脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

脳機能と生活実態は一致します。(保健師さんへ)

2014年12月10日 | 二段階方式って?

エイジングライフ研究所のノウハウ、二段階方式では、脳機能検査を定期的に実施して経過観察をすることになっています。
平成19年からフォローしてきた方(女性)にお会いしました。
二段階方式導入の保健師さんのために脳機能検査結果の推移の簡易なグラフをだしておきます。
①(H19実施)→②(H21)→③(H23)→④(H24)→⑤(H26)

今日の写真は、昨日の散歩で目にしたものたち。10月末の伊豆高原の様子です。
クヌギのどんぐり

一回目は75歳の時。脳機能テスト結果はすばらしいものでした。前頭葉テストである「かなひろいテスト」は20歳代に相当するくらい。
「かなひろいテスト」は意欲と注意集中力と注意分配力を評価します。つまり脳の回転力が若々しいということです。その当時の生活ぶりの記録を紹介します。

「家事全般、農作業は変わらず一手に引き受けてます。その他にも編み物教室、水中ウオーキング、ボランティア…毎日忙しく楽しく時間が足りません」
こういう生活なので、脳の回転力を要求するし、こういういきいきした生活だから脳も若々しい。うーんとっても納得
ハナミズキのつぼみ



2年後の脳機能テスト成績を見てびっくり。認知症の重症度分類から言えば正常域なのですが「かなひろいテスト」の成績がガクンと低下しているのです。

もちろん理由はありました。記録から抜粋してみましょう。
「もう大変な毎日です。夫が腸閉塞で入院、同居の孫がうつ病を発症、そのうえ同居の娘夫婦もトラブルを起こし、私まで十二指腸潰瘍・・・でも今日いろいろ教えてもらって(ソーシャルサービスの紹介を受けた)少し明るくなれました」
ツワブキ

さらに2年後
ちょうど1回目と同じ程度に成績に復活を果たしていたのです。
「夫は少し手がかかりますが、私を頼りにしてくれてますし、何しろやさしい穏やかな人でしたから気持ちの負担はないのです。孫もうつ病治療のめどがつき、アルバイトに行ってます」  
サザンカ

さらに2年後
前頭葉機能が、2回目ほどではないのですが少し低下しています。
「夫の介護、尊厳を傷つけないように言葉に気を遣いますが、デイサービスを増やすことを教えていただいてまた頑張れそうです。孫も散髪してくれたり、気遣ってくれたり。よくなってうれしい」と日常生活が無難に進んでいるような印象ですが、最後に「趣味やボランティアなど全部やめ、自分の時間が取れない。これがいつまで続くのか?」というつぶやきがあったと言います。

前頭葉が毎日の生活を認めながらも「自分らしく生きられていない」とイエローカードを
ちらつかせているような印象ですね。
キノコ(食べたくはなりませんでしたが)
 
そして、今回の成績
いい方向に向いているのか?さらに低下しているのか?
ちょっとドキドキしながらの検査でした。
結果を言いましょう。見事な改善!9年前の1回目よりもはるかにいい成績なのです。

「夫は去年の10月に亡くなりました。月末には1周忌です」
世の中でいつも言われる「半年も経つと、未亡人は不死鳥のようにノビノビと人生を楽しむようになる」ケースのようでしょ?でもちょっと違うのです。
アザミ
 
「私たちは、青年学級で一緒だったのです(現在83歳で、いわゆる恋愛結婚!)。
夫はどうしても先生になりたくて通信教育を受けたのです。スク―リングにはバイクで2時間もかけていきました。いろんな面で尊敬できる人でした。

そうすると家のこと、田畑のことは私の担当になるのは当然でしょ。免許もとってトラクターにも乗りましたよ。私たち対等だったんです。

退職後は海外旅行にもたくさん行きました。
平成11年、夫に食道がんが見つかり、早期発見だったので手術は無事に終了。でも18年に再発。治療はうまく行ったのですが腸閉塞を起こしてしまいました(ここが2回目の脳機能検査の時)。

徐々に低下していったけど、素直な人で困ったことをされたことはないのです。介護に手がかかったのは1年半くらいなものだったでしょう。
感謝の言葉を残してくれ、最後まで介護できてうれしいと思いました。そして『もう十分に生きたよね』って話しかけました。
悲しくなったら仏壇とにらめっこ。それがだいぶ続きました。

それでも、半年たって春になった時に、『これからは私らしく生きよう。夫もきっとそれを望んでくれている』と思えたんです。
それからは『元気だね』ってみんなから言われるようになりました。前のような生活に戻ってます。
もっと忙しいかな」と笑って話してくださいました。
ヨメナ(ノコンギク?)

