が5点、想起2点ですから生活実態は確かに小ボケでしょう)

そうすると、C生活上の変化の有無が、ケース1を理解するためには重要なファクターになってくるのです。

今この方には言葉がうまく言えないという障害があります。
失語になったのは、年半前の腰椎骨折を起こした時なのかどうか(転倒の際に頭部打撲したために失語症が起きた。または脳の言語野を含む部分に器質的な何かが起きたために倒れていたとも考えられる。この事故とは無関係にもう少し前だったことも考えられる)は、家族からの聞き取りを待つしかないのです。
が、その時をきっかけにして失語という障害を持っただけでなく(たぶん)、生活が大きく変わって家事などほとんど何もしない状態で、日中は近所を歩くだけくらいになったため脳の老化が加速してきていることも事実です(小ボケレベル)。
失語を念頭に置いた脳リハビリが必要です。

ケース2のA4版白紙Img_0001

文を書くときに「それはだめだ。できない」と拒否したそうですが、保健師さんが励ました結果「話をしている」とちゃんと書けています。

図形の模写は一方が四角形。もちろん0点ですが、「惜しい!」
時の見当識の得点が点ですから、図形の模写ができないとすれば、右脳障害を疑って「専門医受診」となるのですが、この場合は本来はできるのに、前頭葉の注意力が発揮されずにうっかりミスになったという印象が強いですね。
脳機能に問題がないということを確認するためには、再挑戦してもらっておいた方がいいでしょう。

記銘は2/3回目に3/3になったのはケース1と同じですが、「27」を二度とも「22」と答えたというのです。
ケースとできなさ加減が違うでしょ。
こういうときにテスターは「しっかりしてくださいよ!検査中なんですから!」と相手の前頭葉を叱咤激励したくなるものです。

計算の際にも、93の後は「ダメダメ」と拒否的にやめてしまうし、一方的な話をし始めてしまう。

一言にいって、非常にテストがやりにくいタイプの方だったと思います。
誠蓮(マコトレン、八重咲きのハス)2010_0715_075100p1000437

A脳機能を見てみましょう。
前頭葉テストは全滅。立方体模写は上図の通り。テスト中は多弁なのにもかかわらず動物名想起は4個のみ。かなひろいテストは丸は個付きましたが内容把握は全くできません。
MMS
20点でしたが、時の見当識点、想起1/3点です。記銘と模写は脳機能としては多分問題なしで、実際には小ボケレベルということになります。

B生活実態は本人が小ボケレベルと表明しています。

C生活歴に至った時に保健師さんは「そうか!やっぱりこれでいいんですね」
ちょうど年前に大きなターニングポイントがあったことを保健師さんは捕捉していました。ごく普通の、老化が加速された認知症と考えていいのです。
対人的トラブルが出ていて、小ボケ状態にとどまっているとは考えられなかったそうですが、生活実態の確認では「ゴミだしOK。風邪薬の自己管理OK」と家庭生活上のトラブルはまだ起きていないことが明らかになっていました。

2010_0715_075200p1000438 ただこのケース2は、もともと性格的に難しいところがあったのです。
それをコントロールしてきた前頭葉が機能低下を起こしたために、その身勝手さやむずかしさが前面に出てきてしまったと考えると、今起きているトラブルの本質が見えてくると思います。
テスト場面では人間関係の問題は起きてきませんが、テストのやりにくさという形で端的に現われます。

A4版白紙の図形の模写の線分が一線でなくこのような描き方になる時には神経質な傾向を考慮するのが鉄則です。
また、日付けの書き方にも注意してごらんなさい。
「平成二十二 六月8日」単に前頭葉の注意力不足だけでない、「変わり者」らしさが出ていると思いませんか?

