真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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北方領土問題、ダレスの「脅し」とウクライナ戦争

2022年04月30日 | 国際・政治

 先週、アメリカ米国家安全保障会議(NSC)でアジア政策を統括するキャンベル・インド太平洋調整官がソロモン諸島のソガバレ首相と会談したことが報じられました。ソロモンと中国が署名した安全保障協定について、アメリカの懸念を伝えるためでした。そして、中国軍がソロモンに常駐した場合は対抗措置を取ると警告したといいます。この訪問に、クリテンブリンク米国務次官補米インド・太平洋軍スクレンカ副司令官も同行したということに、アメリカが相当の覚悟をもって臨んだことが窺われると思います。だから警告は、ソガバレ首相にとって事実上「脅し」に等しいものだったのではないかと思います。

 逆に、ロシアがNATOの東方拡大やウクライナのNATO加盟に懸念を示し、軍事訓練や武器の配備に抵抗しても、アメリカは受けつけず、戦争に至りました。
 そして、バイデン大統領は、プーチン大統領について”権力の座に残しておいてはいけない”と非難し、さらに、ロイド・オースチン米国防長官も、”我々は、ロシアがウクライナ侵攻でやったようなことをできないようにするまで、弱体化させたい”と語ったことが報道されました。これがアメリカの本音であり、この言葉に、アメリカという国の本質がよくあらわれていると思います。

 世界最大の軍事力を持ち、世界最大の経済力を持つアメリカは、それを維持し、世界全体をその影響下に置くために、ロシアを屈服させたいのだろう想像します。言いかえれば、軍事的・政治的絶対優位の立場を確保し、アメリカの利益を損なうような経済活動を許さず、さらに、ロシアからも利益を吸い上げることができるようにするということです。だから、ロシアが屈服するまで、ウクライナの戦争を支援するということがアメリカの方針であり、それまで、停戦は認めないのではないかと思います。
 そして、そのアメリカの方針に沿って、ゼレンスキー大統領は、日々、プーチン大統領を悪魔の如き独裁者、ロシアをこれ以上ない最悪の国家とイメージされる情報を発信し続けているように思います。だから私は、その情報には疑わしいものがあることを考慮すべきだろうと思います。ブチャでのジェノサイドというのも、第三者機関のきちんとした検証がなければ、その実態はよくわからないと思います。

 ゼレンスキー大統領は先日、”ドイツのメルケル前首相とフランスのサルコジ元大統領にはブチャに来て、ロシアへの14年間の譲歩が何をもたらしたかを見てほしい”と言いました。2008年のNATO首脳会議で、独仏がウクライナの加盟を事実上見送ったことが、今回の惨事につながったと指摘し、当時の両首脳を扱き下ろしたのです。
 でも、私はそれだけではないと思います。それ以上に大事なのは、ノルドストストリーム2の問題だと思います。原発の運転停止に踏み切り、ロシアから天然ガス輸入の計画を進めたドイツのメルケル首相は、当時のトランプ大統領が”悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない”と懸念を示し、制裁を口にしつつ、”ベルリンはロシアの捕虜となっている”などと述べたことに対し、”我々は独立した独自の政治を行い、我々が独自の決定を下している”反論したといいます。アメリカはこうした”独立した独自の政治”を排除したいのだろうと思います。だから、ゼレンスキー大統領は、過去のNATOの加盟問題だけではなく、現在進行形の問題でもアメリカの援護射撃のために、ロシアに対し宥和的であったドイツのメルケル前首相とフランスのサルコジ元大統領を扱き下ろしのだと思います。

 そうした根本的な問題を無視して、アメリカやウクライナからもたらされる情報を検証もせず、出所も示さず、事実として報道する日本のメディアは、どうなっているのだろうと思います。
 また、バイデン大統領やゼレンスキー大統領が日々、プーチン大統領は戦争犯罪者だ、ロシア軍がジェノサイド続けているというようなことを言い立てていますが、第二次世界大戦後も、アメリカが戦争犯罪やジェノサイドをくり返してきたことを、メディアに関わる人々が知らないはずはないと思います。そうした意味で私は、すでにベトナム戦争やイラク戦争を取り上げました。
 ウクライナの戦争で、ロシアを屈服させようとするアメリカ、そして、日本国憲法を無視してアメリカに追随する日本政府、それを批判しないメディア、それは、現在もなお、「」ではなく「」が支配していることを示しているのではとないかと思います。

 下記は、キャンベル・インド太平洋調整官が、南太平洋の島国ソロモン諸島のソガバレ首相を訪れ、ソロモンと中国が署名した安全保障協定に関して警告を発したという報道で、私が思い出したいわゆる「ダレスの脅し」にかかわる文章です。日本は、この脅しによって、北方領土問題を引きずることになってしまったのだと思います。重光外相が言った通り、”ダレスは全くひどいことをい”ったと思います。そして、アメリカは、ソガバレ首相に対しても、似たような脅しをやったのだろうと疑います。下記は、「日ソ国交回復秘録」松本俊一(朝日新聞出版)から抜萃しました。
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              第六章 第一次モスクワ交渉(1956年7月) 

   四 重光外相とダレス国務長官のやりとり
 ロンドンでは、私が前の年(1955年)とその年マリク全権と会談した際、全権団一行を率いて滞在したグローブナー・ハウスに重光全権と一緒に泊った。宿に着くとさっそくスエズ会議のもう一人の代表であった吉野運輸相が、重光外相を訪ねて、私と三人で懇談した。その際吉野大臣は詳しく東京の事情を説明するとともに、この際はソ連との交渉は一たんあきらめるよりほかはなかろうという結論に到達した。
 そこで十八日の夕方に重光外相がシェピーロフ外相と会見した際も、重光外相は単にその後の領土問題に関するソ連側の態度の打診をするにとどめたが、シェピーロフ外相は、歯舞、色丹の引き渡しがソ連側の最終的の譲歩であるということを繰り返しただけであった。
 八月十九日に重光外相は米国大使館にダレス国務長官を訪問して、日ソ交渉の経過を説明した。その際、領土問題に関するソ連案を示して説明を加えた。ところが、ダレス長官は、千島列島をソ連に帰属せしめるということは、サン・フランシスコ条約でも決まっていない。したがって日本側がソ連案を受諾する場合は、日本はソ連に対しサン・フランシスコ条約以上のことを認めることとなる次第である。かかる場合は同条約第二十六条が作用して、米国も沖縄の併合を主張しうる地位にたつわけである。ソ連のいい分は全く理不尽であると思考する。特にヤルタ協定を基礎とするソ連の立場は不可解であって、同協定についてはトルーマン前大統領がスターリンに対し明確に言明した通り、同協定に掲げられた事項はそれ自体なんらの決定を構成するものではない。領土に関する事項は、平和条約にまって初めて決定されるものである。ヤルタ協定を決定とみなし、これを基礎として論議すべき筋合いのものではない。必要とあればこの点に関し、さらに米国政府の見解を明示することとしてもさしつかえないという趣旨のことを述べた。
 重光外相はその日ホテルに帰ってくると、さっそく私を外相の寝室に呼び入れて、やや青ざめた顔をして、「ダレスは全くひどいことをいう。もし日本が国後・択捉をソ連に帰属せしめたなら、沖縄をアメリカの領土とするということをいった」といって、すこぶる興奮した顔つきで、私にダレスの主張を話してくれた。
 このことについては、かねてワシントンの日本大使館に対して、アメリカの国務省からダレス長官が重光外相に述べた趣旨の申し入れがあったのである。しかしモスクワで交渉が妥結しなかったのであるから、まさかダレス長官自身が重光外相にこのようなことをいうことは、重光氏としても予想しなかったところであったらしい。重光氏もダレスが何故この段階において日本の態度を牽制するようなことをいい、ことに米国も琉球諸島の併合を主張しうる地位に立つというがごとき、まことに、おどしともとれるようなことをいったのか、重光外相のみならず、私自身も非常に了解に苦しんだ。
 そこで、二十四日に重光外相は、さらにダレス国務長官に会って日本側の立場を縷縷(ルル)説明した。その日は、ダレス長官がアメリカの駐ソ大使ホーレン氏も同席させて、十九日の会談とは余程違った態度で、むしろアメリカ側の領土問題に対する強硬な態度は、日本のソ連に対する立場を強めるためのものであるということを説明したそうである。
 しかし、十九日のダレス長官の発言中の琉球諸島の併合云々のことは外部にもれて、日本の一部の新聞にも掲載された。そのために、日本の世論に相当な動揺を与え、国会におても社会党その他の議員から高崎外務大臣臨時代理等に対して、この点について質問が出て、政府としてもこの問題の収拾には非常に苦慮したのであった。九月七日に至ってダレス長官が、谷駐米大使(正之)に対して、領土問題に関する米国政府の見解を述べた覚書を手交した後の会談で、「この際明らかにしておきたいが、米国の考え方がなんとかして日本の助けになりたいと思っていることにあることを了解して欲しい云々」と述べて、ダレス長官の真意が日本側を支援するにあったことが明確になってきたので、世論も国会の論議も平静を取り戻した。
ーーー
サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)第二十六条

 日本国は、千九百四十二年一月一日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていた国で、この条約の署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結する用意を有すべきものとする。但し、この日本国の義務は、この条約の最初の効力発生の後三年で満了する。日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼさなければならない。

 

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ウクライナ戦争とイラク戦争の決定的な証言

2022年04月26日 | 国際・政治

 4月25日付朝日新聞朝刊の一面に、「米二長官キーウ訪問へ」と題する記事があり、その中に、ゼレンスキー大統領の、下記のような言葉が出ていました。その言葉には、日本兵に玉砕戦特攻戦を強いた司令官と同じような人命軽視を感じます。
手ぶらでウクライナ訪問はできない。ケーキやスイーツの土産も求めていない。欲しいのは武器
 また、モスクワを訪問する国連のグレーテス事務総長に対し、
ウクライナとロシアの関係でバランスをとることなどするべきでないし、できないと(グレーテス氏に)既に伝えた。領土に侵攻を受けているのはウクライナであり、事務総長から100%の支持を期待する
 さらに、記者から「市民を守るために降伏するべきだ」と主張する人に何を言いたいかと問われて、
ウクライナ人は降伏しない。これは単なる口先の言葉ではなく我々が日々証明していることだ
などと述べたのです。
 
 こうした主張を続けるゼレンスキー大統領を支え、ウクライナ軍に武器を供与することに 私は反対です。
 確かに、先に一線を越えたのはロシアかもしれませんが、ロシアのウクライナ侵攻を、NATO東方不拡大の約束にまで遡って、その経緯を総合的に考え、ロシアの言い分にも耳を傾けて、考える必要があると思います。
 ロシアの言い分に耳を傾ければ、ロシアのウクライナ侵攻が、実は、ロシアの影響力拡大阻止やロシアの弱体化を意図するアメリカを相手とするものであることがわかると思います。だから、法的に解決する道も開けるのではないかと思います。 
 傷害事件で、被害者の主張だけを聞き、加害者の言い分をまったく考慮せず、判決を言い渡すことはないと思います。
 国際機関が、予断と偏見に左右されず、公平に両者の言い分を聞き、法的に解決するべきだと思います。

 最近私は、ウクライナ戦争の報道を見聞きするたびに、アメリカ国家安全保障局(NSA)作、ゼレンスキー主演の戦争映画を観ているような気がします。それほど考え方が過激であり、野蛮だと思うのです。
 そしてそれは、第二次世界大戦後も、休みなく戦争をくり返してきたアメリカの大きな問題点であると思います。だから、共に今までの戦争をふり返り、同じ過ちをくり返さないようにしたいのです。

