典型的な、小ボケの入り口のケースに出会いました。
今月初めの軽井沢は霧の中でした。ショー記念礼拝堂
エイジングライフ研究所の二段階方式では
・脳機能検査
・生活実態のチェック
・最近の生活歴聴取
この三本柱を省略することはありません。
三つともに同じように重要です。
さて、この方の脳機能検査結果は
MMS は25/30でした。
できなかったのは、計算と所。所に関しては検査終了時には完全な正答になりました。
前頭葉テストは、立方体透視図模写は合格。
動物名想起は、正答数6個で、35秒から「思い浮かんでも言葉として出てこない」という発言がありました。
かなひろいテストは、正答数15、内容把握もでき、いちおう合格でした。
いちおうと断ったのは、H22年9月に二段階方式を実施してあったために8か月前のデータと比べることができたからです。
軒並み低下していました。(MMS28/30.かなひろいテスト正答数20)中山道つるや
一般的な検診結果と同じように、経過を追って検査結果があると脳機能もより精密に変化がわかります。
7月17日のブログ「アルツハイマー型認知症が進行するスピードは?」にも、検査結果を追ってみていくことが、より理解を深めることになると書きましたね。
「経過を追って理解する」ということよりも先に強調しておかないといけないのは、保健師さんたちの多くは、目の前の相談者に対して実力よりもより良く理解したいと願っているということです。
「脳機能テストは正常だし、生活実態にも一つしか丸が付いていない」
「あー、よかった。正常だわ」
一般的な検診結果で、血圧や血糖値が正常下限で、本人に自覚がない状態を想像してみてください。
何の指導もせずに帰しますか?
1.自覚症状は本当にないのかのしつこいほどの確認。
2.念のために、生活改善指導。このふたつには力を注ぐでしょ?
認知症も同様に考えてください。
二段階方式では、生活歴聴取という最後の柱がありますね。必ずここまでやるのですよ。
たとえ、脳機能と生活実態が正常でも、その正常を支持する生活歴がなくてはいけません。つまり最近生活がコロッと変わって何もしない生活に陥ってはいないかという確認です。
私には全く関係ないのですが、おしゃれな結婚式場
この方は
「5月に二回交通事故にあって、足の打撲。二回ともぶつけられて・・・」と自分には非がない口ぶり。
でも、交通事故は要注意です。
小ボケになると注意集中・分配力が低下しますから、ちょっとした小さな事故をよくおこします。
「スピードが遅すぎて怖いんです」を読んでみてください。
小ボケの人は、ごく普通にこのような表現(自分は悪くないけど・・・)ができますから、「真実はどこにあるのか」というつもりで聞いていってあげないといけません。
脳機能テスト結果から、この方の場合は、生活のターニングポイントは半年から一年前だと想定できました。
そこで生活歴です。(相談者:C 保健師さん:保)聖パウロ教会
保「まだ一年はたってないと思いますが、それまでの生活ぶりと比べると、生活が大きく変わってしまうような出来事がありましたね?」
(このように聞きます)
C「5月に事故にあったのですが、月一度の食事会と薬草の会は続けています」
保「じゃあ、何をやめたのですか」
C「料理教室を4月にやめました。でも工作の会はやってます」
保「そのほかに生活上の変化はありませんでしたか?」
(この時保健師さんは「料理教室はみんなと一緒にやらなくてはいけない。工作の会はマイペースでやればよい。やはり前頭葉機能低下が起きている」と確信したそうです。お見事!)
C「実は去年の11月にご詠歌をやめました」
保「ご詠歌は余程お楽しみだったのですね。どういう理由でおやめになったのですか」
C「夏ごろから緑内障が悪化してきて・・・とうとう無理になったのです」
この方のターニングポイントは、去年夏の緑内障の悪化でしょう。それまでのその人らしい生活が困難になったところから、脳の老化が加速されてきたと考えるのです。
ちょうど半年から一年以内前!ぴったり一致します。
そのつもりで脳機能検査結果をみると、「緊張している」とか「上がっている」とかの言い訳が多く見られました。
A4版の白紙では日付を一日間違えてしまいましたが、最確認を促すと自己修正ができました。
立方体透視図も苦労しています。
文も、ちょっとなおしたりしていますね。
このような場合は
「脳機能検査結果はまだ正常なのですが、お話しを伺うと、去年緑内障が悪くなってから、生活の楽しみが減ってしまい、趣味も生きがいもないナイナイ尽くしの生活になってしまいましたね。そのために脳が元気をなくして、老化が早まっていこうとしています。
ここで元気を取り戻さなくては、老化がどんどん早まってしまいます。緑内障のことは先生によくご相談されて、してはいけないこととすべきことをよく教えてもらってください」
その後脳のリハビリの指導に入るのです。この方のように病気や痛みがある場合はドクターから「していいこと」「してはいけないこと」を指導してもらうように勧めてください。病気などに注意を配りながら、なお「できること」そして「楽しみになること」を一緒に探して行く過程が生活改善指導です。