脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

1年間で24億5千万円vs8年間で500万円

2009年11月27日 | 各地の認知症予防活動

7月23日に「認知症の第一次予防活動in東御市」として、東御市の取り組みを紹介しました。これは今後、日本における認知症の早期発見やその対応のモデルになるくらいの事業だと思いました。
今日送ってくださった東御市秋景Photo

その時に、その東御市の認知症予防活動を牽引しているK山看護師さんに
「経済的な効果もまとめられたらいいですね。地域づくりに焦点をあてて活動を継続した宮城県大崎市のちょっと前のまとめだけど、届いてるデータがあるので帰ったら送ります」とお話ししました。

帰宅後すぐに「きっとここにあるはず」と確信していたところを探したのですが見つからない・・・仕方がないので、思いつくところをいろいろ調べましたが見つからない・・・

諦めていたのです。ところが12月の実務研修会のための準備をしていたら、その資料の中に発見。遅ればせですがK山さん見てください。
そして残念なことを最初に報告しておきます。ここはこれほどの手ごたえを感じて活動してきたにもかかわらず、合併の余波でこの活動は多分休止に追い込まれることになるらしいです。(それでもほとんど10年間は実施したと思います。1年に1行政区の取り組みでしたから、ほとんどの地区をカバーできたのではないでしょうか)

「地域づくりを基盤とした認知症予防事業の取り組みについて」(宮城県大崎市)Image_5

目的(地域づくりまでも視野に入れている点に注目)Image_10

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1年に1行政区対象に実施

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事後は地域ぐるみの自主活動でフォロー

Image1

Image3 成果Image2

どうですか?
保健師さんたちがイキイキと担当地区で事業に取り組んだ様子がうかがえますね。
個人の健康増進とともに健康的な地域社会の創成ということは、まさに保健師さんたちに求められていることだと思うのです。

東京国立博物館本館2009_1118_125400p1000229_2

多くの保健師さんたちが不得手な経済的なまとめを見てください。

認知症予防教室をやっている皆さんは、教室の効果を実感しているでしょう。もちろん「単なる印象」でなく、脳機能測定を通じての実感ですよ。

教室参加をきっかけにして生活改善がなされた時、脳機能は若々しさを取り戻していくことを、私たちは知っていますね。その確信を地域の方たちに伝えてあげてください。

天文学的な介護保険給付額に対して、予防活動の経費は驚くほど安いものです。東御市のような取り組みも、ここに紹介した町のような取り組みも個人だけでなく日本を救うと思います!

経済的な比較

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大分県豊後大野市のK斐保健師さんから「大分県国保地域医療学会で『認知症予防教室のまとめ』を発表します」とお知らせが来たのが9月だったと思います。ここは、上記の例とは逆で、合併したために認知症予防教室が各地区に広がったので、各教室の比較という意味もあったようです。
                            東京国立博物館応挙館2009_1118_124600p1000224
「実際のデータを整理してわかりやすく伝えたらいいのではないか。その時に事業に関与した人たちの実感とかけ離れたまとめにならないように、気をつけてください」とお伝えしました。
11月初めだったか、控え目なK斐保健師さんらしく「最優秀賞をいただきました」とさりげないメールが届きました。もうちょっと詳しく知らせてくださいな。


8020運動 歯が先か脳が先か

2009年11月25日 | 前頭葉の働き

東京の歯医者さんへ検診に行きました。
下の写真は、廊下に展示してありました。現在97歳男性のものです。2009_1118_144100p1000233_3

「うちの病院には、最高齢97歳の患者さんもいます。つい先日も葛西からおひとりで検診にいらっしゃいましたよ。敬老の日に表彰されたそうですが 、他の方はほとんど寝たきり。この方だけが 文字通りかくしゃくとしていらして皆さんから賞賛されたそうです。」

歯医者さんですから、言葉が続きます。
「インプラントしたうえで、入れ歯をおつくりしていますが、手入れを良くされるので見事に持っています。タクワンでもお煎餅でもしっかり召し上がるんですよ」

