安倍前首相がしばしば使用したので国会でも問題になった言葉を借りれば、『「反日」という病 GHQ・メディアによる日本人洗脳を解く』(幻冬舎)の著者・木佐芳男氏は、本質的な問題や大事なことを論じることなく、「印象操作」をくり返しているように思います。
例をあげれば、「GHQと<反日日本人>では、”左翼文化活動に参加した者が多く所属”とか、”GHQが作成した憲法草案には、土地などを「国家に帰属する」とした共産主義的な考えの部分があった。”とか、”占領軍には左翼のルーツがはっきりとあったわけだ。”というのがそれです。私は、それがGHQによる日本の民主化にどのような影響をもたらしたのか、また、現実にどういう問題として戦後の日本にあらわれているのかという大事なことを論ずることなく、「左翼」とか「共産主義」という言葉を使って、GHQの取り組みを語っているので、印象操作だと思うのです。
また、高橋史朗氏の文章を引いて、”これらの占領軍と癒着した<反日日本人>が戦後日本の言論界・学界・教育界などをリードしてきた事実を直視する必要がある”などと書いています。すでに、「天皇と神道」ウィリアム・P・ウッダート著:阿部美哉訳(サイマル出版会)から引いて取り上げたように、GHQは、一方的に命令を下さず、日本人の考えを聞きながら慎重に民主化を進めました。それを、”これらの占領軍と癒着した<反日日本人>が・・・”という人たちは、戦後の民主主義が受け入れられず、戦前の思想を継承しているから、そういう見方をするのだろう、と私は思います。
また、”GHQ民間情報教育局(CIE)は、「マルクス主義の歴史学者だった羽仁五郎と密談を重ねて日本教職員組合の結成を擁護」”などとありますが、民主主義の国では、組合の結成は労働者の権利です。戦前の日本では、教職員が組合を結成して、教育の改革や待遇の改善を訴えることなど許されませんでした。だから、民主化の一環で、GHQが組合結成の後押ししたことに問題があるとは思えません。「密談」という言葉も気になります。組合の結成は、民主主義国家では当たり前のことなのに、あたかも、秘かに悪事を企んで、日本教職員組合を結成したかのような表現だと思います。
”羽仁五郎は・・・戦前に思想弾圧されたため戦後は脚光を浴びたが、じっさいにははなはだ問題のある人物だったとされる。”ともありますが、”はなはだ問題のある人物だった”という内容や根拠、また、誰の指摘かさえも示されておらず、とても問題のある「印象操作」だと思います。
「GHQは、都合の悪い教員をつぎつぎとパージ(公職追放)しながら、”占領体制に従順”で”民主的”な教員を飼い慣らすことに成功した。」という表現もいかがなものかと思います。戦前は、軍国主義者や超国家主義者が、日本の戦争を指導し、世界を相手に、日本人だけで300万人(他国を含めると2000万人)を超えるといわれる犠牲者を出す戦争をしたのですから、その人たちを公職から追放しなければ、日本の民主化はできなかったと思います。もちろん、なかには不適切な公職追放もあっただろうと思いますが、日本の戦争を指導し、軍国主義を煽っていた人たちの追放を非難することはできないと思います。
日本はポツダム宣言を受諾して降伏した国です。そのポツダム宣言には、下記のような一文があります。
”六 吾等ハ無責任ナル軍國主義ガ世界ヨリ驅逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序ガ生ジ得ザルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本國國民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ擧ニ出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルベカラズ” 1945年7月26日 ポツダム(potsdam,germany)で署名(外務省訳)”
したがって、日本の戦争を指導し、煽った人たちは、日本が降伏した時点で、責任をとって、自ら身を引くべき人であったとも言えるように思います。それを、”GHQは、都合の悪い教員をつぎつぎとパージ(公職追放)しながら”などという木佐氏の受け止め方は、いかがなものかと思うのです。
次に「誤解で消された教育勅語精神」に関してですが、木佐氏はここでも、大事なことを論ぜず、「印象操作」に注力しているように思います。”明星大学教授・高橋史朗は、ある重要な歴史秘話を明らかにする。”などと書いていますが、”教育基本法の日本側文案の前文には「伝統を尊重して」という言葉が入っていた”ということが、「重要な歴史秘話」などというようなものとは思えません。第一、”朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス”という神話的国体観に基づく「教育勅語」と、”すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない”という国際社会が到達した普遍的理念を背景とする「教育基本法」は、根本的に異なるものだと思います。”敎育ノ淵源”が全く異なるものを足して二で割るようなことはできないと思います。ほんとうに、GHQが「伝統を尊重して」という言葉を削るような命令を出したのかどうかは知りませんが、”・・・だが、通訳がきちんと訳していれば、いまも教育基本法の土台となる道徳として伝統は引き継がれていたことになる。”というようなことは、あり得ないということです。「教育勅語」と「教育基本法」の考え方は、次元が違うのです。
次に「九分どおり公平だった韓国併合」に関してですが、自らに都合のよい著書だけに依拠して、数えきれない証言や数多くの歴史書、研究書の内容を否定してしまう姿勢が、日本の戦前の指導層と同じだと、私には思えます。 米NBCが放送した平昌冬季オリンピック開会式の解説者の発言が、”新しい歴史研究と合致するもので、謝罪する必要はまったくなかった。”と結論すれば、日韓関係に関するこれまでの歴史研究がすべて誤りであったということを論証する責任が、木佐氏にはあると思います。これまでの歴史研究が誤りで、新しい歴史研究が正しいという根拠を示す必要があると思うのです。
次に「在日・強制連行の神話」に関してですが、「強制連行」についても数えきれない証言や数多くの歴史書、研究書があるにもかかわらず、『在日・強制連行の神話』(鄭大均著 文春新書) 一冊に基づいて完全否定するのはいかがなものかと思います。確かに、金を儲けるため、あるいは教育を受けるために、自らの意思で自発的に日本にやってきた朝鮮人も少なくないと思います。でも、それが韓国を併合した日本の政策と関わっていることを見逃してはならないと思います。また、朴慶植の『朝鮮人強制連行の記録』(未來社)によって作り出された「虚偽情報」という断定も大変な問題があると思います。朴慶植氏は、ありとあらゆるところから、様々な資料を集め、『朝に鮮人強制連行の記録』(未來社)にまとめたと聞いています。その資料は膨大な量であったといいます。それを「虚偽情報」というのであれば、当然その根拠を示す必要があると思います。さらに言えば、日本軍「慰安婦」同様、強制連行ではなかったから問題はないという考え方にも問題があると思います。日本の政策によって、朝鮮人の多くが土地を失い、生きていけなくなって国外に出たのです。だから、強制連行でなくても、問題はあるのです。そして、苛酷な労働を強制した事実と切り離して、「強制連行の神話」などと言うことは許されないと思います。日本の炭鉱を中心にして、いたるところで強制労働がありました。
先だって、ユネスコ世界遺産委が、長崎県の端島(通称・軍艦島)炭鉱での朝鮮半島出身労働者に関する説明が不十分だとする決議を採択しました。日本が世界遺産登録決定後、「意思に反して連れて来られ、厳しい環境で労働を強いられた」朝鮮半島出身者が多く存在したことへの理解を深めるための措置を講じる方針を表明していたにもかかわらず、それがなされていないということで決議されたものです。強制連行・強制労働は、国際社会も認めているのです。だから、”在日コリアンをめぐる神話は、この鄭大均の一書によって崩された。”というような簡単な話ではないといえます。
強制連行・強制労働に関しては、いろいろの著書を思い出しますが、その一冊に「地図にないアリラン峠 強制連行の足跡をたどる旅」林えいだい(明石書店)があります。林氏は長く強制連行された朝鮮人の証言を取り続けて、様々な事実を明らかにされていますが、子どもの頃に自分自身が目撃した、下記のような朝鮮人坑夫に関する衝撃的な事実も明らかにしています。
”「これから病院に連れて行ってもどうせ助かるまい、早うそこらに穴を掘って埋めておけ!」
義兄は持っているピッケルで坑口近くの辺りを指した。二人の朝鮮人坑夫は、まだ生きているのに病院で治療も受けさせず、坑口付近に掘られた穴に生き埋めされてしまった。”
こうしたことにあらわれているように、戦中の日本は、人命を軽視し、人権を無視して、強制連行や強制労働で、戦争を支えたのだと思います。だから、日本国内ばかりでなく、日本が軍政を敷いたアジアの国々にも少なからず強制連行や強制労働があったのです。そして、その一部は戦後補償裁判で取り上げられているのです。
木佐氏には、片寄りなく、様々な情報を集め、客観的に判断して、日韓関係の改善に貢献してほしいと思います。下記は、『「反日」という病 GHQ・メディアによる日本人洗脳を解く』木佐芳男(幻冬舎)から「GHQと<反日日本人>」、「誤解で消された教育勅語精神」、「九分どおり公平だった韓国併合」、「在日・強制連行の神話」を抜粋しました。
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第二章 GHQによるマインド・コントロール
10 マインド・コントロールa6 平和教育
GHQと<反日日本人>
アメリカの戦時情報局(OWI)の任務は内外への広報・宣伝活動で、1930年代後半に「カルチュラル・フロント(文化戦線)」と呼ばれる左翼文化活動に参加した者が多く所属していたとされる。『菊と刀』のルース・ベネディクトが勤務していたあの機関だ。ここには、プロパガンダと世論操作の専門家であるバーネイズが、顧問として参加していた(『ダヴィストック洗脳研究所』)。
GHQは、そのOWIが研究・分析していた対日心理作戦を継承した。GHQが作成した憲法草案には、土地などを「国家に帰属する」とした共産主義的な考えの部分があった。占領軍には左翼のルーツがはっきりとあったわけだ。
高橋史朗は、さらに重要な現代史の暗部を発掘し、産経新聞2014年8月16日朝刊に書いている。
「在米占領文書によれば、米軍は日本の歴史、文化、伝統に否定的な『友好的日本人』のリストを作成し、占領政策の協力者として『日本人検閲官』(約5000人)など民政官を含む各分野の人材として高給を与え積極的に登用した。これらの占領軍と癒着した<反日日本人>が戦後日本の言論界・学界・教育界などをリードしてきた事実を直視する必要がある」さらに、”GHQ民間情報教育局(CIE)は、「マルクス主義の歴史学者だった羽仁五郎と密談を重ねて日本教職員組合の結成を擁護」”などというのも、印象操作の一つだと思います。
占領政策の協力者となった約5000人の日本人検閲官とはだれか。彼らの名前や活動内容が、今後明らかになれば、相当な反響を呼ぶだろう。
GHQ民間情報教育局(CIE)は、「マルクス主義の歴史学者だった羽仁五郎と密談を重ねて日本教職員組合の結成を擁護」した(『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』)。羽仁五郎は「左翼の大インテリ」と呼ばれたのちに参議院議員、日本学術会議議員となり、教育界にも大きな影響を与えた。戦前に思想弾圧されたため戦後は脚光を浴びたが、じっさいにははなはだ問題のある人物だったとされる。
日教組の正史である『日教組十年史』は、「進駐軍、GHQの後押しがあってこそ我が組織は誕生した」と記述し、GHQが”誕生の立役者”であることを公然と認めている(山村明義『GHQの日本洗脳』)。
GHQは、都合の悪い教員をつぎつぎとパージ(公職追放)しながら、”占領体制に従順”で”民主的”な教員を飼い慣らすことに成功した。「GHQが去った後も、日本の教育が自虐史観に支配されているのは、かつてGHQが日本の占領支配を完成させるために、日本に対して行った洗脳および教育システムが無秩序に改悪されて蔓延っている」ためとされる。(『日本洗脳計画 戦後70年 開封GHQ』)
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誤解で消された教育勅語精神
われわれは、戦後教育のなかで、戦前の教育勅語体制から教育基本法体制に180度転換したと教えられてきた。2017年2~4月ごろには、国会で森友学園騒ぎにからみ教育勅語が問題化した。
だが、明星大学教授・高橋史朗は、ある重要な歴史秘話を明らかにする。高橋がずっと前、教育基本法を作ったときの日本側の生き証人に「なぜ教育勅語を廃止されましたか」と聞くと「私たちは教育勅語を否定していません。教育基本法の中に教育勅語の精神は引き継がれているのです」と語ったそうだ。教育基本法の日本側文案の前文には「伝統を尊重して」という言葉が入っていたという。それがあとで、GHQの圧力で削られることになった(『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』)
高橋は、後年、アメリカ留学中に、GHQ民間情報教育局(CIE)の教育課長補佐だったJ・C・トレーナーという人物に会うためにわざわざ遠くまで出かけ、「伝統を尊重して」という言葉をなぜ削るよう命令を出したのかたずねた。それに対する答えにはあきれさせられる。「自分は日本語の意味がよくわからなかた。それで日系人の通訳にこれはどういう意味だと聞いた。すると通訳が”伝統を尊重するということは、封建的な世の中に逆戻りするという意味です”といった」(同書)
今でも、教育勅語を評価するようなことを口にすると、右翼呼ばわりされかねない風潮がある。だが、通訳がきちんと訳していれば、いまも教育基本法の土台となる道徳として伝統は引き継がれていたことになる。
1948年、衆参両議院で教育勅語の排除・失効の確認決議がおこなわれた。それはGHQによる間接統治下でのことだったということに留意する必要がある。教育勅語は天皇主権下のもので非民主的だ、と左派は主張する。
だが、それなら左派は、なぜ「天皇主権下での改正手続きによって制定されたいまの憲法の制定過程は非民主的だ」として、「主権を得た日本国民による制憲議会をつくって自主憲法を制定すべきだ」と訴えてこなかったのだろうか。
ここにも、マインド・コントロールの好例がみられる。
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第Ⅶ章 変わる風向きと脱洗脳
3 新しい歴史観
九分どおり公平だった韓国併合
韓国は、ことあるごとに日本の「植民地支配」を糾弾する。いわゆる「日帝36年」論だ。それに対して歴史学の新しい知見で反論する理論武装は絶対に必要だ。
大韓民国は、1948(昭和23)年に「、日本の敗北による”漁夫の利”で誕生した際、「反日」を建国神話にすえた。戦後ずっとその国是は変わらず、2004年には、植民地時代に日本に協力した者を糾弾する「親日・反民族的行為真相究明特別法」が成立した。韓国は、「日本に侵略され、軍国主義によって人権を侵害され、誇りを奪われた」と声高に話す。
しかし、知日派のアメリカ人識者らさえ知らない人がいるそうだが、日本が、近現代に韓国と戦争したことはない。日本統治時代を知る韓国の人びとからは「いい時代で穏やかに暮らすことができた」という声さえ聞かれる。では、反日の韓国が言う「苛酷な植民地支配」は、実際にはどうだったのか。
アメリカ人歴史家のジョージ・アキタとブランドン・パーマーは2013年、『「日本の朝鮮統治」を検証する 1910~1945』(草思社)を上梓した。アキタは1926年ハワイ生まれの日系二世で、ハワイ大学マノア校の名誉教授であり、長年にわたって日本や東アジアの歴史を研究してきた権威だ。パーマーは、米コースタル・カロライナ大学歴史学部準教授で朝鮮史を専門とする。
この書の「15章 欧米と日本の植民地政策を比較する」では、「朝鮮人は史上もっとも残虐だったとして知られる日本の植民地支配の下で生きた」とする朝鮮系の人びとの主張を、欧米植民地との間で比較検証している。そして、最後の18章で日本の植民地支配は「九分どおり公平(almost fair)
だったと結論づけている。苛酷な欧米列強による植民地支配の場合で、こういう評価を下される例はない。
聯合ニュースによると、2018年2月9日、米NBCが放送した平昌冬季オリンピック開会式の生中継で、解説者が「日本は1910年から1945年まで韓国を支配した国だが、全ての韓国人にとって発展過程で日本が文化や技術、経済的な重要なモデルになった」などと発言した。韓国組織委から抗議を受けたNBCは組織委に謝罪の書簡を送り、約7500万人が視聴する朝の番組でも謝罪した。
だが、この発言は新しい歴史研究と合致するもので、謝罪する必要はまったくなかった。
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在日・強制連行の神話
韓国人の抱く歴史認識が、学術的に崩れつつあるなかで、もう一冊の決定的な著作がある。2004年に刊行された『在日・強制連行の神話』(鄭大均著 文春新書)だ。
日本は、戦前、朝鮮半島に住む人びとを強制連行し労働にあたらせたのであり、いまの在日コリアン70万人はその被害者とその末裔だという説が根強くある。それは、1965年に刊行された朝鮮大学校講師・朴慶植の『朝鮮人強制連行の記録』(未來社)によって作り出された虚偽情報で、この本こそ、日本の過去を<推定有罪>とする最たるものだった。慰安婦問題で朝日が最大の根拠とした吉田清治の偽書『私の戦争犯罪──朝鮮人強制連行』(1983年)がまことしやかに広まったのも、それより18年前に刊行された朴慶植の本があったからとされる。
だが、鄭大均は、多くの在日一世の証言などにもとづき、朝鮮人強制連行説は「神話」だとする。大多数は金を儲けるため、あるいは教育を受けるために、自らの意思で自発的に日本にやってきたという。
日本外務省が1959年に発表した「在日朝鮮人の引揚に関するいきさつ」によると、戦時中に徴用労務者として日本に連れてこられたのは、245人だった。朝鮮人強制連行は、朝日新聞や岩波書店、進歩的文化人が「軍国日本の悪行」を糾弾するイデオロギーの立場から非難し、それに呼応する韓国からも同様の批判を浴びてきたものだ。しかし、在日コリアンをめぐる神話は、この鄭大均の一書によって崩された。