いずれにしても、結論としては失語を考える必要はなく、前頭葉が言語野の能力をフルに引き出せていないという解釈で十分です。
老化が加速して小ボケレベルなのに、でも生活実態上でトラブルが多発するときには、この性格傾向の偏りも考慮する必要があります。マニュアルC163Pを参照してください。

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緩徐進行性失語その2

2010年03月13日 | 左脳の働き・失語症

先日のブログ「失語症の検査」でお知らせした方にお会いする機会がありました。(今日の写真は野沢温泉でのスナップ)

2010_0227_100700p1000052 家族の方(夫)に最近の様子をうかがうと
①自分で用意するときには、食事の支度・洗濯何も変なところはない。(変なところを答えないということは、かなり防衛的に反応している可能性がある。そのつもりで聞いていく必要がある)
「こちらが~してほしいと指示を出すとどうですか?」
「そういうときには、トンチンカンが出てくるけど・・・。一人ならできるんです」と強調。

②人の名前を間違える。(感覚性失語症のため、思った言葉が出てこないのか?質問が理解できていないために見当違いを答えるのか?)

③電話の時はちょっと心配。でも最近メモをとるようになった。(と、またかばう)

④最近、何でも面倒になっているようだ。

①~③は失語症のための症状ですが、④は失語症のためにイキイキとした生活ができなくなったために小ボケになってきていることを意味します。

2010_0227_101900p1000053_2   失語症が進行していくことは覚悟しなくてはいけませんが、それに引きずられて脳全体の老化を加速させないように、本人より以上に家族に対して強力な生活指導が必要になります。
その前提として、いま何が起きているのかをはっきりと知っていただく必要があります。

MMSでは二物品の命名をやりますね。
机の上に「百円玉・口紅・時計・携帯電話・千円札鉛筆・消しゴム・湯のみ」を並べました。
下線が付いている物品名は言えました。4/8

名前が言えない物品でも、すぐに使い方のジェスチュアが出てきて、それを何に使うのかは十分に理解できていることがわかりました。

2010_0227_104000p1000059 口紅が言えないとき
「口紅はつけないからわからんだろう」と助け船が出ます。
「じゃあ、ご主人にお尋ねします。『これは何ですか』」
「口紅だろ」
「ご主人は口紅を使われますか?」
「そうか。言えないんだな、やっぱり」
「そうなんです。ちょうど半分しか言えません。でも何に使うかはよく分かっていらっしゃいますね」

いかに楽しませることができるかが、脳の老化加速にあらがうことなのですから、その前提としてできないこととできることをはっきりさせておくことは重要です。このような過程を持つことで、どんなに本人が困っているかを、家族にわかってもらうのです。
そして生活指導。

2010_0227_110800p1000061この方は仕事一筋だったわけですが、前回の指導で「オセロゲーム」を孫と始めてみたら、なんと腕前は孫よりはるかに強かったそうです。
「結構楽しそうにやってました」と同居のお嫁さん。
「おばあちゃんは、ゲームなんてやったこともない」と切り捨てずに挑戦してみてくださってありがとうございました。

2010_0227_104600p1000060 今回は追加で、音楽を聞くところからやってみることになりました。
演歌でも唱歌でも、聞いているうちに歌いたくなればしめたもの!

そばからお嫁さんが「おばあちゃん、孫にベスト作ってくれたことあったでしょ?」
そこでアドバイス。
「あまり毛糸ではなく、きれいな色の、ちょっといい毛糸を用意してマフラーを編んでもらうのが一番です。糸がおしゃれだと使えるものができます、増減がないから。
それからベストでも他のものでも。モチーフつなぎのこたつかけなんかでもいいでしょ。その時は余り毛糸でもいいんですよ。
色使いを好きなように工夫させてあげてください。色づかいは右脳でやりますからね」と次々に具体的な生活指導につながっていきました。

そばでご主人も結構乗り気で聞いていてくださったのは、キーパーソンにならざるを得ないお嫁さんには、役に立ったはずです。

2010_0227_151500p1000065 今回のセッションで感動的だったのは、ご主人の次の言葉でした。
「一番最初に奥さんがへんだと思ったのは何が起きた時ですか?」
「去年の5月、ブドウの房切りをやるように言って自分は別の仕事をして戻ってきたら、何もやってなかった(元来はそういう仕事ぶりの人ではなかったのに)。びっくりしたけど、まあ一緒にやり始めたら、実に手際よくさっさとやっていった。何か変だと初めて感じた」

緩徐進行性失語症発症の時、家族はこのように「あれっ、変な失敗?!」と印象深く覚えていることが多いです。

2010_0227_143500p1000064奄美大島でお会いした方は「ハンコの意味がわからず何度も説明したけど、結局持ってきて見せたらすぐに納得した」と娘さんが話してくれました。
余談ですがこの人は脳機能検査ではMMSが14/30でした。ところが宅配便の店をやっていて、集荷配達ともにこなしていました。
毎朝地図を書いてもらって!もちろん口頭命令ではありませんよ。

私たちがアメリカで宅配便屋さんでアルバイトできるか?