 下記は、「イラク戦争を検証するための20の論点」イラク戦争の検証をもとめるネットワーク編(合同出版社)から抜萃しました。
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 クレア・ショート(イギリス・ブレア政権、国際開発省大臣)
 イラク戦争にいたる経緯について、当時のブレア首相は議論を尽くしたというが、おしゃべり程度にすぎず、私は議論をしたとは思っていません。どのような情報があり、そのような手段をとるべきなのか、議論するシステムになっていませんでした。開戦前、ブレア首相と閣議で話すチャンスはありました。何度も私は「攻撃はやめるべきだ」と訴えました。しかし、私は敬遠されていました。ブレア首相にいかに気にいれらるかという行動を求められていて、反論する者は喜ばれない。私のように戦争に批判的な閣僚には、情報の共有すらされず、閣議はお茶会のようなもので、まるで意味をなしていませんでした。
 業を煮やした私が出演したラジオ番組でブレアを批判し、自分自身の辞任をほのめかしました。その後、彼は私を引きとめようと、「イラク攻撃のために追加の国連決議を必ず獲得する」「イラクの戦後に関しては国連が主導する」といってきました。それならば、私は大臣のポストに残ろうかとも考えました。人びとが協力して、破壊されたイラクを復興できると考えたからです。しかし、実際には復興は米国主導で進められ、イギリスもそれを追従するかたちになりました。ブレア首相の約束は果たされることはない、そしてイラク戦争は深刻な人道的危機に陥ると確信しました。そうして、私は辞任したのです。

 歴史的間違いだったブレアの決断
 イラク戦争検証委員会の公聴会で話せたことに関しては、非常に満足しています。オープンなものでしたし、三時間半にわたるセッションでした。委員会はすべての機密文書を閲覧し、機密解除する権限をもっています。戦争前、私はブレア首相に復興支援の準備が整っていないことや、いま、攻撃すれば大惨事になると手紙を送りました。これが機密解除され公開されたことは、重要で意義のあるものだと考えています。
 「ブレアの決断は歴史的間違いだったのか?」と問われれば、間違いだったと思います。イギリスはアメリカの悪い友人でした。良い友ならば、間違いを犯そうとするのを止めるべきでしょう。ブリクス委員長ら国連大量破壊兵器査察委員会の査察を待ち、国連の枠組で動くべきでした。ブレア首相はアメリカもイギリスも救えなかった。きちんとイギリスが反対すれば、アメリカ単独では戦争は始められなかったでしょうから、ブレア首相はブッシュ大統領とともに戦争へと突き進むことになりましたが、それはたいへんな間違いとなってしまいました。
 アメリカでも、起こりうる数々の問題について、予測されてはいました。しかし、自分たちがイラクに攻め込めば、イラクは歓迎するという傲慢なプロパガンダを信じ込んだのでした。そして、イスラム教シーア派とスンニ派の争いや、(イラク旧政権与党の)バース党メンバー処遇などの問題は無視されてしまったのです。イギリスも事前の警告を無視して、米国に追従することを決めていました。イギリスでは市民社会はいまなおイラク戦争に対して怒っています。また、団体であれ、個人であれ、何か問題があれば、議員に手紙を書くことは普通のことです。市民感情を考えれば、政府も検証委員会をつくらざるをえなかったのでしょう。
 政治的エリートが世の中を動かしているなかで、彼らも大きな間違いを犯すことがあります。地球環境の悪化や人口爆発など国際社会が抱える問題が複雑化しているなか、単純にアメリカの戦争に追従するような外交政策をどう移行していくかは重要な課題かと思います。日本でもイラク戦争検証委員会をつくるなら、政策が間違っていたか否かのみならず、将来の教訓となるようなものにすべきでしょう。(2010年11月、志葉玲のイギリス視察報告より)

 
 ハンス・ブリクスの証言(元国際原子力機関事務局長・国連査察検証委員会委員長)

 イラクへの攻撃は国連憲章に違反している
 国会で話すことができて幸いです。日本に何度も来ていますが、国会で話すのは初めてです。さて、まず申し上げたいのは、イラクへの攻撃は国連憲章に違反している、ということです。
 当時戦争を遂行する側には、「合法」とせざるを得なかった人もいるでしょうが、それは少数派です。私を含め90%の国際法の専門家は「違法」と判断するでしょう。実際、イギリスの政策担当者のなかには、戦争に抗議、辞任した人もいます。現在、私は核兵器の拡散防止に取り組んでいます。イランでの核開発が問題となっていますが、仮に国連安保理でイラン攻撃が提案されたとしても、誰も賛成しないでしょう。それはイラクの経験があるからです。イラク戦争は、国連憲章で認められる自衛のための戦争でも、安保理決議による戦争でもありませんでした。

 開戦前のイラクはほんとうに脅威だったのか?
 開戦前の02年から03年当時、イラクは国際社会にとって差し迫った脅威では、まったくありませんでした。また、脅威が増大しているということもありませんでした。(イギリスの検証委員会での証言で)ブレア首相は「イラクが大量破壊兵器を開発する危険を放っておけなかった」と語りましたが、(90年のフセイン政権による隣国クウェートへの侵攻以来の)10年余りの経済制裁のなかでイラクが破壊されつくしたことは、国際社会も知っていたはずです。
 私は、81年から97年までIAEA(国際原子力機関)の事務局長を務めましたが、イラクには核兵器もなく、それを作る能力を持っていませんでした。イラク戦争の開戦当時、米国などの国々が訴えていた「イラクが大量破壊兵器の査察に協力しなった」との主張にも異論があります。イラクは査察を喜んで受け入れた訳ではないですが、まったく妨害しませんでした。私たちは02年から03年まで700回、500ケ所を査察できました。そして大量破壊兵器はありませんでした。米国がイラクで大量破壊兵器を持っていると主張し続けましたが、その『証拠』は、まったくお粗末なものでした。私たちはアメリカとイギリスに『あなた方は大量破壊兵器があると確信しているようだが、それはどこにあるのか。もし教えてくれれば、そこに査察に行きましょう』と言いました。彼らは100ヶ所くらい教えてくれ、私たちは30カ所を査察しましたが、通常兵器や書類は発見したものの、大量破壊兵器はありませんでした。この時点で自分たちのもっている情報源がいかに制度の低い、信頼できないものであることに、アメリカ・イギリス両国は気づくべきだったでしょう。結局、100ケ所全部を査察する前に戦争が始まってしまいました。
 アメリカが主張する『証拠』には明らかに捏造された嘘も、いくつかありました。「イラクが核兵器を開発している証拠」として提出した、アフリカのニジェールからイラクがウランを輸入したという書類も偽造でした。この書類が偽造されたものであるとIAEAが気づくまで、一日もかかりませんでした。この偽造とわかっている書類を、当時のブッシュ大統領は米国内の演説で、あたかも証拠であるかのように取り上げたのです。

 イラク戦争は回避できる戦争だった
 私は、イラク戦争は回避できる戦争だったと思います。
 フセイン政権と国際テロ組織アルカイダとの関係についての情報も間違いでした。『民主主義』をもたらすといっていましたが、7年にわたる無政府状態をつくり出しただけでした。アメリカにとってはイスラエルを助けるという口実もあったのでしょうが、実際には、より強大なイランとイスラエルは対峙せざるを得なくなりました。つまり、国際法上、イラク戦争は違法かどうかの法的解釈とは別に、戦争の結果だけを見ても、この戦争は正当化できません。戦争の結果としてどれほどの人の死や破壊をもたらし、人びとは深い悲しみにくれたかは言うまでもありません。

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ウクライナ戦争とイラク戦争、その扱いのあまりの違いに驚く

2022年04月24日 | 国際・政治

 日本は、すっかり武力主義制裁主義の国に変わってしまったのでしょうか?
 朝日新聞も、このところ、すっかり世の流れ迎合しているように思えます。下記のような考え方が、国連憲章や日本国憲法から出てくるでしょうか。
 私は、武器その他の供与も、日々強化されているロシアに対する制裁も、力によって相手を屈服させようとするもので、平和的な紛争解決の方法とは言えないと思います。恐ろしい考え方だと思います。

 一

 対話 もう打切るべき時(元仏大使 ミシェル・デュクロ氏)
” ・・・ 米国の核抑止力を欧州で維持してもらいたいなら、欧州は(米国が重視する)インド太平洋地域で、たとえ、象徴的な役割に過ぎないとしても、米国とともに血を流すことができると示さなければならない。

 ニ

 ジェノサイドの「意図」明確(ユージーン・フィンケル・米ジョンズポプキンス大準教授
 ”・・・ バイデン大統領がロシア軍の行為を「ジェノサイド」だと明言したことは、重要なトーンの変化だが、大事なのは今後の行動だ。
 道徳的にも政治的にも、ジェノサイドには重い意味があり、安易に使うべきではない。レトリックだけで何も行動しないのであれば、かえって大事な言葉を安っぽくしてしまう。ジェノサイドという言葉を使うことで、兵器をもっと提供し、重い制裁を加える方向に進むことが望まれる

 三

 コラムニストの眼(ポール・クルーグマン 「貿易は必ず平和をもたらすか」
”・・・ しかし、より短期的には、法を守る国々は、自由を守ることに躊躇しないと示す必要がある。独裁者たちは、自分たちの権威主義的な体制に経済的に依存した民主主義国は、自らの価値観のために立ち上がることを恐れるようになる、と考えているかもしれない。我々はそれが間違いだと証明する必要がある。
 具体的には、欧州はロシアの石油とガスの輸入を断つために迅速に行動しなければならず、欧米はウクライナに対し、プーチン氏を抑えるだけでなく、明確な勝利を得るために必要な武器を供給する必要ある。ここにはウクライナにとどまらない大きなものがかかっている。(THE NEW YOEK TIMES)

 また、下記のような主張も、平和的な解決を遠ざける考え方ではないかと思います。
 
 一

NATO東方不拡大 約束はあったのか」(吉留公太神奈川大教授)
 ”・・・ 特に後者の解釈に立てば、NATOが約束を破ったとするプーチンの主張にも少しは説得力があると思う人もいるかもしれない。しかし、歴史研究上一つの解釈を利用して、現在のウクライナ侵攻を正当化することは暴論だ。
 ドイツ統一の結果、西側は冷戦の勝利を確信し、ソ連は東西対立の克服、融和を期待した。この両者の認識の乖離は、90年代に双方が十分に努力すれば埋められたはずだ。だがNATOは東方に拡大し、反発するロシアは国内情勢が混乱する中で次第に権威主義化していった。結局、ロシアも含めた新しいヨーロッパの安全保障秩序を構築する機会は失われてしまった。

 ニ

天声人語
 ・・・ 4ヶ月後、エリツィン氏はこの長官を首相に指名した。無名だったプーチン氏その人だ。▼「最初はあまりに冷静なので警戒したが、持って生まれたものだった」「この国の将来を託せる人物にまちがいない」。エリツィン氏の証言集には、20歳も年下のプーチン氏をほめちぎる言葉が並ぶ▼抜擢されたその人物はいま、世界を混乱に陥れている。苦難のウクライナの人々ならずとも、権力継承の深き罪を思わざるをえない命日である

 こうした文章を読むと、河瀬監督の、”一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?”という言葉を思い出します。

 先日も取り上げましたが、2月28日の英国ガーディアン紙は、「多くがNATOの拡大は戦争になると警告した。しかし、それが無視された。我々は今、米国の傲慢さの対価を支払っている」という見出しの下、「ロシアのウクライナ攻撃は侵略行為であり、最近の行為においてプーチンは主な責任を負う。しかしNATOのロシアに対する傲慢な聞く耳を持たない対ロシア政策は、同等の責任を負う」としています。そうした考え方基づけば、アメリカおよびウクライナの戦略に乗って、武器の供与や制裁の強化で、ウクライナ戦争を解決しようとすることが間違っていることは明らかだと思います。

 また、バイデン大統領やゼレンスキー大統領が、「戦争犯罪」だとか「ジェノサイド」というような言葉を頻繁につかっていますが、第二次世界大戦後も戦争をくり返してきたのはアメリカであり、その開戦理由にも、戦争結果にも多くの問題があったことを忘れてはならないと思います。
 
 そういう意味で、今回は「イラク戦争を検証するための20の論点」イラク戦争の検証をもとめるネットワーク編(合同出版社)から、ワセック・ジャシムさんの証言を抜萃しました。
 なぜなら、イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を保有しているという事実に反する情報に基づき、関係機関が査察中であったにもかかわらず強引に始められた戦争であり、当時のアナン国連事務総長が、”国連安保理の承認なく行われる対イラク戦争は国際法への侮辱であり国連憲章に合致しない”と米国を名指しして、その姿勢に警告を発し”た戦争であったからです。

