水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<44>

2015年05月27日 00時00分00秒 | #小説

 そうこうして、二匹は軽めのデートを終えた。みぃ~ちゃんがその後、小次郎がプレゼントした折り詰めの鰻(うなぎ)の蒲焼を食べたかどうかまでは定かではない。
 次の日から、また小次郎はマスコミに弄(もてあそ)ばれるように忙(いそが)しくなった。みぃ~ちゃんの方では、少し事態が変化しだしていた。小鳩(おばと)婦人がみぃ~ちゃん用にと猫御殿を建て始めたのである。もちろん小鳩婦人が建てる訳もなく、専門の建設業者が建てたのだが、その建設業者は東証に一部上場の超一流の建設会社だった。小鳩婦人がこの会社の有力株主だということで、社長自らが出向いて工事を指揮したようなことだった。
「野良がみぃ~ちゃんに近づいているようで…」
「まあ! うちのみぃ~ちゃんに? なんということざまぁ~すかしら!!」
 里山から事情を聞いた小鳩婦人の憤慨(ふんがい)は尋常なものではなかった。そして、その対策として猫御殿建設の運びとなったのである。構造は防犯カメラとセンサーが完備した警備会社も驚く治安万全の御殿に設計されていた。小鳩婦人のアイデアで、小次郎以外の猫にはセンサーが反応する仕掛けに特殊プログラミングが施された機器類だった。いわば、スィートな小次郎とみぃ~ちゃん専用御殿と言えた。
 ところが話は上手(うま)くいかないものである。専用御殿が完成を見ようとした少し前、小鳩婦人が俄かの病で入院する騒ぎとなった。無理した動作によるギックリ腰である。高貴が許さない小鳩婦人はそのことをひた隠し、入院した。むろん、お金に困る小鳩婦人ではなかったが、その心配はさておいて、みぃ~ちゃんは侍女(じじょ)風の高貴な老女に世話されることになった。


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