下記は、南京事件当時の中国における代表的日刊紙、『大公報』の記事の一部を『南京事件資料集 2中国関係資料編』南京事件調査研究会編・訳(青木書店)から抜粋したものである。
『大公報』は1902年天津で創刊された新聞で、とくに対日問題に特色ある議論を展開したことで知られるという。日本軍の圧迫を避けるために1935年末に上海に支社を開設し、日中全面戦争勃発後は、漢口、ついで重慶で発行を続けたという。南京陥落前後の記事の内容は、大部分が南京から逃れてきた中国人から得たものや南京に留まった英米の記者が送った記事から得たものであったことが分かる。『大公報』は、南京に記者を留め置くことができず、また、英米のような通信手段を持っていなかったからであろうと思う。しかしながら、懸命に情報収集をしつつ連日報道しているのである。記事のなかには、疑わしいものがなくはないが、それらを読むと、
・南京大虐殺は東京裁判用に捏造されたものだった。
・南京入城した日本軍は多くの人道的活動を行った、非道行為を行なったのはむしろ中国兵たちだった。
・南京が日本軍によって陥落したとき、日本軍兵士たちとともに、多くの新聞記者やカメラマンが共に南京市内に入りました。その総勢は100人以上。また日本人記者たちだけでなく、ロイターやAPなど、欧米の記者たちもいました。しかし、その中の誰一人として「30万人の大虐殺」を報じていません”
というようなネット上にある情報は、いかがなものかと思う。総勢100人の新聞記者やカメラマンの内、外国人はいったい何人いたというのであろうか。また、下記の記事に見られるような、外国人記者やカメラマンの南京視察拒否や、ニュース電報の差し押さえ、郵便物の開封などをどのように受け止めればよいのか、と思う。外国人記者やカメラマンは、中国兵の非道行為をどのように報道したというのであろうか。
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11 社説 敵機、英米軍艦を爆撃
民国26年12月14日
一昨日、凶暴な敵の飛行機は南京付近に停泊していたイギリス軍艦レディバード号とビー号を二度爆撃し、多数の爆弾を投下したが、さいわい命中しなかった。この事件はすでに国の内外を大きく震撼させている。さらに昨日朝、漢口のアメリカ大使館は、一昨日午後、敵機が南京上流29マイ(約46.4km)の場所でアメリカ軍艦パナイ号を爆弾で撃沈したとのニュースを受けとった。艦長らが重傷を受け、死者は約20人である。生存者54人は和県に逃げたが、そのうち負傷者が十余人いる。アメリカ大使館員4人はさいわい死傷しなかった。他にイギリス人・イタリア人がおり、商人とロンドン・タイムズとユナイテッド社を含む新聞記者がいた。昨夜までのところ、死傷の情況の詳細は不明である。
船舶は南京を離れるように敵が各国に警告していたことを私たちは知っている。このアメリカ船が上流29マイルの場所で停泊していたことは、事が日本軍の警告通り処理されていたことを証明するものである。そうであれば、この爆撃の意味は当然さらに重大である。敵は中国の軍艦の情況についての消息に通じており、したがって当然、中国艦でないことを知っていた。まして旗印が鮮明で見分けやすく、また同時に爆撃にあったスタンダードの船4隻が事前に日本側に通知し、保護を求めていたのだからなおさらである。つまり当然、故意の爆撃であり、偶然ではなかったことを事実が証明しているのである。
中国政府と人民は、二大友邦の軍艦の災難、とくにアメリカ軍艦の轟沈を聞いてふかく痛惜する。わが政府のスポークスマンは、この点についてすでに声明を出した。私たちがとくに遺憾に思うのは、同情と痛惜を表明する以外にいささかも尽力できないことである。なぜなら私たちの国家は、不幸にも凶暴な隣国の侵略に遭遇し、血戦抵抗しているけれども制止しえず、私たちの首都はきわめて危険な状態におかれているので、私たちは友邦の船舶と人命を保護する力がないからである。
同日のうちにイギリスとアメリカの軍艦がひとしく爆撃を受け、商船はさらに絶え間なく襲撃を受けている。このような状況を英語を話す二大国の人民は、どのように解釈するだろうか。私たちは、イギリス人が極東問題に対して近ごろはなはだ苦慮していることを知っている。イギリスが忍耐すればするほど、日本は侵攻し、今や公然とくりかえしイギリス軍艦を爆撃したのである。また私たちは、少なからぬアメリカ人が孤立政策に賛成しているので、ルーズベルト大統領がその政策を円滑におこなえないでいることを知っている。しかし、現在、日本はなんと公然とアメリカ軍艦を撃沈した。軍艦が避難したにもかかわらず、日本はかまわず進撃したのである。孤立政策を支持するアメリカ人は、どんな感想をもつのだろうか?
