「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表するものと(使用者と)の書面による協定」このフレーズは15年間の講師生活でどれだけ口にしただろうといつも思い出します。実務においては単に「労使協定」と言ってしまうのでほとんどこのフレーズを口にすることはないのですが。
社労士試験に合格した時は恥ずかしながら「労使協定」=36協定だと思っていました。講師になって初めて労使協定とは36協定を含む上記の書面協定であり、賃金からなにがしかを控除する場合、1年単位の変形労働時間制や専門業務型裁量労働制を採用する場合に必要な条件と勉強したという感じです。
この労使協定というのはその成立要件や協定の当事者など深いテーマが色々あるので私は大好きなのですが、なんといっても一番好き(この感覚は自分は変わり者なのだろうなと自覚しています)なのは「労使協定の効力」についてです。
労働基準法上の労使協定の効力は、一般的には、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという「免罰効果」をもつものであり、労働者の民事上の義務は当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要である(昭和63.1.1基発1号)。
要するに労使が合意したという証である労使協定を締結することにより、労働基準法の原則規定の例外の条件を満たすことになり、例外的な運用をしても労働基準法に違反することはなく「罰を免れる効果がある」ということです。また、労使協定の効力はそれ以上ではないため、例えば労働者に時間外労働をさせるためには、労使協定に加えて、労働協約や就業規則等にその根拠が規定されている(例えば時間外労働であれば就業規則に「時間外労働をさせる場合がある」という規定があること)ことが必要であるということになります。
1月末から3月にかけて、労働契約法・高年齢雇用安定法・派遣法の改正を顧問先や業界団体などのセミナー等でお話しさせていただくことになっており明日から本格的に準備する予定です。それに先立って先日三上弁護士のセミナーを受けてきたのですがなるほどと思う点がありました。高年法の今回の改正では、高年齢雇用確保措置の継続雇用制度の基準は原則廃止になりますが、年金の支給開始年齢に合わせて経過措置が設けられています。要するにまだ経過措置により継続雇用制度の基準は労使協定に残ることになるケースが多いと思うのですが、この基準を設けるなら労使協定だけではなく就業規則等にも規定しておかなければならない。なぜならば労使協定だけでは免罰効果を発生させるだけで、根拠にはなりえないからということでした。大好きな労使協定の効力のところだ!とうれしくなってしまったのでした。
ちなみに、この基準は平成25年3月31日までに規定しておかないと、4月1日以降は新たに設けることはできないことになることも注意が必要です。
明日からまずは顧問先にご連絡するための、改正法の実務対応の取りまとめを始めます。だいたい頭の中にこれまでざくざくと入れてきた状態を整理して行くので、ちょっと楽しみです。お正月休みも長かったですしその後の3連休で、ちょっとなまってしまったような気がする頭をそろそろ本格的に回転させていきたいと思っています。