真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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飼い慣らされたか、日本のメディア

2023年01月26日 | 国際・政治

 ベトナム戦争当時とは異なり、日本の主要メディアが、すっかりアメリカに飼い慣らされた報道をするようになったと思います。 

 1月20日、「いま聞く インタビュー」という欄で、朝日新聞の国末憲人記者が早稲田大学の古谷修一教授にインタビューした内容が掲載されましたが、そのなかに、
ロシアがウクライナに侵攻した時、これで時代が変わると考えた人は少なくなかった。しかし、そこで想定されたのは、軍事大国が力にモノを言わせて好き勝手に振舞う秩序なき時代の到来だった。ウクライナの反撃によってその恐れは遠のいたが、古谷さんの考える新時代は、そのような恐怖との時代とは逆だ。人権を中心に据えた希望の抱ける時代である。
 という文章がありました。
 現在、世界を相手にできるほどの圧倒的な軍事力を持ち、かつ世界最大の経済大国であるアメリカを抜きに、国際社会を論じ、ウクライナ戦争を語ることはできないと思います。にもかかわらず、国末憲人氏は、ウクライナ戦争の背景やウクライナ戦争に関わる国際情勢を語ることなく、上記のような論述をされています。きわめて観念的で、一面的な認識だと思いました。

 また、1月23日には、論説委員、駒木明義氏の「ウクライナ侵攻 行方は」と題する長文が掲載されましたが、副題は、”キーウ攻略 なお固執するプーチン氏”となっていました。そのなかに、下記のようにありました。
ウクライナはロシアの属国としてしか存在を許されないという信念を、プーチン氏は開戦後、繰り返し表明している。プーチン氏が欲しているのは、あくまでウクライナ全体なのだ。
 ではウクライナの頑強な抵抗をどう見て得いるのか。昨年末に開かれた国防省の幹部会では、次のように述べた。
「(ソ連崩壊後)我々の地政学的な競争相手は、旧ソ連地域、中でもウクライナの洗脳に着手した。」
「ウクライナ国民の洗脳は数十年わたって続いてきた」
 ウクライナの人びとが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加盟したいと考えるのは、欧米に洗脳された結果だというのだ。
 開戦を決断した時点でプーチン氏は、ロシア軍が多くのウクライナ人から歓迎されると本気で信じていたようだ。今も自身の過ちを直視できず、ウクライナ人の洗脳を解くための正義の戦いという荒唐無稽な物語に、すがっているように思われる。
 実際には今回の戦争では身の毛もよだつような人道犯罪が繰り返されており、ウクライナの人たちの対ロシア感情は決定的に悪化している。

 アメリカの関わりを抜きにウクライナ戦争を語ろうとするから、このようにすべて独裁者、プーチンの野望に基づく、残酷な戦争であるかのような論述をすることになるのだと思います。
 ”ウクライナの人々が欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加盟したいと考えるのは、欧米に洗脳された結果だ。”というプーチン大統領の主張は、”唐無稽な物語”でしょうか。
 私は、駒木明義氏に問い質したい気がします。
 それでは、オバマ政権下で国務次官補を務めてウクライナ問題を担当し(2020年にバイデン政権が誕生すると国務次官に復帰)、ウクライナやロシアから内政干渉を批判されていたビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)が、「米国は、ソ連崩壊時からウクライナの民主主義支援のため50億ドルを投資してきた。」と発言している事実についてはどのように考えるのかと。50億ドルものお金は、いったい何に使われたのかと。

 私は、メディアのこうした報道を受け入れ難く、世界をリードしてきたアメリカという国の政治や諸政策の権力的で非民主主義的な側面を、いろいろな人の著書をもとに考えるようにしています。

 今回は「密約 日米地位協定と米兵犯罪」吉田敏浩(毎日新聞社)から、「第一章 密約の闇」を抜萃しました。
 私は、一日も早く不平等な日米地位協定を改め、「対等な日米関係」を確立して、中国やロシアと完全に自由な交流や貿易を進めて、日本の発展に結びつけてほしいと思います。
 アメリカの戦略に基づいて、中ロを敵視する姿勢を改め、米軍のやりたい放題を止めることができれば、経済的にも発展の可能性が広がり、北邦領土の問題も良い方向に進めることがきるのではないかと思います。
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                     第一章 密約の闇

 日米安保改定50周年の今年は、民主党中心の連立政権が唱えるように「対等な日米関係」へと転換できるかどうかの岐路にあたっている。沖縄の普天間基地移設問題が日米関係の争点となり、日米関係をめぐる論議も盛んだ

