A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち』に、1984年に作成された、企業が自社工場の建設を歓迎しない近隣住民にどう対応するかという、コンサルタント会社の報告書が引用されています。
カリフォルニア州廃棄物管理評議会がコンサルタント会社に「住民にとって望ましくない土地利用にあまり抵抗を示さない地域を見つけ出すよう依頼した。
最良策は、すでに抵抗を感じている住民の気持ちを変えようとすることではない、抵抗しそうにない住民を見つけ出すことだと指摘している。
抵抗する可能性が最も低い住民特性
・南部か中西部の小さな町に古くから暮らしている。
・学歴は高卒まで。
・カトリック。
・社会問題に関心がなく、直接行動に訴える文化を持たない。
・採鉱、農耕、牧畜に従事。
・共和党を支持。
・自由市場を擁護。
環境を汚染する企業への規制に反対するのはなぜでしょうか。
企業の戦略、州民の連邦政府に対する不満ということもありますが、ポイントはカトリック(キリスト教福音派では?)と共和党支持(自由市場)だと思います。
小さな政府とは何か、なぜ小さな政府を望むのか、横田増生『トランプ信者潜入一年』の説明がわかりやすかったです。
『トランプ信者潜入一年』は、2020年大統領選挙でトランプ支援集会に参加し、共和党選挙事務所でボランティアをして、トランプ支持者の生の声を聞いた本です。
民主党を支持する理由は、大きな政府が貧富の格差を縮めるべきだという考えがある。
共和党を支持する最大の理由は、小さな政府がある。
小さな政府を掲げる共和党の伝統的手法は、規制を緩和して税率を引き下げることだ。
政府はできるだけ経済に関与せず、税金による富の再配分にも重きを置かず、市場の自由競争に任せる。
共和党支持者の多くは、移民の流入や妊娠中絶に反対し、銃規制の緩和を求める。
2020年は新型コロナウイルス感染症が拡大した一年でもありました。
ミシガン州が新型コロナウイルスの感染防止のために自宅待機命令を出しているにもかかわらず、カール・マンキーは理髪店の営業を再開した。
カール・マンキーの意見は理解できます。
しかし、トランプ支持者のこんな発言はどうでしょうか。
2020年1月9日、オハイオ州での集会に行く。
徹夜をしてでもトランプ支援集会に参加して、トランプを見たいという熱狂的な鉄板支持者が大勢いる。
トランプの話術は聴衆の心をつかみ、飽きさせることがない。
オータム・レンズ(39歳)に話を聞く。
福祉に頼るほど困窮している人は、社会的弱者の味方の旗を鮮明に掲げてきた民主党を支持する傾向が強い。
福祉のお世話になったオータム・レンズはなぜ共和党支持なのだろう。
誰かに頼るということは、アメリカでは弱さや甘えとして見下されがちである。
しかし、自分や子供たちが福祉によって生活してきたなら、社会的弱者の視点から誰に投票するか決めたらいいと思うのですが。
デービッド・カーペンター(53歳)は平日はエネルギー関連会社で働き、日曜日はキリスト教福音派の教会で牧師を務めている。
アメリカでは病気にかかったために毎年何万人もが破産する。
アメリカの保険制度には改革が必要だという証左と、日本人からすると考える。
しかし、カーペンターは違います。
これも驚きです。
保険に入ることができない貧困層はどうすべきだと考えているのでしょうか。
もっとも、アメリカでは民主党支持者も含め、国民皆保険に否定的な意見をもつ人は少なくないそうです。
ウィスコンシン州の集会でクリス・ケセラー(34歳)の話を聞く。
―高い税率と経済成長は両立するのでは。
「僕は小さな政府を支持する自由至上主義者(リバタリアン)だから、アメリカがスウェーデンのようになるのには同意できない。自分たちの決定権は、自分たちの手にあったほうがいいと考えるからだ。政府の意向が大きくなるということは、それだけ国民の権利が小さくなることを意味する。僕は、国民の権利が最大になり、政府の介入は最小限に抑えるべきだと思っているんだ」
新型コロナのワクチン接種やマスクに反対する人がアメリカでは少なくありません。
新型コロナウイルス感染症を軽く考えているんでしょうし、感染の危険よりも個人の自由な選択のほうが大切だと考えているのかもしれません。
これは環境保護のための企業への規制に反対するのと同じです。
環境汚染をあまり気にしないことと共通するように思います。