 2004年のファルージャ総攻撃
 ファルージャでは、04年の4月の最初の攻撃で700以上、二回目の攻撃で6000人もの住民が殺され、行方不明者も3000人に及んだといわれます。とくに11月の攻撃はすさまじく、「息をしている者はすべて撃て」というのが米軍の姿勢でした。私や家族は、攻撃直前にからくもファルージャを脱出しましたが、攻撃の際、14歳以上は「戦闘可能年齢」だとして市外への避難も許されなかったため、実際には人口30万人の内のおよそ半数が市内に取り残されていました。
 当時、私はファルージャ近郊の村サグラウィーヤで避難民の支援を行なっていましたが、同村も米軍は包囲し、支援物資を乗せた車が入れなかったり、米軍ヘリに空爆されたリとさんざんでした。攻撃直後、私はファルージャ市内に入り遺体回収・引渡しをおこないました。苦悶の表情を浮かべたまま、焼け焦げた遺体、おびただしいうじ虫が群がり野犬に食い荒らされ骨が剥きだしになった遺体、戦意がないことを示す白旗を握り締めたまま撃ち殺された少年……、私はその後一カ月間まともに食べることも寝ることもできませんでした。何千回も体を洗いましたが、記憶に臭いが染み付いていました。報告のためとはいえ、今も、この映像を観るのは、とても辛いのです。

 米軍による不当拘束と虐待
 もっとも大規模な攻撃は04年におこなわれたものでしたが、その後も、米軍による空爆や人権侵害は続きました。私自身も米軍に拘束され、虐待を受けました。あれは、05年6月のことでした。当時、学生だった弟が大学からの帰宅途中に米軍の検問所で拘束されてしまったのです。それで、『弟は無実だ。解放してくれ』といいに行ったところ、私まで拘束されてしまいました。両手を縛られ、頭に袋を被せられたうえ、ワイヤーでのムチ打ちなどの暴行をアメリカ兵から受けました。あるアメリカ兵は「俺は家に帰る~、お前は監獄行き~」と歌いながら、石を投げつけました。翌日、私は、釈放されたものの、弟はアブグレイク刑務所に送られ、2年と7カ月、拘束されたのでした。結局、容疑は間違いだったのですが、釈放されるとき、「拷問はなかった」「米軍を訴えない」という書類に強制的にサインさせられました。さらに06年11月、今度は兄が逮捕されました。夜間、米軍が突入、家具やパソコンをめちゃくちゃに壊していきました。米兵は『二時間ほど、訊問する』といいましたが、兄が帰ってきたのは8カ月後でした。名前が指名手配中の武装勢力メンバーに似ているから誤解されたのでした。

 ファルージャの新生児たちを襲う異変
 総攻撃の後、ファルージャでは新生児の重度の健康障害が頻発しています。2,3年前から、ファルージャの病院では、口蓋裂、両足がくっついている、背中に異常に大きな瘤、目や鼻の穴が一つしかない、足が捻じれている、無脳症などといった症状が確認されています。
 これらは、総攻撃の前にはほとんど無かった症状で、ファルージャで生まれる新生児の20%が重い障害のため生後7日間以内に、亡くなってしまいます。原因として考えられるのが、劣化ウラン弾など米軍が使用した兵器による汚染でしょう。イラク環境省が、最近おこなった調査では、全国500ヶ所の中で、とくに放射能汚染のひどい42地域にファルージャとラマディも含まれています。イラク戦争の検証では、こうした汚染についての国際的な調査と責任追及を模索することも必要なのかもしれません。


 
 


 

 

 

 

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ユネスコ憲章・国連憲章とウクライナ戦争

2022年04月22日 | 国際・政治

 戦時中、塗炭の苦しみを味わった父母から、「戦争だけは絶対にしてはいけない」「戦争は最悪だ」と、しばしば聞いて育った私は、ウクライナの戦争報道に、日々つらい思いをしています。

 その一つは、もちろん戦場から伝えられる悲惨な映像や訴えです。でも、それだけではないのです。
 その悲惨な映像や訴えが、平和的な手段に基づく解決の取り組みに結びつけられず、ウクライナ軍を支援して、ウクライナに侵攻したロシアを打ち負かそうとする、軍事的勝利の方向に結びつけられていることがつらいのです。

 先日、政府がウクライナへの追加支援で、自衛隊が保有するドローンと化学兵器対応の防護マスク、防護衣の供与を決めたことが報じらました。すでに供与されたというヘルメットや防弾チョッキも、戦争を止めるためのものではない、と私は思います。戦争の一方の当事国に、そうしたものを供与することは、平和的な手段に基づく紛争の解決を目指すものではないと思います。
 トルコやハンガリーが停戦の話し合いに動きましたが、アメリカに追随する日本政府には、そうした動きは、まったくありません。

 また、メディアも、政府と同じような立場に立って、アメリカやウクライナからもたらされる映像やニュースを、そのまま流し続けているように思います。そして、ロシアからのものは、ほとんど疑いの眼差しをもって報じ、ロシアを敵視しているように思います。戦争では、どちら側にもプロパガンダがあって当然ですが、戦争を止めるために、中立的な立場に立って、相互に矛盾する映像やニュースを検証したり、共有したりしようとはしていないように思えるのです。
 また、メディアに登場する多くの人たちも、プーチンを非難し、ロシアを非難するだけで、どのようにすれば、ウクライナの戦争を止めることができるのかを論じられないので、結果的に、好戦的なゼレンスキー大統領を支持することにつながっているように思います。 
 
 だから、私は、河瀬直美監督の東大入学式での祝辞を、すべての日本人にしっかり受けとめてほしいと思います。
「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?”

 ユネスコ憲章に、下記のようにあります。
この憲章の当事国政府は、この国民に代わって次のとおり宣言する。
戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり、この疑惑と不信の為に、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
ここに終わりを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代りに、無知と偏見を通じて人種の不平等という教養を広めることによって可能にされた戦争であった。・・・

 極論かも知れませんが、ユネスコ憲章にしたがって考えれば、ワルシャワ条約機構が1991年に正式解散したにもかかわらず、北大西洋条約機構(NATO)が維持されたこと、そしてロシアを取り巻くように拡大されていったときから、ウクライナ戦争は始まっていたといえるように思います。NATO諸国の関係者の心の中に、ロシアを敵とし備えるという、戦争の火種が発生していたということです。

 国際連合憲章第2条の3には、
すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。”
 とあり、
 4に
”すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。”
 とあります。

 でも、アメリカを中心とするNATO諸国は、ロシアの目と鼻の先で軍事演習をくり返しました。特にNATOに加盟していないウクライナを含む軍事演習は、ロシアにとっては脅威であり、国際連合憲章が禁じている威嚇に当たると思います。
 2021年9月には、NATOを中心とした15ヵ国6000人の多国籍軍によるウクライナとの軍事演習、さらに10月、バイデン政権はウクライナに180基の対戦車ミサイルシステム(シャベリン)を配備したともいいます。だからプーチン大統領は、「NATOはデッドラインを超えるな!」と主張したようです。でもその直後に、ウクライナ軍はドンバス地域にいる親ロシア派軍隊に向けてドローン攻撃をしたというのですから、ロシア軍のウクライナ侵攻前からすでに、戦争は始まっていたと言えるように思います。したがって、ウクライナの戦争を、ロシア軍のウクライナ侵攻から論じることは、本質を見失うことにつながると思います。

 ネット上に、下記のような情報がありました。私は原典に当たって、その事実を確認したわけではありませんが、見逃すことができません。
NATO(北大西洋条約機構)の冷戦終結後の東方拡大路線が、今回のロシアのウクライナ侵攻の要因のひとつになってしまったことは間違いない。このことは、すでに1990年代から様々な専門家の間で問題となってきた。

たとえば、米国の冷戦時の外交の基本方針である「封じ込め」政策の提言者であるジョージ・ケナンは、とくに1990年代のNATOの中欧への拡張は、「冷戦後の時代全体における米国の政策の最も致命的な誤り」とし、なおかつ、「NATOの拡大は米露関係を深く傷つけ、ロシアがパートナーになることはなく、敵であり続けるだろう」とした。

あるいは、ヘンリー・キッシンジャーは、「ウクライナはNATOに加盟すべきではない」、「ウクライナを東西対立の一部として扱うことは、ロシアと西側、とくにロシアと欧州を協力的な国際システムに引き込むための見通しを、何十年も頓挫させるだろう。」とした。

 1987年から1991年に駐ソ・米国大使を務めたマトロック氏も、「同盟の拡大というものがなかったら今日の危機はなかった」、「NATOの拡大こそが最大の誤り」とする論評を書いた。

専門家だけではない。2月28日の英国ガーディアン紙は、「多くがNATOの拡大は戦争になると警告した。しかし、それが無視された。我々は今、米国の傲慢さの対価を支払っている」という見出しの下、「ロシアのウクライナ攻撃は侵略行為であり、最近の行為においてプーチンは主な責任を負う。しかしNATOのロシアに対する傲慢な聞く耳を持たない対ロシア政策は、同等の責任を負う」とした。”

 だから、私は、河瀬直美監督の東大入学式での祝辞を、すべての日本人にしっかり受けとめてほしいと思うのです。アメリカやウクライナからもたらされた情報は、何の検証もせずに事実として報道し、ロシアからもたらされる情報には疑いの眼を向け、ロシア側の意図を、あれこれ憶測するような伝え方やめてほしいのです。そして平和的な手段で解決しようする姿勢を示してほしいのです。

 

 

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ウクライナ戦争、ロシアの立場を考える(河瀬監督の東大入学式祝辞やコンチャロフスキー監督の言葉を踏まえて)

2022年04月18日 | 国際・政治

 先日の朝日新聞に、東大入学式における映画監督・河瀨直美さんの、祝辞が取り上げられていました。
 祝辞の中の言葉、「自らの中に自制心を持って」を題とし、下記のように簡単にまとめられたものでした。
来賓の映画監督、河瀨直美さんは祝辞でウクライナ侵攻に言及。「ロシアを悪者にすることは簡単」としたうえで、「なぜこのようなことが起こっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないか。誤解を恐れずに言うと『悪』を存在させることで私は安心していないか」と述べた。
 そのうえで「自分たちの国がどこかの国に侵攻する可能性があるということを自覚しておく必要がある。そうすることで自らの中に自制心を持って、それを拒否することを選択したい」と語りかけた。
 私は、ウクライナの戦争で、公平な判断がとてもできないようなアメリカ・ウクライナ寄りの報道に危機感を募らせていたので、的を射た祝辞ですばらしいと思いました。
 でも、その後「河瀬監督の祝辞が、波紋を広げている」という記事を読んで驚きました。国際政治学者から批判相次いだというのです。東京大学の池内恵教授は「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ない」とまで言ったようですが、私は受け入れられません。
 またネット上には、慶應義塾大学の細谷雄一教授が「ロシア軍がウクライナの一般市民を殺戮している一方で、ウクライナ軍は自国の国土で侵略軍を撃退している」と指摘し、河瀬監督の祝辞を念頭に「この違いを見分けられない人は、人間としての重要な感性の何かが欠けているか、ウクライナ戦争について無知か、そのどちらかでは」と厳しく批判したことも、取り上げられていました。
 私は、とても失礼で、間違った批判であると思いました。日本をリードする大学の教授にも、見えない事実、見えない景色、見えない世界があるのではないかと思いました。

 日本人だけで、310万人といわれる死者を出したアジア太平洋戦争は、”鬼畜米英”との戦いとして、当時の政府が国民に強制したと思います。でも現在の政府は、そのかつての”鬼畜”である米英と一体となって、ロシアを”鬼畜”扱いし、制裁を加えているのです。そのために、日本も大きなダメージを受け、多くの人が痛手を被っています。おかしいと思います。
 だから私は、力の行使である制裁ではなく、話し合いで解決してほしいと思い、過去の歴史を踏まえて、ウクライナでの戦争に関して、可能な限り公平な判断をしたいと思っているのですが、ロシア側の情報が、圧倒的に不足しているのです。ロシア側の情報は、断片的にしか報道されません。私は、現在日本の情報の偏りが異常ではないかと思います。政府やメディアの報道は、かつての大本営発表に似通っているような気がするのです。
 また、政府もメディアも、プーチン非難、ロシア非難ばかりで、ロシア側と情報を共有し、停戦に持ち込もうと努力してはいないように思います。そして、アメリカ・ウクライナ側に都合のよい情報だけを日々流しているように思うのです。

