某氏から神渡良平『中村天風人間学』をいただきました。
いただきものに文句を言うのはなんですが、「われわれは地球という生命体の中の一つである」という副題を読み、あの手の本かとタメイキでした。
中村天風という人、名前は聞いたことがあるけど、どういう人か知らなかったので、ネットで調べました。
中村天風(1876年~1968年)は1906年(明治39年)に奔馬性肺結核(急速に症状が進む結核で、現代では急速進展例と呼ばれる)を発病。
アメリカやヨーロッパに渡り、1911年に日本への帰路の途中、アレキサンドリアでカリアッパ師と会い、カンチェンジュンガ山麓のゴルカ村でカリアッパ師の指導を受けて修行する。
このカリアッパ師ですが、ウィキペディアには本名はカルマ・カギュ派15世カキャプ・ドルジェ(1871年~1922年)とあります。
ところが『中村天風人間学』には、「老インド人」とあるし、ネットでは「六十がらみ」とか「106歳」などとも書かれていて、実在の人物かどうかあやしい。
『中村天風人間学』には、中村天風に影響を受けた人が何人も紹介されており、その中にパラマハンサ・ヨガナンダ『あるヨギの自叙伝』を読んだという人がいて、私もこの本を読んだことがありますが、ホラ話としか思えない個所が多々あります。
カリアッパ師についても似たようなもんで、二人の出会いにしろ、ゴルカ村での修行にしろ、旅先で出会ったあやしげな人物に無理難題をふっかけられて苦労しながら真理を手に入れるという、たとえばカルロス・カスタネダとドンファンといった、精神世界の本ではおなじみのパターンです。
カリアッパ、中村天風の教えとはどのようなものでしょうか。
カリアッパ師から人生の目的や意味を問われた中村天風はこのように答えます。
人生は、さまざまな嵐を乗り越えて、高次の意識レベルに到達し、自己実現するためにあります。そして他の人生を助け、花開かせるためです。
生まれ変わりを繰り返しながら霊性を向上、進化させるという考え(大月俊寛氏の用語を借りれば霊性進化論)でして、目新しい主張ではありません。
カリアッパ師もこう語っています。
中村天風の答えにカリアッパ師はこう応じます。
これは、スピリチュアルではワンネス、つまりは梵我一如ということです。
霊性が向上することによって宇宙霊と一体化するのが人間に生まれてきた目的というわけです。
中村天風の言葉だと
です。
そしてポジティブ・シンキング。
『讃一切種子識経』のこういう訳を神渡良平氏は引用しています。
ただ良いことだけを思い、福が来ることを願いなさい。豊かになったと想像し、うっとりした良い気分になりなさい。失敗や禍が来るなどという考えはすぐに捨てなさい。そうすればあなたの願いはかない、欲しいものは手に入るだろう。
深層意識とは阿頼耶識のことだそうです。
「無限のパワー」とかということ、生長の家などでよく聞く言葉です。
「意識は世界を変える」「夢は必ず実現する」といったことはニューエイジの標語です。
中村天風は言葉の力を強調します。
人々の心に勇気を与える言葉、喜びを与える言葉、何とも言えず、人生を朗らかに感じるような言葉を、お互いに話し合うようにしよう。
建設的で前向きで積極的な生き方をするためには、建設的で前向きで積極的な言葉を使う必要がある、そうすれば幸福になるというわけで、五日市剛氏は中村天風の受け売りだったんですね。