『ただいまぁ~~』
小次郎はホットライン[小次郎専用の家の内外を行き来する通路]からキッチンへ入ると、いつもより大きめの人間語でひと声、ニャゴった。
「なんだ…帰って来たじゃないか」
里山は安心して溜め息混じりに言った。
『なんだとは、随分な言われようですね。そりゃ、帰ってきますよ』
小次郎は愉快そうに返した。
「そうじゃないのよ小次郎。あなたの帰りが、いつもより遅かったからね。それで…」
珍しく沙希代が里山をフォローした。
『ああ、そうでしたか。実はそれには訳がありましてね』
「ほう…。その訳とやらを聞こうじゃないか」
『はい。ハプニングがありましてね、シカカクシカカクだったんですよ』
「そうだったの。シカジカカクカクじゃなくシカカクシカカクだったのね」
『ええ、シカカクシカカクだったんです』
「そうか、シカカクシカカクか…」
公園で海老熊(えびくま)に出会った一件は、すべて里山と沙希代へ伝わった。
「それにしても、海老熊とは妙な名だな、ははは…」
突然、里山が笑いだした。
「それもそうね、フフッ」
沙希代も里山のあとに続いて噴(ふ)き出した。