口頭で指示されたらお手上げですが、地図上で説明されたら配達できますよね。
この人のようにおしゃれすることも、歌を聞いたり歌ったりすることも、これいな景色に感動する事も、オセロなどのゲームをすることも、編み物だって、右脳(と、前頭葉)があれば、アメリカにいても(左脳が動かなくても)出来ることはたくさんあります。

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失語症の検査

2010年01月26日 | 左脳の働き・失語症

巷では、ある程度年をとった人たちがなかなか言葉が出てこなくて「あれが、ほら何して・・・」「この前のあれは・・・」「あの人とあそこに行って・・・」
代名詞ばかりのしゃべりになると「失語症になっちゃった」と言いますね。
そんなことは「度忘れ」とでも言えばいいことです。
失語症って、そんなに軽いものではありません。

とても丁寧に検査されたケースをご紹介します。
MMSは20点(減点は所・記銘・想起・命名・復唱・口頭命令でした)この減点の下位項目を見るだけで、失語症があることに気づかなければいけませんよ。
A4版白紙

Img_0002_2

テスターの記録を転記します。相談者の答えを青字で書きます。
 
「今日の日付を教えてください」
「え?いつから言えばいいの?」
「今日の日付です」
「だからいつから?」
「今日は何日ですか?」
「10日」続けて、年・月以下もすべても正答


「ここは何県ですか?」
「わからないな。困ったなあ」と言いながら、出席カードを見て「福祉センター」と答える。その後「困ったな」と言いながら時間はかかったが正答できる。

記銘
「何?どういうこと?」再教示するも「何?みかんって言えばいいの?」
再再教示すると、「電車?電車に乗ってくるの?」

命名
鉛筆:「え?わからない。鉛筆の何て言えばいいの?」
時計:「なんだっけ?出てこないなあ」

復唱
「ちりって何?天気のこと?ちりもくばれば?」

口頭命令
「私、書けないよ」
「言われたとおりにやってみてください」と教示すると、言い終わる前に始めて半分に折って机上に置く

書字命令
すぐに読んで「眼を閉じるってどうするの?」と言いながら正答

文を書く
「私のことを書けばいいんだね?もうわからないんだから」といって書く

かなひろいテスト
練習問題を読んで「この話は知らない」
教示に対して「こんなのできないなあ。困ったなあ」と言い下を向いて固まってしまったために中止

質問するたびに「どういうこと?」「困ったなあ」「わからないなあ」「ごめんね」といった言葉が何度も出てくる。
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伊豆高原の1月(これだけの厚さの氷は初めて)2010_0114_075500p1000337

どうですか?丁寧に検査していることが伝わってきますね。
そして正確に検査状況を記録しようとしたことがわかります。
検査は、どのようにできないのかを知るところからはじまり、それはなぜなのだろうかと推理しなければいけません。
その前提が、テスターのこのような検査態度なのです。よく頑張りましたね、M守さん!

この相談者はことばの障害がありますが、どんな障害でしょうか。
『質問するたびに「どういうこと?」「困ったなあ」「わからないなあ」「ごめんね」といった言葉が何度も出てくる』
この記録がヒントです。
 

「聞こえるけれども理解できない」
「話せるけれども、的確には言えない」ですね。
失語症を大胆に分類してしまうと、情報が脳から出ていく方よりも、脳に入ってくる方が、強く障害されているということになります。マニュアルC95P参照してください。
感覚性失語症のパターンです。
                伊豆高原の1月(路地のシンビジューム)2010_0114_075400p1000336_2

二段階方式では、この検査の後生活実態を調べ、最近の生活歴も確認します。
同居のお嫁さんの申告では①②③⑤⑥に⑭が相当するということで「小ボケレベル」でした。
脳機能検査結果≠生活実態です。脳機能検査のほうが悪く、生活実態のほうがいい場合は、まず失語症を疑い次に側頭葉性健忘を疑います。
MMSの下位項目を見ても失語症。二段階方式の手技に沿っても失語症。
なぜこの言葉の障害が起きたのか?は、生活歴から聞き取っていくことになります。
病気はしなかったか。けがはしなかったか。
脳の障害は、そのほとんどがある日突然起きてきます。病気や事故がその原因です。
この人の場合は、まったくそのようなことがなかったのです!

