新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

2021年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]

2021-12-30 15:04:51 | 美術館・博物館・アート

このブログでは「毎年12月30日」の定番にしている「美術館・博物館めぐり」の振り返りです。

ご参考までに、過去の振り返りへのリンクを貼っておきましょう。

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去年にひきつづき、今年もコロナ禍美術館・博物館休館が相次ぎ、また、再開しても事前予約が必要だったりして、なんとも不自由な一年でした。
来年は、思い立ったが吉日 とばかりに行けるとか、通りすがりに見かけた美術館にふらりと立ち寄ってみるといったことができるようになってほしいものです。

さて、例年、この「振り返り」では、TOP3 の3本と、次点6~7本「選出」しているのですが、ことしはどうもTOP3 を選びきれません
ここ数日、反芻しつつ考えてみたものの、やはり絞れない

ということで、今年は4本の展覧会を「TOP4とします

まずは、記憶に新しい、

和田誠展
  @東京オペラシアター アートギャラリー

和田誠展のことは、このブログで2回にわたって書きましたので(こちらこちら)、これほど終始ニコニコしながら鑑賞した展覧会は珍しいのではなかろうか? とだけ書いておきます。

電線絵画展 @練馬区立美術館

巨匠・黒澤明監督が、「七人の侍」のロケの最中に、「あの電信柱が邪魔だからどけろと指示したという逸話を聞いたことがありますが、風景の中で電柱や電線邪魔者扱いされるのが普通です。ところが、そこを敢えて電線に焦点を当てた絵画を中心とした展覧会を企画して、質・量ともに「まとも」(以上) の展覧会にしてしまった企画の素晴らしさ
フライヤーに書かれた「概要」を転記すると、

この展覧会は明治初期から現代に至るまでの電線、電柱が果たした役割と各時代ごとに絵画化された作品の意図を検証し、読み解いていこうとするものです。
文明開化の誇り高き象徴である電信柱を堂々、画面中央に据える小林清親東京が拡大していく証として電柱を描いた岸田劉生モダン都市のシンボルとしてキャンバスに架線を走らせる小絲源太郎、電線と架線の交差に幻想を見いだした“ミスター電線風景”朝井閑右衛門。一方で、日本古来よりの陶磁器産業から生まれた碍子には造形美を発見することができます。
電線、電柱を通して、近代都市・東京を新たな視点で見つめなおします。

とありますが、まったく見事であります。
「電柱や電線といえば…」山口晃画伯の作品もしっかりと拝見できて(展覧会の副題は「小林清親から山口晃まで」)満足な私でありました。

「電線絵画展」と同様に、企画の勝利とも言えそうなのが、

美男におわす @埼玉県立近代美術館

こちらもフライヤーに載った「概要」が短い文章で展覧会の意図を明確に示していました。

 かまくらや みほとけなれど 釈迦牟尼は
   美男におわす 夏木立かな   与謝野晶子
増殖する美男の園へようこそ。「美男におわす」は、日本の視覚文化のなかの美少年、美青年のイメージをたどる展覧会です。これまで人々は数多くの男性像に理想を投影し、心をときめかせてきました。しかし、それらは主に女性像からなる「美人画」とは異なり、「美男画」といった呼び名を与えられることはありませんでした。
(中略) 浮世絵、日本画、雑誌の表紙や挿絵、現代作家の作品、マンガなど、時代やジャンルをまたいだ様々な男性像をめぐるなかで、男性を美しいものとして表現すること/見ることに光を当てます。

古くは江戸時代初期屏風から最新マンガ(よしながふみ「大奥」の複製原画)まで、絵画から彫刻、アニメ映像、デジタルデータまで、なんとも「時代やジャンル」をまたぎまくりです
この展覧会の企画者は、企画の作業が楽しくてたまらなかったのだろうな…
個人的には、2019年7月に五浦での個展を拝見して以来の入江明日香さんの作品に再会できて嬉しゅうございました。

国宝 鳥獣戯画のすべて @東京国立博物館

鳥獣戯画といえば日本美術史を語る上で避けて通れないエポックメイキングかつユニークすぎる名品ですし、「史上初! 全4巻 全場面、一挙公開!」ともなれば、そりゃ軽い扱いにするわけにはまいりません。
でも、私がこの展覧会をTOP4 に選んだのはそれだけではありませんで、その展示方法にありました。

トーハクでは、6年前にも特別展「鳥獣戯画-京都・高山寺の至宝-」で鳥獣戯画全4巻の各巻を前半・後半部分に分けて、それぞれ前・後期に展示しました。私も観に行きたかったのですが、あまりの行列に恐れを成して、本館で甲巻の模本を鑑賞することで我慢しました(記事はこちらこちら)

「展覧会あるある」として、絵巻物や浮世絵版画は混雑するとよく観ることができないという教訓があります。
ところが、今回のこの展覧会では、人気の甲巻だけ、その展示ケースの前に「動く歩道」を設置して、観覧者はこの上から鑑賞するという画期的なシステムを導入しました。
しかも、幸か不幸か、コロナ禍のせいで、事前予約制を採っていたこともあり、6年前の、

当時のトーハクの公式Tweet

「入場まで(屋外)約60分待ち」「会場内の鳥獣戯画観覧は甲巻約160分待ち」と比べたら、VIP待遇を受けているかのような感じで鑑賞することができました

この「動く歩道」「トーハク史上初の試み」だそうで、

巻き広げながら見る絵巻本来の鑑賞方法に加え、皆様に作品を間近でご観覧いただける環境を準備しております。(フライヤーより)

だとか。
特別展のために架設の「動く歩道」を設置できたのは、会場がトーハクで、展示品が「鳥獣戯画 甲巻」だったからなのでしょうけれど、この展示・観覧方法はイイです。
「自分のペースで観られないと思った人がいたかも知れませんが、3時間以上も並んだ上で「自分のペースで観る」のと、待ち時間数分「じわっと観る」のを比べたら、行列嫌いの私は、迷わず後者を選びます
「動く歩道」の列に並び直せば何回でも観られますし…

と、TOP4 を紹介したところで [前編] はおしまいです。
[後編] では「次点その他を紹介します。

つづき:2021/12/31 2021年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編] 

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