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フロント企業の増殖

フロント企業の増殖

67回

この「川崎定徳」の佐藤さん、そして「廣済堂」の櫻井さん、それに「地産」の竹井さん――この3人が俺にとっちゃあ一流の“経済人”だったな。

 だからあの時代のバブル期は本当に面白かった。

佐藤さんとか櫻井さんとか、政界の表にも裏にも通用するフィクサーや竹井さんら仕手のスーパースター、それこそ日本の経済を裏から回していた人たちと付き合えたんだから。

 佐藤さんも櫻井さんんも竹井さんもあのころは60代で、俺より20歳ぐらい上だったから勉強になったよ。

 けど、あの頃はバブルの真っ只中だったから、佐藤さんみたいな一流どころだけではなく、皆羽振りが良かったんだ

 後藤組の東京進出がバブル期と重なったこともあって、同組にトラブル処理や、用心棒を依頼する「クライアント企業」が一気に増加。それと同時に金融業や不動産業を営む同組の「フロント企業」も増え続け、ピーク時には数十社に達したという。◎

 「フロント企業」と言っても、俺自身が把握していたのは、若い衆が直接経営していた十数社ぐらいのもんだ。

 その若い衆が下の子にやらせてた会社や、枝の枝の子らがやってた会社となると何十社になったのか正直、俺自身にもわからんのよ。

 別に増やそうと思って増やしたわけじゃないからさ。当時はバブルで景気が良かったから、勝手に増えて行っただけのことだ。もともと商売人じゃないもんでな、俺は。

金儲けが仕事じゃないから。

本当に金儲けが好きならもともと極道なんかやってないよ。極道ってのは、いざという時の支出は大きいし、

一つ間違えれば懲役だし、金儲けという観点から考えればリスクが大きすぎる。

 それにフロントがいくら増えても、実際には俺の持ち出しの方が多かったんだから。兵隊(組員)が増えれば、それだけ支出も増えるんだ。だからヤクザ程割に合わないものもない。

 それでもヤクザをやってたのは、極道という生き方が性に合ってたからだ。

ただガキの頃から「経済=力」と思ってたから、俺に経済力がなかったら、若い衆を食わして行くこともできないし、兵隊も増えない。

 だから相手がヤクザだろうが、堅気だろうが、人に負けない為には圧倒的な経済力を身につけなくちゃ話にならん。

 俺はそのために必要な「経済活動」をしたまでのことだ。

俺自身にとっては、フロントが十数社あろうと数十社あろうと関係なかったんだよ。新しい会社が出来ても、二年も経てば忘れちまうよ。

 フロント企業がサツに挙げられたり、トラブル抱えたりして初めて「え?そんな会社あったの?」とか、

「あれ? うちに関係した会社だったのか?」と気付くような会社もあったぐらいだからさ。

 それに「クライアント企業」と言っても俺が直接付き合った中で、一流と言えるのは、さっき話した「廣済堂」の櫻井さんや、「地産」の竹井さんぐらいのもんだったから。

 けれどもあの頃(バブル絶頂期)は社会全体に金があふれていたから、地上げした土地の値段は跳ね上がるし、ゴルフ会員権も刷った先から売れてたもんで、地上げ屋も、金貸しも、ブローカーの連中も、“わが世の春”を謳歌していた。

 ゴルフ場を何個も持ったり、

ヘリコプター買ったり

とんでもない「迎賓館」建てたりな。

けど、バブルが終わったらみんなパンクしちゃったよ。 続く

 

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