徐々に言葉の障害が起きてきて、だんだんに悪化してきている・・・
これは変性疾患を疑うしかありません。
緩徐進行性失語(最近は原発性進行性失語ともいいます)と考えることになります。二段階方式では、このような場合は専門医療機関受診ということになっていますよね。このタイプの方には北海道岩見沢市でもお会いしました。
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ところで、同居のお嫁さんの見事な観察もお伝えしておきましょう。
これが、入力障害を主とする失語症の生活実態です。
伊豆高原の1月(天気がいいと房総半島が見えます)2010_0113_132200p1000334

・言葉のキャッチボールがうまくできなくて心配
・会話は成立しているように見えるが、相手から言われたことについては、いまひとつ理解できない様子
・言われたことが分からないという自覚があって会話も外出もしたがらない。
・またはしゃべる始めると一方的にしゃべり、しゃべり終わると席を立ってしまう。
・買い物を頼んでも、理解不十分のようなので地図を書いてあげると、ちゃんと買ってきてくれる。
・初詣で、毎年買う「金太郎飴」を買ってくるように頼んだら「飴って何?」と言ったが、夫が「神社の絵を描けばわかるだろう」と地図を描いたら、確かに金太郎飴を買ってきた。
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お嫁さんに対する生活指導は、「あなたがアメリカにいると仮定して、あなたが困らないように相手からしてもらいたいように、お母さんにしてあげるのが大原則です」                  
                         伊豆高原の1月(こんなに膨らんで)
2010_0117_112700p1000347 

「一番困るのがペラペラとしゃべられること」
「はっきりと表情やジェスチャーをつけて会話すること」
「言葉でなく、実物を示してあげること」
「左脳がうまく働かない失語の状態は治せませんが、脳の老化はなるべく先送りにしなくてはいけません。脳リハビリは右脳と運動の脳が主役ですから、この二つはいつも使うように気をつけましょう」
「あなたがアメリカにいても楽しめるものは、お母さんも楽しめます」
「音楽・絵・花・景色・買い物・手芸・知ってるゲーム・・・」

こんなエピソードも報告しておきましょう。M守さんの記録です。
ジグソーパズルをとても楽しそうに50ピースのものでもあっという間に完成させてしまう。
「孫とよくやる」「色で探していくといいね」
絵を見て「かわいいね」と言いながら迷うことなくはめ込んでいく。

これが左脳がうまく機能できなくなった、けれども右脳が機能している人の生活実態です。

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脳機能テストの結果はすべて宝!

2009年05月28日 | 左脳の働き・失語症

昨日の相談事例です。
(ホヤホヤ事例に合わせて、花も昨日の散歩のときに撮ったホヤホヤ写真です!)
満開のスイカズラ200905271458000

MMSが15点。
   時間:2点
   場所:2点
   計算:0点
   想起:0点
   模写:0点

前頭葉検査は見事に不合格
   立方体の模写:不可
   動物名想起:2個
かなひろいテスト:正答はゼロ。内容把握も「ももたろうの話」

総合的にみると確かに中ボケレベルですね。
極楽鳥花200905271559000

生活実態に関しては
「本人に確認しても、ほとんど自覚がなく家族からの聞き取りとする」
とのコメントがあって、ちょっと笑ってしまいました。
その自覚のなさが中ボケの中ボケたるゆえんですからね。

同居のお嫁さんは
①②⑤⑦⑧⑪⑭⑮⑳にしっかりとマルをつけています。200905271600000 中ボケですね。
具体的な生活実態として
 ・何度も通帳をなくす。

