日々の感じた事をつづる
永人のひとごころ
銀座職人の心意気
5月7日
大統領よりも市井の客を優先した
「てんぷら近藤」の心意気
寿司外交は本来、天ぷら外交になる予定だった―
オバマ大統領の訪日初日、安倍首相が夕食の場に選んだのは銀座の高級すし店「すきや橋次郎」だったがここに落ち着くまで政府の店選びは二転三転。
一度はオバマに天ぷらを味わってもらうことも考えたが、提供する店側に断られていた。政府が候補に挙げていたのが銀座の「てんぷら近藤」だ。
ミシュラン2つ星店で一人あたりの平均予算は2万円前後とこちらも都内屈指の高級店である。
4月6日に安倍は来日中だったアボット豪首相を元赤坂の迎賓館に招いて夕食会を開催、この時に迎賓館まで出張し、アボットに揚げたての天ぷらをふるまったのも近藤の主人だった。
主人の近藤文夫氏は本日刊ゲンダイの取材に『今回も外務省から打診があったのは事実。けど俺がべらべらしゃべるわけにはいかないねえ』と多くを語ろうとしないが近藤氏と親しい知人が経緯をこう打ち明けてくれた。
「打診があったのはオバマ来日の2週間前。外務省の担当者は料理を提供する場所や、もてなす相手も告げず『23日に天ぷらを揚げてくれないか』とだけ伝えたそうです。
近藤の主人は『相手はオバマさんかな』とピンと来たそうですが、23日は平日で、しかも90人分の予約が入っていたのです」
店に来るのか出張になるのか、それも近藤の主人に伝えられなかったが、出張となれば、朝から支度に取り掛かる必要がある。6日の夕食会も午後6時スタートだったが、仕込みは午前9時から始めた。早朝から選び抜いた食材や、調理器具一式をワゴン車一台に詰め、出張先に運び入れるのも一苦労だ。
「近藤の主人は『そこまでやらないと、いい料理はできない』と言います。6日は定休日の日曜だったから出張できたけど、平日なら店を閉めなければ無理と判断、『今回は申し訳ない』と外務省の打診を断ったそうです」(前出の知人)
主人はこうも語っていたという「ウチには数か月前から予約した客が見える」いくら大統領のためでも、予約客を帰らせるわけにはいかねえ』これが銀座職人の心意気だ。