 逆に私は、死体が動いたという映像を見てから、すべてを疑いの眼差しで見るようになりました。例えば、ブチャで、両手を後ろに縛られ、頭を撃ち抜かれた死体が転がっているという報道がありましたが、自ら撤退したロシア軍が、戦争犯罪が疑われるそのような死体を、路上に残したまま撤退することがあるだろうか、もしかしたら、ロシア軍の残虐性を世界に広めるために、ウクライナ軍が、そうした映像を創作したのではないか、とか、激しい爆撃で破壊され尽くした住居の前に、子どものものと思われるいくつかのぬいぐるみが転がっている映像は、子どもの死を連想させるために創作したのではないか、とか、親族が殺されたと言って泣き叫ぶ女性は、演技をしているのではないか、というように、疑って見るようになったのです。もちろん真実は分かりません。

 人が殺し合う戦争では、嘘がつきものです。だから、どちら側にも嘘がある事を前提として、あらゆる事実や戦争に至る経緯を検証することが欠かせないと思います。「一方的な側からの意見に左右されて、ものの本質を見誤ってはいないか」と語りかけた河瀬監督の祝辞は、そういう意味で、まさに時宜に適った祝辞であったと思います。 

 でも、東大の池内教授は、ウクライナの戦争を、ロシアによる「侵略戦争」と断定しています。現象的にはそうかも知れませんが、私は、ロシア側から見ると「防衛戦争」であるという側面にも目を向ける必要があると思います。
 「親愛なる同志たちへ」という映画のアンドレ・コンチャロフスキー監督は、米ロで活動した巨匠であるとのことですが、ウクライナの戦争について、「今起きているのはロシアとウクライナのコンフリクト(衝突、紛争)ではなく、ロシアと米国のコンフリクトだ。ウクライナ人はその犠牲者なのだ」と述べています。池内教授は、そういう部分を考慮されていないのではないかと思います。

 いずれにしても、私は、ウクライナの戦争の背景に、米ロの利益の衝突があり、それに相互の誤解や無理解、偏見や差別意識が絡んでいると思います。それらを解消し、法や道義・道徳に基づいて判断する必要があると思います。ロシアを「」決めつけ、屈服させなければ解決しないというような考え方で、欧米日のように、ウクライナ軍の支援を続けることは、戦争を正当化し、犠牲者を増やすことになるので、間違っていると思います。
 ロシア軍のウクライナ侵攻という一つの現象だけを見て、戦争に至る経緯や立場の違いを考えようとしない慶大の細谷教授自身が、私は「人間としての重要な感性の何かが欠けている」のではないかとさえ思います。

 だから、くり返しになるのですが、ウクライナ戦争の原因のいくつかを、ロシア側の立場を考慮して、ふりかえりたいと思います。

一、NAOの問題
 1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、1991年7月には、ワルシャワ条約機構(WPO)が解散しました。そして、12月にはソ連が崩壊しました。だから、共通の敵のいなくなった北大西洋条約機構(NATO)も、同時に解体すべきだったのではないかと思います。でも、存続させたばかりではなく、逆に徐々に拡大させたことは、世界平和のための国連憲章の精神に反するものだったのではないかと思います。
 特に、NATOがロシアを取り巻くように次々に拡大していったことは、ロシアにとって脅威であるということに思いを致す必要があると思います。今回の戦争は、それがなかったということだと思います。

 フランスの大統領候補ルペン氏は、13日の会見で「NATOの統合軍事機構から離脱したい」と自主独立外交の持論を述べたといいます。24日の決選投票を前にして、左派票の獲得を意識してのものだといわれていますが、過去のインタビューでは、その理由として、「NATOはソ連と戦うために作られたからです。今日、ソ連は存在しません」と説明していたとのことです。アメリカを中心とするNATO諸国は、このことをごまかしてきたのではないかと思います。
 また、2008年にルーマニアのブカレストで開かれたNATO首脳会議で、ブッシュ・アメリカ大統領が、ウクライナとジョージア(旧グルジア)のNATO加盟を提案したとき、ドイツとフランスがロシアに配慮し、アメリカの提案に反対したという事実も、忘れられてはならないと思います。ロシアは長年、NATOの東方拡大を自国の命運がかかった重大問題だと訴えてきたのです。1990年のドイツ統一交渉の際、アメリカが、NATOを東方に拡大しないと約束したことは、複数の関係者が証言しています。文書になっていないから約束はなかったなどと言ってごまかしてはならないと思います。

 また、軍事同盟は、核兵器とともに、話し合ってなくしていくべきものだと思います。


二 軍事演習
 また、NATOが、ロシア周辺で軍事演習をくり返したことも、ロシアにとっては脅威であったと思います。特に、未加盟のウクライナを含む多国籍軍による軍事演習や、ウクライナ国内での軍事演習は、ロシアにとっては受け入れられないものだろうと察します。軍事演習が、ウクライナ戦争の引き金になったという側面も考慮すべきだと思います。

三 アメリカによる内政干渉
 ウクライナでは2014年に、親ロシア派のヤヌコビッチ大統領が解任され、親米派のリーダーが誕生するマイダン革命といわれる政変がありました。それには、アメリカが深く関わっており、「違法な政権転覆」であったというロシア側の主張には、考慮されるべき事実があるのではないかと思います。
 アメリカにも、CIAが関わっていたという情報があるようですし、バイデン大統領が副大統領時代に6回もウクライナを訪問しているという事実も、見逃すことが出来ません。
 さらに、息子のハンター・バイデンが、2014年にウクライナ最大手の天然ガス会社ブリスマ・ホールディングスの取締役に就任し、月収500万円という破格の報酬を受けていたということや、ハンター・バイデンが、ウクライナにおける生物兵器研究所に投資をして関与していた疑惑をニューヨーク・ポスト紙が、報じていたということ、また、ハンター・バイデンが取締役を務めるブリスマ・ホールディングスには、脱税などの不正疑惑があり、ウクライナの検察当局の捜査対象となっていたということ、そして、2015年、バイデン副大統領はポロシェンコ大統領に働きかけ、同社を捜査していたショーキン検事総長の解任を要求し、ポロシェンコ大統領に「解任しないなら、ウクライナへの10億ドルの融資を撤回する」と迫って、検事総長解任に成功したと言われていることなど、いろいろな報道があります。どれも真相は、私にはわかりませんが、アメリカがウクライナの政変に無関係であるとは思えません。 
 さらに、バイデン大統領が副大統領時代に、ポロシェンコ大統領に働きかけて、ウクライナ憲法に「NATO加盟」を努力義務とすることを入れさせたなどという報道も、ロシアの不満や不信感を高めることになったのだろうと思います。

 さらに、国連安保理は3月11日、「米国がウクライナで生物兵器を開発している」と主張するロシアの要請で、公開の緊急会合を開きましたが、そこで、ロシアのネベンジャ国連大使は、ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり「テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」と主張したといいます。
 これに対し、ウッドワード英国連大使トーマスグリーンフィールド米国連大使が、「偽旗作戦」であるとし、「安保理を利用して偽情報を正当化し、人々を欺こうとしている」と非難したようですが、疑わしい部分があることは否定できないと思います。

四 武器供与 
 ロシア軍のウクライナ侵攻前、バイデン政権がウクライナに対戦車ミサイルシステム(シャベリン)を配備したといいます。詳しいことはわかりませんが、もし、そうだとすれば、それがロシア軍のウクライナ侵攻につながったことも考えられ、見逃せないと思います。ロシアがつかんでいる情報を確認し、検証すべきだと思います。

五 ノルドストリーム2の運用を阻止しようとするアメリカ
 ウクライナの戦争で、見逃してはならないのが、ロシアとドイツを結ぶ「ノルドストリーム2」というロシア産の天然ガスを送るパイプラインの問題です。建設はすでに完了しているということですが、原発の運転停止が予定されるドイツにとっては、天然ガスは重要なエネルギー源であり、ロシアに依存せざるを得ない状況にあるといいます。だから、「ノルドストリーム2」の計画を推進してきたのでしょうが、アメリカは、こうしたロシアとドイツの接近に、以前から強い警戒感を示していたといいます。それは、2018年に、当時のトランプ大統領が「悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない」と発言していることにあらわれています。
 ヨーロッパが、エネルギーをロシアに依存することは、アメリカの利益を損ない、ヨーロッパとの結束の弱体化につながると考え、アメリカは「ノルドストリーム2」などを対象にした制裁を打ち出してきたのです。
 2019年7月には、アメリカの国務省が「ノルドストリーム2」の計画は「欧州、特にウクライナに対する政治圧力の道具を提供することにより、欧州のエネルギー安全保障を弱体化する」と主張し、当時のトランプ大統領も、「ベルリンはロシアの捕虜となっている」と述べたといいます。それに対し、メルケル首相は、「我々は独立した独自の政治を行い、我々が独自の決定を下している」反論したといいます。自由競争を建前とするアメリカの、こうした妨害的対応が、ロシアにとって許しがたいものであることは、誰でもわかるのではないかと思います。


 以上のようなことを踏まえれば、プーチン大統領も、自国の利益を主張する他の国の政治家とそれほど変わらない存在であることがわかると思います。コンチャロフスキー監督がいうように、「今起きているのはロシアとウクライナのコンフリクト(衝突、紛争)ではなく、ロシアと米国のコンフリクト」なのだと思います。でも、そうしたことを踏まえないから、プーチン大統領が他国を侵略する「悪魔」に思えるのだと思います。現に、週刊誌の新聞広告には、プーチン大統領を悪魔扱いするような文言が溢れています。

 ロシアのウクライナ侵攻が、どのようなやりとりや状況のなかで決定されたのかは、私には分かりませんが、ロシアを屈服させなければ解決しないということで、ウクライナ軍を支援することは間違っていると思います。国の利益を背負う政治家ではなく、第三者的立場に立つ法律家が主導し、法や道義・道徳に基づく話し合いをすれば、歩み寄れると思います。歩み寄らなければいけないと思います。「力が正義」であってはならないと思います。
 

 

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ウクライナ戦争とベトナム戦争

2022年04月14日 | 国際・政治

 ウクライナのゼレンスキー大統領は9日演説し、「ロシアの侵略はウクライナだけにとどまらず、欧州全域が標的だと指摘、西側諸国にロシア産エネルギーの完全輸入禁止とウクライナへの武器供与拡大を求めた」[キーウ・10日・ロイター] といいます。でも、”欧州全域が標的だ”という根拠は何も示されていません。私は、根拠のない妄言だろうと思います。
 また、ゼレンスキー大統領は「厳しい戦いになるだろう。われわれがこの戦いに勝つと信じている。戦うと同時に、この戦争を終結させるため、外交的な手段も模索する用意がある」と述べたともいいます。でも、その外交的な手段を模索しようとする具体的な論述はありません。ロシアが屈服するまで、戦争を続けるつもりなのではないかと思います。 
 それは、ウクライナ側の交渉官であるポドリャク大統領府顧問が「東部でロシアが敗北するまでロシアとの首脳会談は行われない」と述べたことからも察せられます。基本的には、ロシアが屈服し、弱体化がはっきりするまで、話し合いはしないということだろうと思います。
 こうしたウクライナの指導者の発言は、アメリカと一体となっていなければ、できるものではないだろうと思います。アメリカやNATO諸国の支援がなければ、ロシアに対して軍事的に圧倒的に不利だからです。 

 また、バイデン大統領は、6日の演説で、「彼らには自身のお金に指一本触れさせやしない。ビジネスもこの国では一切やらせない」と、追加制裁の狙いを声を張り上げてアピールしたと言います。ロシアに対する攻撃的な姿勢があらわれており、停戦する気のないことがわかります。

 さらに、ブリュッセルで開かれたNATOの外相会議では、NATOの事務総長が、「戦争は即座に終わらせねばならないが、現実を直視すれば、何ヶ月も、何年も続くかもしれない」と語ったようです。
 その会議でウクライナのクレバ外相は「私のテーマは三つある。兵器、兵器、兵器だ。戦いに勝つが、十分な兵器の供給がなければ甚大な犠牲が出る。供給が早ければ早いほど、数多くの命が救える」と語っています。十分な兵器がないにもかかわらず、”戦いに勝つ”というようなことがどうして言えるのでしょうか。何かが約束されていなければ、ウクライナの外相ができる発言ではないように思います。


