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タウトウ朝日新聞ヲ止メルノ記

2007-05-04 20:59:46 | 読書
日本の歴史をよみなおす (全)

筑摩書房

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『日本の歴史をよみなおす(全)』網野善彦(ちくま学芸文庫)
日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民俗社会に対する文字・資料のありようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。ロングセラーを続編と合わせて文庫化。

短大などでの講演を文章に起こした体なので、たいへん平易で読みやすいのにもかかわらず4ヶ月ほど要してしまった、読み始めの頃に鈴木紗理奈の「やっぱエリートよりストリートでしょう」発言があったのが印象的。
本書ではさまざまな交換の行われる場所、市場の立つ場所、無縁の場所として「道・河原」に着目されてるのですね。
そして「百姓=農民」ではなく、海運業、鍛冶、金融などによる収入を主として生活している者も、武士が文書で管理する名目上「百姓」としてあつかわれたこと。
そうしたストリートで生きる人々、あるいは女性、あるいは被差別階級の人々などにも救いの手をもたらそうとして新しい教義を発展させた浄土宗・日蓮宗といった鎌倉仏教は、自由経済における個人の欲望の追及を正当化する側面を持つキリスト教のプロテスタントの動きとも比較できるかもしれない。
最後のほうの興味深いくだり~「15・16世紀ころの商人、廻船人たちの動きは“倭寇”のように列島外の地域とも結びついており、東南アジアから南アメリカにいたる広いネットワークができつつあったのですが、これに対して織田信長のように、各地の戦国大名や地域小国家を併合して“日本国”をもう一度再統一しようという動きが出てくるわけです。この動きが商業に高い価値を置く“重商主義”的な宗教と真っ向からぶつかったのが、一向一揆と信長の衝突です。キリスト教と秀吉・家康の対決の根底にあるのも同じ対立だと考えられますが、“日本国”を再統一しようということになると、どうしても土地を基礎とした課税方式を取ることになり、古代からの“農本主義”の伝統が、ここで再び生き返ってくることになります。
秀吉は御前帳という名目で、全国の大名から検地帳を天皇に提出させ、石高制にもとづく年貢~租税を徴収する方式を固めようとします。家康も同様ですが、こういう農業、土地中心に“日本国”を固めていこうとするやり方と、海を土台にして商業や流通のネットワークをつくり、日本列島の外にまで広がる貿易のネットワークをつくっていこうとするような動きとが、ここで真っ向から対決することになったのです。
この衝突は、たいへんな流血の末、結局、前者の路線~信長・秀吉・家康の路線の勝利に終わり、後者の勢力の海のネットワークはあちこちで断ち切られて、海を国境とする“日本国”という統一体がふたたびできあがります。
これが近世の国家なのですが、この国家の下で、商工業に高い価値を置く重商主義的な思想は、社会の表面には出なくなり、農本主義のたてまえが主要な潮流になっていきます。その中で百姓=農民という思いこみが、しだいに社会に浸透していくことになるのです」
このようなこと、会社員×個人事業主あるいは定住志向×放浪志向とかに置き換えてみれば、いやこじつけで無理に置き換えてみんでも現代社会にも共通のテーマかもしれんね。

ところでオラは、27歳でひとり暮らしを始めたときから、長期入院の時期を除いて欠かさず宅配で購読してきた朝日新聞を4月いっぱいでやめました。
週刊朝日が不用意な見出しをつけて安倍晋三に謝罪広告を出す破目におちいったことや、朝日と大きなつながりのある高野連の特待制度をめぐる一連の醜態、むかつくことは数え切れないほどあれど、やはり直接のきっかけになったのはテレビ朝日が江原啓之の『オーラの泉』を土曜のゴールデンに進出させたことですね。
“あるある”の捏造とか大騒ぎになったのによ、占いやオカルトが野放しなのにはどうにも我慢ならねえぜ。人々の結びつきが希薄になってきている現代社会で、権力が人々を家畜化するためには、さぞかし好都合な存在なのであろう。
広告主には頭が上がらず、さらに政府からは許認可権でがんじがらめに縛られたマスコミ業界、それでもなお就職人気は高いのだそうな。楽天もあんなにまでしてTBSを欲しがっちゃって。
それにしても手取りの給料が16万で家賃が8万だったときにもなんとかやりくりして購読料を払っていたような忠実な読者を失ってしまったんだぜ、そのうち沈没船の運命を辿るのでわ…
いしいひさいちさんの連載マンガが見られなくなるのはとても残念だし、手塚治虫文化賞関連の記事もちょっと惜しい。
しかし飯島愛になら惜別の言葉を贈りたくもなるが、20代から年収1千万円に達するような朝日の記者の行く末などどうなろうと知ったことではない。

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