「こうして自分の歯で食べることができる人はボケませんね!この方も、いまだ現役で詩吟の先生をしていらっしゃるんです」

これは「卵が先か鶏が先か」です。
食事がきちんと摂れるということはプラス要因には間違いありませんが、きちんと「自分の噛める歯」で食事が摂れる人は必ずみんなかくしゃくとしているかどうか?です。
97歳でも詩吟の先生ができるような人なら、歯の管理を説明してその重要性を理解してもらえたら、「自分の噛める歯」を維持することはそんなには難しくはないはずです。
「脳に良い」のは詩吟の先生をやり続ける生活態度のほうが重要な要因だと思います。

ベトナム料理教室(フエ風まぜごはん)2009_1119_164400p1000234

8020運動はご存知ですね。
8020推進財団が「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」と呼びかけているものです。

この標語は「歯の手入れをきちんとして、80歳になってもちゃんと噛めるようにしておこう」と言い換えるべきだと思います。20本あっても、奥歯が全滅している場合や上下どちらか噛みあわせるべき歯がない場合などは、食べるという行動に大きな制約が生じます。

食欲は、基本的な意欲の現れですから「しっかり噛んで、味わって、おいしくいただく」ことができる場合とできない場合の、QOLの差は非常に大きいでしょう。

自分の歯にこだわるよりも、良く調整された入れ歯であっても構わないではないですか。使えることが何よりも大切だと考えないといけません。
歯周病の予防も、当然必要です。 2009_1119_164400p1000235ベトナム料理教室(揚げ豆腐のヌックマムねぎ浸し)

こうして並びたてていくと、何よりも大切なのは「食べる」ということを「自分の人生にどのように位置づけるか。そのためにはどのような努力が必要なのか」を理解する能力ということになります。
まさに前頭葉機能が「自分の歯」に対して正常に判断できる状態かどうかが鍵ということですね。

つまり、小ボケになる前に将来を見据えて歯の健康計画を練っておく必要があります。

ベトナム料理教室(ハスの実のチェー)2009_1119_164500p1000236

また「噛むことそのものが、脳を刺激する」ということが言われます。

それはその通りでしょう。

でも、時を忘れるほどに熱中している時に脳が受ける刺激と、単純にただ噛んで食べる行為から脳が受ける刺激が、比較できるほどの等質さを持っていると考えられますか!

脳は重層的な構造を持っていますから、たとえば意欲といっても脳幹が受け持つ意欲は生命維持に関するようなレベルです。
辺縁系になると本能レベル(心地よさの追求どまり)。大脳皮質になって初めて論理的だったり情緒的だったりということが起きてきます。
最終段階は、自分らしさの根源である前頭葉機能が関与する意欲、その人でしか起きえないような意欲が見られてきます。

「脳にとって良い」どのレベルの話なのかを考えながら聞いてください。


相互生活実態評価は夫婦関係の鑑-聖武天皇と光明皇后

2009年11月24日 | 二段階方式って?

ブログが滞っていた理由は、写真の取り込みができなくなっていたからなのです。「せめて写真がないと、読んでくださらないかも?」と思っていますから、とても困っていました。
いろいろ問い合わせてみても
「ちょっとSDカードと相性が悪かったりするんですよねえ」
「何度か繰り返してやってるとうまくいくこともありますよ」・・・

昨夜、突然写真が取り込めたのです。

11月中旬には、奈良へ行きました。友人と二人旅。
学生時代にも一緒に旅をしましたので、彼女とは何と40年ぶりの奈良でした。
私たち二人とも「写真は卒業」グループなのですが、ブログのことを考えて最後の最後に何枚か写しました。

東大寺大仏殿2009_1112_145800p1000193                                    東大寺南大門2009_1112_145700p1000192

目的は興福寺の阿修羅像。それと正倉院展です。

数年前に興福寺国宝館で阿修羅像をとっくりとみてはいたのですが、今回は仮本堂に本尊釈迦如来坐像を安置して、その周りに現存する天平乾漆像すべて展示するというのですから一見の価値はあると思って行ったのです。Image2

お堂の中に入ると『展示』というよりも『祈りの対象』という印象を強く感じました。多くの人たちが、信仰の対象にしたのが仏像だと改めて理解できました。

阿修羅というと左のパンフレットのような写真、ちょっと眉を寄せた表情がクローズアップされることが多いですよね。

右下の写真を見てください。全身像なのです。
大体女性の等身大くらいでしょうか。
それと彩色が施されています。近くでよくよく見ると、できたころはずいぶんと派手なものだっただろうと思われました。2009_1112_152700p1000200