 また、そうした発言を受けて、NATO各国は自爆型ドローンや、その他高性能兵器の提供をすると見られています。
 米国のブリンケン国務長官も、「ブチャで起きたことは、ならず者部隊による行き当たりばったりの行為ではない」「殺害、拷問、レイプなどの残虐な行為は意図的な作戦だ」と語っています。でも、この発言でも、具体的なそうした作戦の根拠は示されていません。ロシアに対する攻撃的な姿勢から生まれる憶測だろうと思います。本来、こうした発言には、客観的な証拠が必要なのです。

 ロシアのプーチン大統領が、アレクサンドル・ドゥボルニコフ将軍を総司令官に任命したという報道には、彼が”内戦下のシリアで軍事作戦を指揮し、市街地への爆撃などで多くの民間人を虐殺したとされる人物だ”とつけ加えられています。西側諸国の恐怖感を煽っているように思えます。アメリカが重ねてきた戦争で、どれほどの民間人が亡くなったのかを踏まえれば、簡単にできる発言ではないと思うのです。

 決定的なのは、米ロ首脳会談についてバイデン大統領が「両首脳の接触に対してはオープンだが、それは現在の危機に有益な結果をもたらし、意味をなすと考えられる場合のみだ」と言ったり、「ロシアの軍事行動が今にも起こりそうな状況で開催を約束することはできない」とか「今は、話し合うときではない」などと言ったりしていることです。
 悲しいことですが、アメリカやウクライナの政権は、極めて攻撃的であり、ロシアをつぶしにかかっているので、停戦は期待できないような気がします。そして、悲惨な戦いが続き、犠牲者が増え続けて、相互に憎しみが拡大していくような気がします。

  ウクライナがNATOに加盟せず、中立の立場を保持すれば、戦争が避けられたのに、アメリカやウクライナは、なぜ「その要求を受け入れることはできない」などと拒否したのか、そして、なぜ、過剰としか思えないようなプーチン非難やロシア非難をくり返すのか、また、なぜ民間人に武器を持たせて、ロシアと戦わせようとするのかを考えるのですが、私は、他国がアメリカの利益を損なうようなかたちで発展することや、影響力を拡大させることを、アメリカが受け入れないという側面と、さらに、伝統的な「反共思想」が影響している側面があるように思います。

 下記は、「我々はなぜ戦争をしたのか 米国・ベトナム 敵との対話」東大作(岩波書店)から抜萃したのですが、ベトナム戦当時のアメリカ国防長官、ロバート・マクナマラベトナムとの非公開討議(1997年6月、ハノイ対話)で語ったものです。

 第二次世界大戦後も、アメリカは戦争をくり返してきました。そしてそれは、テロとの戦いのみならず、「反共思想」に基づく戦争であったと思います。下記の文章は、そのことを示していると思います。
 「もしインドシナ半島が倒れれば、その他の東南アジア諸国もまるでドミノが倒れるように共産化するであろう。そしてその損失が自由主義社会に与えるダメージは、はかり知れないものになる」 
 アメリカのバイデン政権は ベトナム戦争当時と同じように、ロシアのヨーロッパ諸国に対する影響力の拡大が、アメリカの利益を損なうのみならず、自由主義社会に取り返しのつかないダメージを与えると受けとめ、ロシアをつぶしにかかっているように思います。
 
 だから私は、ベトナム戦争を思い出してほしいのです。
 ベトナム戦争でアメリカは、南ベトナムの独裁者、ゴ・ディン・ジェムを支援しました。ゴ・ディン・ジェムは、ジュネーヴ協定に基づく南北統一総選挙を拒否し、ベトナム民主共和国(北ベトナム)と対決しようとする反共主義者で、秘密警察や軍特殊部隊つかって反政府勢力を弾圧する独裁者でした。ゴ・ディン・ジェムが国民から乖離した存在であることは、アメリカの関係者も把握していたにもかかわらず支援したのです。アメリカが掲げる民主主義や自由主義に反するものであったと思います。
 だからそれが、「反共思想」に基づいていたことは、はっきりしていると思います。そして、ゲリラ戦を仕掛ける南ベトナム解放民族戦線を壊滅させるため、クラスター爆弾ナパーム弾などによる激しい攻撃と、ジャングルを破壊する「枯葉剤」による攻撃をくり返したのです。南ベトナム解放民族戦線が北ベトナムに支援を求めると、猛烈な絨毯爆撃といわれる北爆をくり返しました。使われた弾薬は、第二次世界大戦の量を超えたと言われています。そして、無差別爆撃によって、300万人をこえるといわれるベトナム人を殺したのです。

 アメリカのバイデン大統領に、プーチン大統領を「虐殺者」、「真の悪党」「戦争犯罪人」「人殺しの独裁者」などと言って非難する資格があるでしょうか。それとも、ウクライナ人は「人」だけれども、ベトナム人は「人」ではなかった、とでもいうのでしょうか。
 
 バイデン大統領は、そうした人命軽視の過去の過ちを踏まえ、即刻、米ロ首脳会談をすべきだと思います。 
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                   第二章 戦争目的は何だったのか       

 すれ違う「どこで戦争を回避できたのか」
 ・・・ 
 では次に、けさの議題であるマインドセット、つまり双方の指導者が戦争を決定するに到った際の、相手についての認識、情勢判断について議論したいと思います。
 この問題について「まず申上げておきたいことは、もし私が、ケネディが大統領に就任した1961年においてベトナムの共産主義者であったなら、当時あなた方が判断したように、私もまたアメリカの東南アジアにおける目標は、ハノイ政府やその同盟者であるNFL(南ベトナム解放戦線)を破壊、消滅させることであり、よってアメリカはベトナムの宿命的な敵だと判断したであろうということです。
その理由は、
① 1945年にホー・チ・ミンからトルーマン大統領に向けて送られた、有効的な関係を望んだ手紙をアメリカが無視したこと、
② 1950年代を通して、フランスの植民地支配のための戦争に、アメリカが支援を続けていたこと、
③ ベトナム全土での総選挙を定めた1954年のジュネーブ協定に調印することを、アメリカが拒んだこと、
 などからです。しかし、もしあなた方ベトナム共産党の幹部が、上のような理由からアメリカの目標はハノイ政府そのものの破壊であると考えたとすれば、それは全くの過ちです。私たちケネディ政権には、そのような考えは毛頭ありませんでした。逆に我々自由主義社会が、統一的な意志のもとに組織された共産主義勢力によって、世界中で脅威にさらされていると感じていたのです。
 つまり簡単に言えば、我々の当時の情勢判断を支配していたものは、いわゆる「ドミノ倒し」の恐怖だったのです。
 ケネディ、ジョンソン両政権を通じて我々は、南ベトナムを北ベトナムに譲り渡すのは、東南アジア全体を共産主義者に与えることになると考えていました。そして東南アジア全体を失うことは、アメリカ合衆国やその他の自由主義社会の安全保障体制を大きく揺るがすと判断していたのです。
 多くのアメリカ人と同様、我々も共産主義を一枚岩的なものと感じていました。中国とソ連は手を携えて、覇権を拡大しようとしていると考えていたのです。いま知るところによれば、1950年代後半から両国の間には深い亀裂があったのですが、当時はそんな風には考えていませんでした。逆に、共産主義勢力がその足場を広げているように思えたのです。毛沢東は朝鮮半島において西側諸国と戦闘を交え、ニキータ・フルシチョフは、第三世界における解放戦線によって西側諸国を崩壊させると公言していました。そして実際にキューバのカストロは、キューバを西半球におけるソ連の最前線基地にしたのです。そして中国に支援されたホー・チ・ミンが、フランスからインドシナを解放しました。
 ゆえに我々は、ベトナムにおける共産主義運動は、50年代にビルマ、マレーシア、フィリピンで活発化した共産主義勢力と互いに手を携えた、統一的な運動だと判断していました。いま思えば、それは極めて民族主義的なものであったかも知れませんが、当時はすべてが西側への脅威に感じられたのです。
 これはケネディ政権だけでなく、トルーマンそしてアイゼンハワー大統領の情勢判断でもありました。1954年に「ドミノ倒し」という言葉を使ったのは、まさにアイゼンハワー大統領だったのです。彼は「もしインドシナ半島が倒れれば、その他の東南アジア諸国もまるでドミノが倒れるように共産化するであろう。そしてその損失が自由主義社会に与えるダメージは、はかり知れないものになる」と明言しています。1961年1月19日、アイゼンハワーが大統領府を去るまさにその日、彼は我々ケネディ政権のスタッフに向って、もしラオス──これはベトナムをも示唆していましたが──を失えば、長期的に我々は東南アジアすべてを失うことになるであろう、と述べたのです。そして北ベトナムに関して言えば、北ベトナム政府が、中国やソ連と一体となって共産主義の拡張を目的としているのは明らかなように思えました。
 つまりこれが、私たちの情勢判断でした。誤まった判断だったかも知れません。しかし私は、ここにいる皆さんに、なぜ我々が誤った判断をするに到ったのか、その原因を理解してもらうことから、この対話を始めたいと思っているわけです。
 ・・・
 

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ウクライナでの戦争 素朴な疑問にこたえてほしい

2022年04月12日 | 国際・政治

 私は、ウクライナでの戦争が一日も早く停戦に至るように願う一人として、この戦争について、自分なりに公平な判断をしたいと思っているのですが、ロシアからの情報が圧倒的に不足していて、判断ができません。そこで、すでに書いたことも含めて、いくつか疑問に思うことを列挙したいと思いました。こたえていただけるとありがたいです。

1、ウクライナのゼレンスキー大統領が語りかける映像は、日々更新され、字幕付きで報道されているのに、ロシアのプーチン大統領が語りかける映像は、字幕がなく、何を語っているのかわからない古い映像が、くり返し流されています。なぜでしょうか。私は、公平ではないと思います。

2、最近、プーチン大統領の支持率が83%であるという報道を見ました。また、「プーチン大統領は真の愛国者だ」と語っている男性の映像を見ました。でも、日本では高い支持率が、”ロシアの人たちがフェイク・ニュースに騙されているからだ”というようなレベルで止まっているように思います。
 停戦のためには、フェイク・ニュースの内容に踏み込み、ロシアの人たちがどんなフェイク・ニュースに騙されているのかを突き止めて、お互いに正しい情報を共有しようと働きかける姿勢が大事ではないかと思います。どんなフェイク・ニュースが流されているのか知りたいと思うのですが、なぜ、”騙されているからだ”で止まっているのでしょうか。

3、ロシア国営テレビで、「反戦」を訴えた女性の映像がくり返し流されました。また、反戦デモをしている人たちが、厳しい取り締まりをするロシアの警察官に必死に抵抗しているような映像も、何度も見ました。
 だから、ウクライナにも、ロシアと戦争をしたくないと考え、ゼレンスキー大統領の政策に反対する人たちは必ずいると思います。特に、ゼレンスキー大統領が「国民総動員令」を発令し、18歳から60歳の男性市民に対して「出国全面禁止」をしたことに対しては、相当の反対があったのではないかと思うのですが、報道は見たことがありません。反対はなかったのでしょうか。
 また、ゼレンスキー大統領を支える人たちと、ロシアと仲良くしたいという人たちの争いもあるのではないかと想像するのですが、実態はまったくわかりません。

4、アメリカ・ウクライナ側の考え方や主張は直接そのまま報道されるのに、ロシア側の考え方や主張は、専門家などが出てきて解説するかたちで報道されることが多いように思います。なぜでしょうか。私は、ロシア側の考え方や主張も、できるだけ「生」のもの(ロシアの関係者のもの)を聞きたいのです。
 また、ロシア側の考え方や主張を解説する専門家が、「ロシアにだまされるな」というような本の著者であったり、ロシアに制裁を課している政府の組織と関わりのあるような人たちであったりすることも、気になっています。

5、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻前、演説をしています。その演説で、”・・・しかも、ここ数日、NATOの指導部は、みずからの軍備のロシア国境への接近を加速させ促進する必要があると明言している。言いかえれば、彼らは強硬化している。起きていることをただ傍観し続けることは、私たちにはもはやできない。”と述べたようです。
 それは、アメリカを中心とする西側諸国が、東西ドイツ統一当時16カ国であったNATO加盟国を、ロシアを取り囲むように30カ国に増やしたばかりではなく、隣接するウクライナやジョージアを加盟させようとし、さらに、未加盟のウクライナを含めた軍事訓練をくり返していること、また、バイデン政権がウクライナに対戦車ミサイルシステムを配備したことなどに対する反応のように思うのですが、プーチン大統領が、”傍観し続けることは、私たちにはもはやできない。”と語った実態を考える報道には接したことがありません。停戦のためには大事なことだと思うのですが、なぜでしょうか。

6、プーチン大統領が、ウクライナ東部の紛争解決に向けたミンスク合意について、「もはや存在しない」と述べたことは、報道されました。でも、なぜそのような結論にいたったのかは、明らかにされていないように思います。停戦のためには、合意に至った当時のことをきちんと確認し合い、ともに履行することが大事だと思うのですが、なぜ放置されているのでしょうか。


7、ウクライナのゼレンスキー大統領が3月23日、日本の国会でオンライン形式の演説を行いました。その内容も公開されています。でも、聴きっ放しでよいのでしょうか。一日も早い停戦実現のために、ロシア側の関係者の主張も、何らかの方法で聴くべきではないでしょうか。

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ゼレンスキー大統領はアメリカの前線司令官?

