『出来るだけ早くお願いします。なんと言っても、みぃ~ちゃんは、いいとこのお嬢さんですから…』
『その手の荒事は苦手(にがて)だと?』
『おっ! 今度は歌舞伎ですか?』
『ああ、まあ…』
ぺチ巡査が頷(うなず)いのを見て、小次郎はやはり古いな…と思った。ただ、小次郎も歴史好きで古風だったから、レトロ的にぺチ巡査の古さをいい感じに捉(とら)えていた。
『ともかく、早めに…』
『ああ、ツボ巡査が着任するまでに、なんとか手立てを考えとくよ』
『ドラのときのようなのを、ひとつお願いします!』
『うん、任せなさい』
ぺチ巡査もそう言われては悪い気がしない。実のところ、ドラが二度と姿を見せなくなったのはぺチ巡査のお蔭ではなく、里山に頼んで作ってもらった防犯装置? によってである。だが、老いたぺチ巡査の手前、そうヨイショ! したのだ。ぺチ巡査は、小次郎に頼まれたドラの一件を、すでに忘れていた。
タコが出没するといけない・・ということで、小次郎はみぃ~ちゃんに、しばらく外出しないように釘をさしておいた。そちらの心配は一応、小康を得て、小次郎は交番に日参して新任の巡査を待つことにした。その新任の若いツボ巡査が交番へ赴任してきたのは、それから一週間ほどしてからだった。