水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<36>

2015年05月19日 00時00分00秒 | #小説

『ただいまぁ~~』
 小次郎はホットライン[小次郎専用の家の内外を行き来する通路]からキッチンへ入ると、いつもより大きめの人間語でひと声、ニャゴった。
「なんだ…帰って来たじゃないか」
 里山は安心して溜め息混じりに言った。
『なんだとは、随分な言われようですね。そりゃ、帰ってきますよ』
 小次郎は愉快そうに返した。
「そうじゃないのよ小次郎。あなたの帰りが、いつもより遅かったからね。それで…」
 珍しく沙希代が里山をフォローした。
『ああ、そうでしたか。実はそれには訳がありましてね』
「ほう…。その訳とやらを聞こうじゃないか」
『はい。ハプニングがありましてね、シカカクシカカクだったんですよ』
「そうだったの。シカジカカクカクじゃなくシカカクシカカクだったのね」
『ええ、シカカクシカカクだったんです』
「そうか、シカカクシカカクか…」
 公園で海老熊(えびくま)に出会った一件は、すべて里山と沙希代へ伝わった。
「それにしても、海老熊とは妙な名だな、ははは…」
 突然、里山が笑いだした。
「それもそうね、フフッ」
 沙希代も里山のあとに続いて噴(ふ)き出した。


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