2022年04月08日 | 国際・政治

 先日、死体が散乱するウクライナの惨状を中継していると思われる動画で、死体の脇を通り過ぎた車のサイドミラーに、その後、その死体が動いた様子が映り、「動いた」ということばが発せられたのを聞きました。情報戦では、そういうこともあり得るのかと愕然としました。であれば、破壊された住居の前で、泣き叫ぶ女性の映像も、もしかしたら、演技であるかもしれないと疑う必要がある、と思い知らされました。きちんと確認されるまで、何も信用できないように感じました。

 だから、やっぱり相互に情報を共有する方法を考え、話し合いによる平和的な解決を目指す必要があると思います。
 でも、ゼレンスキー大統領は、7日の国連安全保障理事会でオンライン演説を行い、ブチャの惨状をかたりつつ、それが、「第2次世界大戦以来、最も凶悪な戦争犯罪だ」とロシア非難するとともに、「我々が相手にしているのは、安保理の拒否権を、死なせる権利に変えようとしている国家だ」と指摘したといいます。そして、「国連を解体する覚悟はあるか。国際法の時代は終わったと考えているのか」とさえ、語ったといいます。
 これは、国連安全保障理事会からロシアを排除し、ロシアのプーチン政権をつぶしたいアメリカの意図を代弁するような発言ではないか、と私は思います。
 アメリカのバイデン政権は、ロシアに対する追加制裁を発表し、ますます圧迫を強めています。ゼレンスキー大統領の発言やバイデン大統領の発言からは、何とか戦争を早期に終結させようとする姿勢が感じられません。
 戦争をすれば、人が死ぬのです。そして、それは憎しみを増幅させるのだと思います。だから、戦争を終わらせるためにどうするのか、が問われているのに、相手を非難し、糾弾するだけでは、戦争を終わらせることはできないと思います。でも、両大統領は、これ以上の非難の言葉はないというような激しい言葉で非難し、糾弾し、圧迫を続けるだけなので、なぜなのかと、私はその意図を考えざるを得ません。
 それが、ウクライナの惨状を利用して、ヨーロッパから、また、国際機関からロシアの影響力を排除し、ロシアを弱体化させ、アメリカの意向に逆らうことのできない国に陥れるということなのではないか、と私は疑うのです。
 
 7日の国連総会(193カ国)では、国連人権理事会におけるロシアのメンバー資格を停止する決議案が採択されました。賛成は日米英など93、反対はロシアや中国、北朝鮮など24、棄権はインドなど58とのことが伝えられています。安全保障理事会常任理事国の人権理メンバー資格停止は初めてということですが、私はやってはいけないことだったと思います。進む方向が違うと思います。
 決議は、ロシアによる組織的な人権侵害や国際人道法違反が報告されていることに「重大な懸念」を表明してなされたようですが、ロシア側が自分たちの主張が完全に無視されたリ、あからさまに差別されたリ、主権を侵害されたリしたと受けとめたら、さらに戦いをエスカレートさせるのではないかと思います。
 戦争は人の殺し合いですから、相互の憎しみを増幅させます。親族や友人・知人を殺された人は冷静な戦いが難しくなると思います。だから、戦争では必ずと言っていいほど、残虐事件が発生します。アメリカも、ベトナム戦争で無抵抗の村民を殺害しました。「ソンミ村虐殺事件」です。ソンミ村で虐殺された504人の大半は子ども、女性、高齢者だったといいます。でも、アメリカは、国際組織から排除されたリ、制裁を受けたりしなかったと思います。
 ウクライナでの虐殺の実態はわかりませんが、たとえロシアによる組織的な人権侵害や国際人道法違反があったとしても、ロシアを排除することは、間違いだと思います。第一、アメリカと異なる対応は不公平です。
 問題は、あくまでも話し合いによって、ロシアとウクライナおよびアメリカの間にある誤解や偏見、お互いの野蛮な対応に対する憎しみ、及び、それぞれが感じている脅威を取り除き、妥協点を見つける努力をすることだと思います。

 でも、アメリカのバイデン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は、連日、激しい言葉でプーチン大統領やロシアを非難・糾弾し、ロシア徹底排除の姿勢を貫いています。だから私は、そこにロシアをつぶそうとするアメリカの意図を感じてしまうのです。

 もしかしたら、現在軍事力はもちろん、経済力でも世界の頂点にたつアメリカは、ロシアや中国が、アメリカを越えて発展することが、受け入れられないのではないかと思います。
 また、世界中から利益を吸い上げているアメリカ企業の経営者(資本家)や政治家の多くが、共産主義や社会主義に嫌悪感を持ち、ロシアや中国の発展に脅威を感じているのではないかと思ったりします。
 だから、今がチャンスとばかりに、ロシアをつぶしにかかっているように思えるのです。そして、ゼレンスキー大統領もそういう人たちと考え方や思いを共有しているのだろうと想像します。
 アメリカのバイデン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナの人たちの命よりも、そのことを優先させているように思えるのです。

 それは、日本の敗戦間もない頃に、アイゼンハワー大統領が、「もし、インドシナ半島が倒れれば、その他のアジア諸国もまるでドミノが倒れるように共産化するであろう。そして、その損失が自由主義社会に与えるダメージは、はかりしれないものになる」と語り、その「ドミノ倒し」を避けるために、アメリカが他国の争いに軍事介入した考え方であり、バイデン大統領はそれを受けついでいるのだろうと思います。そしてそれは、第二次世界大戦後のアメリカに一貫した考え方であり、思想ではないかと思います。
 ケネディ大統領も、就任演説で「アメリカは、共産主義勢力と戦うために、どんな苦労もいとわない覚悟をしなければならない」と語り、ベトナムの内戦に軍事介入したのです。それが、ベトナム戦争に至ったのです。
 ベトナムでは、ゴディンジェム政権の圧制に苦しんだ南ベトナムの人たちが立ち上がり、南ベトナム民族解放戦線を組織して抵抗しました。戦いが激しくなり、体制維持が難しい状況になると、アメリカは圧制を続けるゴ・ディン・ジェム政権を支援するため、直接軍事介入したのです。だから、南ベトナム民族解放戦線が、北ベトナムに支援を求めたのだ思うのですが、それを受けてアメリカは、絨毯(ジュウタン)爆撃といわれる激しい北爆をくり返しました。死者数には、様々な数字があり、私にはよく分かりませんが、300万人以上という数字はアメリカ側も認めていると聞いています。絨毯爆撃ですから、子どもをはじめとする非戦闘員も兵士も区別はありませんでした。だから、ハーグ陸戦条約違反です。また、高い濃度のダイオキシンを含む枯葉剤が大量に散布され、さまざまな被害が発生しました。ジュネーブ条約が禁じる化学兵器の軍事利用です。だから、ベトナム戦争におけるアメリカは、戦争犯罪を犯したのです。
 ゼレンスキー大統領は、ブチャの惨状は、「第2次世界大戦以来、最も凶悪な戦争犯罪だ」とロシア非難しましたが、「死者300万人以上」が示すように、ベトナムの戦争被害は、ウクライナの比ではないのです。
 アメリカのバイデン大統領には、そのベトナム戦争を思い出してほしいと思います。

 また、プーチン大統領のウクライナ侵攻前の演説にもありますが、アメリカは、アメリカの意向に従わない国に対しては、反政府勢力を利用し、政権転覆をしようとする姿勢があるように思います。ウクライナを含む各国のカラー革命にも、そうした側面があるのではないかと思います。
 そして、周辺小国にとどまらず、いよいよ、アメリカはロシアや中国を倒しにかかっているように私には思えます。それは、圧倒的な軍事力や経済力を誇り、西側諸国の頂点に立ってきたアメリカの立場が、危うくなってきているからではないか、と私は想像しています。

 とにかくアメリカは、ロシアのウクライナ侵攻を、またとないチャンスと考え、ウクライナの惨状を、日々、世界中で報道されるように仕向けて同情を得、ロシアの発展や影響力拡大を阻止し、ロシアを弱体化することにより、アメリカに逆らえない国にしようとしているように思います。過激なロシア非難の言葉とともに、国際組織からロシアを排除しようとするバイデン大統領の主張は、ロシアの言い分を受けとめて、妥協点を見つけ出そうとする姿勢がないことの現われだろうと思います。

 確かに、ウクライナに侵攻したロシアには、言い逃れができない問題があると思います。でも、それをもって、話し合って解決しようとする姿勢を放棄することは、間違いだと思います。
 でも、バイデン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻前、米露首脳会談の開催について「両首脳の接触に対してはオープンだが、それは現在の危機に有益な結果をもたらし、意味をなすと考えられる場合のみだ」と主張し、「ロシアの軍事行動が今にも起こりそうな状況で開催を約束することはできない」とか「今は、話し合うときではない」などと語って、話し合いに後ろ向きだったと思います。そこが、問題なのです。ウクライナの人たちの人命を第一に考えたら、いつでも、どこでも、誰とでも話し合うべきだと思います。
 残念ながら、アメリカのバイデン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領は、話し合いよりも、今がチャンスとばかりに、徹底的にロシア軍と戦い、ロシアの残虐性を世界に知らしめ、ロシアを弱体化させる道を選んだのだと思います。 
 
 また、アメリカのロシアとの戦いは、時間をかけて準備されてきたように思います。東方不拡大の東西合意に反するかたちで、1999年にポーランド、チェコ、ハンガリーがNATOに加盟しました。2004年にはバルト3国およびルーマニアなど7カ国がNATO加盟しました。さらに2008年のウクライナとジョージア(旧グルジア)をNATO加盟させるべく動いていたのです。ロシアに隣接する国々を、次々にNATOという軍事同盟に加盟させてきたのです。それが、ロシアにとっては大きな脅威であることを理解する必要があると思います。本来、軍事同盟は、核兵器と同じように、少しず減らしていくべきものだと思います。だからアメリカの主導するNATOの拡大は、世界平和に背を向けるものだと言えるように思います。
 また、NATO未加盟のウクライナを含む15ヵ国の多国籍軍による軍事演習も、ロシアにとっては受け入れられないものだろうと察します。
 さらに、バイデン政権がウクライナに180基の対戦車ミサイルシステム(シャベリン)を配備したことも、見逃せないと思います。
 それは、ロシアの人たちの思いを完全に無視し、挑発するような行為です。
 さらに、ウクライナ東部の紛争解決に向けた「ミンスク合意」について、プーチン大統領が、「もはや存在しない」と述べたことも見逃せません。それは、2021年10月末にウクライナ軍がトルコ製攻撃ドローンを使用し、ドネツク州の都市近郊で分離独立派の武装組織を攻撃したからのようですが、これがミンスク合意に反しているということで、ロシア側が重大な決断をしていくことにつながったのではないかと思います。

 通常、こどもの喧嘩を見たら、まず最初に手を出した方を𠮟ります。そして、謝らせます。でも、それで終わりにはできません。なぜ手を出したのかを問い詰めます。そこでもし、被害者の方にも問題があった場合は、被害者にも謝らせます。

