マガジンひとり

自分なりの記録

旧作探訪#20『Mr.BOO! インベーダー作戦』

2008-04-06 21:46:33 | 映画(レンタルその他)

賣身契The Contract@DVD、マイケル・ホイ(許冠文)監督(1978年・香港)
大手のTV局と専属契約を交わしたもののほとんど飼い殺しで芽が出ない中年タレント、ジーマン(マイケル・ホイ)。そんなとき、たまたま他局で司会を務めた番組が大うけ。思わぬ引きぬき話が舞い込む。このチャンスに飛びついたジーマンは、移籍の障害となる8年間も縛られる契約書を盗むべく制作局長室に飛び込むが、同行した発明狂の弟ティンガイ(リッキー・ホイ)が誤って金庫に閉じ込められてしまう。あわてたジーマンは局長の巨漢SPと追いつ追われつを繰り広げつつ、奇術師のサイギッ(サミュエル・ホイ)に弟の救出を頼み込む…。



「ノンノン!ムーミンと仲良くしたらダメじゃないか」
亡き広川太一郎さんの声でお読みいただきたい。一生忘れないよ、子どもの頃に聞いたことは。子ども向け番組でも決して手を抜かない、むしろ大人向け以上に精魂かたむける人がいっぱいいたもんだ。
Mr.BOOシリーズの映画がTVで放映されるにあたって、広川さんがマイケル・ホイの声を務めたのね。日本公開第2弾のインベーダー作戦からはプロの声優が務めているが、第1弾のときはサミュエル・ホイの声をビートたけし(北野武)が。話題つくりのためにお笑い芸人やアイドルを声優に起用するののはしりでしょうか。
ドタバタ喜劇としてはドリフターズと似た感じでっけど、TV放映のときはすでに『ひょうきん族』が『全員集合』の人気を上回ろうか、というときだった。
手抜きのクイズ番組が増えて、子どもに人気の高い『はねトび』でもコントは姿を消し企画ものだらけになってしまう今からしてみると、ひょうきん族のコント部分はわりとしっかり作られてはいたけどな。今では言葉の暴力大将・島田紳助がそのときはすげえ女装で明石家さんまのホテルの部屋から締め出されてくるくる回って「…寒い。」…隔世の感がありまんなあ。

たけし「漫才でもなんて言うのかやっぱりお客さんがだんだん増えましたけどね」
きよし「うれしいですね」
たけし「お客さんはいろいろと特徴ありますね。だいたい男は頭がバカね、女は顔がブスって…」
きよし「やめろ!せっかく来てくれたんじゃないか」
たけし「しかし男はブスでもいいですよ、女のブスはどうしようもないですね。あれはもうね、法律を作ってブスは殺したほうがいいですね」
きよし「そこまで言うな、おまえ」
たけし「ブスは外歩いちゃいけない、とかね」
きよし「歩いちゃいけない?」
たけし「ブスは横断歩道歩くな、とかさ」
きよし「どこ歩くんだ」
たけし「ブスはブスバッジつける、とかね」
きよし「なんだブスバッジって」
たけし「やっぱあれですよ。ブスになってまだ1年だったら、若葉マークのブスマーク」
きよし「車の運転じゃないんだよ」
たけし「それから、ブスは殺しても捕まらない、とかね」
きよし「捕まるわ!」

ほかに老人ネタとか田舎者ネタとかも。ビートたけし(北野武、めんどくせえなあ)や太田光はラジオでもテレビでも手抜きをする。さらにたけしは収録を突然すっぽかす。愛人が強引な取材を受けたことに立腹して、子分を引き連れて出版社に殴り込みをかける。紳助も暴力事件の謹慎が明けてからさらに暴力性を増したが、たとえフライデーみたいな雑誌でも言論に対するテロ行為を行うような人間を世間は許し、文化人として祭り上げ、今ではその系統の人間が増殖して毎日のようにTVから世論形成に影響力をおよぼし、選挙で選ばれて法律をこしらえる立場に立ったというわけ。
当時はわけのわからぬ中学~高校生で、ツービートの漫才に笑ってたしオールナイトニッポンは夢中で聞いてたし彼の歌うレコードまで買ってたが、音楽はウソをつかない。
ブサイクでチック症のたけしがガニ股でロッド・スチュワートの「Hot Legs」なんて歌ってた男権志向と自己愛。オリジナル曲も今になってみるとひどいもんだ。
それにひきかえサミュエル・ホイ(許冠傑)の歌う映画のテーマ曲・挿入曲はすごい。今になってもすごい。哀愁といい親しみといい、権力志向からは決して生まれない生活臭にあふれた人民のポップスである。
「連合赤軍とオウム真理教では出発点が違う」って言葉はけっこう重い。最初の発想が反権力か権力か、弱者の側に立つのか強者の側に立つのかってことが問われる。権力に媚びへつらい弱者を寄ってたかっていじめ倒す、本末転倒なTV民主主義の国すなわちにっぽんに、いったいどんな未来が…。

Mr.BOO!インベーダー作戦

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

このアイテムの詳細を見る
コメント