性犯罪は、性欲が強い人がセックスしたくて起こすと思っていました。
そして、被害者にも挑発的な服装をしているなどの問題があるという差別的な気持ちも正直ありました。
しかし、鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』を読んで、それは間違いであり、性犯罪者H性依存症という病気だということを知りました。
性依存症には、置換、盗撮、のぞき、露出、下着泥棒、強姦などがあり、それらは犯罪になる。
アルコール依存症の人は、のどが渇いたから酒を飲むのではなく、酒を飲んで嫌なことを忘れたり、強気になって他人に言いたいことを言えるようになったりしたいから飲む。
性犯罪を「性的欲求」の問題としてのみとらえるのは大きな過ちであり、〝ムラムラして飛びついた〟という理解をしてばかりいては、全く対策に結びつかない。
WHOによる性依存症の定義。
子供を狙った性犯罪をするのは小児性愛者であり、見た目も気持ち悪い人というイメージがあるが、鈴木伸元さんが取材を通して会った人たちの印象は全く違っていました。
精神科医の榎本稔さんによると、性依存症でクリニックを訪れる人は、30代から40代で、会社員が多いそうです。
『やめられない人々』に、「高学歴でちゃんとした職業につき、社会的地位も比較的高い人」がかなり多いとあります。
加害者に行なった調査によると、性犯罪者の60%近くは、「両親からかわいがられて生育している」と答えている。
生育歴によって全ての性犯罪を説明することはできない、
〝性犯罪者〟という言葉がもつイメージと、実際の性犯罪者の実像との間には、大きなギャップがある。
藤岡淳子大阪大学教授はこのように語っています。
衝動的にではなく、計画的に被害者を選んでいる。
万引きを繰り返す人の中にも、「自分がスキルアップしている」「自分はできる人間だ」ということを確認している人たちがいる。
万引きを繰り返す人は、お金がなくて仕方なく盗むのではない。
親を困らせたい、スリルを味わいたい、万引きのスキルを自慢したいなど、多様な動機が存在している。
性犯罪の多くは、支配、優越、復讐、依存などの欲求によって行われる。
秋山千佳『ルポ保健室』によると、性的虐待は、性的欲求による行為だと思われがちだが、実際は、社会生活での無力感を埋め合わせるための、「支配欲求」が主な欲求であるケースが多いそうです。
高揚感、達成感、コントロール感、充実感、反社会的行動をしているという興奮。
緊張感と成功したときの解放感。
犯行がうまくいくことで、そうした欲求は一時的に充足される。
その充足感によって性暴力は習慣化しやすい。
刑務所を出所した性犯罪者の多くは、「自分はまた性犯罪をしてしまうのではないか」という再犯のリスクにおびえながら暮らしている。
榎本稔さんは、性犯罪者には被害者に対する罪悪感がなく、責任転嫁をすると書いています。
これを認知のゆがみといいます。
・最小化 事柄を実際よりも小さく考えようとする。たとえば約束の時間に遅刻したとき、大したことはないと考える。
・正当化 やるべきことをしなかったり、やるべきではないことをした時、「自分は正しい」と考え、主張し続ける。
・遠くのゾウ 責任を回避するために、前もって考えない。
・一般化 失敗、あるいは成功した時、たまたまであっても、「次も絶対失敗する」(成功する)と考えたりして、一般化する。
仕事がうまくいかない→上司に叱られる→死んだほうがいいという気持ちになる→帰宅して性的動画を見る→マスターベーションをする→リフレッシュする→翌朝、変わらない現実にうんざりする→再び仕事でうまくいかない→
ストレスの悪循環を断つため、認知行動療法によって違う発想法を身につける。
とはいえ、簡単ではなさそうです。