昨日のロイター通信は、日本がまさに海軍を大拡張しようとしているとのニュースを折りよく伝えた。4万6千トンの大戦艦3隻とその他に大量の軍艦を建設中といわれる。4万6千トンの戦艦は世界空前の試みである。日本はこのように懸命に軍艦を建造して誰に対処し、誰を恫喝しようとしているのだろうか?英米両国人にとっては、きっと私たちよりもさらにあきらかであろう。
私たちは、日本が中国征服にもし成功したら、イギリス・アメリカなどはアジアからの退出を迫られるだろうと以前にのべたことがある。現在の世界の大局は、軍事戦略上からみるべきであり、単に経済と商業上からみることはできない。軍事戦略上からいえば、日本が中国に進攻することは世界をおびやかすことであり、海上ではイギリス・アメリカを、陸上ではソ連をおびやかすことである。日本の計画は現在着々と進行している。日本は中国での軍事が順調であればあるほどますます欧米を蔑視する。一昨日、英米軍艦を爆撃したことは、今後の大きな趨勢の縮図であり、海関の独占と門戸の閉鎖に至ることは論ずるまでもない。だからイギリスとアメリカの人民が今、みずから解答しなければならない問題は、結局、東南アジアから退出し、すべて日本の行動に従うか否かである。とくにアメリカの孤立派はこの点について徹底的に検討すべきである。なぜなら孤立を欲すれば、徹底して孤立しなければならないからである。そうでなければ、国家権力を代表する軍艦さえも安全を保たれないのだから、どうして商業の利益の安全を保てよう?
イギリス人・アメリカ人、とくにアメリカ人が、このような空前の暴行に対してどのような感想をもつかについて、私たちはみだりに推測する必要はない。現在はただ中国人の深甚な同情を表明するだけであり、とくに私たちは同業者として、パナイ号上で災難にあったイギリスとアメリカの記者に対しつつしんで慰問の意を表すものである。
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19 南京の敵の暴行にまた一証拠
民国26年12月26日
◇上海ノースチャイナ・デイリーニューズ所載の情況
【上海25日午後一時発専電】〔前略〕ノースチャイナ・デイリーニューズの報道にれば、敵は南京に入って、淫乱・略奪・惨殺をほしいままにし、害毒のかぎりをつくしている。その兵士は将校の前で公然と街路で略奪し、居住民は貧富を問わず、みな御来臨をたまわっている。かつ男子を捜索し捕らえてすべて銃殺しており、難民区の某号の屋内では40人が捕殺された。強姦はいたるところでおこなわれており、ある西洋人の隣家では、少女4人が敵兵によって連れ去られ、ある西洋人は、新しく到着した日本将校の室内に若い婦人8人がいるのを目撃した。
【中央社新郷25日電】中国紅十字会第八救護医院の救護隊長陳威伯等4人は、先日、南京を脱出し、津浦路を北上して、24日、鄭州をへて武漢に到着した。かれの話では、敵はわが首都を占領して以後、漢奸をそそのかして、市民に一枚二元で通行証を買わせ、かつ市民の腕
に日本の二文字を刺青させ、従わないものは、惨殺されたとのことである。
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21 南京の敵あらたな暴行
民国26年12月28日
◇ついにわが負傷兵と医師を殺害
◇米教会の病院、強奪にあう
【中央通信社】この間、入手した信頼できる消息によれば、敵軍は南京占領後、あろうことか人類の正義と公法に違反し、多数のわが国の負傷兵と医者と看護人を惨殺した。鼓楼病院はアメリカの教会が運営する南京でもっとも歴史のある病院だが、ついに敵軍によって強奪された。国際赤十字委員会は在京の日本軍司令官に中国の各負傷兵の病院を保護するように要求したが、拒絶されたといわれる。
