「ザ・ビッグハウス」はミシガン大学のスタジアムで、10万人以上収容の全米一のスタジアムです。
想田和弘氏やミシガン大学の教授・学生たちが撮影した映像を、想田和弘氏が編集した『ザ・ビッグハウス』は単なるアメリカン・フットボールのドキュメンタリーではありません。
人、人、人、そして騒音に圧倒されました。
アメリカの今を切り取っていると思いましたが、私の知識ではわからないことばかり。
公式HPの町山智浩「アメリカという巨大な家を映す鏡」という解説を読むと、映画では気づかなかったことを教えてもらえます。
http://thebighouse-movie.com/machiyama.html
試合前の国歌斉唱では観客たちも一斉に歌い、そして歓声を上げる。
スタジアムに向かう群衆に「神に背けば永遠の苦しみを受ける」「神と和解せよ」と説教する人たち。
厨房で料理を作る人、清掃する人、ダフ屋、警官、チアガール、看護師などは、自分の仕事をしないといけないので、試合は見ない。
父親(黒人)が子供にあれこれ言ってチョコレートを売らそうとするが、誰も買わない。
ジョン・ベーコンという誰だかわからないけど、有名人らしき人が長々話したり。
ザ・ビッグハウスのあるアナーバー市の人口の75%は白人で、アナーバー市の世帯平均年収は75,440ドル。
観客のほとんどが白人。
VIPルームの年間レンタル料は6万1千ドルとのこと。
公立のミシガン大学が経営できているのは、卒業生の寄付が大きいわけです。
映画の最後は、卒業生のパーティ(900人)。
最初に挨拶した男性(たぶん黒人)はオハイオ州の生まれ。
9歳のときにテレビでミシガン大学の試合を見て、ミシガン大学に入ってローズボールに出ると言った。
入学したものの、両親はお金がないので、前期はバイトでしのいだが、後期は無理だった。(現在の学費は州民でも4年間で6万ドルかかる)
しかし奨学金をもらって卒業できた、感謝しているというスピーチでした。
この男性は成功したからこそ、こうやって挨拶しているわけで、アメリカンドリームの体現者です。
そのあとの学長の挨拶。
世界から5万2千人が応募し、6千人が入学した。
入学生の平均GPA(高校の成績平均値、4.0が満点)は3.72(たぶん)で、4.0の生徒が4分の1いる。
研究費が130億ドル(たぶん)、奨学金が10%(たぶん)増えたなどと説明する。
皆さんたち卒業生や企業からの寄付、研究助成金のおかげ、これからも寄付をお願いしますということ。
アメリカンドリームになりそこねた貧乏白人たちの話といえば、クレイグ・ガレスピー『アイ,トーニャ』。
1994年、トーニャ・ハーディングの元夫たちがライバルのナンシー・ケリガンを襲撃した事件をもとにした映画です。
なんといっても、結婚・離婚を5回もしたトーニャの母親が強烈。
ネットで調べると、トーニャは異父兄から日常的に性的虐待を受けていたそうです。
https://cinema.ne.jp/recommend/tonya2018051406/
トーニャはDVダメ男と結婚し、別れても腐れ縁が続く。
夫の友達である、親と同居している無職の陰謀論スパイ男がケリガン襲撃の黒幕。
とほほな人間ばかり。
ウェイトレスをしている母親が娘のコーチ代を出すわけですが、ウェイトレスの収入はどれくらいなんでしょうか。
連邦最低賃金は時給7.25ドルで、6年以上据え置かれたまま。
しかし、州によって最低賃金は異なり、カリフォルニア州とニューヨーク州は最低賃金を時給15ドルに上げることを決めています。
ウェイトレスは時間給、固定給ではないので、ネットによると時給は2,5ドルとか5,01ドル。
というのが、ウエイトレスの収入の大半はチップだから。
チップを時給と足したら、時給10ドルから30ドルくらいになるそうです。
ちなみに東京都の最低賃金は10月に27円アップして985円。
10月10日の為替レートで8・7ドルほど、1ドル=100円で計算しても9・8ドル。
『ザ・ビッグハウス』では、アメリカンフットボールの観客に売ってるペットボトルの水がたしか5ドル。
ハンバーガーのコンボ・セットが16ドル。
日本に比べるとずいぶん高い。
それで、ビッグ・マックの値段は国によってどれくらいなのかと思って調べると、こんなサイトがありました。
http://ecodb.net/ranking/bigmac_index.html
ビッグマック指数という経済指標があって、ビッグマックはほぼ全世界でほぼ同一品質(実際には各国で多少異なる)で販売されるので、ビッグマックの価格を比較することで、各国の経済力を測ることができるそうです。
先進国、安定している国が上位を占めています。
この表によると、日本では380円。
ビッグマック指数に従うなら、380円÷5.3ドル=約72円/ドルです。
実際は1ドルが約110円だから、円はかなり過小評価されていることになります。
息子に、日本のビッグマックの値段(380円)が韓国(456円)、スリランカ(418円)より安いのはどうしてかと聞いたら、日本は貧乏だからという返事。
需要と供給の問題で、日本はものがたくさんある(供給大)けど、給料が安い(手取りが月に20万円以下の人が多い)ので買う人が少ない(需要小)ために物価が安い。
外国人観光客が増えたのも、日本の物価が安いから。
もっとも、『ザ・ビッグハウス』のハンバーガーはどうやって食べるのかというほどの巨大さ。
近所のマクドナルドでビッグマックを買うと、それは夜マックといって、ハンバーグが4枚入ってるシロモノですが、高さは6cm。
これじゃ16ドルが高いかどうか(飲み物もついているんだろうし)、単純に比較できません。