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歩留り

2014-07-16 19:43:06 | Weblog
先月、出版社の労働組合の上部組織・出版労連のセミナーで、本が書店に並ぶまでの、取次(日販、トーハンなどの卸商)や、出版社の倉庫担当の仕事はどのように動いているのかという実態を聞き、いくつか興味深い点があったので、それを基に考察してみたい。

私も、即売会で手売りしたり、とらのあな等の専門店で委託販売してもらうマンガ同人誌を一昨年から作り始めたのだが、そもそも普通の本や雑誌も「買い取りではなく委託。売れ残りは返品可」というシステムで流通しており、税抜き販売価格のとらのあなは64%、COMIC ZINは70%、アリスブックスは75%などと同人誌の卸値に差があるように、普通の本にも書店の大小や、本の種類によってさまざまな慣行が生じているとのこと。

(↓)最下段に掲げた表にいくつかの例が載っているように、街の小さな書店の場合、一般書で77~78%、文庫で77.5%、専門書で79~82%が卸値となり、一般書であれば22~23%が店の取り分ということになる。
さらに書店と出版社を仲介する取次が「八分口銭(はちぶこうせん)」といって8%のマージンを取るので、上の数字からそれぞれ8を引けば、出版社から取次への卸値になる。

書店が大きくなると、店の取り分が増し、出版社からの卸値が下がる仕組みで、さらに取次の段階で、売れ行きの見込まれる本は大型書店を優先して配本するなどの慣行もあるので、街の書店は経営が成り立たず姿を消す一方、返本が少なく市場支配力のあるAmazonは取次を経ず40%も取ってゆく。同人界では大手という立場を活かし、他の専門店より多い36%取ってゆくとらのあなですら、Amazonよりは良心的ということか–




「歩留(ぶどま)り」とは元来、製造業において、できる限り不良品を減らす意味合いで「歩留りを上げる」というように使われる言葉だが、私は上記のような経験を通じ、とらのあなは卸値は安いけれども固定客を押さえているので他を圧する売り上げをもたらしてくれ、返品が少ない=歩留りが良い、というように使っている。

そして資本主義というものも、先行して市場や媒体を構築し、人・物・金・情報の流れを押さえた者が、弱い立場の者にリスクを押しつけて生かさず殺さず使いつぶし、とっかえひっかえして回ってゆく、規模こそ大きくて複雑ではあるものの、基本、自転車操業の面があるなと。
タウンページや建設業界の名簿の歩留りに飽き足らないナニワ金融道・灰原が、社会保険庁の役人をタバコ銭で買収して、雇用保険や厚生年金を滞納している「寒い会社」のリストを入手するように(↑画像)。

いかに歩留りを上げるかといえば、子育て中の世帯はお金が必要である、いくらでも、確実に。日本は先進国でも最も教育費が高いので、少子高齢化にも拍車が。
そんな中で流れてきた、通信教育大手・ベネッセコーポレーションの顧客リストが盗まれ転売された事件のニュース、なるほどそのリストは歩留りが良いことでしょうが、わが国の資本主義が限界に達しつつあることも示しているように思えてなりません–


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