 ・風呂の空焚きをする。

 ・ほうれん草のおひたしにクリープをかける。

 ・洗米はできるが、炊飯スイッチではなく保温スイッチ   を押してしまう。
などの訴えがあったそうです。

二段階方式を学んでいる私たちは、まさに「中ボケ!さすがに家族(特に嫁)の目は正確だなあ」と感嘆するわけですが、世の中ではこれでも、まだ「ボケてるのか?そうでもなく年のせいか?だってちゃんと話はできるもの」と悩むレベルでしょう。

生活歴の確認をしたら、5年前に可愛がっていた孫が大学進学で転出したとのことで、ごく普通の、老化が加速されたアルツハイマー型認知症(中ボケレベル)と考えて問題はないように思われます。

アブチロン三色200905271852000200905271609001_2

200905271610000_2

みなさんは、脳が老化を加速する時「時の見当識」が難しくなっていく順番があることを覚えていますか?
詳しくはAマニュアルの44ページに解説しています。

このことは、とても大切なことですから検査の時にはいつも忘れないようにしてください。

「時の見当識」を一番最初に確認しますから、その後に続く検査の大まかな成績の見通しを立てることもできるのでしたね。(Aマニュアル47ページ)

この検査を実施したH町のM保健師さんは、とても丁寧に「時の見当識」を確認しています。
客観的に採点することはもちろん大切ですが、それ以上に心がけていただきたいのは、「実力はどうなっているか」を知ろうとするテスターとしての心構えです。

年月日に関しては「5月」とだけ答え、季節はわからない状態だったので
「春夏秋冬のどれですか?」と聞き直してみると
「秋」という答えになったそうです。(ここで落ちる順が違うことになりますね)

そこで確認のために
「秋ですか?」ともう一度問い直すと
「田植えの時期だから・・・夏かな」と。
そこでさらに「夏のどのあたりでしょうか?」と確認したら答えられないために季節は0点という評価でした。

テストのやり方・評価ともに完璧です。
問題は低下順がおかしいことです!

話は変わるようですが。この方が描いたA4判用紙を見てください。Image1_2

名前に注目しましょう。
(画像にカーソルを当ててダブルクリックして大きくしてください)
姓は遠藤さんと言われます。

「遠」はどうにか書けていますが、
「藤」は似ても似つかない字になっています。
もともと、自分の名前は目をつぶってでも書けるものです。左手でも書けます。

もちろん大ボケになっても、かなり長くまで書けるものです。

この方は、カタカナ3文字の名前は書けていますし、文章も書けています。
それだけに自分の姓 が書けないということを重視しなくてはいけません。

結論として言えることは、この方には失語症があります。
だから、自分の名前が書けなかった。
だから、今の季節はわかっているのに(着衣が正常)季節が言えなかった。
こんな散歩道も200905271455000

生活上に問題が出てきていますから、失語症だけではなくて脳の老化が加速してしまったこともあります。

老化が加速するきっかけは、孫の大学進学だったかもわかりませんし、失語症の発症だったかもわかりません。
家族からの詳細な聞き取りで、かなりのことが、明らかになるでしょう。

たった20分間の検査から、このくらいのことまでわかる二段階方式ってやはり魅力的ですね!

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続ー脳機能は悪いのに生活実態はいい

2008年10月31日 | 左脳の働き・失語症

続きです。
相談事例を整理すると、脳機能テストの結果は大ボケレベルになります。
30項目問診票によって確かめた生活実態は、①~⑩・⑪⑰⑱⑳・21と22は△という結果で、これは中ボケを意味しています。
母子ざる(幼いときは抱きしめて)
Photo_2大ボケの22「汚れた下着を着る」は最も軽い症状ですから、それがたまにしかないということからも中ボケだということは明らかです。
大ボケの21は、「家族関係がわからない」ということですが、この症状は普通はセルフケアに問題が出てきた後でおきてきます。確認してもセルフケアにはまったく問題がないというところに、答えの鍵が潜んでいます。

