水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<20>

2015年05月03日 00時00分00秒 | #小説

 みぃ~ちゃんにすれば、勿怪(もっけ)の幸(さいわ)いというところである。渡りに舟と救いを求めた。
『おまわりさん! 助けてっ!』
『んっ? お嬢さん、いかがされました?』
 ぺチ巡査は老いぼれて弱った脚を伸ばしながら、欠伸(あくび)をした。
『チェッ! 邪魔が入ったか。またなっ!』
 タコは疾風(はやて)のように駆け去った。
『あれは確か…そうそう! ドラの手下のタコだな。また、悪さを…』
『そうなんですか?』
『ええ、注意して下さいよ、あの手合いには…』
『有難うございました。そうしますわ…』
 みぃ~ちゃんはお上品に前足で顔を撫(な)でつけた。
『では…。また何ぞあれば、ご相談下さい』
 ぺチ巡査は、ゆったりと歩き去った。そのあと、やってきたのが小次郎だ。まるで、演劇かドラマ、映画のようなタイミングのよさで、この順序が少し違えばタコと遭遇することになったのだから、運とは妙なものだ。結局、小次郎は運がある猫・・ということになる。
『先生! えらいことよっ!』
 小次郎の姿が見えるや、みぃちゃんは、シカジカカクカクと起きた経緯(いきさつ)を説明した。
『なるほど! タコねぇ~。またぺチさんに、いい手立てを考えてもらうしかないなぁ~。僕はいいけど、君が困るよな…』
 小次郎は人間が腕組みするように身体に巻いた尻尾(しっぽ)の先を軽く回した。


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