A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち』に、トランプ登場までの舞台装置は3つの要素が重なったとあります。
ホックッシールドが話を聞いたほぼ全員がこのように語った。
①1980年以来、経済基盤が不安定になっているのを感じ、再分配という考え方が出てくるのを覚悟していた。
ティーパーティーの支持者は税金への嫌悪感を持っている。
連邦政府は自分たちから取り上げ、貧しい者に再分配する。
高すぎる税金は生活保護受給者、楽な仕事をしている公務員に無駄に使われていると不満に思っている。
貧困層(移民、難民、働こうとしない怠け者)のために税金を使われたくない。
オバマケアは社会主義だとして反対し、保険料が増えたと抗議する。
マイク・シャフはこのように連邦政府への怒りを述べます。
左派の怒りの発火点は、社会階層の上部(最富裕層)にあるが、右派の場合は中間層と貧困層の間にある。
リベラルはこうしたことをわかっていない。
②文化的に疎外されていることも感じていた。
自分は仕事や生き方に誇りを持つ善良な人間であり、家族を愛し、真面目に働き、国に忠誠を誓っている。
ところが、人工妊娠中絶や同性結婚、ジェンダーの役割、人種、銃、南部連合の旗をめぐる自分たちの考え方が、どれもこれも全国メディアで時代遅れと嘲笑された。
名誉を失ったと感じた彼らは名誉の回復を願っている。
③集団としての規模が小さくなってきたような気もしていた。
白人は自分たちが包囲された少数派のように不安を感じるようになった。
横田増生『トランプ信者潜入一年』によると、白人が少なくなりつつあります。
2018年で、アメリカの全人口に占める白人の割合は60.5%、ヒスパニック系18.3%、黒人12.5%。
2045年には全人口に占める白人の割合が49.7%、ヒスパニック系24.6%、黒人13.1%となり、その後も白人の割合は減り続けると予測されている。
白人のキリスト教徒が減って少数派になった。
多数派の地位を失えば、白人文化や伝統が崩れかねないという恐怖感がある。
共和党は白人中心の党。
トランプが2016年の大統領選挙で得た票のうち、88%までが白人票で占められている。
ヒスパニック系は6%、アジア系が含まれるその他は4%、黒人票は10%に満たない。
トランプの支援者集会でも聴衆はほぼ白人。
白人文化の守護神としてトランプが白人の支持を集めている。
労働者階級の白人が不安に思う気持ちはわかります。
移民が仕事を奪っている。
長年働いてきたのに突然解雇されることもある。
移民が仕事を奪い、英語を話す人が減っている。
自分たちの生活を守りたいだけだ。
でも、なぜトランプなんでしょうか。
貧困層のことなど考えていないのに。
ましてQアノンを信じるなんて、私には理解できません。