クローン牛とは、人工的につくられた牛のことであるが、その技術には受精卵クローンと体細胞クローンのふたつがある。
実は、日本では受精卵クローン牛の肉や牛乳はすでに流通している。現在のところ表示義務がないので、そのことを知っている人はきわめて少ない。
受精卵クローン牛は、1990年8月に我が国で初めて誕生して以来、43機関で707頭が出生しているという。
先月の1日に厚労省が食品安全委員会に諮問したのが「体細胞クローン家畜は市場に流通させても良いか?」ということであり、報告書には「クローン牛の乳や肉は一般牛と差異はない」とまとめられた。畜産草地研究所はクローン牛から生まれた牛の栄養成分やアレルギーなどを調べて、一般牛と比較し、問題は見つからなかったとしている。
1996年クローン羊「ドリー」の誕生を機に、さまざまな哺乳動物で作り出されてきたが、このドリーで明らかになったのは、何故だか原因は不明だが、老化が早いという事実だった。
また、我が国においては、体細胞クローン牛が1998年7月に世界で初めて誕生して以来、これまで累計511頭が出生(平成18年9月30日現在)している。このうち死産、生後直死、病死等が274頭で、54%と高い割合で異常死している事実もある。
科学的な見地で比較しても差がないという議論と倫理観や食の本質についての議論はまだまだ緒に就いたばかりだ。