 傷害事件の裁判などでも、被害者の言うことだけを聴いて、加害者を裁くことはしないと思います。バイデン大統領やゼレンスキー大統領は、それをしようとしているように思えます。
 今回のウクライナの戦争でも、きちんと両者の言い分を聞いて対応することが求められるはずですが、アメリカのバイデン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領には、そうした姿勢が欠けているようです。プーチン大統領やロシアに対する非難・糾弾の言葉は、あまりに過激で、感情的です。また、大きな被害を被る世界中の人たちのことを考慮せず、なりふり構わず、次から次に発せられる経済制裁も、冷静さを欠いているように思います。
 国連人権理事会におけるロシアのメンバー資格停止の決議案採択状況が示すように、ロシアは完全に孤立しているわけではありません。賛成は93ですが、反対がロシアや中国、北朝鮮など24、棄権はインドなど58ヶ国なのです。そんなに簡単に屈服したり、降伏したり、プーチン政権が追い詰められ、倒れることはないと思います。
 だから、戦争が続き、死者が増え、経済制裁の悪影響で、世界中の人たちが、追い詰められることになると思います。アメリカの経済制裁の影響は、経済弱者にとっては、まさに死活問題であり、経済制裁のために命を落とすことになる人たちも出てくるのではないかと思います。
 さらなる武器の供与をしようとするアメリカのバイデン大統領や、さらに高度の武器の供与を求めるウクライナのゼレンスキー大統領の対応は野蛮だと思います。
 
 下記は、ミンスク合意の議定書です(ウィキペディアから)。この合意の履行状況も検証が必要だと思います。違反があれば、当然ウクライナの責任も問われるからです。
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1 双方即時停戦を保証すること。
2 OSCEによる停戦の確認と監視を保証すること。
3 ウクライナ法「ドネツク州及びルガンスク州の特定地域の自治についての臨時令」の導入に伴う地方分権。
4 ウクライナとロシアの国境地帯にセキュリティゾーンを設置し、ロシア・ウクライナ国境の恒久的監視とOSCEによる検証を確実にすること。
5 全ての捕虜及び違法に拘留されている人物の解放。
6 ドネツク州及びルガンスク州の一部地域で発生した出来事に関連する人物の刑事訴追と刑罰を妨げる法律。
7 包括的な国内での対話を続けること。
8 ドンバスにおける人道状況を改善させる手段を講じること。
9 ウクライナ法「ドネツク州及びルガンスク州の特定地域の自治についての臨時令」に従い、早期に選挙を行うこと。
10 違法な武装集団及び軍事装備、並びに兵士及び傭兵をウクライナの領域から撤退させること。
11 ドンバス地域に経済回復と復興のプログラムを適用すること。

12 協議への参加者に対して個人の安全を提供すること。

 議定書の後に出された覚書
ミンスク議定書の調印から2週間の間、双方の勢力が休戦規定にたびたび違反した。ミンスクで会談が続けられ、議定書に続く覚書が2014年9月19日に調印された。この覚書は議定書の履行を明らかにした。調停の手段の中で合意されたのは次のとおりである。

・両国の国境線から15kmまで範囲から重火器を撤去し、30kmの緩衝地帯を作ること。
・攻撃行動の禁止。
・セキュリティゾーン上での軍用機での戦闘の禁止。
・全ての外国人傭兵を紛争地帯から撤収させること。
・ミンスク議定書の履行を監視するためOSCEの作戦を開始すること

 

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ウクライナ戦争、アメリカの意図と戦略 

2022年04月05日 | 国際・政治

 私は、ロシア侵攻後のウクライナに関わる日本の報道に問題があるように思っています。アメリカおよびウクライナからもたらされる情報は、検証することなくそのまま事実として報道し、逆に、ロシア側からもたらされる情報は、常に疑わしいものであるかのように扱っているように思うのです。
 最近、バイデン大統領は、ロシアのプーチン大統領が自ら孤立化し、顧問の一部を処分していることを示す情報があると明らかにしたり、プーチン大統領が、一部の顧問を自宅軟禁下に置いている可能性もあると述べたり、プーチン大統領のまわりにいる人たちが、大統領が恐くて何も言えないようだ、と言ったりしています。でも、それはプーチン大統領を孤立化させ、ロシアの弱体化を意図するための印象操作ではないかと思います。だから、そうした発言を検証することなく、そのまま報道することは控えるべきではないかと思うのです。
 
 また、ウクライナのゼレンスキー大統領が語りかける映像は、日々更新され、字幕付きで報道されているのに、ロシアのプーチン大統領が語りかける映像は、字幕がなく、何を語っているのかわからないいくつかの映像がくり返し流されています。取材が難しいということはあるかも知れませんが、通信技術が進んだ現在、プーチン大統領と直接接触しなくても、プーチン大統領やロシア側の取材は可能なのではないでしょうか。私は、プーチン大統領やロシア政府の関係者、軍の要職にある人たちが、ウクライナの現状について、どう考えているのか知りたいと思うのですが、情報がほとんどありません。
 日本の政府がアメリカに追随して、ロシアに経済制裁を課しているからといって、政府と同じような立場に立って、メディアが公平な報道を心がけないことには問題があると思います。

 また、最近ロシア軍が撤退した首都キーウ近郊などで、多くの市民が死亡しているのが見つかり、ロシアの責任を問う声が強まるなかで、バイデン政権はさらなる制裁を発表したようですが、それは、被害の拡大を防ぐことにならないように思います。
 報道によると、ウクライナの外相が、キーウの都市ブチャの惨状について、ツイッターで、「ブチャの虐殺は意図的なものだ。ロシアはできるだけ多くのウクライナ人を殺害しようとしている」と発信し、ゼレンスキー大統領も、それがジェノサイドであり、戦争犯罪であると語っています。国際的にも、同様の声があがっているようですが、私は、それが、プーチン大統領を屈服させ、ロシアを弱体化させたい、バイデン政権の戦略なのではないかと疑わざるを得ません。

 ロシア軍がウクライナに侵攻した直後、ゼレンスキー大統領は、18~60歳の男性の出国を禁止し「国民総動員令」を発令しました。そして、世界中に武器の供与を求めるとともに、国民に祖国防衛のため、武器を持って侵略者と戦おうと呼びかけました。だから、それに応えるように、市民がビールの空き瓶でせっせと火炎瓶を作ったり、若者が機関銃の操作を教わったりしている映像が流されました。中には女性や年老いた人もいたように思います。これは重大なことだと思います。
 その時点で、私は、ロシア軍の民間人虐殺が戦争犯罪であるという指摘は成立しなくなっていると思うのです。民間人が武器を所持して、ロシア軍に抵抗する体制を整えたのであれば、ロシア側から見れば、軍人と民間人を区別する理由がなくなっていると思います。だから、民間人の虐殺というのは、確かに戦争犯罪だと思うのですが、その判断は、ウクライナの戦争では、簡単ではないと思います。

 それで、思い出すのが、日中戦争当時の南京における「安全区」です。ドイツ人ラーベを中心とする「南京安全区国際委員会」が、日中の南京戦に際し、戦災で家を失ったり、戦火に追われ南京に流入してきた難民や、逆に、南京から避難できない貧しい市民などを救済するため、南京城内の一角に「南京安全区」を設定したのです。そして、安全区には武器を持った人を入れないように監視することによって、そこを攻撃の対象から除くように、日中双方に働きかけたのです。
 ゼレンスキー大統領のとった方針は、それとは全く逆であったと思います。民間人が火焔瓶を準備し、武器を所持したら、ロシア側は、攻撃対象として軍人と民間人を区別することはできないと思います。
 だから、現実には、武器を所持しない多くの民間人が亡くなったのではないかと思いますが、戦争犯罪と断定することは、そんなに簡単ではないと思います。

 さらに私が不審に思うのは、かつてソ連の一角を占めたに過ぎなかったウクライナのゼレンスキー大統領が、なぜ、ソ連の本体ともいえるロシアに軍事的に対抗する決断をするに至ったのかということです。象と蟻の戦いであるとは思いませんが、装備の面でも組織の面でも、圧倒的に不利であり、戦争になれば、当然甚大な被害が予想できたのではないかと思います。でも、現実にウクライナは、武器をとってロシアと戦っています。
 だから私は、そこに、アメリカのバイデン政権と一体となったゼレンスキー大統領の、ロシアに対する野蛮な戦略があるのではないかと疑わざるを得ないのです。ゼレンスキー大統領個人が、単独でそういう決断をするとは思えないのです。

 ロシアが相当ひどい爆撃をやったであろうことは、日々の映像から察せられますが、両方にプロパガンダがあることは否定できないと思います。プロパガンダはお互いの疑心暗鬼を深め、憎しみを増幅すことにつながると思います。だから、情報を共有することが、大事であり、あらゆる組織からロシアの人たちを排除したり、情報のやりとりを遮断したりすることは、相互の理解を妨げ、溝を深めることになるので、間違いだと思います。
 私は、戦争が続いている現在、両方の報道をそれぞれの相手国に伝え、その事実を共有しつつ、話し合いができるようにするシステムを確立してほしいと思っています。そうすれば、ロシアとウクライナおよびアメリカの間にある誤解や偏見、お互いの野蛮な対応に対する憎しみ、及び、それぞれが感じている脅威を取り除き、妥協点を見つけることができるのではないかと思います。
 また、あらゆる国が、きちんと検証されたことを報道し、検証されていない事実は、そのことを踏まえて、できるだけ報道をひかえ、報道する場合も「確認はとれていませんが・・・」というような形で報道すべきではないかと思います。プロパガンダを広めるような報道をすべきではないと思うのです。そういう意味で、日本の報道は、アメリカよりで、何とか被害の拡大を防ごうとする姿勢が欠けているように思います。
 難しいことは、いろいろあるでしょうが、ウクライナの戦争の背景や経緯をきちんと理解することに努め、話し合いで解決しようとする方向で、報道したり、具体策を提起するようにしてほしいと思います。

 私には、見逃すことのできない事実がいくつかあります。
 たとえば、2022年11月に実施される中間選挙控え、トランプ前大統領は、再び、バイデン米大統領の息子の醜聞を握っていれば情報を公開するようプーチン大統領に呼びかけたといいます。事実はわかりませんが、いずれにしても、アメリカのバイデン政権が、ウクライナに深く入りり込んでいたことを示しているように思います。だから、アメリカ側の人たちが、ウクライナでどんな活動をしていたのか、また、ロシア側はそれをどのように理解しているのか、知りたいと思いますが、そういうことは、ほとんど取り上げられていないように思います。

 以前は、ロシアのウクライナ侵攻の背景を考えさせるような報道もありましたが、最近は、ウクライナの悲惨な実態ばかりで、それがウクライナに軍を侵攻させたプーチン大統領のロシアは悪、だから屈服させなければならない、というような武力による解決を意図するアメリカの戦略につながっているように思います。
 私は、そうではなく、ロシアとウクライナおよびアメリカの間にある誤解や偏見、お互いに感じている憎しみ、及び、それぞれが感じている脅威を取り除き、平和的に解決できるよう、日々の報道で、誘導してほしいと思います。

 また、NATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟の、東方拡大の問題も、あまり取り上げられないようですが、ロシアにとって重大問題であることは、キューバ危機をふり返れば明らかだと思います。
 当時、「核戦争一歩手前」ということで、世界終末までの時間が、「世界終末時計」で、残り2分などといわれました。それまでの最短の時間であることが話題になり、世界中が心配し、注目したと思います。それは当時、ロシアがキューバに核兵器などを持ち込むことを、アメリカは断乎として認めず、”核戦争も辞さず”という姿勢を示したからです。
 
 それを踏まえると、1999年のポーランド、チェコ、ハンガリーのNATO加盟、さらに2004年のバルト3国およびルーマニアなど7カ国のNATO加盟は、ドイツ統一後のNATO東方不拡大の東西合意に反し、ロシアにとっては認めがたいことであったと思います。にもかかわらず、2008年、再び、時のブッシュ・アメリカ大統領がウクライナとジョージア(旧グルジア)のNATO加盟を提案したといいます。このとき、ドイツとフランスが、アメリカの提案に反対したことは、見逃されてはならないと思います。ロシアに配慮すれば、そういうことはしてはならないということだったと思います。
 ロシアは、明確に”ウクライナとジョージアのNATO加盟は、ロシアの脅威であり、受け入れられない”と主張しているのです。でも、バイデン大統領は、そうしたロアシアの意向を知りながら、ウクライナの加盟を進めようとし、NATO東方拡大の約束はなかったと突っぱねたことが、ウクライナ戦争の原因の一つになっているのだと思います。