 安保改定50周年、密約の闇をあばく
 外務省では、政権交代直後の2009年9月16日、岡田克也外相が「外交は国民の信頼なくして成り立たない。しかるに、いわゆる『密約』の問題は、外交に対する国民の不信感を高めている。今回の政権交代を機に、『密約』をめぐる過去の事実を徹底的に明らかにし、国民の理解と信頼に基づく外交を実現する必要がある」として「調査命令」を発し、日米密約の調査がされてきた。その対象なったのは、四つの密約である。
 ①核兵器を積んだ米軍艦船の日本寄港や領海通過、同様の米軍機の一時飛来が、日米の事前協議なしにできるとする密約
 ②朝鮮半島有事の際は、日米の事前協議なしに、米軍が在日米軍基地を自由に使用し出撃できるとする密約。
 ③沖縄返還後も、有事の際は米軍が沖縄に核兵器を再び持ち込めるとする密約
 ④沖縄返還時の米国が負担すべき土地の原状回復補償費を日本が肩代わりする密約
 ①と②は1960年の安保改定時に、③と④は72年の沖縄返還時に結ばれた。何れも米国側に有利な裏の取り決めで、日本政府の対米従属の結果である。政府はその従属的姿勢を取りつくろうために、密約の存在をひた隠しにしてきた。
 しかし、今回の四密約の調査により、歴代の自民党政権と外務省が「存在しない」と言ってきた核持ち込みの密約関連文書などが発見された。国家の嘘が白日のもとにさらされた。国家が密約を結び、情報隠蔽をする黒い構造にひび割れが入った。
 しかし、政府がまだ事実解明に踏み切っていない密約がある。それは日米地位協定(巻末資料2)に関する密約群である。日米地位協定とは日米安保条約(巻末資料1)の付属協定で、在日米軍と米軍・軍属・その家族の権利や義務など法的地位を定めている。1960年の安保改定以前は行政協定と呼ばれた。
 全部で28条あり、施設・区域(基地や演習場など)の提供方式、米軍の基地使用権、米軍部隊の出入国や国内移動の権利、米軍による日本の公共役務の利用優先権、関税や課税などの免除、物資や労務の調達方式、駐留経費の負担方式、刑事裁判権、民事裁判権などに関する規定がある。
 日本が提供する施設・区域が限定されておらず、日米合同委員会の合意で決められる。
 「全土基地方式」とも呼ばれ、米軍に有利である。米軍は出入国自由、基地の運営・管理などに必要な全ての措置を執れる。基地返還の際の原状回復や補償義務を負わない、公務中の事件・事故の第一次裁判権保持など、多くの特権を認められている。米軍側に有利な取り決めが多い。

 不平等な日米地位協定
 たとえば最近では、2009年11月7日に沖縄県読谷村で、米兵が乗用車を運転中、66歳の日本人男性をはねて死亡させた轢き逃げ事件でも、犯人米兵の身柄引き渡しに米軍側が応ぜず、日本側による起訴・身柄引き渡し・逮捕まで2ヶ月もかかった。犯人米兵は読谷村にある米陸軍トリイ通信基地所属の二等軍曹で、男性をはねた後、そのまま基地にもどった。男性は道路沿いで血を流し死亡しているところを発見された。死因は頸椎骨折などだった。事故後、米兵が証拠隠滅のためであろう、乗用車を自動車修理工場に持ち込み、その車に男性の髪の毛や血がついていたことから、沖縄県警の捜査で米兵が特定された。
 県警の知らせで米軍側は犯人を基地内で監視下に置いた。米兵は県警による任意の事情聴取に3日間応じただけで、後は拒否した。地位協定では、被疑者の身柄が米軍側の手中にあるときは、起訴までは米軍側が拘束すると定めている。そのため、捜査が難航し、起訴までに時間がかかった。起訴前の速やかな身柄引き渡しを求める村民大会や県議会決議もなされたが、米軍は起訴前の引き渡しに応じなかった。
 1995年の沖縄での米兵による少女暴行事件を契機に、地位協定の改定を求める世論の高まりを受け、日米両政府は同年10月、米兵の身柄引き渡しに関する「運用の改善」に合意した。それは、「殺人または強姦という凶悪犯罪」に限って、日本側が起訴前の身柄引き渡しを要請すれば、米国側は「好意的考慮を払う」というものだった。
 しかし、あくまでも「好意的配慮を払う」ということであり、起訴前の身柄引き渡しの実現は極めて難しい。
 このように、罪を犯しても基地に逃げ込めば、日本側に身柄を拘束されないという米兵らの意識が、犯罪の温床になっている。米軍優位の不平等な地位協定は、米兵犯罪取り締まりに対する壁ともなっている。
 2004年8月に普天間基地の米海兵隊ヘリコプターが沖縄国際大学に墜落した事故でも、米軍が一方的に現場を封鎖し、日本側関係者を排除して機体を回収するなど、地位協定は米軍に特権的地位を与えてきた。
 その協定の背後に、米軍優位を絶対化する密約群が隠されているのである。
 日米安保体制のもと、戦後日本の米国に対する従属的な姿勢を象徴するのが、不平等な日米地位協定だ。現政権は連立政権の政策合意で「日米地位協定の改定を提起する」と掲げている。
 また、「情報公開の推進」も重要な政策として打ち出している。たとえば仙谷由人行政刷新相(現国家戦略相)も、「国民が見えない秘密の約束や協定があれば、それを見てもらう作業も進めたい」と述べ、行政の情報公開に強い意欲を示した(『朝日新聞』2009年10月10日)。
 政権交代と安保改定50周年を機に、密約を生む国家の秘密主義を正し、「国民の理解と信頼に基づく外交」を実現し、不平等な日米関係を根底から考え直すためにも、地位協定の密約の策闇に解明の光を当てるべき時がきている。 
   

 


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