日本では違和感ない「無宗教です」の言葉も海外では危険 元大使が経験した“凍りついた”現場〈dot.〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による高額な献金被害の実態が明らかになるとともに、テレビでコメントする政治家やタレント、SNSで自身を「自分は無宗教」などと口にする人が増えてきた。日本国内では違和感を覚えない言葉だが、「海外で『無宗教者だ』とうかつに口にするのは注意が必要」と話すのは、駐チュニジア、駐ラトビア特命全権大使を歴任した多賀敏行・中京大学客員教授。なぜなのか。多賀さんに話を聞いた。
(中略)
インターネットの辞書で「無神論者」を検索すると、「atheist(エイシエスト)」という単語が出てくる。なので、こう言いたくなります。 「I’m an atheist(私は無神論者です)」 しかし、海外で無神論者は、「神をおそれない傲慢な人」「不遜な考えを持つ人」というふうに受け止められます。
これを私が最初に教えられたのは、外務省の新人研修でした。 当時は、東京都文京区の茗荷谷にあった外務省研修所で3カ月間、外交のイロハを学びました。当時の副所長は、開口一番、私たちにこう言い放ったのです。 「君たちのなかで、外国の人に対して『自分は無宗教主義者だ』と言いたい人はそう伝えなさい。ただし、相手から反論が出てくるので、それに答える覚悟が必要である」
(中略)
24歳のとき、外務省の研修制度を利用して英ケンブリッジの大学院に留学する機会を得ました。「atheist」という難しい単語を覚えたばかりの私は、すこしばかり得意になっていました。また、私の家は代々曹洞宗ですが、私自身はお寺に行くのはお盆や初詣ぐらいで、熱心な仏教徒ではない。信仰心の篤い欧米などのキリスト教徒を前に「Buddhist(仏教徒)」と口にするのもはばかられました。 謙虚な気持ちも込めて、 「I’m an atheist(私は無神論者です)」 と説明しました。 しかし、同世代である20、30代の英国人、米国人の若者も、下宿先のおばさんも、一様に反応がおかしい。 「atheist」の単語を使うと、みな一瞬凍りついたような表情をして妙な雰囲気が漂う。 それで、この言葉は問題だと気がつきました。 「無宗教主義者・無神論者と伝えたければ、覚悟が必要だーー」 研修時代に教えられた言葉が脳裏によみがえりました。
(中略)
多くの日本人が欠かさない初詣やお彼岸の墓参も立派な宗教儀式ではないでしょうか。「仏教徒である」「神道家である」と自己紹介が許される範疇に入っていると思います。遠慮してハードルをあげることはないのです。 仏教徒(Buddhist)もしくは、神道家「Shintoist」など自分と関係のある宗教を信仰していると言い切っていい。なぜならば、下手に説明しようとすると却って誤解を生みそうな単語もあるからです。 たとえば、「不可知論者」を表す「agnostic(アグノスティク)」。「I’m agnostic」といえば、神の存在を証明することや反証することができないと主張する人を指します。「atheist」よりは穏健な響きがあるが、無神論者と受け止められるかもしれない。 「疑い深い」を意味する「skeptic (スケプティック)」は、神の存在を疑う人間ーーと言うやや強いニュアンスがあります。相手から、「それはどういう、考えなのだ」と興味を持って質問される可能性もあります。 英語を使い慣れない人は、「Iam a Buddhist.」など簡明な表現で言い切るほうがいいでしょう。相手も「ああ、そうか」と安心して、会話がスムーズに流れます。 それでも、「無宗教である」と伝えたい気持ちが強いならば、「religious(信心ぶかい)」を使い、「I’m not a religious person(私は信心深くない)」
(後略)
この多賀氏のお話は、原理主義的宗教観を持つ人が多い国なら今でもそうだと思うのですが、それ以外では別に堂々と「無宗教」と言っても構わないのではないか、と思います。
私の欧米人の友人たちの少なくない人が「特別な信仰はない」と言うし、家族のことを「atheist(無宗教)」と普通に言う人もいました。これは特殊ですが、戦後、冷戦での苦労から無宗教になったことを教えてくれた人もいました。
私は宗教について話題にするときは、「I am not a religious person.」としか言わず、AtheistもAgnosticも使ったことはありませんが、それらを使っても、特別視されることはないのではないかと思います。
問題があるとすれば、無宗教だからと言って、それぞれの信仰を貶めようとする場合では?
実際は、無宗教者は宗教に対しフェアでいられる強みがあると思います。
(カルト系宗教は「貶める」云々の前に、私は近寄らない。)
参考:
「宗教」と「戦争」 - Various Topics 2 (goo.ne.jp)
「イスラム脅威論」をひっこめた友人・日本の中国化 - Various Topics 2 (goo.ne.jp)