とはいえ、それまででも小鳩婦人が世話をしていた・・ということではなく、小鳩婦人が婆やと呼ぶ高貴な侍女が世話をしていたのだ。では、何が上手くいかないのかと言えば、細かい動きが制限去るようになった…ということだ。婆やは、みぃ~ちゃんに万一のことがあれば自分が怒られ、最悪の場合は失職も考えられたから、一挙一投足に至るまでみぃ~ちゃんを監視した。結果、勝手気ままだった邸内外の出入りが出来なくなったのである。これはみぃ~ちゃんにとっても小次郎にとっても、ゆゆしき事態だった。さらに悪いことには、一、二ヶ月は小鳩婦人が帰れない・・ということだった。さて、どうしたものか? …と、二匹は考え捲(あぐ)ねた。
『私、家出しようかしら…』
『家出とは穏やかじゃないよ、みぃ~ちゃん』
『だって、あの婆やったら酷(ひど)いのよ。私を監視してんだから』
みぃ~ちゃんにしては珍しく、愚痴った。
『…婦人が入院されるとは僕も思わなかったよ』
『ご婦人、あれで見えて、私にはなかなか調法してるのよ』
みぃ~ちゃんはそういう目で小鳩婦人を見ていたのか…と小次郎は思った。はっきりいって打算的なのだ。少しくらいは愛情を持ってるだろうと思っていた小次郎だったから、少しショックだった。自分はご主人の里山に対しては、I obey to you[あなたに従います]だったからだ。