三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

平岩弓枝『妖怪』

2015年12月23日 | 

世の中、不景気とか閉塞感とかが続くと、何とかならんか、誰か出てきてぱっと変えてくれんか、そういう期待を持ちます。
小泉人気がそれですし、民主党が300議席を獲得したのも、政界を引退したはずの橋下徹氏へのラブコールがあるのも、変革への期待からでしょう。
けど、それはまずいと思います。

ずっと以前に読んだ平岩弓枝『妖怪』は、天保の改革での悪役である鳥居燿蔵が主人公です。

天保の改革は贅沢に対する取り締まりがやたらと厳しく、その時の町奉行鳥居燿蔵は諸悪の根元としてぼろくそに言われています。
しかし、『妖怪』は決してそんなイヤな奴としてではなく、幕臣としての鳥居燿蔵の立場、信念を語っています。

世の中を変えていくには徐々にしなければならない、と鳥居燿蔵は言います。

現実には蟻がものを運ぶように遅々とみえても、着実に一つずつ実行に移さねばならない。

しかし、人は口先のほうを喝采するものよ。黙々と土を運び、塁壁を作る者より、華々しく糾弾する者のほうに人気が集まる。

平岩弓枝氏は、鳥居燿蔵への高評価に対して、渡辺崋山たち蘭学者は現実を見ないはね返り、あるいは遠山の金さんは陰険な人間だと厳しい。

けど、世の中が変わるのは鳥居流より渡辺流によってだというのも事実です。

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