仏像とは違って、人間性を感じるところが人気の秘密でしょうね。

もう一つの旅の目的は、奈良国立博物館での正倉院展。

今年は天皇陛下の即位20年記念で初出陳品もあったためか、正倉院展も混んでいました。行列して入場するという状態でした。

そこでお話したり、観察していると、
「毎年、正倉院展にはきます」というような方から「秋の奈良の写真を撮りに来たついでにきました」という方、和服の女性、サラリーマン風の方、いろいろな方がいらっしゃいました。Image1

退職後の夫婦旅と思しい人たちもたくさん目にしました。
同じ趣味が持てるというのは、幸せなこと。

夫は「妻と旅行したい」、妻は「夫以外の人と旅行したい」とよく言われますね。本当のところはどうなのでしょうか?

二段階方式を実施すると、脳機能の老化を加速させたきっかけを確認することになります。そのとき、二人で生活しているのですから夫婦関係はカギになることが多いのです。

病気をしたかどうか、心配事はなかったか、そのような日常的な変化は当然聞きとっていきます。さらに、もともとどのような夫婦関係であったかも、その変化が及ぼす影響の要因になることはあたりまえです。

支えあえる関係性もあれば敵対的なこともあります。家庭内別居だってあるでしょう。

脳機能テストの後、相手の生活状態をどのように把握しているかを30項目問診票で確認します。
素直に正直にそのまま申告してくれることもありますが、脳機能と一致しなくて、何が何やらわからないこともあります。そのような場合はちょっと立ち止まってなぜなのかを推理してみましょう。

奈良公園の鹿2009_1112_150200p1000195

具体例です。79歳男性。
前頭葉テスト不合格。MMS26/30。本人の30項目問診票は最初⑦⑮のみ。確認して⑦③⑤⑩となりました。
⑩にご注目!自分から「相手の意見を聞かない」という人は余程人の意見に耳を傾けない人です。 

妻は②③⑦⑧⑫⑭でした。これは小ボケと認識しているという点では一見普通ですが、⑫⑭が入っているところに注目しなくてはいけません。
やや辛めの採点といったところでしょうか。なぜ辛めの採点になるのか?
そこのところをもう少し追求してみないといけません。

「妻ががんで入院しても、ショックでもなく気楽に過ごした」(とはいえ、これが真実、夫の本心だったかどうかはわかりません)
「老人クラブの集いや趣味などはバカバカしく思ってしまう」そんな夫ですよ。

さらに自己評価⑩。夫は、言い出したら聞かないでいつも自分の意見を押し通し続けてきた・・・結婚以来・・・少し夫婦関係が透けて見えてきたような気がしませんか。
その妻の気持ちを酌んであげないと、生活指導がうまくいきません。
光明皇后の楽毅論150pxkomyo_kogo_gakkiron_end                   聖武天皇の宸翰Images

良く判読できないでしょうが、光明皇后の筆はのびやか。
聖武天皇の筆は几帳面。

今風の表現なら「仲睦まじい夫婦」といわれているこの二人の夫婦関係は、相性はどうだったのでしょうか?
興味シンシン。


訂正!

2009年11月14日 | 私の右脳ライフ

9月29日のブログ「皇居東御苑ー続々」に「安田生命ビルに戦後GHQ が入った」と書いたのですが、これは間違いでした。

今日指摘してくださる方がありました。
「GHQが入ったのは、第一生命館です」

あわててネットで検索しました。
1938年に建設された第一生命館。
1945年GHQ庁舎として接収。その決定にはマッカーサーが直接関与したとか。

1952年接収解除。
1950年ごろの第一生命館300pxghq_building_circa_1950

教えていただいて、
「なぜ、書く前に検索しなかったのだろうか」と思ったのですが、思い込んでいたから、としか言いようがありません。

考えてみれば、第一生命館は皇居に対面しています!
この立地条件が、GHQ庁舎選択条件の一つだったのでしょうね。

明治生命ビルは、皇居に対して直交していました・・・

250pxdaiichi

ところで、1995年に第一生命館は隣接する農林中金ビル(どちらも歴史的建造物)と一体化して、高層化されてDNタワー21となりました。

ぜひ上のDNタワー21をクリックしてみてください。歴史的建造物の保存手法に対して一石を投じたと言われていることなど初めて知りました。
戦前最後の現存する大規模建築ということもわかりました。

