三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『作家の酒』

2010年05月09日 | 

作家たち(漫画家やデザイナーもいる)のなじみの店と酒の肴の写真を見てると、よだれが出てきそうになる。
東京に住んでたら早速行ってみるのに。

彼ら酒飲みたちは何歳まで生きたのか、ちょっと気になる。
『作家の酒』に出てくる26人(物故者ばかり)の中で、井伏鱒二の95歳は別格として、草野心平85歳、埴谷雄高87歳と80代の人もいるが、山口瞳68歳、吉田健一65歳、池波正太郎67歳、星新一71歳、山田風太郎79歳と、70歳前後が多い。
中上健次46歳、立原正秋54歳、大藪春彦61歳。
酒飲みが平均寿命まで生きるのは難しいのだろうか。

田村隆一は目覚めるとワインを飲み始め、午後はウイスキーの水割り、晩酌は冷や酒。
そして、75歳でなくなる最後の日、
「もうだめだから好きなものをあげてとお医者様に言われたの。冷や酒を吸い飲みに入れてあげると、一合飲んで『うまい』と喜び、数時間後、眠るように逝きました」(悦子夫人談)とのことで、うらやましいかぎりである。

稲垣足穂はアルコール依存症だったらしく、
「晩年は作品を書き上げると、倒れるまでウイスキーを飲むようになった」そうだ。
それでも76歳まで生きたのだから大したものである。
娘の都さんの話では「父が酒を飲んだのは、登山家が山に登るように、そこに酒があるからだ、という感じだったのかなあ、と思うのです」とのこと。

田中小実昌の次女田中りえさんは「父は、インシュリンの注射を打ちながら、七四歳まで、大酒を飲んだ」と書いている。
これまたすさまじいが、
「お父さん、好きなお酒をたのしく飲めて、ハッピーだったね」と娘から言われるいい人生だったんだろうなと思う。

で、気になるのが、『作家の酒』で紹介されている人たちは優雅な生活をして、金回りがよさそうだということ。
吉田健一や三島由紀夫は働かなくてもお金がありそうだし、赤塚不二夫や黒澤明は本業で稼いでいるのだろうけど、純文学作家ではそうはいかないのではないだろうか。

ベストセラー作家は別として、たいていの本は初版の発行部数が数千冊だという。
一冊1500円の本が5000冊売れたとしても、印税が1割なら75万円の収入しかない。

純文学作家なら年に一冊ぐらいのペースだろうから、印税だけではとてもじゃないけど食べていけない。
講演や雑文で稼ぐとしても、名前が売れてなければ声はかからないだろう。

出版関係の某氏に、阿刀田高が小説だけで生活している小説家は日本ではせいぜい200人だと書いていると話したら、某氏は200人もいないんじゃないかと言ってた。
飲み代はいったいどこから出てくるのだろうか、人の懐が気になるのでした。

コメント (20)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする