日本にはいろいろな政党があり、それぞれ自由に活動しています。選挙の際、国民は、そんな政党のなかから、自分の判断で好ましいと思う政党に投票することができます。
またメディアは、日本政府の施策や閣僚の発言に関して、自由に批判したり、厳しく非難したりしています。だから日本は自由な民主主義の国であり、戦前の日本とは違うと考える日本人がほとんどだと思います。
でもそれは、与えられる情報に基づいて、見えるところだけを見ている結果であって、現実の日本は、決して自由な民主主義の国ではなく、アメリカの覇権主義の影響下にあり、日本の政治や施策は、超えることのできない一線があることを見逃してはならないと思います。
世界最大の軍事力と経済力、政治力を誇るアメリカは、気づかれないように、巧みに情報操作をしながら、他国に圧力をかけ、法を無視して、アメリカに都合のよい政治をやっているということです。
だから、日本が、ウクライナ戦争で停戦・和解に動くようなことはできず、日本はウクライナ支援を義務づけられている、と言えるように思います。
ロシアを弱体化するために、アメリカがウクライナの政権転覆を主導し、ウクライナ戦争を画策したのに、日本では、ウクライナに対するアメリカの関与がほとんど報道されません。
日本におけるウクライナ戦争の報道の大部分は、アメリカ発の情報であり、日本の報道機関は、独自の取材をほとんどしていないと思います。日本の報道記者がウクライナに入って取材している内容も、アメリカと一体になったウクライナ側のものばかりで、ウクライナ政権を支持しない人たちや親露派の人たちが住む地域からのものはほとんどありません。ロシアの人たちの主張やプーチン大統領の演説の内容なども、断片的にしか報道されません。
そしてしばしば、ウクライナ戦争を、下記、朝日新聞の天声人語の一節のように、プーチン大統領個人の問題にしてしまうのです。
”ロシア軍は、しばしば士気とモラルの低さが伝えられる。それはこの戦争に義がないことが一因だろう。兵士たちを戦争に送り、死なせているのは、大義を装ったプーチン大統領の危うい情念に他なるまい。独裁者はそうした粉飾が巧みなものだが、プーチン大統領もまた例外ではないようだ。”
このような記事は、日本国民のウクライナ戦争に関する客観的理解を妨げているように思います。
ウクライナ戦争の解説に招かれた専門家と称する大学の教授も、プーチン大統領の経歴に触れつつ、彼はウクライナを再びロシア領土にしたいのです、などと言っているのを聞いたことがありますが、戦争に至る経緯や背景を無視して、ウクライナ戦争をプーチン大統領個人の思いで説明しようとするのは、プーチン大統領を独裁者に仕立て上げ、ロシアを弱体化したいアメリカの対露戦略に基づくものだと思います。
だから、私は、かつて事実に反する「大本営発表」を、何の検証もなく報じ、国民を騙すことに加担した報道機関が、今度は、覇権主義に基づく「アメリカ発の情報」を何の検証もなく報じ、再び国民を騙すことに加担しているように思うのです。
下記は、朝日新聞の読者の声欄から、「政権への異論許さぬ社会の怖さ」と題した、無職 〇〇〇豊さん(京都府 74)の投書を抜萃しました。
朝日新聞は、似たような内容の投稿を、しばしば掲載しています。私は、そうした投降を読むたびに苛立ちを感じます。なぜなら、ウクライナの人たちに心を寄せ、日本の将来を心配する人たちが、自らがプロパガンダにさらされていることを疑うことができない状況に置かれたまま、メディアの報道に騙されていると思うからです。
”ウクライナに侵攻したプーチン大統領を、ロシアの人たちの多くは熱狂的に支持しているようだ。ウクライナの学校や病院、集合住宅に対する攻撃や道路に放置された民間人の遺体などの「不都合な真実」は報じられず、ネオナチや西側諸国から祖国を守る戦いというプーチン大統領の一方的な主張をロシア国民は信じているのだろうか。
異論を許さず政権側の立場のみを一方的に報道されることの怖さが表れている。戦前の日本もラジオや新聞は検閲され、戦況は「大本営発表」のみ、国民は真実を知らされないまま無謀な戦争を続けた歴史がある。戦後、その深い反省のもと放送法が定められた。
しかし、第2次安倍政権は放送法の解釈を変え、戦前の教訓を真っ向から否定した。政権の意に沿わない番組やコメンテーターを排除しようとし、放送局もそれに「忖度」し続けているのではないか。「今のロシアは明日の日本」にしないため、テレビだけではなくマスコミ全体の奮起を求める。”
批判力があり、日本の将来を心配する読者を、こうした認識にさせているのは、朝日新聞をはじめとする報道機関が、政権批判はしても、ウクライナ戦争におけるアメリカの関わりや、他国に対するアメリカの圧力には目を閉ざしているからだと思います。
くり返し取り上げていますが、ノルドストリーム2計画に反対するバイデン大統領は「ロシアが侵攻すれば、ノルドストリーム2を終わらせる」と指摘し、ドイツの管理下にある事業をどう止めるのかという女性記者の質問には、「われわれにはそれが可能だ」と述べました。ドイツもアメリカの覇権主義の下にあることがわかると思います。そして、現実にノルドストリームは爆破されました。でも、日本ではほとんど追及されることはなく、報道もされないのです。
また、アメリカが、世界中の人びとを欺いて、自らの覇権と利益のために戦争をくり返してきた過去の事実はなかったかのような報道をしているからだと思います。
アメリカは、自らが始めた戦争について、何の反省も謝罪も補償もしていないのに・・・。
ベトナム戦争では、トンキン湾事件がありました。当時のジョンソン米大統は、米軍艦がトンキン湾でベトナム民主共和国の魚雷艇に攻撃され、「武装衝突が発生した」と演説し、多くの人たちの同意を得て、激しい北爆を開始したのですが、事件はアメリカの「秘密工作」に基づくものだったといいます。「ペンタゴンペーパーズ」という映画で、その問題が取り上げられたりしました。
また、湾岸戦争における「ナイラ証言」は、湾岸戦争にきわめて大きな影響があったということですが、その「ナイラ証言」も、世界中の人びとを欺瞞するものでした。
「ナイラ」という当時15歳の女性が、アメリカ合衆国の議会人権委員会で、涙ながらに語ったことが、国際的な反イラク感情とイラクへの批判の高まりを生みだし、無関係に近かったアメリカを中心に、多くの国で、イラクへの攻撃支持世論が広がったといいます。
しかし、「ナイラ」という女性は、実は、当時クウェート駐米大使の娘で、その内容は、クウェート政府と自由クウェートのための市民運動の反イラク国際世論扇動広報キャンペーンの一環で演じられたものであったことが判明したというのです。
イラク爆撃を正当化した大量破壊兵器の存在も、偽造文書に基づくもので事実ではありませんでした。
アメリカは、自らの覇権と利益のために、くり返し、世界中の人びとを欺いて戦争をしてきたといえるのです。
だから、ウクライナ戦争についても、マイダン革命に対するアメリカの関与、ウクライナのNATO加盟問題や共同軍事訓練の問題、ミンスク合意の問題、武器の供与や生物兵器の開発の問題、ノルドストリームの関連企業に対するアメリカによる制裁の問題、ドンバス戦争の実態など踏まえて理解する必要があると思います。
でも、西側諸国の報道、特に日本の報道は、そういうことを無視して、ウクライナ戦争を独裁者プーチン個人の問題とし、アメリカ発の情報をそのまま報道するから、ウクライナ戦争は、ロシアの一方的侵略が発端という理解になり、上記のような投稿がなされることになるのだと思います。
台湾有事の準備も着々と進み、日本は再び、危機的状況にあると思います。