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22 ノースチャイナ・デイリーニューズ掲載
南京の敵、なお殺戮をほしいままにす
民国27年〔1938〕1月22日
◇最近、難にあうもの万をこゆ
◇幼女、老婦人多く汚さる
◇英記者の電報も差し押さえられる
【香港21日午後9時発専電】上海通信。ノースチャイナ・デイリーニューズは21日の社説で、南京の日本軍の軍紀が弛緩し、ほしいままに市民を虐殺していることを非難した。最近までに難にあったものはすでに1万人をこえ、11歳の幼女より53歳の老婦人まですべて汚され、強姦されたものはおよそ8千から2万人であり、強奪事件は枚挙にたえない。一週間以内になおこれらの事件が発生しているので、一時の現象と責任逃れすることはできないのである。同紙は日本軍の名誉維持に注意するよう日本側に勧告している。
〔中略〕
【香港21日午後9時発専電】上海の消息筋によれば、マンチェスター・ガーディアン上海駐在記者ティンパレーの21日発のニュース電報がまた日本側によって差し押さえられた。ティンパレーのこの電報の内容は、ノースチャイナ・デイリーニューズの本日の社説を引用して、敵軍の淫行・略奪を責めたものである。かれがえた南京の消息は同紙の記述が誤りでないことを証明しており、さらに敵軍17人が一中国女性を輪姦したこと、南京の住宅が略奪されたこと、各国大使館・領事館も同様の運命にあったことを報告している。日本の検査員はまずティンパレーに電報を撤回するよう要求し、ティンパレーが拒絶すると、その電報を差し押さえた。ティンパレーは電報のコピーをイギリス総領事館に提出し、以後、ふたたび同様のことがおこらないように厳重に交渉するよう求めた。
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23 恐怖の南京
民国27年〔1938〕1月23日
◇狂暴な敵の放火略奪いまだ止まず
◇外国人記者の視察を拒絶
【香港22日午後9時発専電】上海通信。日本政府当局のスポークスマンは、昨日、外国人記者を招待した席で、南京での日本軍の暴行についてのノースチャイナ・デイリーニューズの論評は、悪意のある誇大な内容であり、実証する術がなく、かつ日本軍の名誉を損なったと非難した。イギリスのマンチェスター・ガーディアンの記者は、日本のスポークスマンと論争し、南京の暴行の情報はみな証明できると述べたが、スポークスマンは答えなかった。外国人記者は南京の状況について引きつづき報告するよう求めたが、スポークスマンは応じなかった。また外国人記者は、外国人記者を南京に招待し視察させるよう求めたが、またも拒絶された。上海駐在のニューヨーク・タイムズの記者は、郵便物が開封された形跡があるので、日本のスポークスマンに郵便物に対する検査を施行しているか否か質問したところ、日本側もそれを認めた。
【中央社香港22日電】南京通信。本年1月1日以後の南京の日本軍によるアメリカ国旗侮蔑事件は、全部で15回の多きに及んだ。毎回、アメリカの教会に侵入し、武力をもって中国の少女を連れ去っている。アメリカとドイツの居留民の財産の損失が最大である。日本軍は略奪したうえ、家屋を焼きはらっている。イギリス人の財産の損失はなお小さいが、イギリス商輯安仁公司は略奪され、公司が貯蔵していたすべての酒は飲みつくされてしまった。南京が日本軍によって占領されてからすでに39日がたったが、なお多くの場所で大火が燃え続けており、恐怖の時期はなお過ぎ去っていない。すべての商業地区は廃墟となり、野犬が食物を探しに出歩いているほか、人跡は絶えてない。難民区をのぞくと、全城はすでにもぬけの殻になっているといわれる。
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