「脳機能が悪いのに生活実態がいい」
このような方に会ったら、一番に考えるのが「失語症」です。
聞かざる 言わざるPhoto
  見ざる(教育環境に注意)
家族の説明に間違いが生じると、家族はここまでも悪くなってしまったとショックを受けるものです。そしてその失敗は見落とされることがありません。
セルフケアにも問題がないのに、突然21に△であっても印をつける時
「家族関係がわからない」のではなく、
「家族関係はわかっていても、上手に表現できない」状態だと考えつかなくてはいけません。
それが「失語症」(マニュアルC 91p参照)です。
「何を聞かれているかがわからない」時に答えは間違ってしまいます。
「答えはわかっていても、それが口に出せない」時にも正答にはなりません。
「答えはわかっていても、口から出る言葉はまったく違うもの」の時にも間違いになります!
                                                 東照宮内五重塔Photo_5

脳機能=生活実態の前提として、脳の老化が加速した時という条件があります。
老化が加速するには「生きがいなく趣味なく運動もしない」ナイナイ尽くしの生活が継続しなくてはいけません。

もうひとつ、必ずチェックすべきこととしてMMSの下位項目の低下順の確認作業があります。
これについては、マニュアルAの巻末データとマニュアルBの第1章を参考にしてください。

神橋(シンキョウ)1

この方の場合は、前回のブログに書いたようにMMS の下位項目の低下順が通常の老化加速型とまったく違っています。
とくにMMSが低得点なのに、図形の模写がスムーズな時(立方体透視図も可のときが多い)は「失語症」の可能性が常にあります。

MMSの実施中に「失語症」と気づけたら、家族の生活実態の訴えについても「失語症」に起因するものと、通常の老化加速によるものを分けて説明が出来ますよ。
なるべく早く、検査を実施している時に「失語症」と気づけるようになりましょう。

実は、M保健師さんは「失語症」に気づいていました。
「『緩徐進行性失語』(マニュアルC94p・104p参照)ではないか?」とコメントが付いていました。
一方で生活歴の聞き取りでは、(青字は私の推理)
「H17.5.5一過性脳虚血発作(といわれたということは、後遺症はないといわれたということになる)にて救急搬送。(その後の経過を見ると、ここで左脳に障害=軽い失語症が残ってしまった
2~3年前から物忘れが目立ってきた。(失語症のことがわからないため、失敗を繰り返し小ボケに入っていった
H20より投薬開始(脳外科のDr.がボケの薬を出されたのだからやっぱりボケなんだと家族はあきらめてしまったに違いない
H20.6海馬萎縮あり。(器質と機能はイコールではないのに)」とまとめてありました。
    2007.6/21 2007.7/4のブログ「器質と機能」も参照してください。
大猷院(家光の墓所)夜叉門Photo_6
「緩徐進行性失語」は何時ということなしに段々失語症になっていくという病気です。
このケースの場合はあまりにもぴたりとタイミングよく(実際は悪いことに)脳虚血発作がおきています。
ここで「失語症」という後遺症が生じ、「失語症」が原因のトラブル続きのその後の生活が、脳機能の老化を加速させたと考えたほうが納得しやすいと思われます。

家族は「認知症」と診断され、それなりに納得していますが、それでも何か出来るのではないかと悩んでいる状態です。

ボケはあるのですが、たかだか中ボケの入り口、それよりも、
・思ったことがいえない
・単語や簡単な文なら聞き取れるが、複雑に言われるとわからなくなる
・文に書かれるとよくわかる
・右脳の機能は保たれている
という状態に置かれていることを説明しなくてはいけません。
「失語症」という言葉を伝えるのではなく(診断になるのでしてはいけません)
MMS下位項目の特徴を伝えるのです。
                                                       日光駅P1000062

M保健師さんは「そういえば、模写の時に、奥さんが『こんなに上手に描けるんだ』とびっくりされました」
「失語症があっても右脳の機能があるほうが脳リハビリは容易なのよね」という私の言葉に
「計算ドリルとかさせていたようですが、違うんですね。
パズルとかゲームとか音楽・制作・・・そうだ、散歩もジムもいいんですね。ジムの係りの人に説明します」と明るく答えてくれました。

M保健師さん、「失語症」とわかったのは立派。
二段階方式を使いこなすには脳機能と生活実態のずれ、MMS下位項目低下順、生活歴聴取そのすべてを同じ重さで考えるようにしましょう。器質検査に惑わされないようにね。
もう一息です。

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