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「大地の子」④

 
 実の親と育ての親、二人の父の間で揺れる一心。出した答えは「私はこの大地の子です」
 
 気持ちの整理がついた一心は西蒙古鋼鉄公司へ転勤します。その地は夢を断たれて左遷された場所でもあるし、何より労働改造所で過ごした辺境の地です。それでもこの地を選んだことは、中国の発展に一心が心から尽くしたいと思っているからでしょう。国を超えて、恩讐を超えて選んだ一心の生き方です。
 このドラマは放送当時多くの人に感動を与えました。再放送も何度かありますが、いつ見ても感動が薄れることなく、一心が生きた激動の歴史を改めて考えさせられるのです。
 オープニング、劇中、エンディングで流れる音楽が素晴らしく、ドラマティックで胸に迫ってくるものがあります。渡辺俊幸の音楽がドラマに臨場感を与えました。
 岡崎栄の脚本も良く、松岡孝治、潘小揚、榎戸崇泰の演出も見ごたえがありました。
 原作 山崎豊子の小説は社会派です。骨太な男たちの様々な生き方を描いています。原作にした映画やドラマは見ごたえがあります。「白い巨塔」「華麗なる一族」イメージ 4「不毛地帯」「沈まぬ太陽」
 
 
 「陸一心」役の上川隆也は誠実な人柄でぴったりでした。彼以外は考えられないし、上川さんには申し訳ないのですが、一心は上川、上川は一心なのです。
 
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 「陸徳志」役の朱旭は、中国の俳優で素晴らしい篤志家の演技を見せてくれました。運命に翻弄される息子を、どうしようもなく切なく見守る年老いた父親は、見ているものに一緒に心配させ感情移入させました。中国人にこんな素晴らしい俳優がいたなんてそれだけでも感動です。
 
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「松本」役の仲代達也、日本の名俳優です。悲哀をかんじさせる父。表情といい見開いた目の演技といい素晴らしい!ドラマ撮影後、仲代さんが「朱旭」さんには俳優として負けましたと言ってましたが、いえいえ私は仲代さんのような俳優がいて、日本人であることを誇りに思いまイメージ 2す。
 
 
 
 「月梅」役の蔣雯麗、中国の俳優、一心とぴったりで上川さんと結婚して欲しいと思ってしまうほどでした
 
イメージ 3 「黄書海」役の薄宏 声楽家 「黄書海」は日本から来た華僑。頭の切れる人で理不尽な運命を受け入れて内蒙古の草原を悠々と羊飼いをする。一心の日本語の先生。一心の窮地を救う。
 
 「一心の母」田中好子 「祖父」牟田貞三 「妹あつこ」永井真理子
 
 「残留孤児連絡会の人々」渡辺文雄 十勝花子 益田喜頓
 
 「東洋製鉄の人々」西村晃 宇津井健 児玉清 角野卓造
 
 歴史に翻弄された一心ですが、人生に失望することなく、前に向かってゆっくりと歩いて行く。その姿は派手で自信に満ちあふれたものではありませんが、一心の明るい笑顔に、人生には希望があるのだとラストのエンディングを見て感じました。
 「大地の子」はNHKの放送70周年記念特別番組で、「良い作品を作ろう」という製作者の熱意が感じられます。1995年に日中合作で超一流の秀作ドラマが作られたことは、今の日中関係を思うと感慨深いものがあります。
 鬼籍に入られた俳優の方々も多く、今となってはとても懐かしくて、この作品には感謝したい気持ちでいっぱいです。
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「大地の子」③

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   陸一心は北京鉄鋼公司に復帰することができましたが、現場ではなく図書室勤務でした。名誉回復はなかなか出来ず、図書室で日本語の勉強を始めます。
 
 日中国交回復で、日本では本格的に満蒙開拓団の残留孤児探しが始まりました。一心の実の父、松本(仲代達也)は日中国交回復のプロジェクトの一環である製鉄所作りのメンバーになり、東洋製鉄上海事務所の所長として中国に赴任します。そこで自ら、子供探しを始めます。
 
 一心は命の恩人、月梅と結婚します。月梅は巡回診療で、一心の妹あつこらしき人を見つけます。一心と松本は親子と知らずに、お互いの国の代表として対峙します。
 
  一心は病床のあつこに会いに行きます。二人はおぼろげな記憶をたどり、兄、妹として感動の再会をします。病状の重いあつこは入院しますが、治る見込みのない患者として退院させられ、義母は慣習に従って危篤のあつこを土間に寝かせていました。一心は怒ります。36年ぶりにやっと出会えたあつこの死をみとります。
 
  松本は娘あつこの居場所を探し出し、会いにいきますが、あつこはすでに亡くなっていました。そこで二人は初めて親子だと知り、一緒にあつこを弔います。一心も苦労したのですが、あつこはもっと苦労していました。売られた農家でこきつかわれ、寒村の貧農に嫁いで、からだを壊しても働き続けなければならない、残留孤児がこのように苦労したのは、悲惨な戦争があったからです。それにしても悲しい。あつこのシーンは本当につらい。
 
 二人は親子ということを黙ったまま、仕事を続けます。日本への視察旅行中、悩んだ末に一心は松本の家を訪れます。仏壇の母の写真、妹あつこの遺髪とツメをみて泣き続ける一心でした。
 
 松本の家を訪ねたために門限の時間に遅れ、大事な書類を元恋人の夫に盗まれ、又しても、スパイの疑いで職を解かれ、西蒙古の製鉄所に左遷されてしまいます。
 
 そこにはかなり以前から左遷された所長が化石のようにいました。やる気のない工場で、質の悪い鉄を作っているのを見て、一心は仲間の工員たちと良質の鉄作りを始めます。そして良い鉄を作ることに成功します。自分の置かれた場所で落ち込んだり、恨んだりするのではなく、新しい道を見つけて進んで行く。なんて素晴らしい人なのでしょう。なんて強い人なのでしょう。「強い」というのは武器を持って戦うのではなく、困難なことを知恵を使って解決する力が「強い」ということを教えてもらいました。
 
 スパイの疑いが晴れて上海に戻り、炉に火が入ってプロジェクトの最新鋭の製鉄所が完成しました。
 松本は一心の育ての親、陸徳志に会いにいきます。二人の父はお互いを思いやります。松本が帰る時、陸徳志は日本語でさようならと挨拶します。松本は思わず涙があふれます。
 陸徳志の薦めで、松本と一心は親子水いらずの船旅をします。
 
 
 
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