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2004年に読んだ本10選

2005-01-04 14:44:02 | 読書
もっと、わたしを

幻冬舎

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読書は音楽よりヒットチャートという概念が薄く、読める量も限られているので新作旧作無差別に10冊選んでみました。

「綺譚集」津原泰水(集英社)
~乱歩meets乙一。
「デッド・ゾーン」スティーヴン・キング(上下・新潮文庫・旧作)
~原作も映画化も立派。
「もっと、わたしを」平安寿子(幻冬舎)
~くすくす笑えて勇気をもらえる。
「こんな世界に誰がした」爆笑問題(幻冬舎)
~笑撃の日本原論シリーズ4作目。
「私が殺した少女」原りょう(ハヤカワ文庫・旧作)
~世界最高級のハードボイルド。
「魍魎の匣」京極夏彦(講談社ノベルズ・旧作)
~京極堂シリーズはとりあえずこれを読んでおけば間違いないかも。
「薔薇密室」皆川博子(講談社)
~耽美幻想世界。
「荊の城」サラ・ウォーターズ(上下・創元推理文庫)
~2003年の「半身」より若干衝撃度落ちる。
「夏の庭 The Friends」湯本香樹実(新潮文庫・旧作)
~少年と老人の交流をみずみずしく描く。
「手紙」東野圭吾(毎日新聞社・旧作)
~職人芸。「さまよう刃」も楽しみ。

そして、読了はしたものの即座に叩き売ったワースト本3冊。
ワースト1・「リピート」乾くるみ(文藝春秋)
~登場人物が卑しいエゴイストだらけのタイムスリップものミステリー。
ワースト2・「孤独か、それに等しいもの」大崎善生(角川書店)
~鼻もちならない自己陶酔。
ワースト3・「FLY」窪依凛(文芸社)
~山田悠介系ジャンク・ホラー。

今日の朝日朝刊に桐野夏生さんの読みごたえのあるインタビューが掲載された。
「精神面で言えばバブルは、『マル金(金持ち)・マルビ(貧乏人)』という分類法がはやったように、持てる者が持たざる者を臆面もなく揶揄する、下品な社会を作ったと思います。バブル崩壊後もその下品さは残った。そして今、バブルを楽しいと感じた人々、欲望を全開にしてしまった人々が閉塞感の中で行きはぐれ、右往左往しています。中でも40歳前後の女性が変だというのが私の直感です。『和歌山カレー毒物混入』などの事件もおそらく、こうした状況と無縁ではない。
『所有』に代わる新しい豊かさの原理を見いだすことが、日本の課題なのでしょう。
私は、認識するという行為がその成否のカギになると感じています。若者や女性の中に今後、『私は貧しい』と考える人がどれだけ増えるか。認識することが『なぜこんなことになっているのか』という問題意識への第一歩になるからです。
もちろん『一生安定した職に就けず、結婚もできず、子どもも住宅も持てない』と落胆する若者に、現実を見ろとは言いにくい面もあります。私は自分で道を切り開こうと考えたけれど、それは経済的に拡大し膨張する社会を背景にしていた。しぼんでいく社会を生きる若者には、異なる現実もある」

「負け犬の遠吠え」などという身もフタもないタイトルの本が売れるという現実、そして私の大好きな「格付け~」に嬉々として出演する女性たちにも、同じ時代の影が射しているのだろうか。
この社会への問題意識のありようと、それでも物語を創造していこうとするこだわりにおいて、宮部みゆき、高村薫、桐野夏生の3巨頭にこれからも注目していきたい。
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