三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

中島らも『逢う』

2020年03月11日 | 

中島らもさんと8人との対談、というよりおしゃべり。
野坂昭如さんとは酔っぱらい同士がクダを巻いているようなやりとりに、なんなんだこれはと思います。

20歳のころに山田風太郎『甲賀忍法帳』を初めて読み、横山光輝『伊賀の影丸』の忍者たちと同じ忍術を使ってて、山田風太郎さんが真似をしたのかと思いました。
しかし、『甲賀忍法帖』のほうが先。

中島「白戸三平さんでも、ずっと水に棲んでいたからエラができるとか、身体が変わっていくんですよ」
山田「僕ね、読んだことないんです。似てるってのは、全然知らずに同じころ描いていたんじゃないかなぁ」
中島「横山光輝さんの『伊賀の影丸』もまったく一緒なんですよ。死なない忍者も出てきたりしますからね」
山田「それも見たことないんだけど、ちらちらと聞くと、僕のほうが本家らしい」

影丸という名前だって『忍者武芸帖』の主人公そのまんま。
今だったら絶対に盗作だと非難されますが、そのころは誰も問題にしなかったのでしょうか。

松尾貴史さんはスプーン曲げの清田君のトリックは全部わかったそうです。

中島「清田君の場合はやっぱり、パームトリックとか?」
松尾「それに近いですけど、どっちかっていったら、ミスディレクションですね。たとえば、右手を上に上げて見せてる間に、さっと左手で物を取り上げてても、みなさん、あまり目いかないでしょう」
中島「取りかえているわけ?」
松尾「取りかえもあるんですけど、「たとえば、これ曲げます」っていって、次に「時間かかるんです。集中する時間がいりますから」っていうんですよ。それでまた、「たとえば」っていって、別の何かを指さして、「あそこにある棒でも、僕曲げられるんですよ」っていいながら、キュッとこう力を入れる。みんなが視線を手もとに戻したときには、まだ曲がってないふりをして、しばらく待ってるんですよ。「あ、来たぞ、来たぞ」っていって、みんなに注目させる。ほんとはもう曲がってるんですけど、曲がってる方向が目の高さに水平になるようにするから、曲がってるように見えないんですよ」
中島「なるほど」
松尾「こすってるふりをするわけですね。ものすごい時間かけて徐々にやっていくとか、あとはもう、あらかじめ用意してきてるやつで、金属疲労させといて、力入れて震えているようなふりしながら、その震えを利用して、勢いつけて、ポキンと途中で折れたように見せるとか。あと、ベルトの革のところで、グーッと抑えて曲げたりとか」


松尾貴史さんは中岡俊哉さんが主宰する超能力研究会に入会していたそうです。
松尾「たまたま俺はナカオカトシヤでよかったけど、一歩間違えて松本さん(麻原彰晃の本名)のほうへ行ってたらね」
岡本和明・辻堂真理『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』を見ると、中岡俊哉さんは超能力や超常現象をほんとに信じていたようです。

山田詠美さんと占い師。

中島「気をつけないとめちゃくちゃヤバイ占い師っているんですよ。僕の事務所のすぐ近くに、毎晩、占いが出ているんですけど、二千円だっていうから気晴らしに見てもらったんですよ。そうしたら、「あなたはコウコウシカジカ」って、わりと当たっていることは当たっている。そのうち、「数年先に、とんでもない、死ぬか生きるかの目に遭いますよ。私、実はこういう者です」って名刺くれた。何とか教本部って書いてあんのね。で、「今から、私が本部にすぐ電話します。あなたのことを六人の祈禱師がずっと祈禱してくれますよ」っていう」
山田「お金取るんでしょ、それ」
中島「二万円でどうですか?」というから、「いらんわい」といって、去ったんですがね。あれ、たとえば女の子で、「あなたの代はいいけれども、子どもにガンの相が出てますよ」とか嫌なこといわれたら、やっぱり二万円を持ってたら払っちゃうよね」
山田「銀座の日航ホテルの前に出ている女占い師もそう。私と男友達で見てもらったら、私のほうにはすごくよくいって、彼のことを「これは大変だ」というのね。「お祓いしたほうがいいですよ」って。それでいろいろ話を聞いてたら、やっぱりもう死ぬかもしれないみたいなことをいわれて、あげく何万円だというね。「バカにすんじゃねえよ」と思って、私たちは待ち合わせの場所に行ったの。そうしたら、もう一人の待ち合わせていた男の子がすごい暗い顔してきた。「どうしたの?」と訊いたら、「今、占いをしてもらったんだけど、俺、もうじき死ぬかもしんない、って。お祓い受けろ、っていわれたんだけどさ、どうしようかな」っていう。さっきとまるで同じことをおわれたみたいなの。三人で「あの女許せん!?」」


山田詠美さんと中島らもさんは書くのは嫌いだそうです。

山田「楽しいですか、書くの?」
中島「嫌ですよ」
山田「私、嫌いで嫌いでしようがないんですよ、書くの」(略)
中島「苦痛ですか、やっぱり?」
山田「もう苦痛ですね」


井上陽水さんは音楽を聴かなくなったそうです。

中島「趣味を仕事にしてしまって不幸だな、と思うのは、どんなときですか?」
井上「音楽を、聞かなくなったことですね。欧米の音楽とか、いろいろな外国の音楽とか、もちろん日本にもいろいろな音楽があるけど、そういうのを吸収しながら、自分のやり方で表現していく人もいるけど、僕は全然聞かなくなった」
中島「僕も一緒ですよ。他人の書いた小説は読まないですよ。影響されるから」

それじゃ音楽家や小説家になっても楽しくないように思います。
でも、村上春樹さんはカーヴァーやサリンジャーなどアメリカ小説を翻訳しています。
人それぞれでしょうか。

コメント
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