今度上京したら、行ってみようっと。

Sさん、ご指摘ありがとうございました。


映画「母なる証明」の痴呆(チメ)役者に異議あり  

2009年11月08日 | 正常から認知症への移り変わり

今日は、渋谷で「母なる証明」を見ました。
ミニシアターで上映中の韓国映画です。先日読んだ映画評では、「殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追う母親の姿を極限まで描くヒューマン・ミステリー」「ウォンビンの5年ぶりの復帰作」ということでした。
私は韓流ドラマはパスしていましたので、もちろん、前半の文句に魅かれて見に行ったのですが。

今日の写真も、先日の旅友M嶋さんが送ってくださったもの。感謝!P1020278 P1020303

ウォンビンが知的障害を持つ一人息子役でした。
息子を救おうとするその母の心理のひだを細かく追っていくストーリーは、ポン・ジュノ監督が自らシナリオも手がけたということで、よく練られていてハラハラドキドキの展開が続きました。
あらすじはこの公式サイトの作品紹介欄に前半だけが掲載されていました。その他、関係者プロフィール、コメント、2009年カンヌ映画祭関係などなども掲載されていましたので興味ある方はご覧ください。
最後の意外な結末からは、確かに人間というものの深みを訴えようとしていることが伝わってきました。

以下の話は映画とは無関係・・・

被害者になる女子高校生の設定は、祖母と二人暮らし。その祖母が「チメ」というのです。

もう10年以上も前、私は韓国でボケ予防の講演をしたことがあります。
当時日本では、「認知症」ではなく「老人性痴呆」と言っていました。
韓国では、全く同じ字で発音だけが「ノウインソンチメ」と教えてもらって「よく似てる」とびっくりしたことを思い出しました。P1020385

ちなみに韓国でも、エイジングライフ研究所の主張する「チメは、脳の使い方の問題。趣味なく、交友もなく、もちろん生きがいといって何もない。そのうえ運動もしない。
60歳を超えて、そのようにその人の前頭葉の出番がなくなるような生活になってしまうと、脳は老化を加速していき、次第にチメが完成されていく」という説明がとてもよく理解してもらえました。
韓国社会も大きく変化しているようですが、それでも儒教的な「ねばならない」文化や、極端な学歴偏重主義に見られるような左脳優位の考え方が根強いからこそ、理解されたものと思っています。

映画に戻ります。
そのおばあさん役の演技なのですが、後半の山場のひとつ、母役との絡みの場面で、とても「チメ」とは思えないのです。
まず表情があります。「目」が生きています。反応が機敏です。動作もテキパキとしていて、孫娘の稼いだお金で「マッカリ(韓国のどぶろく)」を飲んでは、フラフラほっつき歩くという設定と一致しません。
「チメ」というよりも「性格の偏り」ならばよくわかります

居眠りもせずに一生懸命見たのですが、どこか理解しきれてないところがあったのかと、そのおばあさん役の演技に戸惑ってしまいました。
母役も息子役も迫真の演技でした。もちろんそのおばあさん役も迫真の演技なのに、「チメ」とは遠ざかるばかり。残念な気がしました。

この映画に関しては私の理解不足もあるかもしれませんが、世間一般の「ボケ」の理解、特に早期の「ボケ」に関してはまだまだ不足しています。

これはある方から聞きました。P1020616_2
テレビかラジオからの話のようですが、「認知症の始まりは記憶の障害。趣味やボランティアなどでどんなに生き生き暮らしていても、約束の日を間違えたり、伝言が伝わらなくなったりしてくるとそれは認知症が始まったことになる」

とんでもありません。
「趣味やボランティアなどで生き生き暮らしていれば」ボケません。
(もしこういう状態が起きたとすれば、一番考えられるのは側頭葉性健忘です。マニュアルCを参照してください)

「趣味やボランティアなどでどんなに生き生き暮らしていても、その生き生きした生活をやらない状態が続けば、だんだんボケてくる」

これがボケはじめの必要十分条件、大原則なのです!


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