三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

想田和弘『選挙』

2007年08月11日 | 映画

想田和弘『選挙』は、2005年秋、川崎市議会補欠選挙に自民党公認で立候補した山内和彦(40歳)の選挙運動奮闘記。

山内和彦は知り合いから誘われて公募に応募したのだが、公募といっても出来レースらしい。
東京で切手コイン商を営む山内和彦は川崎市に引っ越して、選挙運動を始める。

選挙に負ければ市議会与党の座を奪われる自民党としては、何としても勝たなければならないというので、国会議員、県会議員、市会議員も応援する。
山内和彦はまったくの素人だし、自民党丸抱えだから、みんなの言いなりになるしかない。
みんなに怒られている山内和彦がかわいそうになる。
三浦博史・前田和男『選挙の裏側ってこんなに面白いんだ!スペシャル』によると、落下傘候補に対し「地元議員はあまりあたたかく迎えてくれない」そうだ。

選挙が公示される前、山内和彦は駅前で、誰も聞いていないのに演説する。
演説といっても、「小泉自民党の山内です」「改革に取り組んでいきます」としか言わない。

『選挙の裏側ってこんなに面白いんだ!スペシャル』に、「駅前や街頭で一人果敢に政策を訴え、ビラをなど配る」辻立ちやドブ板選挙は大切なんだとある。
野田聖子は初めて県議会に立候補した時、1日100軒、選挙までに1万人と会い、そうして14,908票取って当選。
衆議院選では野田本人は7万軒、両親が1万軒ずつ歩き、95,734票で当選。
つまり、まわった家の数だけ得票したことになる。

山内和彦は国会議員、県議、市議たちと一緒に、保育園の運動会でラジオ体操をし、祭りの御輿をかつぎ、農協の会合に出席。
改革を言うのなら、まずこういうところから改めてほしいが、それじゃ当選はできないわけだ。

1000票という僅差で民主党候補に勝った山内和彦は市会議員になる。
でも、応援してくれた市会議員は次の選挙ではライバルだから応援を期待できない。
当選しても、次の選挙でどうなるかわからないのだから厳しい。

現在の川崎市議会議員名簿に山内和彦の名前はない。
次の選挙には立候補しなかったそうだ。
山内和彦の選挙費用はほとんどが自腹だそうで、1年ちょっとの任期では赤字ではないだろうか。

状況が違っていたら国会議員の公募に山内和彦が応じ、杉村太蔵の代わりに国会議員になっていたかもしれない。
山内和彦のほうが期待できそうな気がする。

もっとも、自民党という組織の中で新米の議員に何ができるのかとも思う。
親の七光りで議員になった二世三世議員がほどんど。
国会質疑では下を向いて原稿を棒読みする大臣ばかり。
それなのに失言を繰り返すんだからどうしようもない。
あれなら誰が議員になっても変わらないと思う。
大学の偏差値と仕事ができるかどうかと人間性は関係ないことを教えてくれている。

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