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こころの除染という虚構 44

こころの除染という虚構

44

 翌6月11、12日に電気事業連合会が各戸を訪問。地点設定のためのモニタリングが行われた。測定箇所は玄関先と庭先の2地点を、50センチメートルと1メートルの高さで合計5回測定するというものだ。

 原子力災害現地対策本部(放射線班)と福島県災害対策本部(原子力班)が6月10日付で作成した『環境放射線モニタリング詳細調査(伊達市)実施要項』には、こんな記載がある。

『地点を選ぶ際は、くぼみ、建物の近く、樹木の下や近く、建造物の雨だれの跡・側溝・水たまり、石塀近くの地点での測定は、なるべく避ける』

避難かそうでないか、住民の運命を左右する根拠となる測定が、「なるべく低い地点を選んで測っている」と住民に言われても仕方のないマニュアルで行われていた。

しかも実施主体は電事連(電気事業連合会)

「そもそも電事連が測定では、泥棒が警察官をやるようなものだ」という声が起きたのも、自然な住民感情だった。

早瀬家の測定値は、庭先50センチで3・4マイクロシーベルト/時。

椎名家では3マイクロシーベルト/時を超える地点は計測されなかった。

小国の中でも比較的低いということは通学路を測定した時から、うっすらと敦子にはわかっていた。

 問題は、上小国に在る高橋家だ。この中島行政区に在る寺、『小国禅寺』はとりわけ線量が高い場所だと、市で認識しているほどだ。しかし、高橋家の測定では庭先50センチで2・8マイクロシーベルト/時。

 佐枝子は言う「子どもが通るところは毎日水を流してきれいにしてだの。それが仇になったんだよね。下が石だから、低くなるの。ちょっと離れれば4とかになる。そこらへん一帯。そこは何ぼ言っても測ってもらわんにがった(もらえなかった)」

 翌年の11月、除染の為に高橋家の敷地内の放射線量の測定が行われた際、雨どいの下、地表1センチで102マイクロシーベルト/時。50センチで7・8マイクロシーベルトという、信じられない数字が記録されている。

 長男が使っていた離れの子ども部屋の雨どいの下が地表1センチで39マイクロシーベルト、50センチで4・6マイクロシーベルト、1メートルで2・2マイクロシーベルト。毎日子どもが通る場所が、事故から1年8か月たってもこれほどの高線量を呈していた。

  6月16日、官房長官が記者会見を行い、国は『特定避難勧奨地点』という新しい非難制度を発表した。

『特定』の『避難』を『勧奨』する『地点』

何というネーミングなのだろう。

「特定の避難」?避難については「勧奨」に留め、そしてその対象となる「地点」とは?

国の説明は何ともまどろっこしい。

前提として強調されるのは、汚染は『面的』でない=『限定的』であるということだ。 続く

 

 

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