三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

中国:日本人に死刑執行

2010年04月08日 | 死刑

中国:日本人に死刑執行…国交正常化後初めて
中国遼寧省高級人民法院(高裁)は6日午前9時半(日本時間同10時半)、麻薬密輸罪で死刑判決が確定した赤野光信死刑囚(65)=大阪府出身=の刑を大連市看守所で執行した。中国で日本人の死刑が執行されたのは1972年の日中国交正常化以降初めて。日本外務省によると、戦後、海外で刑事犯として日本人の死刑が執行された記録はないとしている。
 死刑執行から5分後、同法院から在瀋陽日本総領事館大連出張駐在官事務所に連絡があった。新華社通信によると、中国最高人民法院(最高裁)は声明を発表し、「麻薬密輸について疑いのない証拠があり、法に基づいて死刑を宣告し、執行した」と説明、死刑執行の正当性を強調した。
 判決によると、赤野死刑囚は06年9月に大連の空港で、共犯の石田育敬受刑囚(同罪で懲役15年確定)と、約2.5キロの覚せい剤を日本に密輸しようとして警察に拘束され、1審判決を経て昨年4月に同法院で死刑が確定していた。
 同罪で死刑が確定した、名古屋市の武田輝夫(67)▽岐阜県の鵜飼博徳(48)▽福島県の森勝男(67)の3死刑囚についても、中国政府は8日にも刑を執行すると日本政府に通告している。
 日本政府はいずれの刑執行にも「刑が重すぎる」と懸念を表明しているが、中国政府は麻薬犯罪には厳罰で臨む姿勢をみせている。一方、赤野死刑囚と家族らの面会を執行前日に認め、執行を1日延期するなど配慮も示していた。
毎日新聞4月6日

日本には中国人死刑囚がいて、1人が執行されているわけだから、いくら懸念を表明しても相手にされるわけがない。
とはいっても、麻薬密輸罪での死刑執行であり、「人の命を奪っていない犯罪で死刑は厳しすぎる」という意見がある。

たまたま坂田精一『ハリス』を読んでいて、こういうことが書かれてあった。
1858年に調印された日米修好通商条約は、アメリカ代表のハリスが治外法権を強要した不平等条約だということが通説になっているが、それは誤りだと坂田精一氏は言う。
治外法権、すなわち「外国人が日本の国法を犯した場合に、日本の法律と裁判によらないで相手国の法律と責任者によって処罰するという規定」は、日本の主権を犯すものである。
しかし、徳川時代には外国人が日本で法を犯すことがあれば、日本の法律ではなく、外国の法律で罰することが、徳川家康以来の祖法だったそうだ。
だから、ハリス来朝以前の日英、日露、日蘭の和親条約もそうなっており、ハリスが強要したわけではない。
そして、坂田精一氏はこう言う。

当時の日本の刑法は苛酷きわまるものだった。
「十両以上の盗みは引き回しの上、打ち首。手形の不渡りも、十両以上は同罪。大名の行列を横切った場合は、その場で斬り捨て、というように、当時の先進諸国の法律とは到底比較にならない乱暴なものだったのである」
「このような事情があるので、諸外国は日本と国交を開くにあたり、日本に在住する自国民をこうした法律から保護するために、「領事裁判」を希望したのである」

もし日本もアメリカでの治外法権を主張したらどうなるか。
「たとえば、アメリカに在留する日本人があやまって大統領に無礼を働いたとする。大統領はアメリカの元首で、日本の将軍に匹敵するものであるから、日本の法律によれば文句なしに死刑に値する。日本の商人がアメリカにおいて十両の不渡り手形を出したとする。これも死刑である。しかし、アメリカの法律によれば、罰金、あるいは若干の有期刑ですむであろう。とすれば、当の本人はそれを希望するだろうし、日本政府としても強いて日本の法律を行使するような馬鹿なことはしないだろう」
「そこに思い至れば、平等も不平等もないのである。あるものは、両国の国情の相異だけである」

中国では死刑にできる罪名は69もあり、殺人や麻薬密輸以外にも経済犯、収賄や横領なども死刑の対象となるそうだ。
「比較にならない乱暴なもの」のように感じる。
日本人が中国で麻薬密輸で死刑になるのは、江戸時代の日本で十両の不渡りを出したアメリカ人が打ち首になるのと同じである。
だったら、日本政府は中国に強く抗議してもいいように思う。

コメント (7)
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