また、バイデン政権は、ロシアを挑発するかのように、NATOを中心とした15ヵ国6000人規模の多国籍軍による軍事演習を、ウクライナを含めて展開しています。このウクライナとの演習は最大規模の演習だったと報道されました。
 そのおよそ一ヶ月後には、バイデン政権はウクライナに180基の対戦車ミサイルシステム(シャベリン)を配備したといいます。そうしたことがきっかけで、ロシアは軍をウクライナとの国境周辺に配置したようです。でも、その後どんなやりとりがあったのかはわかりません。
 だから、ウクライナの戦争が「ロシアの一方的な侵攻」が原因というのは正確ではないと思います。
 そうした経緯を、きちんと確認すれば、相互理解を深め、妥協点を見付けることは可能だと思います。

 平和な時代が続けば、炭素排出量の少ない天然ガスを、ヨーロッパなどに大量に輸出できるロシアの影響力が、次第に世界中で増し、アメリカの影響力がしぼむことは、仕方のないことだと思います。
 でも、アメリカのバイデン政権は、それを受け入れることが出来ず、何としても、阻止しようといろいろ画策し、戦争へ誘導したのではないかと思います。
 日本の福島の事故以来、脱原発を掲げるドイツは、早くからロシアと協力してノルドストリーム2の建築を進めていたことも自然な成り行きで、本来アメリカが関与せべきことではないと思います。

 でも、アメリカは、諦めることをせず、ロシアがウクライナに侵攻せざるを得ない状況をつくり、戦争へ誘導したのではないかと疑います。そして、世界中に働きかけ、ロシアに制裁を加え、ロシアの弱体化を進めるために、ウクライナで動いたのではないかと思うのです。

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ウクライナの戦争の背景と格差問題

2022年04月02日 | 国際・政治

 3月31日付朝日新聞で、また、気になる記事を見つけました。”賃金「年齢よりも職務で」”という記事です。年齢が上がるにしたがって給料の増える「年功序列型賃金」ではなく、職務に応じて賃金を決める「ジョブ型雇用」にしようという動きがあるというのです。私は、これは間違いなく、中間層をさらに衰退させ、格差の拡大をもたらす「働き方改革」であると思います。
 私は、小泉内閣の「働き方の構造改革」を思い出しました。竹中平蔵氏がメディアに盛んに登場し、「働き方の構造改革」を主張していたのです。そして、「新しい時代にふさわしい働き方が求められているのです」とか「いろいろな働き方ができるようにするのです」などといって、働き方の構造改革を強引に進めたのです。もちろん、いろいろな働き方ができるということを歓迎した人もいたと思いますが、その「改革」の結果、派遣労働者その他、非正規の労働者が増え、格差の拡大につながっていったように思います。
 働く人たちを、景気の状況に合わせて自由に切り捨てることのできる体制になったと言ってもいいと思います。景気のいいときには、正社員を派遣労働者や期間労働者などの非正規労働者に置き換えて儲け、景気が悪化したら切り捨てる、この大企業の非人間的な対応を、簡単にできるようにする仕組を作ったのが、小泉内閣の「働き方の構造改革」であった、と私は思っています。

 そして今、大手企業は、「ジョブ型雇用」の制度を取り入れ始めているようですが、それが、前稿で取り上げたマルクスの「きわめて勤勉な労働者層の飢えと苦しみと、資本制的蓄積にもとづく富者の粗野または上品な贅沢的消費との内的関連は、経済的諸法則を認識することによってのみ暴露される」という指摘に当たるものだと思います。
 資本主義体制のもとでの生産は、労働者が生産過程で創出する剰余価値(利潤として現れる)を、資本家が搾取し、それによって社会的生産力を高めるため、資本家は、労働者に支払う賃金を最小化し、剰余価値を増大させる労働時間の延長労働強度の増大過度の労働労働生産性の発展を意図するのですが、それが、労働者の隷属状態を作り出し、また、”すべての労働者を窮乏化させるよう作用する”ということです。
 したがって、世界的に格差が拡大しているということは、マルクスが指摘したように、労働者の窮乏化によって、資本主義体制が行き詰まってきていることを示しているのだと思います。
 労働者の団体が”企業経営者の皆さまは、私たち労働組合の大切なパートナーです。なぜなら、私たち働くものにとって雇用や労働条件、安心できる生活は、企業の成長や発展がなければ実現しません。企業経営者の皆さまにも自社の業績アップが一番だと思います。 生産性をあげることはパートナーとして共通のテーマです。そのためには労使協調を築きあげ、労使一丸となることが早道です”(日本労働組合総連合会福井県連合会ホームページ)などというようなかたちで、経営者(資本家)側にすり寄っていく現在、マルクスのいう資本主義体制の根本的打破である「革命」など起こりようがなく、したがって、資本主義体制は、自滅の道を進んでいると言ってもよいのではないかと思います。

 国際間の取り引きが日増しに増大する現代、格差の拡大は一国でできるものではありません。国際社会が、自滅を免れるために一致して対応しなければならない重要課題だと思います。
 でも、現実はそうした方向に進む気配がほとんどなく、経営者(資本家)や経営者(資本家)と一体となった政治家が、より多くの剰余価値を得るために、様々な工夫をしつつ東奔西走しているのだと思います。
 ノルドストリーム2によるロシアのヨーロッパに対するエネルギー供給をはじめとする影響力の拡大が、アメリカの利益や影響力を損なうため、アメリカは黙視出来ず、動いた結果が、NATO(北大西洋条約機構)東方拡大の問題と絡み合って、ウクライナで爆発するに至ったという今回の戦争の背景を見落としてはならないと思います。

 私は、そうした背景を見ようとしない人たちが、バイデン大統領と同じように、プーチン大統領を「虐殺者」、「真の悪党」「戦争犯罪人」「人殺しの独裁者」などと信じ、ロシアを屈服させるために、ウクライナ軍を支援する方向に進んでいるように思います。ロシア政府は、厳しい制裁を課したアメリカ、イギリス、欧州連合(EU)加盟国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、台湾および日本などを「非友好国」と指定しましたが、指定された国々は、ウクライナの戦争終結ではなく、ロシアを屈服させるために、アメリカと一体となってウクライナの戦争を支え、拡大させる道を選んだということだ、と私は思います。

 私は、国家間の対立を、戦争によって決着させようとするこうした考え方は野蛮であり、終わりにすべきだと思います。もはやそういう時代ではないと思います。核兵器の使用による人類の破滅も考えられる時代ですし、戦争ではなく、環境破壊や気候変動その他による、人類の終焉も語られる時代です。一致して、話し合いで解決すべき問題だと思います。
 
 ロシアのウクライナ侵攻前、バイデン米大統領は「ロシアによる “ウクライナ侵攻”は、2月16日だろう」などと予言していましたが、なぜそれを止めるための話し合いを呼びかけなかったのでしょうか。また、「ロシアのウクライナ侵攻は、北京冬季オリンピックの閉幕式(20日)前のいつでも起こり得る」などとも言っていました。そして、現実にウクライナ駐在の大使館を撤収し、職員たちを退避させたりもしたようですが、どうしてウクライナの人たちのために、何が何でも侵攻を止めようと努力しなかったのでしょうか。なぜ軍人を周辺のNATO諸国に送ったりしたのでしょうか。

 日本は、アメリカとの同盟関係を強化する方向に進んでいるようですが、それは、進む方向が逆だと思います。軍事同盟などは、縮小したり、無くしたりする方向に進まなければいけないと思います。
 アメリカを中心とするNATO諸国も、徐々に加盟国を増やして、ロシアを脅えさせてきたのではないかと思います。それが、ウクライナの加盟問題で爆発に至ったのではないかと思います。進む方向が逆だと思います。
 ロシア非難決議で棄権した中国に対するアメリカの対応も敵対的であり、気になっています。台湾に要人を派遣し、台湾の関係者との話し合いを進めているようですが、私は、中国との考え方の違いは、経済制裁などではなく、国際機関とともに、直接、中国と話し合いをすべきではないかと思います。

 先日、ウクライナに関するテレビの報道で、「プーチンの手口」などという表示があるのを見て思い出しました。アメリカの共和党は、2020年の米大統領選で、バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏が、ウクライナ企業役員として高額の報酬を受け取っていた疑惑を追及したのです。日本のメディアも取り上げていました。
 また最近、ロシアが、ウクライナ国内での生物兵器開発に、バイデン大統領の息子ハンター・バイデン氏が関わっていたことを示す書簡が見つかったと発表したのです。ハンター氏が、生物兵器関連施設への資金提供で重要な役割を果たしていたというのです。もちろん、その真偽は、私にはわかりません。きちんと検証すべき問題だと思います。でも、もしそれが事実なら、それは、ロシアのウクライナ侵攻を挑発する「バイデンの手口」とも言えるものであると思ったのです。

 さらに溯れば、リビア内戦の際、当時のヒラリー・クリントン国務長官が、大量の武器をリビアの反政府勢力に密売したとして、問題視されたことがありました。詳細はわかりませんが、アメリカは、反米的な国家に対しては、反政府勢力に武器を売ったり、供与したり、直接軍事介入したりして反米政権を倒しにかかった前歴があるということです。アメリカによる、そうした反政府組織に対する武器の売却や供与や軍事支援について、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻直前の演説で指摘しています。
 そういうこともあって、私は、ロシア軍がウクライナ侵攻に至る経緯の詳細を知りたいと思います。どんなやり取りがあったのか、また、ロシアはどんな情報や考えに基づいて侵攻を決断したのか。

 また、アメリカ政府が台湾に要人を派遣し、何を話し合っているのか。

 朝日新聞の「あすを探る」というコーナーに、三浦まり氏の文章があり、私は、適確な指摘であると思いました。一部を抜萃します。
冷戦後のグローバル経済の伸展は富と権力の極端なまでの集中を許し、持たざる者を追い込んだ。民主主義国家では民主主義の後退や右翼ポピュリズムの伸張を、権威主義国家では武力行使を伴う国際秩序への挑戦の誘因をもたらした。このように考えれば、ウクライナの人道危機は、私たちが道徳的に破綻した経済システムに生きていることをまざまざと見せつけるものだといえる。劣勢が明らかになりつつあるロシア軍を前に、民主主義の勝利と捉える向きもあるが、どのような帰結を迎えるにせよ、グローバルな格差問題に有効に対処しない限りは、安定的な秩序は作り出せないだろう。つまりは、迂遠なようでいて、環境に配慮し、ジェンダー差別を撤廃し、格差を是正することが、実は平和に資することになる。
 折しも岸田政権にて「新しい資本主義」が議論されはじめた。有識者メンバー15人のうち7人が女性であることは歓迎したいが、非正規雇用などの当事者の声が十分届くのかは不明だ。グレーテス氏が語ったような大胆なクオーター制度、ケア経済への投資、公正な税制、家父長制を終わらせるための権力の平等な配分が、具体的な構想に盛り込まれなければ看板倒れになる。日本経済の立て直しだけではなく、世界平和の観点から新しい資本主義のあり方を追求することこそが求められている。
 私は、この考え方で、世界規模の話合いをしなければいけないように思います。どの問題も、日本だけでは解決が難しい問題ばかりだと思うのです。

 ウクライナの戦争は、まさに、”道徳的に破綻した経済システム”のもたらしたものだ、と私も思います。
 だから、プーチン大統領を「戦争犯罪人」とか「人殺しの独裁者」などと呼んで、ロシアを屈服させようとしても、それは、ウクライナの被害を大きくするだけで、根本的問題は解決しないと思います。また、ウクライナの戦争を「ヒトラーに重なるプーチンの野望」によるものであるとか、「プーチンのねらいは崩壊したソビエト帝国の復活」であるというような根拠の明確でないとらえ方で、ウクライナ軍を支援することは、平穏な生活をしたいと願うウクライナの人たちの思いに反するものであるとも思います。

 ウクライナの戦争が、”道徳的に破綻した経済システム”のなせるわざであるという側面を自覚しなければいけないと思うのです。そうでなければ、ウクライナとアメリカやNATO諸国が、たとえプーチンを倒しても、何も解決しないと思います。野蛮な争いを引き起こす”道徳的に破綻した経済システム”を、国際的な話し合いで改めることが必要だと思います。
 
 日本は、アメリカに追随し、ロシアのウクライナ侵攻を非難するだけ終わりしないでほしいと思います。ロシアのウクライナ侵攻を非難すると同時に、国際機関の了解なく、他国に武器を売却したり、供与したり、軍事介入したりすることを禁じるなど、戦争や内乱による被害の拡大を防ぐための提言などもしてほしいと思います。

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