一般的に「未亡人は元気になる」といわれるのと、ちょっとニュアンスが違うことが感じられますか?
充実した対等な夫婦関係に基づいた、やりつくした満足感が私の胸に迫ってきました。
「うらやましい!」と思いました。
前頭葉が、その時その時一生懸命「自分らしくあろう」と努力し続けたことも、状況が過酷になって自分の能力を超えると、負け始めて元気を失っていったこともよく理解できます。

生き方の基本にあるのは前頭葉だと実感させられました。
その人の前頭葉を理解することで、その人と共に歩いたように生活が理解できました。
(付言:20代に匹敵するいきいきとした前頭葉機能を持っていると、83歳という年齢を超えて、こんなにもわかりやすく自分の来し方を語ることができるのです。ほとんど聞き返すこともないほどでした。驚異的でしたよ)

もう一度グラフを見てください。
脳機能から認知症を見ると、このように経過を客観的に理解できること、また上記の生活実態と見事に一致することがよくわかりますね。
二段階方式の脳機能検査をすることで、その方の生活や思いを深く知ることができることを、よくわからせてくれるケースでした。

 

    


マウナケア山頂で小ボケ体験!

2014年12月03日 | 前頭葉の働き

ハワイに来ています。

同行した友人と一緒に、「マウナケア山頂サンセット&星空観測ツアー」に参加しました。10年くらい前に体験したことがあって、その感動的なことは承知していましたから、今回も楽しみの筆頭でした。

環太平洋の最高峰マウナケアは標高4205m。世界各地の天文台があることで有名です。もちろん日本のスバル天文台も。

標高2800mのオニヅカビジターセンターで早めの夕食と休憩をとって、体を高地に順応させます。1時間程度は予定されていました。食事もおいしく頂け、マウナロアにも感嘆し銀剣草(マウナケアとマウイ島ハレアカラ山頂に見られる高山植物)も見に行きました。

でも、何かが違います。

はっきりわかるのは、脈拍が早いこと。ちょっとだけ頭が痛いこと。

これはきっと高山病というまでもいかない酸素不足だろうと思って、なるべく深く呼吸をするように気をつけました。深呼吸代わりにあくびも何度もしました。

いよいよ頂上です。

絶景に息を飲みました。写真も撮りました。

でもまた感じました。何かが違います。

一人旅の女性がいましました。

普段の私なら、写真を撮ってあげたり、旅の情報を教えてあげたり。頼まれなくてもすぐにお世話をし始めるのですが、何もしてあげませんでした…

「したくない」というよりも「面倒だな~」「ま、どうでもいいか」という気持ちでした。

これは、「私」にしたらとっても珍しいこと。まったく「私らしく」ありません。

「私らしくない」と思いついた時、同時に、小ボケになりはじめのお母さんのことを「人が変わったみたい。いつもの母とちょっと違うんです」と家族が訴えることが起きていると思いつきました!

そして、小ボケの意欲低下の正体を見た思いがしました。

あのときの私の脳は酸素不足でした。

脳機能の中で、前頭葉が一番高次の働きを持つ以上、酸素不足の影響を、一番最初に受けることになります。前頭葉がうまく働かなくなるのが小ボケです。

と言っても、誤解しないでください。

高齢者が何かのきっかけで、生きがいも趣味も交友もしない。そのうえ運動もしない「ナイナイ尽くしの生活」を続けていくうちに、前頭葉がうまく働かない状態になっていきます。小ボケです。

ただし、これは廃用性の機能低下と言われるもので、決して酸素不足が原因ではありませんからね。

マウナケア山頂で、前頭葉がうまく働かないという貴重な体験をしました。そして小ボケの方達が「人が変わったみたい」と言われることも納得しました。

その後の報告です。2000mまで降りて星座観察を始めたときには見事に回復。

いつもの「私」と自覚できました。

翌日、ドトールコーヒー園に行ったときには、頼まれないお世話を買って出ている私がいました。

画像回転の修正ソフトがありませんから、帰国後修正します。アシカラズ。


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