三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

植木理恵『ウツになりたいという病』

2014年05月10日 | 

小学校の教師をしている知人(50代)の話だと、ウツ病になってやめる若い先生が多いという。
ある日突然、学校に来なくなってやめてしまう。
知人は「自分たちの若いころのウツ病とは違う。早く治して学校に行かなくてはと思っていた。しかし、今の若い人はそうじゃない」と言う。
植木理恵『ウツになりたいという病』に「ウツもどき」が増えているとあり、知人が言っているのはこれかもしれないと思った。

植木理恵氏のところに相談にくる人の約6割が「ウツもどき」だという。
「もどき」といっても、本人は本当に苦しんでいるから仮病ではない。
表面上はウツ病に酷似しているけれど、専門家から見ると本質的に何かが違う。

ウツ病の人は、ウツという病気に自覚的でなく、まったと別の内科的症状を探っていったらウツ病が潜んでいたりするのですが、ウツもどきの人は反対にウツ病に対してかなり意識的でいろいろな知識を持っていることが多いのです。


「ウツもどき」の特徴(ウツ病との違い)
①ウツもどきは薬が効かず、ちょっとしたきっかけで簡単によくなる
②子どものころに親と確執があったというような何らかの精神的経歴を従来のウツ病の人は持っていることが多いのに対し、ウツもどきはそうした来歴がなく突然ウツ状態になるケースが多い
③ウツ病の人は、仕事がスローになったり、認知症の初期症状に似たものが出てきたりと、発症する前に何らかのサインを発しているが、ウツもどきにはそうした兆候が見当たらない

「ウツもどき」の三つのタイプ
①ウツになりたい病 ウツ病というラベルを貼られることを望む
②アイデンティティの不安定さからくるウツ的症状
③新型ウツ

この中で新型ウツというのが興味深い。
新型ウツとウツ病の違いをいくつか。

新型ウツの人は見るからに印象が暗い。
ウツ病の人は暗いというよりボーッとした感じを受けることが多い。

新型ウツの人は薬物療法がほとんど効かない。
ウツ病の人は薬物療法で治ることが多い。

新型ウツの人は問題は自分にはない、いつも悪いのは親であり、友人であり、同僚や上司であるという他罰的傾向が強いから、自分に問題があると見なされると理不尽な気持ちになる。
ウツ病の人は自分を責める。

新型ウツの人は自己評価が高い人が多い。
ウツ病の人は自己評価があまり高くない。

新型ウツの人は、主観性が強いので客観的視点が欠けている。
ウツ病の人は客観的にものごとを見られる傾向がある。ただ、他人の目に敏感であるから、自分がウツ病だということを認めようとしない。いきなり「私はウツです」と言って診察してもらうことは少ない。

ウツ病の人は自分が病気であることに否定的なので、カウンセリングをすっぽかしたり、ウツ病と向かい合うことから逃げ腰の姿勢で治療を受ける傾向があります。


新型ウツの人は他人に責任を転嫁していくので、ウツ症状を起こしやすい本来の要因を自分の中に探ろうとしないため、人間的な成長がなかなかない。
ウツ病の人は呻吟しながらも自分の内面を見つめていくので、ウツから回復した時には人間的成長がある。

その他、新型ウツの特徴。
新型ウツの人は、会社に行っている間はウツになるけれども、週末になると趣味の釣りやダイビングなどに出かけるという、傍から見ると本当にウツ状態なのかと思ってしまうようなことをする。しかし、会社に出勤するとウツ状態に陥ってしまう。
新型ウツの人には情に響くようなはげましは通用しない。ムッとされたり、不機嫌になったりする。それは「あなたに問題があるんですよ」というニュアンスになってしまうから。

ということで、新型ウツの本人はしんどい思いをしているんだろうけど、『ウツになりたいという病』を読むと、いやなことをしたくないだけという感じがしました。

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